建設業における請求書はどうする?|記載項目と作成の注意点
2025/10/23
建設業界では、工事の進捗に応じて複数回にわたる請求書発行が一般的ですが、適切な記載項目や作成方法に悩む方も多いのではないでしょうか。
請求書は取引先との金銭のやり取りを明確化する重要な書類であり、記載漏れや不備があると支払いの遅延やトラブルの原因となる可能性があります。
本記事では、建設業における請求書の基本的な仕組みから必須記載項目、インボイス制度への対応、作成時の注意点まで、実務で役立つ情報を詳しく解説いたします。
適切な請求書を作成し、円滑な資金回収と業務効率化を実現していきましょう。
建設業の請求書作成における課題解決のために、業務効率化を支援するツールの活用も重要です。
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建設業における
請求書の基本的な仕組み
建設業における請求書は、一般的な業種の請求書と基本的な構造は同じですが、工事の特性に合わせた独特の運用方法があります。
まず、請求書の基本的な定義と建設業特有の特徴について理解を深めていきましょう。
請求書の定義と法的位置付け
請求書とは、取引先に対して料金の支払いを求めるための書類です。
日本の法律上、請求書の発行は法的義務ではありませんが、商慣習として広く用いられており、取引の透明性の確保と支払い条件の明確化において重要な役割を果たしています。
請求書の形式に法的な決まりはなく、自由形式での作成が可能です。
ただし、適切な取引記録として機能させるためには、後述する必要項目を漏れなく記載することが求められます。
建設業界においても、この基本的な位置付けは変わりません。
しかし、工事代金の支払いに関しては建設業法による規制があり、代金は原則として1か月以内、可能な限り短期間での支払いが定められている点に注意が必要です。
また、請求書は会計処理や税務申告の根拠資料としても使用されるため、正確性と網羅性の確保が不可欠です。
工事請求書の特徴と発行タイミング
建設業における請求書の最大の特徴は、工事の進捗に応じて複数回発行されることです。
一般的な商品販売やサービス提供とは異なり、建設工事は長期間にわたって実施されるため、段階的な代金回収が行われます。
典型的な発行タイミングとしては、着手金(契約時)、中間金(工事進捗に応じて)、最終金(工事完成時)の3回に分けて請求書が発行されることが多く、工事規模や契約条件によってはより細分化される場合もあります。
このような段階的な請求により、建設業者は工事期間中の資金繰りを安定化させることができます。
一方で、発注者側も工事の進捗状況に応じた支払いができるため、両者にとってメリットのある仕組みとなっています。
各段階での請求書には、該当する工事内容と金額を明確に記載し、全体の工事計画の中での位置付けを示すことが重要です。
また、前回までの請求・入金状況との整合性を保つため、累計金額や残額の管理も必要になります。
工事請求書の特徴として、使用材料や作業内容が多岐にわたることも挙げられます。
鉄筋、コンクリート、木材などの材料費から、各種作業の人工代まで、詳細な内訳を記載する必要があるため、一般的な請求書と比較して記載項目が複雑になる傾向があります。
さらに、公共工事の場合は発注機関が定める書式に従う必要があったり、民間工事でも元請け・下請けの関係によって特定の記載方法が求められたりすることもあります。
建設業の請求書に記載する
必須項目
建設業の請求書において正確な記載が求められる項目について、具体的な記載方法とポイントを詳しく解説いたします。
これらの項目を適切に記載することで、支払い処理の円滑化と後々のトラブル防止につながります。
宛先情報の正確な記載方法
請求書の宛先は、正式な会社名・部署名・担当者名を正確に記載することが基本です。
個人宛の場合は「様」、法人宛の場合は「御中」を使い分けます。
建設業では、発注者と実際の請求先が異なる場合も多いため、契約書や発注書を確認して正確な宛先を把握することが重要です。
例えば、親会社が発注者であっても、実際の支払いは子会社が行う場合や、工事現場の担当部署と経理部署が異なる場合などがあります。
このような場合は、事前に請求書の宛先と送付先を確認し、必要に応じて複数部作成することも検討しましょう。
宛先情報には、郵便番号、住所、電話番号も含めることが望ましいとされています。
特に初回取引や不定期取引の場合は、連絡先の情報を詳細に記載することで、問い合わせや確認作業がスムーズに行われます。
また、担当者が変更になっている可能性もあるため、請求書発行前に最新の担当者情報を確認することをお勧めします。
請求書番号と管理体系
請求書番号は、請求書の上部に目立つように記載し、発行者・受領者双方の管理や入金確認、問い合わせ対応に活用します。
建設業では複数の工事が同時並行で進行することが多いため、工事別・期間別に体系的な番号付けを行うことが重要です。
例えば、「2024-A工事-001」のように、年度・工事名・連番を組み合わせた番号体系を構築することで、後から請求書を検索する際の利便性が大幅に向上します。
請求書番号の管理では、欠番や重複を防ぐためのルールづくりも必要です。
手作業で番号を付与する場合は管理表を作成し、システムを使用する場合は自動採番機能の設定を適切に行います。
また、修正版や再発行の際の番号付けについても、事前にルールを定めておくと混乱を避けられます。
「元番号-修正1」のような形式で管理することが一般的です。
請求内容の詳細記載
請求内容は、工事の品目・単価・数量を具体的かつ詳細に記載します。
建設業特有の要素として、材料費と労務費を明確に分けて記載することが求められる場合が多くあります。
材料については、鉄筋であれば「kg」、コンクリートであれば「m³」といった適切な単位で数量を表示し、労働については時間単位や日単位、または一式での計上かを明確に示します。
品目の記載では、「基礎工事一式」のような大まかな表現よりも、「鉄筋コンクリート基礎工事(掘削・配筋・型枠・打設含む)」のように具体的な作業内容を明示することが重要です。
これにより、発注者側での承認プロセスが円滑になり、後日の問い合わせや検証作業も効率化されます。
また、追加工事や変更工事がある場合は、当初契約分と明確に区分して記載することも必要です。
単価設定については、人工代の計算方法を統一し、地域の相場や契約条件に基づいた適正な価格設定を行います。
特に公共工事の場合は、積算基準に準拠した単価設定が求められることもあるため、該当する場合は基準となる資料を確認しておきましょう。
数量については、実際の施工数量を正確に計測・記録し、契約数量との差異がある場合はその理由も併せて記載することが望ましいです。
日付・支払期日・消費税の記載
請求書の発行日は、実際に請求書を作成・送付する日付を記載します。
作成日と発行日が異なる場合は、発行日を優先して記載することが一般的です。
また、取引先の締め日を事前に確認し、締め日に間に合うよう計画的に発行することが重要です。
建設業では月末締めの翌月末払いが多いですが、取引先により異なるため、契約時に支払い条件を明確に確認しておく必要があります。
支払期日については、双方で合意した日付を明確に記載します。
建設業法では代金の支払いは原則1か月以内、可能な限り短期間とされているため、この規定に準拠した期日設定を行います。
支払期日が土日祝日に該当する場合の取り扱いについても、事前に取引先と調整しておくことをお勧めいたします。
一般的には、翌営業日が支払期日とされることが多いです。
消費税については、標準税率(10%)と軽減税率(8%)を適用する場合は分けて記載する必要があります。
建設業では基本的に標準税率が適用されますが、一部の資材や設備で軽減税率対象となるものがある場合は注意が必要です。
消費税額は小計に対して計算し、1円未満の端数処理方法についても統一したルールを適用します。
一般的には、切り捨て・四捨五入・切り上げのいずれかで処理しますが、取引先との合意に基づいて決定します。
発行者情報と振込先の明記
発行者情報では、会社名・住所・電話番号・FAX番号・メールアドレスなどの連絡先を漏れなく記載します。
建設業許可番号を取得している場合は、許可番号も併せて記載することで信頼性を高めることができます。
代表者名や担当者名についても記載し、請求に関する問い合わせ窓口を明確にしておくことが重要です。
複数の担当者がいる場合は、主担当者を明示するか、代表連絡先を設定しておきます。
振込先情報は、銀行名・支店名・口座種別(普通・当座)・口座番号・口座名義(カタカナ)を正確に記載します。
銀行コード・支店コードも併記することで、振込処理の効率化につながります。
また、振込手数料の負担についても明記することが望ましいです。
一般的には「振込手数料はお客様負担でお願いいたします」といった文言を追加します。
複数の銀行口座を持っている場合は、工事別や取引先別に使い分けることも可能ですが、管理の複雑化を避けるため、原則として統一した口座を使用することをお勧めいたします。
口座情報に変更がある場合は、事前に取引先に通知し、新しい請求書から新口座情報を記載するようにします。
変更の際は、旧口座情報との混同を避けるため、変更日を明記することも重要です。
建設業の請求書作成時の注意点
建設業における請求書作成では、一般的な請求書作成時の注意点に加えて、業界特有の法的制約や制度対応が求められます。
ここでは、実務上重要となる注意点について詳しく解説いたします。
インボイス制度への対応
2023年10月から開始されたインボイス制度では、適格請求書発行事業者の登録番号を請求書に必ず記載する必要があります。
建設業者が課税事業者である場合は、事前に税務署で適格請求書発行事業者の登録を行い、登録番号を取得しておくことが必須です。
インボイス対応の請求書には、事業者の氏名または名称、取引年月日、取引内容、税率区分ごとの合計額、適格請求書を交付する事業者の氏名または名称および登録番号を明記する必要があります。
建設業では下請工事が多階層にわたることが多いため、各段階でのインボイス対応が重要になります。
免税事業者との取引がある場合は、インボイス制度の影響により仕入税額控除ができなくなることも考慮し、契約条件の見直しが必要になる場合もあります。
また、既存のテンプレートやシステムをインボイス制度に対応させるため、必要な項目の追加や記載方法の変更を行う必要があります。
送付方法と法的制約
請求書の送付については、信書に該当するため普通郵便または信書便を使用する必要があります。
宅急便やメール便での送付は郵便法違反となり、罰則の対象となる可能性があるため注意が必要です。
信書便としては、日本郵便の普通郵便のほか、佐川急便の飛脚特定信書便、日本通運のペリカン便などが利用可能です。
送付方法を選択する際は、配達の確実性と費用のバランスを考慮して決定しましょう。
郵送時には、請求書を三つ折りにして封筒に入れる際、表題「請求書」が最初に目に入るように折り方を工夫します。
また、送付状を同封することで、送付ミスの防止と丁寧な印象を与えることができます。
メールでの送付を希望する場合は、事前に取引先にメール送付の可否と電子印鑑の要否を確認します。
メール送付時は、PDFや画像など改ざんしにくい形式を使用し、本文には送付状と同様の内容を記載することが重要です。
建設業特有の課題と対策
建設業における請求書管理の課題として、工事ごとの請求書振り分けと注文・工種との紐づけが挙げられます。
複数の工事が並行して進行する中で、各工事の請求状況を正確に把握し、重複請求や請求漏れを防ぐための仕組みづくりが重要です。
また、出来高査定や立替経費との相殺処理など、建設業特有の会計処理に対応した請求書作成・管理体制の構築も必要になります。
これらの課題に対する対策として、工事台帳と請求書を連動させた管理システムの導入や、工事進捗に応じた請求スケジュールの可視化などが効果的です。
手作業による管理では限界があるため、業務の規模に応じてITツールの活用を検討することをお勧めいたします。
さらに、請求書の承認フローを明確化し、複数人でのチェック体制を構築することで、記載ミスや計算間違いを防ぐことができます。
特に金額の大きい工事では、段階的な承認プロセスを設けることが重要です。
公的機関向けの工事では、特定の書式や記載方法が要求される場合があります。
これらの要件を事前に確認し、必要に応じて専用のテンプレートを作成しておくことで、請求書作成の効率化と正確性の向上を図ることができます。
また、建設業では季節や天候による工事の進捗変動があるため、請求スケジュールの調整や変更に柔軟に対応できる体制を整えておくことも重要です。
建設業における請求書作成の効率化には、現場での正確な情報収集と管理が不可欠です。
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建設業の効率的な
請求書作成・管理のための方法
建設業における請求書作成・管理業務の効率化は、企業の生産性向上と競争力強化において重要な要素です。
ここでは、実践的な効率化手法とデジタル化の活用方法について詳しく解説いたします。
テンプレートの活用
請求書作成の効率化において、標準化されたテンプレートの活用は最も基本的かつ効果的な方法です。
Excelを使用したテンプレートでは、摘要・数量・単位・単価・金額を入力するだけで小計・消費税・合計が自動計算される機能を組み込むことができます。
建設業向けのテンプレートには、工事名・工期・施工場所などの建設業特有の項目を予め設定しておくことで、入力作業の効率化と記載漏れの防止が可能になります。
インボイス制度に対応したテンプレートでは、適格事業者番号の入力欄に加えて、軽減税率(8%)と標準税率(10%)に分けた税額計算機能を搭載することが重要です。
建設業では基本的に標準税率が適用されますが、一部材料で軽減税率対象となる場合に備えて、両方の税率に対応できる設計にしておくことをお勧めいたします。
また、テンプレートには会社のロゴや統一されたデザインを採用することで、ブランドイメージの向上と書類の信頼性確保にもつながります。
テンプレートの管理では、バージョン管理を適切に行い、制度変更や様式変更に対応した最新版を常に使用できる体制を整えます。
複数の担当者が使用する場合は、共有フォルダでの一元管理や、マスターテンプレートからのコピー使用などのルールを設定しておくことが重要です。
さらに、工事種別や取引先別に特化したテンプレートを用意することで、より効率的な請求書作成が可能になります。
例えば、土木工事用・建築工事用・設備工事用といった分類や、官公庁向け・民間企業向けといった分類でテンプレートを使い分けることが効果的です。
デジタル化による業務効率化
請求書作成・管理のデジタル化は、作業時間の短縮と正確性の向上を同時に実現する重要な取り組みです。
クラウド型の請求管理システムを導入することで、どこからでもアクセス可能な請求書管理環境を構築できます。
特に建設業では現場事務所と本社での情報共有が重要になるため、リアルタイムでの情報同期機能を持つシステムの活用が効果的です。
これにより、現場での作業実績を即座に請求書に反映させることが可能になります。
デジタル化のメリットとして、請求書の自動作成機能、送付状況の管理、入金確認の自動化などが挙げられます。
また、過去の請求データの検索・分析機能により、取引先別の請求傾向や季節変動の把握も可能になります。
さらに、電子帳簿保存法に対応したシステムを選択することで、請求書の電子保存要件を満たし、紙での保管コストと管理負担を削減することができます。
システム選定時には、建設業の業務フローに適した機能を重視することが重要です。
工事台帳との連携、出来高管理、複数工事の一括請求機能などは、建設業における請求管理で特に有用な機能です。
また、既存の会計システムや工事管理システムとの連携可能性も考慮し、データの重複入力を避けることで業務効率化の効果を最大化できます。
導入前には試用期間を設けて、実際の業務での使い勝手を確認することをお勧めいたします。
建設業2024年問題への対応
働き方改革関連法による時間外労働上限規制の適用により、建設業でも限られた時間での効率的な業務遂行が求められています。
請求書の作成や、やり取りにかけられる時間も制約される可能性があるため、これまで以上に効率化が重要になります。
特に月末・月初の請求書作成・送付業務が集中する期間では、残業時間の上限に影響を与える可能性があるため、計画的な業務分散と効率化が必要です。
2024年問題への具体的な対応策として、請求書作成の自動化・テンプレート化の推進、電子化による送付作業の効率化、承認プロセスの簡素化などが有効です。
また、請求書に関する問い合わせ対応時間の短縮のため、記載内容の標準化と明確化も重要な取り組みとなります。
さらに、従業員のスキル向上による作業効率化も重要です。
新しいシステムやツールの操作研修、請求書作成に関する業務マニュアルの整備により、担当者による作業時間のばらつきを減らすことができます。
人手不足が深刻化する中で、請求書関連業務の属人化を避けることも重要な課題です。
担当者によって業務の質に差が出ない体制を構築し、繁忙期や担当者の不在時でも業務が滞らないような仕組みづくりが求められます。
また、取引先との調整により、請求書の提出期限や支払い条件の最適化を図ることも、業務効率化に寄与する取り組みとして検討する価値があります。
月末集中を避けるための分散請求や、電子的な授受への移行などは、双方にとってメリットのある改善策となる可能性があります。
まとめ
建設業における請求書は、工事の特性に応じた段階的な発行と詳細な内容記載が求められる重要な書類です。
宛先・請求書番号・請求内容・日付・支払期日・消費税・発行者情報・振込先といった必須項目を漏れなく記載することで、円滑な代金回収と取引先との良好な関係維持が実現できます。
インボイス制度への対応や信書便による送付など、法的制約を遵守しながら、テンプレートの活用やデジタル化により業務効率化を進めることが現代の建設業には不可欠です。
特に建設業2024年問題を踏まえ、限られた時間の中で正確かつ効率的な請求書作成・管理体制を構築することが、企業の競争力向上につながる重要な取り組みとなります。
これらの課題解決には、現場での正確な情報収集と効率的な管理が基盤となります。
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