事業継続力強化計画とは?BCPとの違いや魅力、具体的な記入例まで詳しく解説
2024/02/09
事業継続力強化計画とは、防災や減災に対する企業の取り組みをまとめた計画のことです。
BCP(事業継続計画)と似ている点が多く、BCPの簡易版として認識されることがほとんどです。
事業継続力強化計画はBCPと異なりメリットや魅力が多く、税制優遇や金融支援を受けたい中小企業は作成を検討するのがおすすめです。
今回は、事業継続力強化計画の概要や魅力、具体的な記載項目を詳しく解説します。
事業継続力強化計画の作成を検討している人や、自社の防災について考えている人はぜひ参考にしてください。
事業継続力強化計画って何?
BCPとの違いや概要を解説
事業継続力強化計画はよくBCP(事業継続計画)と間違われます。
具体的に、2つの違いについて考えたことはありますか?
ここでは事業継続力強化計画とBCP(事業継続計画)の概要や違いを解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事業継続力強化計画とは
独立行政法人 中小企業基盤整備機構によると、事業継続力強化計画の定義は以下のとおりです。
事業継続力強化計画ができたきっかけは、2019年5月29日に成立、同年7月16日より施行している「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律(以下、中小企業強靱化法)」です。
中小企業強靱化法は、自然災害や感染症などの影響を踏まえて、中小企業の防災や減災対策を促進するために策定されました。
2020年10月1日には感染症対策に関する事業継続力強化計画の認定も開始しており、新型コロナウイルス感染などの影響を受けても、企業や組織が災害や緊急事態に備え、事業を継続できるような取り組み支援をさらに強化しています。
BCP(事業継続計画)とは
事業継続力強化計画と似た言葉にBCP(事業継続計画)があります。
中小企業庁によると、BCP(事業継続計画)の定義は以下のとおりです。
つまり、BCP(事業継続計画)も事業継続力強化計画と同じく、災害やテロ攻撃などの発生時に自社や従業員を守るための取り組みということが分かります。
事業継続力強化計画とBCPの違い
上でも説明したとおり、事業継続力強化計画とBCPは災害発生時に自社を守るための取り組みという点は同じです。
では、何が違うのでしょうか。
ここでは事業継続力強化計画とBCPの違いを表にまとめました。
事業継続力強化計画 | BCP | |
---|---|---|
国からの認定 | あり | なし |
関連する法律 |
中小企業の事業活動の継続に資するための 中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律 (中小企業強靱化法) |
なし |
位置づけ | BCPの簡易版 |
事業継続力強化計画 よりも詳細かつ具体的 |
作成のハードル | 低い | 高い |
特定の書式 | あり | なし |
事業継続力強化計画は、BCPよりもより広範囲かつ基礎的な内容で構成されている点が特徴です。
たとえば、BCPを策定する場合に注力すべきポイントは、大きく分けて以下の2点です。
- 自社存続に関わる重要な業務となる『中核事業』を特定する
- 中核事業を復旧させる目標時間を設定する
BCPは主に復旧や対応策に焦点を当てる一方、事業継続力強化計画は危機を乗り越え、事業の継続と発展を図るための包括的な対策を検討します。
BCPをすでに策定している企業であれば、事業継続力強化計画の作成はスムーズに進むでしょう。
事業継続力強化計画を作成する
3つの魅力を解説
事業継続力強化計画はBCPと比べて作成のハードルが低い点もメリットの一つですが、他にも事業を拡大する上での魅力が詰まっています。
今回は事業継続力強化計画を作成する3つの魅力を紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
税制優遇が受けられる
事業継続力強化計画を策定する企業には、税制面での優遇措置が適用されることがあります。
税制優遇の内容は以下のとおりです。
対象 | 青色申告書を提出する中小企業者等 |
---|---|
内容 |
認定計画に従って取得した一定の設備等に対して取得価額の20%の特別償却 (令和5年4月1日以後に取得等をする対象設備は特別償却18%) |
対象期間 |
事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画の認定を受けた日から 同日以後1年を経過する日 |
対象装置 | 自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、制震・免震装置など |
事業継続力強化計画を策定するだけで対応設備の費用を抑えられるため、企業も積極的に防災対策などに取り組めるでしょう。
補助金や地方自治体からの支援が充実している
事業継続力強化計画を進める企業は、補助金や地方自治体からの支援を受けることができます。
主な支援内容は以下のとおりです。
- 日本政策金融公庫による低利融資
- 中小企業信用保険法の特例
- 中小企業投資育成株式会社法の特例
- 日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
貸付金の増加や保証限度額の引き上げによって、中小企業でも事業の拡大に挑戦しやすくなります。
事業継続力強化計画の策定がきっかけで、新しい事業に挑戦できるチャンスを手に入れられる点は大きなメリットといえるでしょう。
低利融資や保証枠拡大などの金融支援を得られる
金融機関は事業継続力強化計画の策定を支援する企業に対して、低利融資や保証枠の拡大などの金融支援を提供することがあります。これにより、企業は計画の実現をよりスムーズに進めることができます。
事業継続力強化計画の具体的な
記載項目を5ステップで解説
事業継続力強化計画の具体的な作成方法は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が事業継続力強化計画の概要や作成指針を発表しています。
今回は、事業継続力強化計画策定の手引きに記載してある事業継続力強化計画の具体的な記載項目を5ステップで解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1:事業継続力強化の目的の検討
独立行政法人 事業継続力強化計画を策定する最初のステップは、計画の目的を明確に検討することです。企業が災害や緊急事態に備える理由や目標を定義し、事業継続の方針を確立しましょう。
具体的な事例を挙げると、売上の維持やサービス提供の停止を最小限に抑えることや、社員の安全や生活を守るなどです。
ステップ2:災害等のリスクの確認・認識
次に、災害やその他のリスクを確認・認識を行います。
有限会社エバラ製作所の事業継続力強化計画には以下のように記載しています。
自然災害、人為的な事故、サプライチェーンの中断など、事業に影響を及ぼす可能性のあるリスクを洗い出し、発生確率や影響度を想定しましょう。
ステップ3:初動対応の検討
ステップ3では、災害が発生した際の初動対応策を検討します。
素早く的確に行動できるかどうかが事業継続の鍵となるため、具体的な内容を決めておきましょう。
災害発生直後にやることとして、避難・安否確認・設備の緊急停止・取引先への連絡など、複数の作業項目に分類し、その具体的な行動をさらに細かく決めていきます。
適切な避難手順や従業員の安否確認手段、必要な設備の利用計画などを具体的に定めることで、初動での混乱を防げるでしょう。
ステップ4:ヒト、モノ、カネ、情報への対応
具体的な初動の対応が決まれば、従業員(ヒト)、物資(モノ)、資金(カネ)、情報に対する対応策をさらに明確にしていきます。
上で説明した初動対応の内容を従業員(ヒト)、物資(モノ)、資金(カネ)、情報に分けた際、対策が足りていないものを見つけることが大切です。
災害発生時に計画通りの行動をするためにも、必要な設備や道具を事前に揃えておきましょう。
ステップ5:平時の推進体制
災害発生時の対策を具体的に決定した後は、事業継続力強化計画を平時から推進するための組織体制や取り組みを決めましょう。
平時の推進体制で大切な取り組みは主に以下のとおりです。
- 継続的なトレーニング・避難訓練の実施
- 定期的な計画の見直し
- 社内コミュニケーションの強化
- 社内全体への事業継続力強化計画の内容の教育
組織全体で事業継続力強化計画の内容を理解している状態を保っておけば、災害発生時も社員一人ひとりが適切な判断のもと行動できるでしょう。
まとめ
今回は事業継続力強化計画について、BCP(事業継続計画)との違いや作成するメリット、具体的な記載項目や記入例を解説しました。
事業継続力強化計画はBCP(事業継続計画)よりも作成のハードルが低いだけでなく、税制優遇や補助金の獲得などでもメリットがあります。
実際に事業継続力強化計画を作成する際は、事業継続力強化計画策定の手引きを参考に細かい箇所までチェックを進めましょう。
作成した事業継続力強化計画は、会社全体で共有するのはもちろん、説明の場を開いて全社員が内容を把握しておくことが重要です。
事業継続力強化計画の管理や閲覧は、総合防災アプリ「クロスゼロ」がおすすめです。ファイル共有やクラウド上の閲覧、チャット機能による社員とのコミュニケーションも可能です。
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