諸経費の出し方はどうする?|工事見積書の内訳と記載のポイント
2025/09/01
建設工事の見積書で必ず目にする「諸経費」という項目。
材料費や労務費のような直接工事費とは異なり、その内容や算出方法について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
諸経費は工事を円滑に進めるために不可欠な費用でありながら、その詳細が見えにくいため、発注者側からは「何に使われているのかわからない」という声も聞かれます。
工事見積書において諸経費の算出方法を正しく理解し、適切に記載することは、顧客との信頼関係を築く上で非常に重要です。
本記事では、諸経費の基本的な概念から具体的な内訳、見積書での記載方法、さらには顧客への説明ポイントまで、建設業に携わる方が知っておくべき諸経費の出し方について詳しく解説します。
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諸経費とは何か
建設工事において諸経費は、工事を成功させるために欠かせない重要な費用です。
しかし、材料費や労務費のように目に見える費用とは異なるため、その内容や重要性が理解されにくい側面があります。
諸経費を正しく理解し、適切に算出・記載することは、健全な事業運営と顧客との信頼関係を築く上で重要な基盤となります。
諸経費の定義と特徴
諸経費とは、建設工事において直接工事費(材料費・労務費・機械経費など)には含まれないものの、現場運営や事業運営に必要不可欠な費用のことです。
直接的に工事の成果物に使われるわけではありませんが、工事を円滑かつ安全に進めるための「縁の下の力持ち」的な役割を果たしています。
諸経費の特徴として、「目に見えないコスト」という点が挙げられます。
例えば、現場で使用する作業車両の燃料費、工事保険料、現場監督の給与、本社の事務所家賃などがこれに該当します。
これらは工事の品質や安全性を確保するために必要な費用ですが、完成した建物や構造物に直接的に組み込まれるものではありません。
諸経費と諸費用の違い
建設業界でよく混同される用語として「諸経費」と「諸費用」があります。
諸経費は建設工事における現場・事業運営に必要な間接費を指すのに対し、諸費用は主に住宅購入時の土地・住宅購入代金以外の費用を指します。
諸費用には、登記費用、印紙税、不動産取得税、火災保険料、引っ越し費用などが含まれ、これらは施主が負担する建設工事費以外の費用です。
一方、諸経費は建設業者が工事を遂行するために必要な経費として、工事費の一部に含まれるものです。
工事費用における諸経費の位置づけ
建設工事の総費用は、「工事費用 = 直接工事費 + 諸経費」という基本式で表されます。
直接工事費は材料費、労務費、機械経費など、工事に直接関わる費用です。
諸経費はこの直接工事費に上乗せされる形で計上され、工事全体の5〜10%程度を占めることが一般的です。
ただし、工事の規模や内容、地域特性によっては、諸経費が20〜30%に達することもあります。
例えば、都市部での工事では、駐車場代や交通費が高額になりやすく、小規模工事では固定的に発生する諸経費の割合が相対的に高くなる傾向があります。
諸経費の内訳と分類方法
諸経費は大きく「現場経費」と「一般管理費」の2つに分類されます。
この分類を理解することで、諸経費の算出方法がより明確になり、見積書の作成や顧客への説明も適切に行うことができます。
それぞれの内訳を詳しく見ていくことで、諸経費がいかに工事の品質と安全性を支えているかが理解できるでしょう。
現場経費の詳細項目
現場経費は、建設計画を円滑に進めるための現場運営費です。
各工事現場で発生する固有の経費であり、現場の規模や条件によって金額が大きく変動する特徴があります。
主な現場経費の項目は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 労務管理費 | 安全衛生・作業着クリーニング・安全教育等 |
| 従業員給料手当 | 給与・賞与・交通費 |
| 機材損料 | 管理・修理・交換部品 |
| 施工図作成費 | 外注による図面作成 |
| 保険料 | 工事保険・火災保険・労災保険 |
| 通信交通費 | ガソリン代・駐車場代・通信費 |
| 法定福利費 | 雇用保険・健康保険等の企業負担分 |
| 事務用品費 | 文具・コピー用紙・消耗品等 |
| 近隣対策費 | 囲い・コーン設置・近隣挨拶等 |
| 地代家賃 | 現場事務所や従業員住宅の賃借料 |
一般管理費の構成要素
一般管理費は、企業運営に必要な費用であり、特定の現場に直接関連しない間接費です。
本社や支社の運営費として発生し、全ての工事案件に対して配分される性質を持っています。
主な項目は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 労務費 | 本社・支社従業員の給与・諸手当 |
| 法定福利費 | 本社・支社従業員分の企業負担 |
| 福利厚生費 | 慰安・娯楽・厚生施設運営費 |
| 事務所家賃 | 本社・支社の賃借料 |
| 宣伝広告費 | TV・ラジオ・Web・印刷物等 |
| 動力用水光熱費 | 電気・ガス・水道料金 |
| 調査研究費 | 技術開発・市場調査費用 |
| 減価償却費 | 建物・機材・車両等の償却 |
| 租税公課 | 固定資産税・道路占有料等 |
諸経費計算の基本的な考え方
諸経費の計算方法は企業によって異なりますが、基本的な考え方として直接工事費に対する比率で算出する方法が一般的です。
現場経費は工事の規模や条件に応じて変動し、一般管理費は企業全体の運営費を各工事案件に配分する形で計算されます。
例えば、年間売上高1億円の建設会社で、一般管理費が年間800万円の場合、一般管理費率は8%となります。
この比率を各工事案件に適用することで、一般管理費を配分します。
現場経費については、工事の特性や現場条件を考慮して個別に算出することが重要です。
見積書での諸経費の出し方と記載方法
諸経費の出し方において、見積書での記載方法は顧客との信頼関係を大きく左右する重要な要素です。
統一されたルールは存在しないため、企業や業界ごとに異なる記載方式が採用されています。
適切な記載方法を選択することで、顧客の理解と納得を得やすくなり、結果的に受注確率の向上にもつながります。
内訳記載方式のメリットと書き方
内訳記載方式は、諸経費の各項目を摘要欄に明記し、それぞれの金額を記載する方法です。
この方式の最大のメリットは、顧客が諸経費の使途を具体的に理解できるため、納得感を得やすいことです。
具体的な記載例として、現場経費では「労務管理費:50,000円」「保険料:80,000円」「通信交通費:30,000円」といった形で項目別に明示します。
一般管理費では「本社管理費:120,000円」「事務所経費:60,000円」のように記載することが一般的です。
内訳記載方式を採用する際の注意点として、あまりに細かく項目を分けすぎると見積書が煩雑になってしまうことが挙げられます。
適度にまとめながらも、顧客が理解しやすい項目名を使用することが重要です。
また、各項目の金額根拠について質問された場合に備えて、詳細な計算資料を準備しておくことも必要です。
一式記載方式の注意点
一式記載方式は、「諸経費一式:○○円」として総額のみを記載する方法です。
見積書の作成は簡単になりますが、内容が不明確なため顧客の不満や不信感の原因になりやすい欠点があります。
この方式を採用する場合は、別途資料で諸経費の内訳を説明できるよう準備することが重要です。
顧客から内訳について質問された際に、速やかに詳細を提供できる体制を整えておく必要があります。
また、一式記載であっても、諸経費の必要性や相場について口頭で説明を行うことで、顧客の理解を促進することが可能です。
一式記載方式のもう一つの課題として、競合他社との比較が困難になることが挙げられます。
顧客は複数の業者から見積もりを取ることが多いため、内訳が不明な諸経費は比較検討の阻害要因となる可能性があります。
業界別・企業別の記載方法の違い
建設業界では、業種や企業規模によって諸経費の記載方法が大きく異なります。
大手ゼネコンでは詳細な内訳を記載することが多く、中小企業では簡略化した記載方式を採用する傾向があります。
住宅建築業界では、顧客との接点が多いため内訳記載方式が主流となっています。
一方、公共工事では標準的な諸経費率が定められているため、一式記載でも問題になることは少ないのが実情です。
専門工事業者では、元請業者との関係性によって記載方法を使い分けることが多く見られます。
企業規模による違いとして、大企業では社内システムが整備されており、詳細な諸経費管理が可能です。中小企業では人的リソースの制約から、簡略化した管理方法を採用することが多くなっています。
いずれの場合も、顧客のニーズと企業の管理能力のバランスを考慮した記載方法を選択することが重要です。
社内管理での諸経費把握の重要性
見積書での記載方法に関わらず、社内では諸経費の内訳を正確に把握しておくことが不可欠です。
これは単に顧客対応のためだけでなく、適正な利益確保と経営改善のための重要な経営情報となります。
諸経費の詳細を把握することにより、コスト削減の余地を発見したり、適正な見積価格を設定したりすることが可能になります。
また、工事完了後の実績と予算を比較分析することで、次回以降の見積精度向上につなげることができます。
社内管理システムの整備においては、現場経費と一般管理費を明確に区分し、それぞれの発生要因を記録することが重要です。
定期的な見直しを行い、市場動向や企業成長に応じて諸経費の配分方法を調整していくことで、競争力のある見積書の作成が可能になります。
顧客への諸経費説明のポイント
諸経費の算出において、最も重要なのは顧客への適切な説明です。
諸経費は「目に見えない費用」であるため、その必要性や妥当性を理解してもらうには、丁寧で説得力のある説明が欠かせません。
顧客の理解と信頼を得ることで、単なる価格競争から脱却し、品質や安全性を重視した適正な工事契約を結ぶことができます。
諸経費相場の理解と説明方法
諸経費の説明において最初に行うべきは、業界相場の理解です。
一般的に諸経費は工事費全体の5〜10%が目安とされていますが、工事の規模や条件によっては20~30%に達することもあります。
例えば、工事費1,000万円の場合、諸経費は50〜100万円程度が標準的な範囲であることを伝えます。
ただし、小規模工事や特殊な条件がある場合は、固定的に発生する諸経費の割合が高くなることも併せて説明する必要があります。
相場説明の際は、同業他社との比較データがあると説得力が増します。
業界団体の統計データや公的機関の調査結果を活用し、自社の諸経費率が適正な範囲内であることを客観的に示すことが重要です。
また、諸経費の内訳を具体的に説明することで、顧客の納得感を高めることができます。
諸経費の重要性を伝えるポイント
諸経費の重要性を顧客に理解してもらうには、その役割と必要性を具体的に説明することが重要です。
現場経費は工事の安全性と品質維持に直結し、一般管理費は企業の継続的なサービス提供を支える基盤となることを明確に伝える必要があります。
現場経費の重要性については、安全管理体制の構築、品質管理システムの運用、近隣住民への配慮などの具体例を挙げて説明します。
これらの費用を削減すると、工事の安全性や品質に直接的な影響を与える可能性があることを伝えることが重要です。
一般管理費については、企業の技術力向上、アフターサービス体制の維持、財務基盤の安定化などに必要な費用であることを説明します。
これらの費用により、長期にわたる保証やメンテナンス対応が可能になることを強調し、顧客にとってのメリットを明確に示すことが効果的です。
諸経費に幅が生じる理由の説明
顧客から「なぜ業者によって諸経費が違うのか」という質問を受けることがあります。
この疑問に対して、企業・現場運営方法の違い、見積形式の違い、現場規模・地域性の違いという3つの観点から説明することが重要です。
企業・現場運営方法の違いとして、現場監督の配置人数、協力会社の活用度、保険契約の形態などによって諸経費が変動することを説明します。
例えば、直接雇用の職人が多い企業では法定福利費が高くなり、協力会社に依存する企業では管理費の配分が異なります。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 企業・現場運営の違い | 現場監督数・協力会社利用度・保険契約形態 |
| 見積形式の違い | 本体工事費への含有か諸経費への計上か |
| 現場規模・地域性 | 人件費・地代・駐車場代の地域差 |
見積形式の違いについては、同じ費用でも本体工事費に含める企業と諸経費に計上する企業があることを説明します。
この場合、総工事費は同じでも諸経費の金額が異なって見えることがあります。
現場規模・地域性の違いでは、大規模工事や都市部工事における人件費、地代、駐車場代の高騰について具体的な例を示すことが効果的です。
まとめ
諸経費について、基本概念から具体的な記載方法、顧客への説明ポイントまで詳しく解説してきました。
諸経費は「現場経費」と「一般管理費」に大別され、それぞれが工事の安全性・品質確保と企業の継続的な事業運営に欠かせない重要な費用です。
見積書での記載方法は企業によって異なりますが、内訳を明示することで顧客の理解と信頼を得やすくなります。
一式記載の場合でも、別途詳細な説明資料を用意することで透明性を確保することが重要です。
また、社内では記載方法に関わらず、諸経費の内訳を正確に把握し、適正な利益の確保と経営改善に活用することが重要です。
顧客への説明においては、業界相場の理解、諸経費の重要性と必要性の説明、諸経費に幅が生じる理由の明確化が重要なポイントとなります。
これらを丁寧に説明することで、単なる価格競争から脱却し、品質と安全性を重視した適正な工事契約を結ぶことができるでしょう。
建設業界における健全な発展のためにも、諸経費に対する正しい理解と適切な運用が求められています。
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