【建設業必見】労務費率とは?|計算方法や目安・改善策を解説
2025/08/08
建設業において、コスト管理の要となる「労務費率」について、正確に理解している方はどれほどいるでしょうか。
労務費率は、工事原価の適正な算出や労災保険料の計算に直接関わる重要な指標でありながら、その計算方法や改善策について体系的に学ぶ機会は多くありません。
本記事では、建設業における労務費率の基本概念から具体的な計算方法、効果的な改善策まで、実務に役立つ情報を解説します。
適切な労務費率の管理により、コスト削減と利益向上を同時に実現する方法をご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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建設業における労務費の基礎知識
建設業界において、労務費は工事原価の中核を成す重要な要素です。
労務費の適切な理解と管理は、プロジェクトの収益性確保と労働環境の改善に直結するため、経営者から現場管理者まで幅広い層が正確に把握しておく必要があります。
労務費とは何か
労務費とは、工事施工に従事する作業員(職人)に支払われる費用の総称で、建設業では「工賃」とも呼ばれています。
これは企業が負担する人件費の一部であり、現場で直接作業に従事する職人や作業員に対して支払う賃金、手当、福利厚生費などが含まれます。
労務費は工事原価を構成する4大要素(労務費・材料費・外注費・経費)の中でも特に重要な位置を占めており、建設業の収益性に大きな影響を与える要因となっています。
労務費に含まれる項目
労務費に含まれる主な項目は以下の通りです。
まず基本給与として、職人や作業員に支払う月給・日給・時給などの賃金があります。
次に、パートタイマーや臨時労働者への雑給、定期賞与や各種手当(通勤手当、危険手当、技能手当など)が含まれます。
さらに重要なのが法定福利費で、これには社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)の企業負担分が含まれます。
また、退職給付金や企業年金の積立金、従業員の教育・研修費用なども労務費として計上されます。
これらの項目を適切に把握し管理することで、正確な工事原価の算出が可能となります。
直接労務費と間接労務費の違い
労務費は大きく直接労務費と間接労務費に分類されます。
直接労務費は、建設現場で直接作業に従事する職人に対して支払う給与を指し、主に基本賃金と雑給が該当します。
これは特定の工事プロジェクトに直接紐づけることができる費用であり、工事原価の計算において最も重要な要素となります。
一方、間接労務費は現場作業以外に関わる人件費や福利厚生関連費用を指します。
具体的には、賞与、有給休暇手当、育児休暇手当、法定福利費、退職給付金、教育・研修費、そして機械運搬や修理などの間接作業に従事する人員への人件費が含まれます。
これらは特定の工事に直接紐づけることが困難な費用であり、適切な配賦基準を設けて各工事に割り振る必要があります。
労務費と人件費の関係性
労務費と人件費の関係を正確に理解することは、建設業の原価管理において極めて重要です。
人件費は企業が従業員全体に支払う費用の総称であり、現場作業員だけでなく、事務職員、営業担当者、管理職など、すべての従業員に対する支払いが含まれます。
| 区分 | 対象範囲 | 関係性 |
|---|---|---|
| 労務費 | 現場作業員(職人)のみ | 人件費の一部 |
| 人件費 | 全従業員(事務・営業・管理職含む) | 労務費+その他人件費の合計 |
この区別により、労務費は人件費の一部として位置づけられ、工事原価に直接影響する要素として重点的に管理される必要があります。
適切な労務費管理により、工事収益の最大化と労働環境の改善を同時に実現することが可能となります。
労務費率の定義と計算方法
労務費率は建設業における重要な経営指標の一つであり、工事原価の適正な把握と労災保険料の正確な計算に不可欠な概念です。
特に建設業では、工事の性質上、正確な賃金把握が困難な場合が多いため、労務費率を用いた計算方式が広く採用されています。
労務費率とは
労務費率とは、請負金額に対する労務費の割合を示す指標であり、建設業特有の計算方式として確立されています。
建設業では工事ごとに作業内容や期間が大きく異なるため、実際の賃金を正確に把握することが技術的に困難な場合があります。
このような背景から、請負金額を基準として労務費を算出する労務費率の概念が生まれました。
労務費率は主に労災保険料の計算に用いられますが、工事原価の見積もりや利益率の分析にも活用されています。
業種別に労務費率を定めており、これらの数値は長年の統計データに基づいて設定されているため、業界標準として高い信頼性を持っています。
基本的な計算式
労務費率を用いた基本的な計算式は以下の通りです。
まず、労務費率に基づく賃金総額の算出方法から説明します。
労務費率に基づく賃金総額 = 請負金額 × 労務費率という計算式により、工事プロジェクト全体の労務費を推定することができます。
次に、この賃金総額を用いて労災保険料を計算します。
労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険料率という式により、最終的な保険料額が算出されます。
例えば、請負金額が1,000万円で労務費率が23%の建築工事の場合、賃金総額は230万円となり、この金額に労災保険料率を掛けることで保険料が確定します。
労災保険料計算での活用
労務費率は労災保険料の算定において中心的な役割を果たしています。
建設業では工事現場ごとに作業員の構成や作業期間が異なるため、実際の賃金総額を正確に把握することが困難です。
そこで、労務費率を用いることで、請負金額から推定賃金総額を算出し、これを基準として労災保険料を計算します。
この方式により、保険料計算の簡素化と標準化が実現され、建設業界全体での公平な保険制度運営が可能となっています。
また、労働基準監督署による指導や検査においても、労務費率に基づく計算結果が重要な判断材料として活用されています。
実際の運用では、工事開始時に労務費率を用いて概算保険料を算出し、工事完了後に実績に基づいて精算を行う仕組みとなっています。
業種別労務費率の目安
厚生労働省が公表している業種別労務費率は、建設業各分野の標準的な指標として活用されています。
これらの数値は、各業種の作業特性や人員配置の傾向を反映したものであり、実務において重要な参考値となります。
事業の種類 請負金額に乗ずる率 建築事業 21% 舗装工事業 20% 道路新設事業 21% 水力発電施設、ずい道等新設事業 19% その他の建設事業 24%
これらの目安値を参考にしながら、自社の実績データと比較検討することで、適切な原価管理と経営改善につなげることができます。
労務費率の管理が重要な理由
現代の建設業界において、労務費率の適切な管理は企業の持続可能性と競争力維持に不可欠な要素となっています。
労働環境の改善、法規制への対応、経営の健全化など、多方面にわたって重要な役割を果たしており、経営戦略の中核に位置づけるべき管理指標です。
労働環境の改善効果
労務費率の適切な管理により、長時間労働の是正と職場環境の大幅な改善を実現することが可能です。
人員配置や作業時間の詳細な把握により、過度な負担がかかっている現場や作業員を特定し、適切な人員補強や作業分担の見直しを行うことができます。
これにより、作業員のストレス軽減とモチベーション向上が期待できます。
また、労務費の可視化により、適正な賃金水準の維持と福利厚生の充実が図れます。
作業員一人ひとりの技能レベルや貢献度に応じた公平な評価システムの構築も可能となり、優秀な人材の確保と定着率向上につながります。
さらに、安全教育や技能向上研修への投資も労務費として適切に管理することで、現場の安全性向上と作業品質の向上を同時に実現できます。
法規制への対応
建設業にも適用された改正労働基準法への対応において、労務費率の管理は極めて重要な役割を果たしています。
時間外労働の上限規制への確実な対応には、詳細な労働時間管理と適切な人員配置が不可欠です。
労務費率の適切な管理により、各現場の労働時間実態を正確に把握し、法規制違反のリスクを事前に察知することができます。
また、同一労働同一賃金の原則への対応や、有給休暇取得義務化への対応も、労務費の詳細な分析により効果的に進めることが可能です。
これらの法的要求事項への適切な対応は、企業の社会的信頼性向上と持続可能な経営基盤の構築に直結します。
見積精度の向上
正確な労務費率の把握と管理は、見積書作成の精度向上に大きく貢献します。
過去のプロジェクトデータから得られる実績労務費率を活用することで、新規案件の原価予測精度が大幅に向上し、原価と完成工事高のズレを最小化することができます。
精度の高い見積もりにより、適正な利益率の確保と競争力のある価格設定が可能となります。
また、工事進行中の原価管理においても、労務費率をベースとした進捗管理により、予算超過リスクの早期発見と対策実施が可能です。
これにより、プロジェクト収益性の最適化と顧客満足度の向上を同時に実現できます。
経営健全化への貢献
労務費率の戦略的管理は、企業の経営健全化と持続的成長に重要な貢献をします。
効率的な人員配置と労務費削減により、経営資源の最適配分と利益最大化を実現できます。
また、データに基づいた意思決定により、感覚的な経営から科学的な経営への転換が可能となります。
さらに、労務費率の継続的な改善活動により、業界平均を上回る生産性向上と競争優位性の確立が期待できます。
これらの取り組みは、金融機関からの評価向上や取引先との長期的パートナーシップ構築にも寄与し、企業の総合的な価値向上につながります。
優秀な人材の確保と育成投資の効率化も図れるため、将来にわたる持続的な成長基盤の構築が可能となります。
労務費率の改善策と管理手法
労務費率の改善は一朝一夕に実現できるものではありませんが、体系的なアプローチと継続的な取り組みにより、確実な成果を上げることが可能です。
効率的な人員配置、作業時間の最適化、デジタル技術の活用、そして継続改善サイクルの構築が、成功の鍵となります。
効率的な人員配置の実現
効率的な人員配置は労務費率改善の最も重要な要素であり、適材適所の原則に基づいた戦略的な配置計画が不可欠です。
まず、各作業員の技能レベル、経験年数、専門分野を詳細に把握し、データベース化することから始めます。
これにより、工事の性質や難易度に応じて最適な人員構成を決定することができます。
また、多能工の育成により、一人の作業員が複数の作業に対応できる体制を構築することも重要です。
工事の進行状況や天候条件の変化に柔軟に対応できる環境を整えることで、待機時間の削減と生産性向上を実現できます。
さらに、ベテラン作業員と若手作業員のペアリングによる効率的な技能継承システムの構築も、長期的な労務費率改善に寄与します。
作業時間の最適化
作業時間の最適化は、労務費率改善において即効性の高い手法です。
作業手順の標準化と効率化により、より短時間で同じ成果を出すことが可能となります。
具体的には、作業前準備の効率化、工具・資材の配置最適化、作業動線の改善などが挙げられます。
時間管理システムの導入により、各作業の所要時間を正確に測定し、改善ポイントを特定することができます。
また、休憩時間の適切な設定と集中作業時間の確保により、作業効率の最大化を図ることも重要です。
さらに、天候や季節に応じた作業スケジュールの調整により、生産性の維持と作業員の負担軽減を両立できます。
デジタルツールの活用
現代の建設業において、デジタルツールの活用は労務費率改善の強力な手段となっています。
まず、Excelによる管理システムの構築から始めることができます。
関数やマクロを活用した自動化により、労務費計算の精度向上と作業時間短縮が実現できます。
ただし、手入力によるミスには十分な注意が必要です。
より高度な管理を求める場合は、建設業向け専用管理システムの導入により、勤怠・工数・労務費の一元管理が可能となります。
これらのシステムは、現場ごとの複雑な労務費率計算や工事原価管理にも対応しており、リアルタイムでの進捗把握と迅速な意思決定を支援します。
導入・運用コストは発生しますが、管理精度と効率の大幅な向上が期待できます。
建設業界のデジタル化を支援する総合的なソリューションとして、業務効率化と労務費管理の最適化を実現するシステムの活用が注目されています。
継続的な改善サイクルの構築
労務費率の持続的な改善には、PDCAサイクルに基づいた継続的な改善活動が不可欠です。
まず、現状の労務費率を正確に把握し(Plan)、改善目標を設定します。
次に、具体的な改善策を実施し(Do)、その効果を定期的に測定・評価します(Check)。
そして、結果に基づいてさらなる改善策を検討・実行します(Action)。
このサイクルを継続することで、労務費率の段階的かつ確実な改善を実現できます。
また、改善活動には現場作業員の積極的な参加が重要です。
提案制度や改善アイデアの共有システムの構築により、組織全体での改善文化の醸成を図ることができます。
成功事例の横展開や失敗事例からの学習により、改善効果の最大化と持続可能な成長基盤の構築が可能となります。
まとめ
本記事では、建設業における労務費率の基本概念から計算方法、業界標準値、そして効果的な改善策まで、実務に直結する重要な情報を詳しく解説しました。
労務費率は単なる計算指標ではなく、企業の競争力向上と持続可能な成長を実現するための戦略的管理ツールであることがご理解いただけたのではないでしょうか。
適切な労務費率の管理により、労働環境の改善、法規制への確実な対応、見積精度の向上、そして経営の健全化を同時に実現することが可能です。
特に、効率的な人員配置、作業時間の最適化、デジタルツールの活用、継続的な改善サイクルの構築は、労務費率改善の核となる要素として、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
一方で、現場では日々の業務に追われ、労務費の管理まで手が回らないケースも少なくありません。そこで、業務の効率化を図るためにITツールの活用が求められています。
PRODOUGUは、施工管理に特化したアプリであり、図面や写真の共有、作業指示の伝達など、現場の情報管理を効率化する機能を備えています。これにより、現場のコミュニケーションが円滑になり、施工品質の向上にも寄与します。
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