【建設業必見】歩掛とは?|使用のメリットと見積もりの計算方法
2025/09/16
建設業界において正確な見積もりは事業成功の鍵となりますが、その中でも「歩掛(ぶがかり)」は労務費を適切に算出するための重要な指標です。
歩掛とは、ひとつの作業ごとに必要な手間を数値化したもので、工事費用を正確に見積もるために欠かせない要素となっています。
材料費は単価と数量で簡単に計算できますが、労務費は作業の難易度や現場条件によって大きく変動するため、歩掛を活用した精密な計算が求められます。
本記事では、建設業に携わる方が歩掛を理解し、実際の業務に活用できるよう、基本的な概念から具体的な計算方法、そして実践的なメリットまでを詳しく解説します。
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歩掛とは何か?基本的な概念
歩掛は建設業界における見積もりの精度を左右する重要な概念ですが、工事費用を適切に算出するためには、正確な理解が欠かせません。
まずは歩掛の基本的な定義から詳しく見ていきましょう。
歩掛の定義と特徴
歩掛(ぶがかり)とは、ひとつの作業ごとに必要な手間を数値化したものです。
建設工事において、特定の作業を完了させるために必要な人員数と時間を標準化した指標として機能します。
例えば、コンクリート打設1㎥あたりに必要な作業時間や人数、配管工事1mあたりの施工時間などが歩掛として設定されています。
歩掛の最大の特徴は、作業の標準化にあります。
同じ作業であっても現場条件や作業員のスキルレベルによって所要時間は変動しますが、歩掛を用いることで一定の基準を設けることができ、見積もりの客観性と精度が向上します。
労務費算出における歩掛の重要性
建設工事の費用構成において、労務費は重要な割合を占めています。
歩掛は工事費用を正確に見積もるために不可欠な要素として位置づけられています。
適切な歩掛の活用により、工事の採算性を事前に把握し、赤字工事のリスクを大幅に軽減できます。
また、歩掛を基準とした労務費の算出は、顧客に対する見積もりの根拠説明においても重要な役割を果たします。
明確な算出根拠を示すことで、顧客からの信頼獲得と競合他社との差別化を図ることができます。
材料費と労務費の違いと歩掛の位置づけ
建設工事の費用は主に材料費と労務費に分類されます。
材料費は「単価×数量」という単純な計算で算出可能ですが、労務費は作業の難易度や施工条件によって大きく変動するため、より複雑な算出方法が必要となります。
歩掛は、この複雑な労務費算出において標準的な指標を提供します。
現場条件(材料の種類、施工方法、作業の難易度など)を反映させた歩掛を用いることで、より正確な労務費の算出が実現できます。
これにより、工事全体の費用見積もりの精度が大幅に向上し、事業の安定性確保に貢献します。
人工(にんく)の計算方法
歩掛を理解するためには、まず「人工(にんく)」の概念を正確に把握する必要があります。
人工は労務費算出の基本単位となる重要な指標です。
具体的な計算方法から実践的な活用例まで詳しく解説していきます。
人工の基本的な定義
人工とは、1人の作業員が1日(8時間)に働く作業量を「1」とする単位です。
建設業界では標準労働時間を8時間として設定しており、この8時間を基準として作業量を測定します。
例えば、ある作業に4時間かかる場合は0.5人工、16時間かかる場合は2人工として表現されます。
人工の概念を理解することで、工事全体に必要な労働力や工期の算出が容易になります。
また、複数の作業を同時並行で進める場合の人員配置計画においても、人工を基準とした効率的な管理が可能になります。
人工の計算式と実際の算出方法
人工の計算は以下の公式を用いて行います:
人工 =(作業時間×人数) ÷ 8時間
この計算式を用いることで、様々な作業パターンに対応できます。
1人で8時間作業する場合は1人工、2人で4時間作業する場合も1人工となり、総作業量が同じであることを数値で表現できます。
また、作業時間が8時間を超える場合は1人工を超える値となり、複数日にわたる作業や複数人での協業が必要であることが明確になります。
換気扇取付工事での具体的な計算例
実際の計算例として、換気扇取付工事を見てみましょう。
換気扇1台の取付に2.5時間を要する場合、0.31人工(2.5時間 ÷ 8時間 = 0.31人工)となります。
この計算により、1日8時間の労働時間内で換気扇約3台の取付が可能であることがわかります。
3台の換気扇を取付ける場合は、0.31人工 × 3台 = 0.93人工となり、約7時間30分の作業時間が必要であることが算出できます。
この情報をもとに、作業員1人で1日以内に完了できる作業量であることが判断でき、適切なスケジュール管理と人員配置が可能になります。
さらに、10台の換気扇取付が必要な場合は3.1人工となり、作業員1人では約3日強、または3人の作業員で1日での完了が可能であることが事前に把握できます。
このような計算により、工期の設定と人員計画の精度が大幅に向上します。
標準歩掛の活用方法
標準歩掛は国土交通省が定める公的な基準であり、建設業界全体で広く活用されている重要な指標です。
その概要から具体的な活用方法まで、実務に役立つ情報を詳しく解説していきます。
国土交通省が定める標準歩掛の概要
標準歩掛は、国土交通省が定める「公共建築工事標準単価積算基準」に掲載される基準値です。
この基準は全国の公共建築工事において統一的に使用され、民間工事の見積もりにおいても参考資料として広く活用されています。
標準歩掛により、工事の見積もり精度の向上と業界全体の標準化が推進されています。
標準歩掛の最大の特徴は、無料で閲覧可能である点です。
国土交通省のWebサイトや関連資料を通じて誰でもアクセスでき、建設業者の規模に関係なく活用できる公平性が確保されています。
また、定期的な改定により、技術進歩や施工方法の変化に対応した最新の基準が提供されています。
標準歩掛の設定基準と考慮要素
標準歩掛の設定には、以下の3つの重要な基準が考慮されています。
年齢(若年から壮年を想定)、資格(有資格者配置の必須性)、経験年数(ベテランと新人での差異)が主要な要素として設定されています。
年齢基準では、一般的な作業効率を示す若年から壮年層の作業員を想定しており、この年齢層の標準的な作業能力を反映しています。
資格要件については、特定の作業に必要な資格や技能を持った作業員の配置を前提として歩掛が設定されており、安全性と品質の確保が図られています。
経験年数による差異も重要な考慮要素です。
同じ作業でもベテランと新人では作業効率に大きな差が生じるため、標準歩掛では平均的な経験レベルを基準として設定されています。
実際の現場では、この基準を参考に自社の作業員構成に応じた調整が必要となります。
標準歩掛の入手方法と更新頻度
標準歩掛の入手は非常に簡単で、国土交通省の公式Webサイトから無料でダウンロードできます。
定期的に改定されるため、常に最新情報をチェックすることが重要です。
技術革新や施工方法の進歩、労働環境の変化などを反映して、通常年1回程度の頻度で更新されています。
最新の標準歩掛を活用することで、現在の施工技術レベルに対応した正確な見積もりが可能になります。
古い基準を使用し続けると、実際の作業時間との乖離が生じ、見積もり精度の低下につながる可能性があります。
定期的な情報更新は、競争力維持の観点からも重要な業務プロセスとして位置づけるべきです。
労務費の正確な計算手順
労務費の正確な算出は、建設事業の収益性を左右する重要なプロセスです。
歩掛を活用した体系的な計算手順を理解し、実践することで見積もり精度の大幅な向上が期待できます。
段階的な手順に沿って詳しく解説していきます。
歩掛の把握と調整方法
労務費計算の第一段階は、適切な歩掛の把握です。
標準歩掛を参考にしつつ、自社の状況(作業員の年齢、資格保有状況、経験年数)に応じた調整が必要となります。
標準歩掛はあくまでも平均的な基準値であり、実際の現場条件や自社の人員構成を反映させた調整が不可欠です。
調整方法として、まず自社の過去の施工実績を分析し、標準歩掛との差異を把握します。
作業日報の詳細な記録を活用して、実際の所要時間と標準歩掛を比較し、自社独自の補正係数を算出します。
この補正係数により、より実態に即した歩掛の設定が可能になります。
労務単価の調査と地域差の理解
次に重要なのが労務単価の正確な把握です。
公共工事設計労務単価を確認し、都道府県および職種ごとの違いを理解することが必要です。
例えば、東京都では23,900円、鳥取県では16,300円といった具合に、同じ職種でも地域によって大きな差異があります。
労務単価は毎年更新されるため、最新情報の確認が欠かせません。
国土交通省や都道府県の建設部局から公表される最新の労務単価を定期的にチェックし、見積もりに反映させることで正確性が保たれます。
また、特殊な技能を要する作業については、市場相場も参考にした単価設定が重要になります。
労務費の算出計算式
労務費の算出には以下の計算式を使用します:
労務費 = 所要人工(作業量×歩掛) × 労務単価
この計算式では、まず作業量に歩掛を乗じて所要人数を算出し、それに労務単価を掛けて労務費を求めます。
労務単価には基本日額に加えて、残業代や休日出勤手当などの割増賃金も含める必要があります。
特に工期が厳しい工事では、割増賃金の比重が高くなるため、慎重な計算が求められます。
また、複数の職種が関わる工事では、職種ごとに異なる労務単価を適用し、それぞれの作業量と歩掛に基づいて個別に計算した後、合計することで全体の労務費を算出します。
この段階的な計算により、工事全体の労務費構成が明確になり、コスト管理の精度が向上します。
実際の計算例による労務費算出
具体的な計算例として、換気扇3台の取付工事を見てみましょう。
換気扇3台、歩掛0.31人工、労務単価24,300円の場合:0.93人工 × 24,300円 = 22,599円となります。
この計算過程を詳しく見ると、まず換気扇1台あたりの歩掛0.31人工に台数3を乗じて0.93人工の所要人数を算出します。
次に、この0.93人工に労務単価24,300円を乗じることで、最終的な労務費22,599円が導かれます。
この金額に材料費と諸経費を加算することで、工事全体の見積金額が完成します。
実際の見積もりでは、このような詳細な計算を各作業項目について実施し、積み上げ方式で全体費用を算出します。
計算根拠を明確に記録しておくことで、顧客への説明や社内での検証、将来の類似工事での参考資料として活用できます。
歩掛を使用する4つのメリット
歩掛の活用により、建設業経営において多面的なメリットが得られます。
単なる見積もり精度の向上にとどまらず、事業全体の競争力強化と持続的成長に寄与する重要な効果について詳しく解説していきます。
赤字工事の防止と利益確保
歩掛の最大のメリットは、赤字工事の防止により安定した利益確保が可能になることです。
従来の経験や勘に頼った見積もりでは、実際の工事費用との乖離が生じやすく、予想以上の工期延長や追加人員投入により利益を圧迫するリスクがありました。
歩掛を活用することで、このようなリスクを大幅に軽減できます。
正確な歩掛に基づく見積もりにより、工事開始前に必要な労務費を精密に算出でき、適切な利益率を確保した価格設定が可能になります。
また、工事中の進捗管理においても、歩掛を基準とした実績評価により、早期の軌道修正や効率改善策の実施が可能になり、最終的な収益性向上につながります。
顧客からの信頼向上と競争力強化
歩掛を活用した見積もりは、顧客からの信頼獲得において重要な役割を果たします。
積算根拠を明確に提示できることで、顧客からの信頼向上と競合他社との差別化が実現できます。
詳細な根拠に基づいた見積書は、顧客に対する透明性と専門性をアピールし、長期的な信頼関係構築の基盤となります。
また、歩掛に基づく正確な見積もりにより、工事完了時の追加請求や仕様変更に伴う費用調整においても、明確な根拠を示すことができます。
これにより、顧客とのトラブル回避と円滑な工事進行が可能になり、リピート受注や紹介案件の獲得確率が向上します。
スケジュール管理の精度向上
歩掛の活用により、工事スケジュール管理の精度が大幅に向上します。
正しい工数把握により、計画立案と調整が容易になり、工期短縮や効率的な人員配置が実現できます。
各作業の所要時間が明確になることで、全体工程の最適化と並行作業の効果的な組み合わせが可能になります。
特に複数の工事を同時進行する場合、歩掛を基準とした人員配置計画により、限られた人的資源の最大活用が可能になります。
また、工事の進捗状況を歩掛基準で評価することで、遅延リスクの早期発見と対策が可能になり、スケジュール通りの進行の実現につながります。
経営強化と業務効率化
歩掛の体系的活用により、経営全体の強化と業務効率化が実現できます。
無駄な作業の削減、課題の明確化、継続的改善により、企業の競争力向上と持続的成長が可能になります。歩掛データの蓄積と分析により、自社の強みと弱みが数値的に把握でき、戦略的な経営判断の基盤が構築されます。
また、歩掛を活用した標準化により、属人的な業務から脱却し、組織全体の技能レベル向上と品質安定化が図れます。新入社員の教育においても、歩掛を基準とした目標設定と進捗管理により、効率的なスキルアップが可能になります。
これらの効果により、企業の組織力強化と長期的な競争優位性確保が実現できます。
歩掛活用時の注意点
歩掛の効果的な活用には、標準歩掛の限界を理解し、自社の実態に合わせた調整が不可欠です。
実践的な調整方法から具体的な注意点まで、現場で直面する課題への対処法を詳しく解説していきます。
標準歩掛の限界と調整の必要性
標準歩掛はあくまでも基準値であり、自社の状況に合わせた調整が必要です。
国土交通省が定める標準歩掛は、全国平均的な作業効率を反映しているため、個々の企業や現場の特殊事情は考慮されていません。
そのため、標準歩掛をそのまま適用すると、実際の作業時間との乖離が生じる可能性があります。
特に、地域特性、気候条件、建物の構造や立地条件、使用する機械や工具の種類、作業員の技能レベルなどは標準歩掛では十分に反映されていません。
これらの要因は作業効率に大きく影響するため、自社の実情に合わせた補正が重要になります。
自社独自歩掛の構築方法
自社独自の歩掛構築には、体系的なデータ収集と分析が必要です。
作業日報への詳細条件記録、データの集計・データベース化、継続的な分析により、精度の高い自社歩掛を構築できます。
具体的な構築手順として、まず各作業について詳細な作業日報を作成し、作業時間、人数、現場条件、使用した材料や工具、作業員のスキルレベルなどを記録します。
この情報を定期的に集計し、作業項目ごとの平均的な所要時間を算出します。
十分なデータが蓄積された段階で、標準歩掛との比較分析を行い、自社固有の補正係数を算出します。
このプロセスを継続することで、季節変動や技能向上による効率改善なども反映した、より精密な自社歩掛が構築できます。
また、新しい工法や機械の導入時には、積極的にデータ収集を行い、歩掛の更新を図ることで、常に最適な基準を維持できます。
作業員レベル別の歩掛調整例
実際の調整例として、作業員のスキルレベルによる歩掛の違いを見てみましょう。
標準歩掛0.35人工に対して、ベテラン作業員は0.30人工、新人作業員は0.38人工といった具合に、個人の技能に応じた調整が必要です。
このような調整により、より現実的な見積もりと工程管理が可能になります。
ベテラン作業員を中心とした工事では工期短縮が期待できる一方、新人作業員の比率が高い場合は余裕を持った工程設定が必要になります。
また、混在する場合は、それぞれの比率に応じた加重平均により調整歩掛を算出します。
重要なことは、これらの調整値を固定的に考えるのではなく、継続的な実績データに基づいて更新していくことです。
作業員の技能向上や新しいメンバーの加入に伴い、定期的に見直しを行い、常に実態に即した歩掛を維持することで、見積もり精度の継続的な改善が実現できます。
まとめ
歩掛の活用により、建設業における見積もり精度の向上と事業の安定化が実現できます。
赤字工事の防止、顧客からの信頼獲得、スケジュール管理の最適化、適正な労務費算出、そして経営全体の強化という多くの重要なメリットを得ることができます。
成功の鍵は、標準歩掛を参考にしつつ、自社の実情に合わせた調整を継続的に行うことです。
作業日報の詳細記録からデータベース化、そして自社独自歩掛の構築まで、体系的な取り組みが重要となります。
従来の「どんぶり勘定」では顧客からの信頼を失い、競争力の低下につながります。
正確な積算に基づく透明性の高い見積もりこそが、持続的な事業成長の基盤となります。
歩掛を効果的に活用し、建設業界における競争優位性の確保と長期的な発展を実現していきましょう。
歩掛は労務費の算出精度と見積もりの妥当性を左右する重要指標であり、正確な把握と継続的な管理が求められます。
しかし実際の現場では、歩掛の根拠となる図面・施工条件・工事写真・進捗実績(作業時間や人数など)の収集と整理が煩雑になりやすく、担当者の負担は少なくありません。
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