企業に求められるリスクアセスメントとは?進めるプロセスや作成時のポイントを解説
2024/04/18
リスクアセスメントとは、企業の安全管理や危機管理として実施する取り組みです。
リスクの顕在化から対策の検討、実施までを一連の動作として行い、リスクを未然に防ぎ、万が一事故やトラブルが発生した際の被害を最小限に抑える目的があります。
今回は、リスクアセスメントが企業に求められる理由や、得られる効果、具体的な実施方法を詳しく解説します。
会社のリスクアセスメントを実施しようと思っている人や、これから会社を立ち上げようと思っている人はぜひ参考にしてください。
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、労働災害が発生する仕組みを踏まえて、「危険性又は有害性」と人が接触してリスクが発生することを事前に評価し、予防を目指す取り組みのことです。
日本の労働災害による死者数は減少傾向にあります。
労働災害の死者数の減少は、労働条件の改善や法律の改正が理由の一つとされています。
平成17年には労働安全衛生法(安衛法)が改正され、同法に第28条の2が追加されました。
さらに平成18年4月からは、リスクアセスメントの実施が法令における事業者の努力義務に設定されています。
リスクアセスメントのメリットは、リスクを未然に防ぐだけでなく、被害を最小限に抑えることができる点です。
特に製造業や建設業では、粉塵やガス、蒸気などの身体への影響や、工事中の事故などによる怪我の影響が発生しやすい特徴があります。
労働者の安全を守るためにも、企業はリスクアセスメントを徹底し、リスクをできるだけ低減することが大切です。
リスクアセスメントの3つ効果を解説
リスクアセスメントには、以下の3つの効果があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
潜在リスクを特定し未然に防止する
リスクアセスメントはリスクの把握から必要な対策の検討、実施までの一連の流れを指します。
事業を行ううえでリスクになりうる要素を事前に把握できれば、防止に向けた対策が取れるでしょう。
企業のリスクになりうる要素は、業種や業界によっても異なりますが、大きく以下の5つが挙げられます。
- 機械設備の危険箇所や老朽化のリスク
- 化学物質の取扱いに伴う健康被害のリスク
- ワークフローの中で発生する人的ミス
- サイバー攻撃やデータ漏えいリスク
- 自然災害による工場や機材の損失リスク
特定したリスクに対してそれぞれ適切な対策を講じることができれば、事故やトラブルが発生する前に対処ができるでしょう。
事故や被害を最小化する
事前にリスク対策をしていたとしても、予想外の要素が重なって事故やトラブルが発生する可能性もあります。
ただ、仮にリスクが顕在化したとしても、事前にリスクアセスメントを行い、対策を考えていれば、被害を最小限に抑えることが可能です。
具体的な対策内容は以下のとおりです。
- 自然災害に備えて事業継続計画(BCP)を策定する
- 製品のリコールに対して適切な対応手順をマニュアルにまとめる
- 情報漏えいに備えて被害範囲別の対応計画を立てる
- 労災事故に備えて災害訓練や救護体制の確保、補償対応を決めておく
- 災害発生に備えて避難訓練や備蓄管理を行う
事前に起こりうるリスクを予測できているからこそ、適切な初動が起こせます。
適切な初動対応ができれば、事故や被害の拡大を防ぐことにもつながるでしょう。
コストの削減や企業価値を維持する
リスクマネジメントを実施せずにトラブルが発生し、その結果大きな被害を被ってしまった場合、企業の信頼を失うリスクもあります。
リスクマネジメントは事前に対策をしておくことで、被害発生時のコスト削減や事故における会社のブランド価値を維持することにもつながります。
リスクマネジメントを行わなかった場合に発生する可能性がある被害やコストは以下のとおりです。
- 設備トラブルや人的ミスで業務停止になった場合の従業員への保証金
- 不良品などによる製造物責任賠償が発生したときの損害賠償費用
- 汚職や不正による制裁金や訴訟にかかるコスト
- 企業ブランドの毀損による売上減少の被害
- 災害発生による会社の損壊・社員への補償金
特に地震や津波などの災害は事前に対策が難しい自然災害です。
ただ、災害発生後に社員の命を守るために日々の避難訓練や什器の固定などは、今からでも対策できる取り組みです。
さらに予測して避難ができないからこそ、実際に災害が発生したときをイメージしてどのようなプランで再興していくか、事業を継続するために何が必要かを計画にまとめ、社員に共有しておく方法もよいでしょう。
リスクアセスメントのやり方を5ステップで解説
リスクアセスメントは3つの要素で構成されています。
- リスクの特定
- リスクの洗い出し
- リスクの評価
それぞれの要素を踏まえてリスクアセスメントを行うには、具体的にどのような進め方にすべきなのでしょうか。
ここからはリスクアセスメントのやり方を5つのステップに分けて解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
職場に存在する危険やリスクを書き出す
リスクアセスメントで最初にやるべきことは、潜在するリスクを洗い出すことです。
潜在リスクには大きく分けて3つの種類があります。
- 外的リスク:自然災害、法令違反、サイバー攻撃など
- 内的リスク:人的ミス、設備トラブル、労務問題など
- ステークホルダーからのリスク:顧客のクレーム、株主への影響など
それぞれのリスクを徹底的に洗い出すことで、次のステップで検討できる要素が増えるでしょう。
既存の予防措置を踏まえた被害を想定する
スコア化すべき要素は以下のとおりです。
- リスク発生の確率(頻度)
- リスク発生時の影響度(損失額、業務停止期間など)
リスクによっては、発生の確率は低いが影響度が大きいものや、時期によって影響度が異なるものもあるでしょう。
リスクをただ書き出すだけでなく、具体的な数値に表すことで、リスクごとの対応レベルを考えることができます。
リスクの優先順位づけを行う
リスクそれぞれの発生頻度や影響度が数値化できたら、次に優先順位を決めましょう。
リスクの見積表は、マトリクス方式を採用するのがおすすめです。
リスク対策を実施するには時間がかかることもあります。
リスクの発生する可能性の高いものから優先順位をつけることで、適切な対策を実施できるでしょう。
リスク低減に向けて行動する
リスク対策の優先順位が決まれば、順序に従ってリスク対策を行います。
厚生労働省によると、リスク低減措置の優先順位として以下の内容を挙げています。
内容 具体的な対策例 設計や計画の段階における危険性又は有害性の除去又は低減 危険な作業の廃止・変更
危険性や有害性の低い材料への代替
より安全な施工方法への変更工学的対策 局所排気装置
防音囲いの設置等管理的対策 マニュアルの整備
立ち入り禁止措置
ばく露管理
教育訓練等個人用保護具の使用 上記1~3の措置を講じた場合においても、除去・低減しきれなかったリスクに対して実施する
※製造業などを想定
製造業の事例として挙げましたが、この内容は防災対策や人為的ミスに対する対策などでも活用できるでしょう。
リスク低減措置の記録・分析を行う
リスク対策を実施したあとは、集計したデータを元にPDCAを回しましょう。
リスク評価の手順は以下のとおりです。
- リスク対策の内容を確認する
- リスク対策の前後におけるリスクの数値の変化を計測する
- リスク対策における従業員へのヒアリングやアンケートを実施する
- 客観的なデータと主観的な見解を合わせリスクの深刻度や優先度を評価する
危険箇所の柵の設置やマニュアルの作成などはすぐにできるリスク対策です。
小さなことから対策を進めることで、徐々に会社全体のリスク管理意識を高めることが重要です。
リスクアセスメントを効率化するには
クロスゼロがおすすめ
リスクアセスメントの中でも、災害に向けたリスク管理は発生頻度が低い割に重要度が高い要素です。
災害が発生した時に対策するのでは、被害を抑えられないため、事前にリスク対策をしておく必要があるでしょう。
クロスゼロを活用することで管理できる、リスク対策の例は以下のとおりです。
- 備蓄管理
- 災害発生時の社員の安否確認
- 災害情報の共有
- 防災マニュアル・事業継続計画(BCP)の共有
防災マニュアルや事業継続計画(BCP)の作成は、リスク対策として事前に準備しておくべき要素の一つです。
マニュアルを作成したうえで、内容に沿った準備を行えば、災害発生時にも社員の安全を守り事業を早期復興するための行動に移せるでしょう。
まとめ
今回は、企業にリスクアセスメントが求められている背景や具体的なやり方、リスクアセスメントを効果的に活用するためのツールを紹介しました。
リスクアセスメントは、企業における努力義務ですが、実施する企業と実施しない企業では会社としての信頼度やトラブル発生時の取り組みに大きな違いが出ます。
事業を成長させるためには、常に起こりうるリスクへの配慮や対策が不可欠です。
特に地震や津波などの災害発生時には、事前に準備をして対策しておくことで、社員の安全確保はもちろん、事業の継続に向けた行動を素早く進められます。
クロスゼロを活用すれば、災害発生時の社員の安否確認や災害時の対策をまとめた防災マニュアルなどの共有がスムーズに行えます。
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