防災DXとは?注目の理由と企業・自治体の防災DXを導入した事例を解説
2023/08/04
近年、日本で発生する自然災害の頻度が高まってきている中、企業や自治体が防災対策をより効果的かつ効率的に実施するために注目されているのが「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
防災DXとは、デジタル技術を活用して防災対策を進める取り組みのことです。
本記事では、職員の人手不足や自然災害が頻発化するために、注目されている防災DXの導入を検討している方に向けて、防災DXの概要や事例から、企業が行うべき防災DXの進め方を解説します。
防災DXとは
そもそも防災DXとはどういうものなのでしょうか。昨今では企業や官公庁でも進められているDXの意味や役割から確認していきましょう。
DXとは|意味と役割
DXは、デジタル技術を活用して製品・サービスや企業組織を変革することを指します。
社会全体を対象とする場合、DXの目的はIT技術の普及によって経済や人々の生活を向上させることです。様々な分野にデジタル技術が浸透することで、より便利で効率的な社会を実現することを目指しています。
企業を対象とする場合、DXの目的は全体の業務プロセスを効率化することを指します。DXを活用することで特定の部門だけで使われていたデジタルシステムや仕組みを他の部門にも広げることで、新たな知見や価値を創出することが可能です。
このようなDXは、現在企業や地方自治体の防災対策に活かされており、その取り組みが注目されています。
防災DXとは
防災DXはDisaster Prevention Digital Transformationの略です。予測しにくい災害に対してデジタル技術を使って防災を強化する取り組みを指します。
防災DXにより、二次災害の危険性や避難所情報の迅速な共有を可能にします。避難所で使う備蓄品や医療が必要な方への迅速な対応・災害後の公的機関への支援・援助の申し込みを効率的に行うことが可能です。
防災DXを行うことで得られるメリットは以下です。
- 近くの避難所情報がわかることで素早く避難ができる
- 災害の元となる天候や自然状況を理解できることで二次災害を回避できる
- 事前に安否確認アプリをインストールしていることで、遠隔地であっても家族の安全を確認することが可能に
- 被災後、パソコンやスマートフォンを通じて支援要請を行い公的サービスを受けられる
実際に、デジタル技術を提供する企業や地方自治体が協力した防災DX官民共創協議会では、防災DXを推進しており、防災アプリケーションに必要な項目を検討しています。
これにより、避難状況を住民に伝達したり、災害が起きた際に警報が鳴り、災害時に避難しやすくなります。
防災DXを導入する理由|2つ
なぜここまで防災DXが注目されるようになったのでしょうか。その理由は職員の人手不足や自然災害の頻発化が理由です。
職員の人手不足
現在、地域の役所や自治体の職員が減少しています。少子化が進み地域の防災活動の人手やお金が不足している中において、その中で全体の作業量に大きな変化はないため、一人あたりの作業負担が増えていることが分かります。
実際に、地方の公共団体で働く職員の数は、平成6年から平成27年までに約17%(54万人)減少しています。
その一方で、昨今の自治体では「災害派遣福祉チーム」体制の整備をするなど、災害時の福祉支援を行う職員たちの仕事の範囲は広がっています。さらに、紙を使った文化や手作業、対面での業務もまだ多く残っており、作業負担がかかっていると言えるでしょう。
その他にも、自治体の消防制度は各市町村が責任者であることが多く、消防や防災のシステムや設備が自治体ごとに整備されています。このようなことから、自治体・官公庁の職員は、災害情報の共有に時間がかかり、災害時に迅速で正確な判断をすることが難しい現状があります。
これを改善するためには、自治体同士や行政機関同士が情報を簡単に共有できるようにし、システムを共通化する防災DXが求められています。
自然災害の頻発化
近年、地球温暖化により水害や土砂災害などの自然災害が以前よりも頻繁に発生し、とくに集中豪雨が増加している傾向にあります。
実際、集中豪雨の影響もあり、土砂災害豪雨の件数は、1990年から2019年までに約450件増加しています。
そして地球温暖化が進むにつれ、日本の平均地上気温が上がっています。1900年から2020年の間に地面の温度が上昇しているため、今後も集中豪雨などの災害は増えるでしょう。災害に巻き込まれるリスクは誰にでも存在します。
そのため、被害を最小限に抑えるため個人や家族で事前に災害に備えることが重要です。日頃から防災に関する正しい知識を学び、意識を高めることが求められていると言えるでしょう。
防災DXの導入事例4選
防災に対する課題は把握しているものの、具体的にどうやってシステムと課題を結びつけるのか分からない方が多いのではないでしょうか。そのような方に向けて、導入事例を4つ説明します。
避難情報の共有|防災チャットボット
リアルタイムに正確な災害情報を把握することが難しいケースがあります。
そこで防災時にはチャットボットなどのコミュニケーションツールを使い、災害時の情報提供や共有を効率化できます。チャットボットは、住民の避難や災害対応機関の意思決定を支援する役割を果たしています。
具体的に以下のような機能があります。
・情報投稿機能
住民がLINE上で被害状況をテキストや位置情報、写真として投稿できます。これにより、災害対応機関は住民から得た詳細な情報を元に、現在の状態をリアルタイムで把握し、的確で迅速な対応を進めることが可能です。
・避難支援機能
自分の現在地や生活場所、災害時の避難予定の場所を登録します。これにより、災害が発生した際にはチャットボットからそのユーザーに合った避難情報が提供されます。
・危機情報の一元管理
異なるソースからの危機情報を地図上で一元的に管理できます。SNSなどの災害情報と、現場で職員が共有した信頼性の高い情報を統合表示することで、常に最新の危機情報をリアルタイムで確認できます。
住民と災害対応機関が情報を共有することで、迅速に正確な情報を収集でき、災害時の対応をより効果的に行うことを支援する重要なツールです。
支援申し込みのデジタル化|クラウド型被災者支援システム
支援制度があるにも関わらず申請方法が難しかったり、気軽に相談することが難しい場合、支援を断念するケースがあるのではないでしょうか。
支援の申し込みをデジタル化するツールを導入することで、被災者が気軽に支援を受けることができます。災害の影響で生活に困難が生じた人や家を失った人、親を失った子どもたちがいます。そこで誰でも気軽に支援を受けられるよう、支援の申し込みをデジタル化するツールができました。
たとえば内閣府で地域の被災者支援を助けるシステムを導入しています。このシステムは、住所などの情報を基に被災者の台帳を簡単に作成できます。
また、マイナンバーカードを使って、災害の際に必要な証明書や支援金の申請をオンラインで行えるため、自宅や遠くからでも申請できます。さらに、証明書を全国のコンビニでも受け取ることができます。
このように支援をオンライン化することで、被災者が必要な支援を利用しやすくなります。デジタル化によって、情報共有がスムーズになり、手続きも簡単になるので、被災者が早く助けを受けられるようになります。
ドローンで被災地の状態把握
ヘリコプターで被災地まで移動し、救助を行っていないでしょうか。
ドローンを使って、被災地の状態を確認し援助することができます。最近のドローンはセンサーやカメラが搭載されており、行政や企業を問わず様々な分野で活用されています。
従来はヘリコプターを使用して災害援助をしていましたが、ドローンに置き換えることで費用と時間を節約でき、リアルタイムの災害情報も得ることができます。
また、災害時の避難誘導や救助活動にも活躍しています。倒壊した建物の探索や孤立地域への物資運搬など、人が入りにくい場所や交通が寸断された場所でも役立ちます。
特に、赤外線センサーを搭載したドローンは、温度変化から人の存在を視覚化することができ、救助活動を正確に迅速に行えます。
さらに、災害後に発生しやすい便乗犯罪の防止にも役立ちます。被災地が無人になることで、不正侵入が増える可能性がありますが、ドローンの遠隔監視により安全を確保できます。
このようにドローンで被災地の状態を素早く正確に知ることができるため、ヘリコプターに乗って目視で確認する機会を減らすことができます。
積雪や水位計測の自動化
毎年、大雪や水害で交通機関が止まったり、転落事故が起きるのではないでしょうか。
積雪や水位の計測を自動で行い、そのデータを元に地域の課題解決に役立てることができます。
例えば、雪害対策のために雪の深さを測るセンサーや積雪状況を見るカメラを設置します。水害対策のために河川の水位を測るためのセンサーを設置します。
このセンサーを元に収集したデータは、IoTプラットフォームに集められて分析されます。そして分析した結果は、地図やグラフとして見やすく表示され、市内の現状がリアルタイムでわかるようになっています。
これにより、行政や住民、企業、学校などが、市内の状況を把握し、地域の課題解決や活性化に役立っています。
防災DXの課題とは?
今後も防災DXは積極的に導入されるでしょう。現時点の防災DXの課題は以下の通りです。
- システムの標準化が進んでいない
- 最先端技術の活用が遅れている
- システムの維持費が掛かる
- DX人材や知識、技術の確保が難しい
具体的には新しい情報伝達手段としてSNSやGISを活用して住民と自治体の間で情報共有を強化することが考えられます。
また、AIチャットボットを導入して人がいなくてもお客様対応ができるように体制を整え、人員不足解消に繋げます。
避難所でのQRコード読み取りなどIT技術を活用して避難状況を迅速に把握することで行方不明者や救助対象者を特定することも可能となります。
防災DXの推進には財政的な負担や人材の確保という課題がありますが、官民の連携と防災関連のデータの共有・相互利用を進めることが重要です。
防災DXの導入は「クロスゼロ」
防災DXは、職員の不足や災害の増加など、ますます重要視される課題となっています。そのため、KENTEMは防災DXを促進するために新しい取り組みを行っています。
その取り組みの一つが、防災・備災支援サービス「クロスゼロ」です。
以下のような機能があります。
- ハザードマップ避難情報の共有
- 地震や津波、大雨、土砂災害などの情報のリアルタイム発信
- 発生後の情報伝達の一元化
災害が発生した後の被害状況や情報の伝達などに役立てることができます。緊急時には、連絡をクロスゼロで一元化できるので、見落としを減らし、情報を共有することができます。
防災DXをご検討中の方は30日間無料で体験できるので、ぜひお試しください。