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月間工程表とは?|建設プロジェクトに不可欠なツールと活用のコツ

2025/09/30

建築

建設プロジェクトにおいて、工事の進行状況を適切に管理することは、品質・コスト・納期の全てに直結する重要な業務です。
特に住宅建設では、設計から完工まで長期間を要するため、月単位での工程管理が不可欠となります。
月間工程表は、工事全体の流れを俯瞰し、各作業の関連性や進捗状況を一目で把握できる管理ツールです。
適切に作成・運用することで、工期の遅延を防ぎ、施主への説明責任を果たし、現場の生産性向上を実現できます。
本記事では、月間工程表の基本概念から具体的な活用方法まで、建設業界で必要な知識を詳しく解説します。

月間工程表とは?
建設プロジェクトにおける位置づけ

月間工程表とは、建設プロジェクトにおいて1ヶ月間の作業進行計画を記載した管理表です。
日単位での詳細な作業内容ではなく、月単位での大きな工程の流れを把握することを目的としています。
住宅建設を例にとると、設計から着工まで2〜4.5ヶ月、着工から完工まで3〜4ヶ月という長期間のプロジェクトとなります。
このような長期工事では、施主の要望変更やトラブルによる工程変更が発生しやすく、月間単位での進行管理が不可欠となります。

月間工程表の主な目的は、工事スケジュール全体を管理し、完成までの進行状況を的確に把握することです。
また、工程の遅れや変更に柔軟に対応するための基盤としても機能します。
作業を細分化し、時系列に並べて可視化することで、管理精度が大幅に向上し、結果として生産性向上・業務効率化・利益向上に寄与します。

建設業界では、プロジェクトの複雑性と期間の長さから、単一の工程表では全ての管理要素をカバーできません。
そのため、月間工程表は他の工程表と組み合わせて使用されることが一般的です。
特に月間工程表は、全体工程表と週間工程表を繋ぐ中間的な役割を果たし、中期的な視点での工程管理を可能にします。

近年の建設プロジェクトでは、品質管理・安全管理・環境対策など、従来の工期・コスト管理に加えて多様な要素を同時に管理する必要があります。
月間工程表は、これらの複合的な管理要素を統合的に把握するためのプラットフォームとしても活用されています。

建設現場で使われる
4種類の工程表の違い

建設プロジェクトでは、管理する期間や詳細度に応じて4種類の工程表が使い分けられています。
それぞれが異なる役割を持ち、相互に補完し合うことで、包括的な工程管理を実現します。
ここでは、各工程表の特徴と適用場面について詳しく解説します。

総合(全体)工程表|プロジェクト全体を俯瞰する基本形

総合工程表は、工事全体を俯瞰できる最も基本的な工程表です。
プロジェクトの開始から完了まで全ての工事工程を一覧表示し、各工事の期間・順序・相互の関係性を一目で把握できる設計になっています。
主な特徴として、マクロ視点での工程管理、工事間の依存関係の明確化、全体的な工期とマイルストーンの設定が挙げられます。

総合工程表は、複数現場の調整や異なる工程間の連携調整において特に有効です。
また、施主や元請け業者への説明資料としても頻繁に使用されます。
ただし、日々の細かな作業管理には向かないため、より詳細な工程表と併用する必要があります。

細部工程表|重要工程の詳細管理に特化

細部工程表は、特定の工程や重要な作業工程のみを詳細に管理するための工程表です。
重点工程の進捗を細かく把握し、品質や安全面で特に注意が必要な作業の管理に特化しています。
基礎工事や構造体工事など、後工程に大きな影響を与える重要工程で多用されます。

細部工程表の活用により、重要工程での品質管理・進行管理の精度が大幅に向上します。
また、問題発生時の原因究明や対策立案においても、詳細な工程データが重要な判断材料となります。
一方で、全体工程との整合性を常に確認する必要があり、他の工程表との連携が重要になります。

月間工程表|中期的な進行計画の要

月間工程表は、1ヶ月間の工程を大まかに記載した工程表です。
日にちごとの作業を簡潔に記録し、週間工程表よりも粗い粒度で工程を管理することで、中期的な視点での計画立案と進捗管理を可能にします。
月単位での進行計画策定、全体工程の把握、資材調達計画の立案に主に使用されます。

月間工程表の最大の利点は、長期工程の中で現在位置を把握しやすいことです。
また、施主への進捗報告や、下請け業者との工程調整においても、適度な詳細度で情報共有が可能になります。
月間工程表は週間工程表の上位計画として位置づけられ、月間計画に基づいて週間の詳細計画が立案される構造になっています。

週間工程表|日々の作業指示に不可欠

週間工程表は、1週間単位での詳細な作業計画を記載した工程表です。
具体的な作業内容、必要人員、使用資材まで詳細に記載し、短期間での精緻な現場管理を実現します。
日々の作業指示、現場作業員への具体的な指示書、日単位での進捗管理に使用されます。

週間工程表は現場管理の最前線で使用される実務的な工程表です。
天候変化や急な変更にも迅速に対応でき、現場の生産性向上に直結します。
また、日報との連携により、計画と実績の差異分析も容易になり、継続的な改善活動の基盤としても機能します。

月間工程表作成時の
3つの重要なポイント

効果的な月間工程表を作成するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
これらを押さえることで、工程管理の精度が大幅に向上し、プロジェクト全体の成功確率を高めることができます。
以下では、特に重要な3つの注意点について詳しく解説いたします。

各工事項目を統一

月間工程表作成において最も重要な原則の一つが、工事項目別に工程表を作成しないことです。
全体工程を一元化することで、工事間の関係性や進捗状況を把握しやすくし、工程管理の効率性を大幅に向上させることができます。
分散した工程表では、工事間の依存関係が見えにくくなり、調整作業が複雑化します。

統一された工程表の利点は多岐にわたります。
まず、全体工程の中での各工事の位置づけが明確になり、優先順位の判断が容易になります。
また、資材調達や人員配置の計画も統合的に立案できるため、効率的なリソース管理が実現します。
さらに、施主や関係者への説明時にも、一つの工程表で全体像を示すことができ、コミュニケーションの質が向上します。

統一工程表の作成では、各工事の開始・終了条件を明確に定義することが重要です。
前工程の完了を待つ必要がある工事、並行して実施可能な工事、クリティカルパスとなる工事を適切に識別し、工程表に反映する必要があります。
また、工事項目の分類方法も統一し、どの担当者が見ても同じ理解ができるよう標準化することが大切です。

PDCAサイクルを活用した継続改善

月間工程表の運用において、PDCAサイクルの活用は継続的な改善と工程管理精度の向上に不可欠です。
Plan(計画)・Do(実施)・Check(検証)・Action(改善)の4段階を繰り返すことで、工程表の精度と実用性を継続的に向上させることができます。
特に建設業界では、天候や施主要望の変更など予測困難な要因が多いため、柔軟な対応力が求められます。

Plan(計画)段階では、施工法・手順・日程を総合的に検討し、実現可能性の高い工程表を作成します。
この際、過去のプロジェクトデータや気象データを参考にし、適切な余裕度を設定することが重要です。
Do(実施)段階では、工程表通りに作業を進行し、現場指示や資材手配を実施します。
同時に、日々の進捗状況を詳細に記録し、計画との差異を把握します。

Check(検証)段階では、進捗と計画の差異を分析し、遅延要因や改善点を特定します。
天候不良、施主依頼による変更、予期せぬトラブルなど、様々な要因による影響を定量的に評価します。
Action(改善)段階では、検証結果に基づいて工程を調整し、次回計画に反映させます。
この継続的な改善により、工程管理の精度が向上し、プロジェクトの成功確率が高まります。

共有しやすいツールの選定と活用

現代の建設プロジェクトでは、多様なステークホルダーとの迅速な情報共有が不可欠です。
情報共有が迅速にできる仕組みを事前に整備することで、工程変更への対応力が大幅に向上し、プロジェクト全体の効率性が高まります。
適切なツール選択は、工程管理の成否を左右する重要な要素となります。

共有ツールには大きく分けて、一般ビジネス向けアプリケーションと建設業特化型ソフトウェアがあります。
一般ビジネス向けでは、クラウドベースのプロジェクト管理ツールや表計算ソフトなどが活用されます。
一方、建設業特化型では、工程管理機能に加えて現場写真管理、原価管理、顧客管理などが統合されたシステムが提供されています。

理想的な共有ツールの機能には、リアルタイム更新機能、モバイル対応、権限管理機能、データ出力機能などが含まれます。
また、現場での使いやすさも重要な選択基準となります。
特に、現場作業員から管理者まで、IT習熟度の異なる利用者が使用するため、直感的な操作性とシンプルなインターフェースが求められます。
導入前の試用期間を設けて、実際の使用感を確認しましょう。

効果的な月間工程表運用のための
ポイント

月間工程表の真価は、作成後の運用段階で発揮されます。
単に工程表を作成するだけでなく、継続的な更新・調整・改善を通じて、実践的な工程管理ツールとして活用することが重要です。
効果的な運用のためには、組織的な体制づくりとシステム化が不可欠となります。

遅延要因への対応策

建設プロジェクトでは、様々な要因による工程遅延が発生します。
遅延要因を事前に想定し、それぞれに対する対応策を準備することで、工程への影響を最小限に抑えることができます。
主要な遅延要因として、天候不良、施主による仕様変更、資材調達の遅れ、労働力不足、設計変更などが挙げられます。

天候要因への対応では、気象予報の活用と屋内作業への切り替え計画が重要です。
雨天時でも実施可能な作業項目をリストアップし、天候に左右されない工程進行を計画します。
施主による変更要求に対しては、変更管理プロセスを明確化し、工程・コストへの影響を迅速に評価できる体制を整備します。
変更承認のフローを標準化することで、無駄な待機時間を削減できます。

資材調達の遅延対策では、重要資材の早期発注や代替資材の準備が効果的です。
また、協力会社との密接なコミュニケーションにより、納期遅延リスクを早期に把握し、対応策を講じることができます。
労働力不足への対応では、協力会社との連携強化や、作業の平準化による効率的な人員配置が重要になります。
繁忙期の作業量分散や、熟練工の効果的活用が求められます。

情報共有体制の構築

効果的な月間工程表運用には、関係者間での迅速かつ正確な情報共有体制の構築が不可欠です。
情報の流れを整理し、必要な情報が必要な人に適切なタイミングで届く仕組みを構築することで、工程管理の精度と効率性が大幅に向上します。
情報共有体制では、情報の種類・頻度・対象者・共有方法を明確に定義する必要があります。

定期的な工程会議の開催により、関係者間での認識統一と課題共有を図ります。
週次・月次での工程会議を設定し、進捗報告・問題点の共有・対応策の検討を体系的に実施します。
また、緊急時の連絡体制も整備し、重大な工程変更や安全上の問題が発生した際の情報伝達ルートを明確化します。
連絡網の作成と定期的な更新により、迅速な対応が可能になります。

情報共有の質を向上させるためには、報告内容の標準化も重要です。
進捗報告のフォーマットを統一し、数値的な指標と定性的な情報をバランス良く含めることで、関係者の理解度が向上します。
さらに、工程表の更新履歴を管理し、変更の理由と影響を記録することで、将来のプロジェクトでの参考情報として活用できます。

デジタルツール導入による効率化

デジタル技術の進歩により、月間工程表の作成・管理・共有の効率性が大幅に向上しています。
適切なデジタルツールの導入により、手作業による工程表管理の限界を克服し、より高度で効率的な工程管理が実現できます。
クラウドベースのプロジェクト管理システムや専用の工程管理ソフトウェアが、建設業界でも広く活用されています。

デジタルツールの主な利点として、リアルタイムでの情報更新・自動計算機能・データの一元管理・レポート自動生成などが挙げられます。
従来の紙ベースやExcelでの管理と比較して、作業時間の短縮と精度の向上が期待できます。
また、モバイル対応により現場からの直接入力が可能になり、事務所での転記作業が不要になるなど、業務プロセスの簡素化も実現します。

建設業界に特化したシステムでは、工程管理に加えて原価管理・品質管理・安全管理・顧客管理などの機能が統合されています。
これにより、プロジェクト全体を統合的に管理でき、各管理項目間の連携も強化されます。
導入時には、既存の業務プロセスとの整合性を確認し、段階的な導入計画を立案することが重要です。
また、利用者への十分な教育・研修を実施し、システムの効果を最大化する体制づくりが必要になります。

工程管理の効率化を図るため、KENTEM(株式会社建設システム)では建設業界特有のニーズに対応した統合型管理システムを提供しています。
工程表作成から進捗管理、関係者との情報共有まで、一気通貫でサポートする当社のソリューションについて、詳しくは以下からご確認ください。

まとめ

月間工程表は、建設プロジェクトの成功に不可欠な管理ツールです。
長期間にわたる工事の進行状況を月単位で把握し、全体工程と詳細工程を繋ぐ重要な役割を担います。

効果的な月間工程表の作成には、工事項目の統一・PDCAサイクルの活用・共有しやすいツールの選定という3つのポイントが重要です。
これらを適切に実践することで、工程管理の精度が向上し、プロジェクト全体の効率性が高まります。

また、遅延要因への対応策準備・情報共有体制の構築・デジタルツール導入により、月間工程表の運用効果を最大化できます。
継続的な改善活動を通じて、品質・コスト・納期の全てにおいて優れた成果を実現することが可能になります。

KENTEM(株式会社建設システム)では、月間工程表作成を始めとした、建設業界特有のニーズに対応したソリューションを提供し、お客様の業務効率化をサポートします。
工程管理の効率化をお考えの際は、ぜひ以下から詳細をご確認ください。

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