建設業法とは?|主なルールと違反時の罰則を分かりやすく解説
2025/10/23
建設業法は、建設業界の健全な発展と公正な取引秩序の確保を目的とした重要な法律です。
建設工事の請負に関わる全事業者は、この法律に基づく各種ルールを遵守する必要があり、違反した場合には厳しい罰則が科されます。
本記事では、建設業法の基本的な仕組みから主要なルール、そして違反時の罰則まで、建設業に関わる方が知っておくべき重要なポイントを分かりやすく解説します。
適切な法令遵守により、安心して事業を継続できるよう、必要な知識を身につけていきましょう。
建設業における法令遵守と業務効率化は密接な関係にあります。
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建設業法とは?
基本的な概要と制定背景
建設業法は、建設業の適正な運営を確保し、発注者の利益を保護するとともに、建設工事の適正な施工を確保することを目的とした法律です。
昭和24年(1949年)に制定されて以来、社会情勢の変化に応じて度重なる改正が行われ、現在の建設業界の基盤となる重要な法的枠組みを構築しています。
この法律は単なる業界規制にとどまらず、国民の生活基盤である建設工事の品質確保と建設業界全体の健全な発展を図る公共的な役割を担っています。
建設業法の制定背景には、戦後復興期から高度経済成長期にかけて発生した建設工事に関する数多くのトラブルがありました。
当時は建設業者の技術力不足や資金力の問題、さらには不適切な契約慣行などが原因で、工事の遅延や品質不良、代金不払いなどの問題が頻発していたのです。
こうした状況を受けて、建設工事の適正な施工と公正な取引秩序の確立を図るため、建設業法が制定されることとなりました。
建設業法が対象とする範囲は非常に広く、土木工事業から建築工事業、電気工事業、管工事業など29の業種が定められています。
また、工事の規模によって軽微な建設工事を除き、建設工事を請け負う事業者は建設業許可の取得が義務付けられており、この許可制度が建設業法の中核をなしています。
さらに、元請業者と下請業者双方の保護、適正な契約関係の構築、技術者の配置義務など、建設工事に関わる様々な局面において詳細なルールが定められているのです。
建設業法の根本的な理念は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進することにより、公共の福祉の増進に寄与することにあります。
この理念は、単に業界内の秩序維持だけでなく、社会全体の利益増進という視点から建設業を位置づけており、建設業に従事する全ての関係者が理解すべき重要な概念となっています。
建設業法の主なルールと規制内容
建設業法には、建設業を営む上で遵守すべき多岐にわたるルールが定められています。
これらのルールは相互に関連しながら、建設工事の適正な施工と公正な取引環境の実現を目指しています。
主要な規制内容として、建設業許可制度、請負契約に関するルール、技術管理体制の確保、下請保護制度などが挙げられ、それぞれが建設業界の健全な発展に重要な役割を果たしています。
建設業許可制度について
建設業許可制度は、建設業法の中でも最も基本的かつ重要な制度の一つです。
原則として、建設工事を請け負う事業者は建設業許可を取得する必要があり、軽微な建設工事(建築一式工事の場合は1件の請負代金が1,500万円未満、その他の工事は500万円未満)を除き、無許可営業は禁止されています。
許可は業種ごとに取得する必要があり、一般建設業許可と特定建設業許可の2つの区分に分かれています。
一般建設業許可は、下請代金の総額が4,000万円未満(建築一式工事の場合は6,000万円未満)の工事を請け負う場合に必要となる許可です。
一方、特定建設業許可は、これを超える金額の下請契約を行う場合に必要となる許可で、より厳格な要件が課せられています。
許可を取得するためには、経営業務管理責任者の設置、専任技術者の配置、財産的基礎、誠実性、欠格要件に該当しないことなど、5つの要件をすべて満たす必要があります。
建設業許可は5年ごとに更新が必要であり、許可取得後も毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届の提出が義務付けられています。
また、商号や営業所の所在地、役員の変更など、許可申請事項に変更が生じた場合には、変更届の提出が必要となります。
これらの手続きを怠ると、後述する行政処分の対象となる可能性があるため、適切な管理が求められます。
請負契約に関するルール
建設業法では、建設工事の請負契約について詳細なルールが定められています。
これらのルールは、発注者と請負者双方の利益を保護し、適正な契約関係を構築することを目的としています。
契約書面の作成・交付義務、契約内容の適正化、不当な契約条件の排除などが主要なポイントとなっています。
請負契約書には、工事内容、請負代金額、工事着手時期および完成時期、工事を施工しない日の定めがある場合はその内容、請負代金の支払時期および支払方法など、建設業法第19条で定められた14項目の記載が義務付けられています。
この契約書面は、契約成立後遅滞なく相手方に交付する必要があります。
また、一定金額以上の工事については、前払金保証事業会社の保証や履行保証保険契約の締結などの保証制度の活用が求められる場合があります。
下請契約においても同様の規定が適用され、元請業者は下請業者との間で適正な契約書面を作成・交付する義務があります。
さらに、下請代金の支払については、元請業者が発注者から請負代金を受領した日から1か月以内に支払うことが義務付けられており、この支払期限を守らない場合は遅延利息の支払義務も発生します。
これらの契約ルールの遵守により、建設業界における適正な取引慣行の定着が図られています。
技術管理体制と主任技術者の配置義務
建設工事の適正な施工を確保するため、建設業法では技術管理体制に関する詳細な規定が設けられています。
建設業者は、営業所ごとに専任技術者を配置する必要があり、また工事現場においては主任技術者または監理技術者の配置が義務付けられています。
これらの技術者配置義務は、工事の品質確保と安全施工の観点から極めて重要な規定となっています。
専任技術者は、建設業許可を取得した各営業所に常勤で配置する必要があり、許可を受けた建設業に係る建設工事に関し、請負契約の適正な締結やその履行を確保するための技術上の業務を担います。
専任技術者になるためには、国家資格の取得や一定期間の実務経験などの要件を満たす必要があります。
一方、工事現場に配置する主任技術者は、工事の施工技術上の管理を行う責任者として、工事期間中は原則として工事現場に常駐する必要があります。
特定建設業許可を取得した業者が発注者から直接請け負った工事で、下請代金の総額が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)となる場合には、主任技術者に代えて監理技術者を配置する必要があります。
監理技術者には、主任技術者よりもさらに高度な技術的能力が求められ、1級の国家資格者等であることが要件となっています。
これらの技術者配置義務に違反した場合には、営業停止処分などの行政処分の対象となる可能性があります。
下請保護と適正な取引環境の確保
建設業界では重層下請構造が一般的であり、下請業者の立場が弱くなりがちな傾向があります。
そのため、建設業法では下請業者の保護に関する詳細な規定を設け、適正な取引環境の確保を図っています。
下請代金の適正な支払、不当な条件による下請契約の禁止、下請業者への技術的支援などが主要な保護措置として定められています。
元請業者は、下請業者に対する代金支払において、現金による支払を原則とし、やむを得ず手形等で支払う場合でも、手形期間は原則として90日以内とする必要があります。
また、下請業者に対して材料の購入先指定や不当な使用資材の購入強制、役務の提供を強制することは禁止されています。
さらに、元請業者が発注者から請負代金を受領した場合は、1か月以内に下請代金を支払う義務があり、正当な理由なく支払を遅延させることはできません。
下請契約に関しても、元請業者は下請負人の商号又は名称、下請負人の建設業許可番号、下請負人の代表者氏名など、法定記載事項を記載した契約書面を作成・交付する義務があります。
また、下請負人が建設業許可を受けた業者であることを確認し、無許可業者への下請発注は禁止されています。
これらの下請保護規定により、建設業界における公正な取引秩序の確立と、下請業者の経営安定化が図られています。
建設業法違反時の罰則とその影響
建設業法に違反した場合には、行政処分と刑事罰の両面から厳しい罰則が科されることになります。
これらの罰則は、建設業法の実効性を担保し、業界全体の健全な発展を図るための重要な仕組みです。
違反の内容や程度に応じて、営業停止処分から営業禁止処分、さらには刑事罰まで、段階的な処分体系が整備されており、違反事業者には深刻な影響を与えることになります。
行政処分による営業停止・営業禁止処分
建設業法違反に対する行政処分は、監督処分と呼ばれる制度により実施されます。
監督処分には、指示処分、営業停止処分、営業禁止処分の3段階があり、違反の内容や程度、過去の処分歴などを総合的に勘案して処分内容が決定されます。
営業停止処分は建設業の営業を一定期間停止させる処分であり、営業禁止処分は建設業許可を取り消して将来にわたって許可取得を制限する最も重い行政処分となります。
営業停止処分の期間は、違反内容により異なりますが、一般的に1か月から1年の範囲で決定されます。
この期間中は、新たな建設工事の請負契約を締結することができず、既に進行中の工事についても原則として施工を継続することができません。
営業停止処分を受けた場合、企業経営に与える影響は極めて深刻で、売上の減少、取引先との信頼関係の悪化、従業員の雇用問題など、多方面にわたって重大な損失を被ることになります。
営業禁止処分は、建設業許可の取消処分とも呼ばれ、許可取消後5年間は新たな建設業許可を取得することができません。
この処分を受けた場合、実質的に建設業からの退場を意味し、企業存続に関わる最も深刻な処分となります。
また、営業禁止処分を受けた会社の役員等は、処分後5年間は他の建設業者の役員になることも制限され、個人への影響も長期にわたって継続します。
処分内容は国土交通省や都道府県のホームページで公表されるため、社会的信用の失墜も避けられません。
刑事罰(罰金・懲役)の内容
建設業法違反に対しては、行政処分とは別に刑事罰が科される場合があります。
刑事罰は建設業法第47条から第50条に定められており、違反行為の内容に応じて罰金刑や懲役刑が科されることになります。
刑事罰の対象となる主要な違反行為として、無許可営業、虚偽申請、技術者の専任違反などが挙げられ、これらは建設業法の根幹に関わる重大な違反として位置づけられています。
無許可営業については、建設業法第47条により3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。
法人が無許可営業を行った場合は、両罰規定により法人に対しても1億円以下の罰金刑が科されることになります。
また、許可申請や各種届出において虚偽の記載を行った場合も、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象となり、建設業法の信頼性を損なう重大な違反として厳しく処罰されます。
技術者の専任義務違反についても刑事罰の対象となっており、専任技術者や主任技術者を適切に配置せずに建設工事を施工した場合は、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
これらの刑事罰を受けた場合、社会的制裁は行政処分以上に深刻で、企業の信用失墜はもちろんのこと、代表者や役員の個人的な社会的地位にも重大な影響を与えることになります。
また、刑事罰を受けた事実は各種入札参加資格の審査においても不利に働くため、事業継続に長期的な影響を与える可能性があります。
代表的な違反事例と処分実態
建設業法違反の実態を理解するため、代表的な違反事例とそれに対する処分内容を確認することが重要です。
国土交通省や都道府県が公表している処分事例から、どのような行為が違反とされ、どの程度の処分が科されているかを把握できます。
処分事例の分析により、自社において同様の違反を防ぐための対策を検討することが可能となります。
無許可営業に関する処分事例では、建設業許可を取得せずに500万円以上の工事を請け負った事業者に対し、営業禁止処分が科されるケースが多数報告されています。
また、許可業種以外の工事を請け負って施工した場合も同様の処分対象となっており、許可業種の範囲を正確に理解することの重要性が示されています。
特に、電気工事や管工事など専門工事業種において、許可業種を超えた工事を実施するケースが散見されており、注意が必要です。
技術者配置義務違反については、専任技術者が長期間営業所に不在であったケースや、主任技術者を配置せずに工事を施工したケースに対し、3か月から6か月程度の営業停止処分が科されています。
また、同一の技術者を複数の工事現場に重複配置した場合も処分対象となっており、適切な技術者管理の重要性が浮き彫りになっています。
下請保護規定違反では、下請代金の支払遅延や不当な契約条件の強要に対し、指示処分から営業停止処分まで、違反の程度に応じた処分が科されています。
虚偽申請による処分事例も多数報告されており、決算変更届における売上高の虚偽記載や、技術者の実務経験証明書における虚偽記載などに対し、営業停止処分や営業禁止処分が科されています。
これらの事例は、正確な書類作成と適切な手続きの重要性を示しており、日常的な管理体制の充実が不可欠であることを示しています。
処分を受けた事業者の多くは、建設業法に対する理解不足や管理体制の不備が原因となっており、継続的な法令遵守体制の構築が重要な課題となっています。
法令遵守と同時に、現場の生産性向上も企業経営において重要な課題です。
「PRODOUGU」は、現場の情報をリアルタイムで共有・管理できる機能を備え、施工管理の効率化を通じて、組織全体の業務改善を支援します。
建設業法遵守のポイントと対策
建設業法を適切に遵守するためには、法律の内容を正確に理解するだけでなく、日常的な業務プロセスに法令遵守の仕組みを組み込むことが重要です。
単発的な対応ではなく、組織全体として継続的に法令遵守を実践できる体制を構築する必要があります。
効果的な法令遵守体制を構築するためには、教育・研修の実施、管理体制の整備、定期的な見直しと改善が不可欠な要素となります。
建設業許可の適切な管理
まず最初に取り組むべきは、建設業許可の適切な管理です。
許可の有効期限を確実に管理し、更新手続きを期限内に完了させることが基本となります。
また、変更届の提出義務についても、役員変更や営業所の移転など、該当する事象が発生した際には速やかに手続きを行う必要があります。
決算変更届についても、毎事業年度終了後4か月以内の提出期限を厳守し、財務諸表や工事経歴書等の添付書類についても正確な内容で作成することが求められます。
これらの手続きは建設業許可維持の基本であり、怠ると行政処分の対象となる可能性があります。
技術者配置義務の遵守
技術者配置義務の遵守については、専任技術者と主任技術者・監理技術者の適切な配置と管理が重要です。
専任技術者については、営業所での常勤性を確保し、他の営業所との兼務や工事現場への配置によって専任性を損なわないよう注意する必要があります。
また、工事現場における主任技術者の配置についても、工事開始前に適切な技術者を選任し、工事期間中の常駐義務を確実に履行することが重要です。
複数の工事を同時に施工する場合には、技術者の重複配置が発生しないよう、適切な人員配置計画を策定することが求められます。
契約関係の適正化と改善
契約関係の適正化についても、継続的な改善が必要です。
請負契約書面には建設業法第19条で定められた法定記載事項を確実に記載し、契約相手方への交付を遅滞なく行う必要があります。
下請契約においても同様の義務があり、契約書面の作成・交付を確実に実施することが重要です。
また、下請代金の支払については、元請業者が発注者から代金を受領した日から1か月以内の支払期限を厳守し、支払遅延による追加的なペナルティを避けることが重要です。
これらの契約管理については、システム化による管理の効率化も検討すべき重要なポイントとなります。
社内研修と内部監査体制の整備
法令遵守体制の構築においては、定期的な社内研修の実施も重要な要素です。
建設業法は改正が頻繁に行われるため、最新の法令内容を正確に把握し、社員全体に周知徹底する仕組みが必要です。
また、法令違反のリスクを早期に発見し、適切な対応を行うための内部監査体制の整備も重要です。
第三者的な視点から自社の業務プロセスをチェックし、法令遵守上の問題点を発見・改善する仕組みを構築することで、重大な違反を未然に防ぐことが可能となります。
外部の専門家との連携
最後に、外部の専門家との連携も効果的な対策の一つです。
建設業許可の専門家である行政書士や、建設業法に詳しい弁護士等との継続的な相談関係を構築することで、複雑な法令解釈についても適切な判断を行うことができます。
特に、新たな事業分野への進出や組織変更等の重要な経営判断を行う際には、建設業法上の影響を事前に確認し、必要に応じて許可の追加取得や変更手続きを適切に実施することが重要です。
これらの総合的な取り組みにより、建設業法違反のリスクを最小限に抑え、安定的な事業継続を実現することが可能となります。
まとめ
建設業法は、建設工事の適正な施工と公正な取引秩序の確保を目的とした重要な法律であり、建設業に関わる全ての事業者が遵守すべき基本的なルールを定めています。
建設業許可制度を中核とし、請負契約の適正化、技術者配置義務、下請保護などの包括的な規制体系により、建設業界の健全な発展を支えています。
違反した場合には営業停止処分や営業禁止処分などの厳しい行政処分に加え、刑事罰も科される可能性があり、企業経営に深刻な影響を与えることになります。
そのため、日常的な法令遵守体制の構築と継続的な改善が不可欠であり、教育・研修の実施、管理体制の整備、外部の専門家との連携などの総合的な取り組みが求められます。
適切な建設業法の理解と遵守により、安心して建設業を営み、社会の発展に貢献することが可能となります。
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法令遵守と同時に、現場の生産性向上も企業経営において重要な課題です。
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