施工体制台帳とは?記入項目や作成におけるポイント、作成義務の有無を徹底解説
2024/05/10
2024/10/18
施工体制台帳とは特定の工事に関する情報を一つにまとめた書類です。
工事の元請けや下請け構造を細かく入力し、それぞれの関係性をまとめており、工事に関わる作業員の情報が記載されています。
施工体制台帳は建設業法によって作成が義務付けられており、工事に関わる会社にとって必ず作成しなければいけない書類の一つです。
ただ、施工体制台帳は記載項目が多く、どうやって記載するべきかわからない人もいるかもしれません。
今回は、施工体制台帳について、作成が求められる理由や作成が必要な対象者、書類内に記載すべき具体的な内容や作成時のポイントを紹介します。
建設業で施工体制台帳の作成が求められている人や、施工体制台帳の作成を少しでも効率化したい人はぜひ参考にしてください。
施工体制台帳とは?
施工体制台帳は工事における作業員や工事業者の関係性を明確にし、それぞれの保険加入の有無や雇用関係などを把握するための書類です。
ここでは施工体制台帳について以下の3つを解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
施工体制台帳を作成する目的
施工体制台帳を作成する目的は、以下のトラブルを防止するためといわれています。
施工体制台帳には、施工体系図といわれる工事に関わる人材の施工範囲を分担した図を提出する必要があります。
工事関係者の施工範囲を把握することで、工事における責任の有無や作業中の指示などをスムーズに行うことができる点が魅力です。
工事関係者を記載しておくことで、不良不適業者の参入を防ぐことができるため、工事の品質を維持することにもつながります。
施工体制台帳が求められる工事
施工体制台帳は、以下の条件に当てはまる工事で作成が求められます。
公共工事の場合は、発注者から工事を施工するための下請契約を締結した時点で作成が必要になります。
さらに作成した施工体制台帳は工事現場ごとで管理するだけでなく、書類の写しを発注者へ提出しなければならない点を確認しておきましょう。
民間工事の場合は、施工管理台帳の写しを発注者に提出する義務はありません。
ただ、工事現場ごとに管理しておく必要があり、発注者から閲覧請求があった場合は、閲覧作業に同行する必要があります。
民間工事と公共工事で取り扱いが異なる点を確認しておきましょう。
施工体制台帳を作成する対象者
施工体制台帳は、元請業者だけが記載する書類ではありません。
元請業者だけでなく、直接下請契約を結んだ一次下請や二次下請、三次下請など、工事に関わるすべての下請け業者に作成義務がある点を理解しておきましょう。
施工体制台帳の作成が求められる範囲を図でまとめました。
注意すべきポイントは、建設業許可を受けていない下請業者も対象ということです。
工事に関わるすべての作業員の作業範囲を明確にするため、下請け構造が多いほど書類の作成に時間がかかる点を把握しておくとよいでしょう。
施工体制台帳に記載する項目を
一覧で解説
ここからは施工体制台帳の具体的な入力項目について解説します。
施工体制台帳は以下のような書類を指します。
国土交通省の公式サイトには、エクセルの書類ファイルが公開されているため、施工体制台帳を作成する際は、ダウンロードしてみてください。
施工体制台帳に記載すべき項目は以下のとおりです。
項目が多くて入力に時間がかかる可能性があるため、施工体制台帳を作成する際は、事前に記載項目の情報を集めておくとよいでしょう。
施工体制台帳は、元請業者が記載すべき箇所と下請業者が作成すべき箇所が分かれています。
書類の提出期限は、自治体などによって異なりますが、下請契約締結から3週間ほどと指定されることがあるため、契約締結後はすぐに書類の作成に移りましょう。
施工体制台帳に関する
3つのポイント
施工体制台帳の準備や作成、保管に関して以下の3つのポイントに注意してください。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
添付書類の抜け漏れに注意する
施工体制台帳を提出する際は、添付書類の抜け漏れに注意してください。
添付が求められている書類は以下のとおりです。
今回は熊本県発注工事における施工体制台帳の添付書類の内容をまとめています。
発注先によって添付書類の内容が異なる可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
提出前のチェックを忘れずに行う
施工体制台帳は記載項目や提出書類が多い書類です。
提出前には、内容の抜け漏れがないかを確認しておきましょう。
発注先にてチェックリストがある場合は、チェックリストに沿って確認するのもいいですし、自社でチェック項目をまとめておくのもおすすめです。
特に元請業者は、下請業者が作成した書類内容や添付書類にも抜け漏れがないかを確認するのを忘れないようにしてください。
保存期間を守る
施工体制台帳は保存期間が決まっています。
国土交通省によると、営業所ごとに保存する帳簿や営業に関する書面の保存期間は以下のとおりです。
内容 保存期間 営業所ごとに営業に関する事項を記録した帳簿 5年間 営業に関する図書を記載した書面 10年間
書類は電子データでの保存も可能です。
管理の手間や紛失のリスクを防ぐためにも、データ保存を進めてみてください。
施工体制台帳の作成・管理の
注意点
施工体制台帳の作成や管理にはいくつか注意点があります。
詳しく見ていきましょう。
作成時の注意点
施工体制台帳を作成する際には、以下の点に注意する必要があります。
記載事項を漏れなく記入
施工体制台帳には、建設業法施行規則で定められた記載事項を全て記入する必要があります。
記入漏れがあると、発注者から指摘を受けたり、最悪の場合は営業停止処分などの行政処分を受けたりする可能性もあります。
最新の情報に更新
工事の進捗状況や関係業者の変更などがあれば、随時施工体制台帳に反映しましょう。
最新の情報が記載されていない台帳は、安全管理やトラブル対応の妨げとなります。
作成・管理に便利なツールを活用
近年では、施工体制台帳の作成・管理を支援するツールも存在します。ツールを活用すれば、台帳の作成や更新作業を効率化できます。
関係者全員で協力して、正確かつ最新の施工体制台帳を作成するようにしましょう。
管理時の注意点
施工体制台帳は、作成後も適切に管理する必要があります。管理時の主な注意点は以下のとおりです。
保管場所の明確化
施工体制台帳は、関係者が必要に応じて閲覧できるよう、分かりやすい場所に保管する必要があります。現場事務所や社内共有フォルダなど、アクセスしやすい場所を選びましょう。
また、閲覧権限を設定すれば、情報の漏洩を防ぐことができます。
法令遵守
施工体制台帳は、建設業法施行規則で定められた様式に従って作成する必要があります。
また、公共工事の場合は、発注者からの指示に従って追加項目を記載するなど、法令遵守を徹底しましょう。
デジタル化の活用
施工体制台帳をExcelなどの表計算ソフトや専用のクラウドサービスで作成・管理するケースが増えています。
紙ベースでの管理に比べて、更新や共有が容易になるだけでなく、検索機能を活用した情報収集などもスムーズに行えます。
施工体制台帳は、保存期間が定められていますので、その期間は適切に保管する必要があります。
誤って破棄してしまわないよう注意してください。
施工体制台帳の課題
情報の共有が難しい
施工体制台帳は、元請業者から下請業者までの施工体制を把握するために作成される書類ですが、情報の共有が難しいという課題があります。
具体的には、以下のような問題点が挙げられます。
- 作成フォーマットが統一されていない
- 情報管理体制が不十分
- 担当者の負担
これらの課題により、関係者間の連携が円滑に図れず、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 工程の遅延
- 品質トラブル
- 安全性の低下
- 情報漏洩のリスク
問題が発生すれば、工期の遅れやトラブルなどさまざまなリスクにつながり、施工体制台帳が本来の目的を果たせない可能性があります。
更新に手間がかかる
施工体制台帳の最大の課題の一つは、更新に多大な手間がかかることです。工事の進行に伴い、下請負人や技能者の変更が発生する可能性があります。
その都度、台帳を更新する必要があり、特に大規模工事では膨大な作業量となります。
また、更新漏れのリスクも高いです。
現場の状況が日々変化する中、全ての変更を遅滞なく反映させることは容易ではありません。更新が遅れると、台帳の信頼性が損なわれ、法令違反にもつながりかねません。
さらに、更新作業には正確性が求められます。
誤った情報を記載すれば、現場の混乱を招く恐れがあるからです。
そのため、更新の度に慎重な確認作業が必要となり、時間と労力を要します。
これらの課題に対処するため、効率的な更新システムを導入する企業も増えています。
保存場所を取る
施工体制台帳は、工事完了後も一定期間保存する必要があります。
しかし、紙媒体で保存すると場所を確保しなければなりません。
A4サイズの台帳を1冊保存する場合でも、数年分の台帳を保存するとなると、かなりのスペースが必要です。また、台帳を紛失したり、破損したりするリスクもあります。
これらの課題を解決するためには、以下のような対策が必要です。
- 電子化
- クラウドストレージの利用
- 不要な書類の整理・廃棄
これらの対策を講じることで、施工体制台帳を効率的に管理できます。
施工体制台帳に関するQ&A
施工体制台帳の作成義務がある工事は?
施工体制台帳の作成義務は、請負代金と工事の種類によって定められています。
民間工事の場合 |
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公共工事の場合 |
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上記に該当する工事であれば、元請業者は施工体制台帳を作成し、備え置くことが義務付けられています。
なお、下請業者であっても、元請業者から施工体制台帳の作成を依頼された場合は、作成に協力する必要があります。
施工体制台帳の提出期限は?
施工体制台帳の提出期限は、工事の種類によって異なります。
民間工事の場合 |
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---|---|
公共工事の場合 |
|
いずれの場合も、工事を開始する前に発注者または監督署に提出する必要があります。
提出方法は、発注者や監督署によって指定される場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
施工体制台帳に虚偽記載した場合の罰則は?
施工体制台帳に虚偽記載を行った場合、建設業法違反となり、以下のような厳しい罰則が科される可能性があります。
- 営業停止処分
- 入札資格の制限
- 刑事罰
虚偽記載は、重大な違反行為です。
上記のような罰則だけでなく、企業の信用問題にも関わります。
虚偽記載のリスクを認識し、正確な施工体制台帳の作成を心がけましょう。
まとめ
今回は施工体制台帳について、作成の目的や作成対象者、具体的に記載する項目や作成時のポイントを紹介しました。
施工体制台帳は、工事における作業員の関係性や作業範囲をまとめた書類です。
工事に関わる元請業者から一次〜三次下請業者まで記載が必要になる書類であるため、作成に時間がかかる点が注意すべきポイントです。
下請契約の締結から数週間という期限があることがほとんどですので、事前に必要な情報を集めておき、まとめて情報を入力できるように準備しておくとよいでしょう。
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工事に必要な書類データをまとめておくだけで、業務効率化にもつながるため、自社の働き方改革を進めたい人や施工体制台帳をスムーズに作成したい人はぜひ参考にしてください。
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