企業の防災備蓄義務とは?求められる災害対策と法的責任を徹底解説
2023/12/01
地震や台風、洪水などの自然災害は、なかなか被害を予測するのは難しいものです。
そこで予期せぬ事態が発生した際に、従業員とその家族、そして事業の継続性を守るためには、企業の防災備蓄が不可欠です。
しかし、どの程度の備蓄が必要なのか、法的な義務はどう定められているのかについては、詳細を把握していない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、企業の防災備蓄義務について、求められる災害対策と法的責任を徹底解説します。
企業の経営者の方はもちろん、防災対策に関わる方も、ぜひ参考にしてください。
企業の防災備蓄義務とは?
防災備蓄義務の法的背景を解説
企業の防災備蓄義務については、主に大規模な災害が発生した際に、従業員の安全を確保し、事業の継続を図るために、企業が一定の防災用品を備蓄することが求められています。
法的背景としては、労働契約法に基づく安全配慮義務があり、これは災害時にも適用されるため、注意が必要です。
企業は労働者の生命や身体の安全を確保するための配慮をする義務があり、これには防災備蓄も含まれます。
例えば、東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」[外部サイト]により、企業の防災備蓄義務が課されており、従業員が安全に帰宅できない場合に備えて、飲料水や食料品、災害用トイレ、毛布などの備蓄が必要とされています。
これらの備蓄品は、災害発生時にライフラインが停止した場合に備えて保存されるもので、従業員が働く環境を整備するため、また帰宅困難者が多数生じた際に徒歩帰宅者を抑制し安全を確保するために重要です。
企業が防災備蓄義務を果たさない場合のペナルティは、条例によっては設けられていないことが多いですが、災害が発生し防災備蓄品の準備がないために従業員に死傷者が出た場合、訴訟に発展する可能性があります。
そのため、リスクマネジメントの観点からも、企業は最低限以上の備蓄をしておくことが大切です。
具体的な備蓄品としては、飲料水、非常食、応急処置用品、非常用トイレ、衛生用品などがあり、これらは従業員の人数に応じて3日分以上を備蓄することが推奨されています。
また、備蓄品の点検や更新も重要で、定期的に賞味期限の確認や内容の見直しが必要です。
企業には、これらの備蓄品を適切に管理し、災害発生時に迅速に対応できるように準備しておくことが求められています。
企業に求められる
防災管理の基本的な4つの施策
企業に求められる防災管理の基本的な4つの施策は、以下の項目です。
1.防災マニュアルの作成
企業は、災害発生時に社員が迅速かつ効果的に対応できるよう、防災マニュアルを作成する必要があります。
このマニュアルには、災害時の組織体制、情報収集・提供方法、救護、初期対応、避難方法などを含めることが大切です。
2.防災備蓄品の準備
最低でも3日分の飲料水、非常食、応急処置用品、非常用トイレ、衛生用品などの防災備蓄品を準備し、定期的に点検や更新を行うことが重要です。
3.施設の災害対応
地震や水害などの自然災害に対して、事前にできる対策を施し、被害を最小限に抑えることが求められます。
これには、建物の耐震化や防水対策などが含まれます。
4.防災訓練の実施
定期的な防災訓練を実施し、社員の防災意識を高めるとともに、災害発生時の対応を確認し、マニュアルの改善点を見つけることが大切です。
これらの基本的な取り組みは、企業が災害に備える上での最低限の要件です。
さらに、企業はこれらの基本的な取り組みを通じて、従業員や顧客の命と安全を守り、事業の継続性を確保するための体制を整える必要があります。
また、災害発生時には、地域社会への貢献や二次災害の防止にも努めることが期待されています。
このように、企業防災の取り組みは、単に法的な義務を果たすだけでなく、企業の社会的責任を果たす上でも重要な役割を担っているのです。
防災備蓄品の種類と必要量
防災備蓄品の種類と必要量については、内閣府の大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン[外部サイト]として、以下のような目安を定義しています。
- 保存水: 1人当たり9リットル(3リットル×3日分)
- 主食: 1人当たり9食分(3食×3日分)。アルファ化米、クラッカー、乾パン、カップ麺などが含まれます。
- 毛布: 1人当たり1枚。
- 乾電池・非常用電源: 必要に応じて。
- 懐中電灯: 必要に応じて。
- 衛生用品: トイレットペーパー、生理用品、マスクなど。
- 携帯ラジオ: 災害情報を得るために必要。
- 救急医療薬品類: 応急処置用の薬品やバンドエイドなど。
これらの備蓄品は、災害発生時にライフラインが停止した場合に備えて保存されるもので、従業員が働く環境を整備するため、また帰宅困難者が多数生じた際に徒歩帰宅者を抑制し安全を確保するために重要です。
企業はこれらの備蓄品を適切に管理し、災害発生時に迅速に対応できるように準備しておくことが求められています。
また、備蓄品の点検や更新も重要で、定期的に賞味期限の確認や内容の見直しが必要です。
事業継続計画(BCP)と
防災備蓄の関係
事業継続計画(BCP)と防災備蓄は、企業が災害や緊急事態に直面した際に、事業活動を維持し、復旧を早めるために重要な関係があります。
BCPは、人的資源、物的資源、情報システムの保全を含む計画で、災害時でも事業の継続性を確保することが目的です。
防災備蓄は、BCPの一環として非常に重要な要素です。
そのため、災害発生時に従業員がオフィスなどの施設内で安全に過ごすことができるように、飲料水、食料、毛布、簡易トイレなどの必要な備蓄品を準備することが求められます。
これらの備蓄品は、災害発生から3日間は「応急対策期」と呼ばれる期間に、従業員を施設内に留めておくために必要です。
東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」 により、企業に3日分の備蓄が必要であることが明示されています。
これは、BCPにおける防災備蓄が必須である理由として、企業が従業員や顧客の生命の安全を第一に考える責任があるためです。
このように、災害時の対策として、企業が日常的に防災備蓄を行うことが重要とされています。
また、BCPにおいては、災害時に事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画であり、防災備蓄はその中で必要な物資をあらかじめ整理、準備しておくことが含まれます。
そのため、定期的に見直し確認を行い、必要に応じて研修・訓練を行うこともBCPの重要な取り組みです。
企業がBCPを策定することで、災害時にも事業の継続性を確保し、社会的責任を果たすとともに、従業員の安全確保や事業の早期復旧を図ることができます。
このように、防災備蓄は、BCPの中で具体的な災害を想定し、必要な物資の備蓄を行うことで、災害発生時の対応力を高め、事業の継続を支えるための重要な要素です。
災害時の従業員の安全確保と義務
災害時における従業員の安全確保と義務については、企業が労働者に対して負う「安全配慮義務」に基づいています。
安全配慮義務とは、企業(使用者)が労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務のことです。
自然災害が発生した場合でも、この義務は免除されません。
安全配慮義務の具体的な対策として、企業が安全教育を行った管理責任者の設置や、避難訓練の実施、災害対応マニュアルの作成、情報収集、安全な場所へ労働者を誘導する(避難させる)等の対策を講じる必要があります。
これらは災害発生時の対応だけでなく、平時の対応についても含まれます。
企業の法的責任については、自然災害により労働者が被災した場合、使用者は安全配慮義務違反を問われ、損害賠償責任を負う可能性があるため注意が必要です。
また、適切な準備や処置をしなかった場合には、社会的な責任を追及され、企業としての信用を失う可能性もあるでしょう。
そこで、もし災害が発生した際に従業員に出社を命じるかどうかは、公共交通機関の運行状況や災害による死傷者の状況などを考慮して適切に判断する必要があります。
また、災害時に従業員を自宅待機させる場合には、有給休暇の取得を推奨することも検討すると良いでしょう。
東京都や大阪府など一部の自治体では、事業者に対して従業員との連絡手段の確保、避難場所や徒歩による帰宅経路の確認などを従業員に周知する責務を定めています。
また、災害後に従業員が一斉帰宅することを抑え、事業所内に3日分の飲料水や食料などを備えるようにも定めています。
防災備蓄義務の放棄がもたらすリスク
企業が防災備蓄義務を放棄すると、さまざまなリスクが生じる可能性があります。
以下にそのリスクを詳しく解説します。
従業員の安全が脅かされるリスク
防災備蓄義務を放棄した場合、災害発生時に従業員が必要な飲料水や食料、毛布などの生活必需品を手に入れることができなくなります。
これにより、従業員が二次災害に巻き込まれるリスクが高まります。
法的責任を追及されるリスク
企業は労働契約法に基づき、従業員の安全を確保するための配慮をする義務があります。
防災備蓄を怠ったことが原因で従業員に被害が生じた場合、企業は安全配慮義務違反として法的責任を問われる可能性があります。
過去には数億円から数十億円の賠償金支払い命令が下ったケースもあります。
社会的責任を放棄するリスク
企業は社会的責任を果たすためにも、防災備蓄を行うことが求められています。
災害時に従業員を守るだけでなく、社会の混乱を少しでも抑えるためにも重要です。
これを放棄することで、企業イメージやブランドを損ねるリスクがあります。
事業継続の妨げになるリスク
防災備蓄がない場合、災害発生後に事業活動を継続することが困難になる可能性があります。
従業員がオフィスから帰宅できず、事業所から動けなくなると、事業の継続に支障をきたすことになります。
条例違反となるリスク
東京都など一部の自治体では、防災備蓄義務が条例で定められており、企業に努力義務として位置付けられています。
条例に従わないことで、企業のイメージが損なわれる可能性があります。
企業の防災備蓄義務への対策は
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このように、企業が適切な防災備蓄を行うことで、従業員の安全確保はもちろんのこと、法令遵守や企業価値を高めることも可能です。
しかし、企業の防災備蓄という概念は、まだ十分に周知されていないのが現状です。
そこで、各企業の経営者や従業員がこの概念をしっかりと理解し、いつ起こるかわからない災害に備えることが大切です。
近年は、地震や台風など、一般企業に甚大な被害を及ぼす災害が目立っています。
そのため、企業が自社事業や従業員を守るために、独自の備えを行うことが重要です。
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