建設業におけるBCP対策の重要性|事業継続計画の役割とメリットを解説
2023/12/26
災害や感染症などの危機的な状況に直面した場合に、事業を継続させられるかどうかは、企業にとって重要な課題です。
特に、建設業は社会インフラの維持や復旧に貢献するとともに、多くのステークホルダーとの関係を持つため、BCP(事業継続計画)の策定と実行が求められます。
それだけに、建設業におけるBCP対策は、他の業種に比べて重要度が高いと言えるでしょう。
そこで今回は、建設業におけるBCP対策の重要性と、事業継続計画の役割とメリットを解説します。建設業に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
BCPとは?
建設業におけるBCP対策の必要性
BCP(Business Continuity Plan)は、事業継続計画とも呼ばれ、自然災害や感染症などの緊急事態が発生した場合に、重要な業務を中断させない、または中断しても目標とする時間や稼働率で復旧させるための計画のことを指します。
建設業におけるBCP対策の必要性
BCP対策とは、災害やパンデミックなどの非常時に事業を継続するための計画のことです。
建設業でBCP対策が重要視されるのは、以下のような理由があるからです。
建設業は、非常時にインフラの復旧や仮設住宅の建設など、社会的な使命を果たす業種です。そのため、事業の停止や遅延は被災者や地域に大きな影響を与えます。
BCP対策を行うことで、非常時にも事業の維持や早期復旧が可能となり、損失を最小限に抑えることが可能です。また、顧客や取引先、株主や金融機関などからの信頼も高まるでしょう。
BCP対策を行うには、優先事業の選定や被害の分析、事前案の策定、計画の策定、社内周知などのステップが必要となります。また、コストや想定通りに機能しない可能性などの問題点もあります。そこで、平常時のうちに、十分な対策を始めることが重要です。
このように、建設業におけるBCP対策は、自社の事業継続だけでなく、社会全体の早期復興にも貢献するものです。
そのため、建設業のBCP策定には、通常業務の継続と応急業務への対応の両方を考慮する必要があると言えるでしょう。
建設業における
BCP対策の現状と課題
BCP対策とは、大規模災害やパンデミックなどの想定外の事態が発生した場合に、事業を継続させるための計画や対策をあらかじめ講じておくことです。
建設業は、災害時に緊急復旧や復興工事の需要が高まるとともに、自社の施設や人員、資機材などに被害が及ぶ可能性が高い業種です。
そのため、BCP対策の必要性は高く、国土交通省や地方整備局などが認定制度やガイドラインを提供しています。
しかし、BCP対策の策定率は、大企業では70.8%、中小企業では40.2%と、まだまだ低い水準にとどまっているのが現状です。
策定の課題としては、策定に必要なノウハウやスキルの不足、人手や時間の確保の困難さ、策定のコストや効果の見えにくさなどが挙げられます。
国土交通省の認定制度とメリット
国土交通省の認定制度とは、建設会社における災害時の事業継続力を評価し、適合した会社を認定する制度です。
関東地方整備局が平成21年から開始し、その後、中部地方整備局や九州地方整備局などでも導入されています。
認定制度のメリットとしては、認定を受けた会社が自社の事業継続力をアピールできるとともに、国土交通省や地方整備局の発注する工事において、事業継続力の高い会社として優遇される可能性がある点です。
また、認定制度に参加することで、自社のBCP策定の動機づけや改善の機会にもなるでしょう。
建設業のBCP策定率と要因
上記のように、全ての産業を含めたBCP策定率は、大企業で70.8%、中小企業で40.2%となっています。全体的に見ると、ここ数年の間にBCPに対する理解が深まってきていると考えられますが、まだまだ低い水準にとどまっているのが現状です。
さらに業種別に見てみると、下記のグラフにあるように、建設業はBCP策定率が22.9%と、全産業の平均(28.8%)を下回っており、逆に金融業などの業種で高い傾向にあります。
BCP策定率の低さの要因としては、策定の課題と同様に、策定に必要なノウハウやスキルの不足、人手や時間の確保の困難さ、策定のコストや効果の見えにくさなどが考えられます。
また、建設業は現場での作業が多く、リモートワークやペーパーレス化などのIT化が進んでいないことも、BCP策定の障壁になっている可能性があると言えるでしょう。
災害時の事業継続力の
評価方法とポイント
災害時の事業継続力の評価方法としては、国土交通省や地方整備局が提供する認定制度やガイドラインを参考にできるでしょう。
例えば、「国土交通省 関東地方整備局 統括防災グループ(防災室・災害対策マネジメント室)」のガイドラインなどを参考に、自社の地域のガイドラインを確認するのがおすすめです。
また、これらの評価要領では、重要業務の選定と目標時間の把握、災害時の対応体制、対応拠点の確保、情報発信・情報共有、人員と資機材の調達、訓練と改善の実施などの項目について、書類評価と面接評価を行っています。
災害時の事業継続力の評価のポイントとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 事業継続計画(BCP)を策定し、定期的に見直しや改善を行うこと
- 災害時に重要な業務を優先的に行えるように、業務の分類や目標時間を明確にすること
- 災害時に対応できる組織や役割分担を決め、連絡体制や情報共有の方法を確立すること
- 災害時に事業を継続できる拠点や備品を確保し、バックアップや分散化の対策を行うこと
- 災害時に必要な人員や資機材を確保できるように、協力会社や関係機関との連携を強化すること
- 災害時の事業継続力を高めるために、訓練やシミュレーションを実施し、問題点や改善点を洗い出すこと
建設業における
BCP対策の具体的な方法と事例
建設業に携わる企業がBCPを策定・運用することで、被害の最小化や事業の早期復旧を図ることが可能です。
そこで、以下で紹介するステップ6つと、それぞれのステップにおけるチェックリストを参考にして、自社に合ったBCPを策定すると良いでしょう。
BCP策定のステップ6つと
チェックリスト
ステップ1:
事業継続力強化の目的の検討
- 事業継続の重要性や必要性を明確にする
- BCPの策定・運用に関する基本方針や体制を決める
- BCPの範囲や対象となるリスクを特定する
ステップ2:
中核事業、復旧優先事業の選定
- 事業の内容や特性を分析し、中核事業と復旧優先事業を選定する
- 中核事業と復旧優先事業に関連する業務や資源を洗い出す
ステップ3:
重要業務の特定と目標復旧時間の設定
- 業務中断の影響度や時限性を評価し、重要業務を特定する
- 重要業務ごとに目標復旧時間を設定する
- 重要業務の復旧に必要な経営資源を確保する
ステップ4:事前対策の検討
- 重要業務の復旧に向けて、事前に行うべき対策を検討する
- 事前対策の内容や費用、効果、実施時期などを整理する
- 事前対策の実施状況や効果をモニタリングする
ステップ5:BCPの策定
- BCPの様式や内容を決める
- BCPの文書化や配布を行う
- BCPの周知や教育を行う
ステップ6:BCPの運用
- BCPの訓練やテストを行う
- BCPの点検や評価を行う
- BCPの見直しや更新を行う
建設業における
BCP対策の具体的な方法と事例
建設業におけるBCP対策の事例としては、以下のようなものがあります。
災害対策の体制と備品を整備すること
- 災害対応体制や連絡体制を明確にする
- 災害時に必要な備品や物資を備蓄する
- 災害時に活用できる施設や設備を確保する
- 災害時に安全な避難場所や経路を確認する
BCP訓練の実施と改善を行うこと
- 災害シナリオに基づいて、BCPの発動や重要業務の復旧を模擬する
- 訓練の結果や課題を分析し、改善策を検討する
- 訓練の内容や頻度を見直し、BCPの効果を高める
BCPの見直しと更新を繰り返すこと
- 組織や事業の変化、新たなリスクの発見、テストや訓練からのフィードバックなどを元に、BCPの精度を高める
- BCPの見直しや更新のタイミングや方法を決める
- BCPの見直しや更新の結果を周知し、共通認識を持つ
BCP策定の成功事例と
そのポイント
次に、建設業界でBCP策定に成功している大手・中堅企業の事例とポイントを解説します。
事例1:大手建設会社の事例
ある大手建設会社では、BCPの策定にあたって、事業部門ごとにBCPチームを設置し、各部門の特性やニーズに応じた計画を作成しました。
BCPの運用にあたっては、定期的に訓練やテストを実施し、その結果をもとにBCPの改善を行っています。
BCPの成功ポイントとしては、事業部門の自主性と責任を重視し、BCPの策定・運用に関するノウハウや情報を共有することにあると考えています。
事例2:中堅建設会社の事例
ある中堅建設会社では、BCPの策定にあたって、災害リスクや事業影響度を分析し、重要業務と目標復旧時間を明確にしました。
BCPの運用にあたっては、事前対策として、災害対応体制や連絡体制の整備、備品や物資の備蓄、代替施設や設備の確保などを行っています。
BCPの成功ポイントは、事業継続に必要な経営資源を確保し、災害時に迅速かつ効果的に対応できるようにすることだと考えています。
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