建設キャリアアップシステムとは?制度の概要や申請方法、期待される効果を詳しく解説
2024/05/08
2024/10/04
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、官民一体で普及を促進している建設業で働く技能者の情報登録システムです。
技能者の資格や経験年数に応じてレベルが表示され、作成したCCUSカードを使って工事現場の勤怠管理や情報の把握を行います。
事業者にとっても技能者にとってもメリットのある建設キャリアアップシステムですが、具体的にどんな取り組みか説明できない人もいるのではないでしょうか。
今回は建設キャリアアップシステムについて、基本的な概要や制度の魅力、具体的な登録方法を紹介します。
建設業で働く人で建設キャリアアップシステムの登録を検討している人はぜひ参考にしてください。
建設キャリアアップシステムの
概要を解説
ここからは建設キャリアアップシステムの概要について、以下の3つを解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
建設キャリアアップシステムとは
国土交通省によると、建設キャリアアップシステム(CCUS)の定義は以下のとおりです。
人手不足が深刻化している建設業の労働環境の改善を目指して、技能者のキャリアパスを明確にし、業界全体の人材育成とキャリアアップを目指しています。
たとえばある土木作業員が特定の資格を取得し、CCUSに登録されれば、技能者の市場価値が向上し、より良い条件での転職や昇進が可能になるという仕組みです。
資格が仕事に直結することが分かれば、技能者の中でも積極的な専門スキルの取得を目指すようになるかもしれません。
建設キャリアアップシステムは技能者それぞれのキャリア形成を積極的に支援し、建設業全体のスキル向上を目指します。
建設キャリアアップシステムの仕組み
建設キャリアアップシステムは、以下の仕組みで進められています。
技能者の経験や資格をデジタルデータで管理することで、技能者それぞれの細かな情報を業界全体で共有できます。
技能者の能力を正確に評価できるようになれば、適切な工事や職場での配属につながるでしょう。
建設キャリアアップシステムの仕組みにより、技能者は自身の能力と実績を明確にアピールでき、事業者は工事の規模に見合った作業員を探せるようになります。
2024年1月までの建設キャリアアップシステムの利用状況
2024年の時点で建設キャリアアップシステムの導入率はどのくらいなのでしょうか。
国土交通省の調査による技能者・事業者の建設キャリアアップシステム登録者数の推移は以下のとおりです。
グラフを見ると、累積の登録者数は徐々に増加していることがわかります。
現場での利用は増加傾向との報告もあるため、今後も官民一体で普及を促進していくでしょう。
建設キャリアアップシステムの
3つの魅力
建設キャリアアップシステムには以下の3つの魅力があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
技能者が能力や経験に応じて適切な処遇を受けられる
事業者は採用時に技能者の実績やスキルを簡単に確認できます。
さらに経験年数や取得資格が増えることでレベルアップすることが可能です。
さらに事業者はレベルの高い人材を求めているため、建設キャリアアップシステムのレベルが上がることでより条件の良い会社に転職できる可能性も広がります。
実績やスキルを可視化することで、能力や経験に応じた適切な処遇を受けられる点が魅力です。
雇用時点で技能者の実績やスキルを可視化できる
建設キャリアアップシステムは事業者にとっても魅力的な制度です。
なぜなら事業者は、CCUSカードの情報を見ることで、採用時に技能者の実績やスキルを簡単に確認できるからです。
採用時に提出する職務経歴書だけでなく、データでまとめられた経歴があるだけでも採用時の判断基準が広がるでしょう。
建設キャリアアップシステムを採用していることをアピールすれば、レベルの高い求職者が集まる可能性もあります。
適切な人材を効率良く採用するためにも、制度を活用する事業者が増えるかもしれません。
工事現場の作業員の出退勤管理が楽になる
建設キャリアアップシステムの利用は、採用時だけでなく工事中の業務も効率化できます。
CCUSカードは出退勤の記録カードとしての役割もあるため、タブレットや専用の機械で出退勤管理が自動化できれば、勤怠管理もスムーズに進められるでしょう。
技能者が現場に到着した際にCCUSアプリを使ってチェックインすることで、正確な勤務時間の記録が可能になれば、残業代の未払いや勤怠時間の管理不足などを防ぐことが期待できます。
工事現場の業務効率化としても建設キャリアアップシステムは活躍できるでしょう。
建設キャリアアップシステムの目的
建設キャリアアップシステムは、建設業界の未来を変える重要な取り組みです。
ここからは建設キャリアアップシステムの目的について、以下の3つを解説します。
建設キャリアアップシステムの具体的な目的を詳しく見ていきましょう。
技能者の処遇改善と労働環境の向上
建設キャリアアップシステムの主要な目的の一つが、技能者の処遇改善と労働環境の向上です。
システムは、技能者の皆さんの経験や資格を正確に記録し、可視化します。
具体的には、技能者の資格や現場での経験年数、技能レベルなどが電子的に管理されます。
技能者カードを通じて簡単に確認できるようになるため、技能者の皆さんは自身のスキルや経験を適切にアピールしやすくなります。
能力に見合った評価や報酬を受けやすくなる可能性が高まるでしょう。
さらに、建設キャリアアップシステムにより、技能者の方々のキャリアパスが明確になります。
将来の目標設定がしやすくなり、スキルアップへのモチベーションも高まるかもしれません。
労働環境の面では、就労履歴の管理が簡単になるため、適切な労働時間管理や社会保険の加入促進にもつながります。
業界全体の生産性向上と人材確保
建設キャリアアップシステムは、業界全体の生産性向上と人材確保を目的としています。
特定の技能を持つ作業員が必要な現場があれば、システムを通じて迅速に適切な人材を見つけられます。
技能の習得や経験の積み重ねが、具体的な形で評価されることが分かれば、業界への新規参入を考える人が増えるかもしれません。
さらに、熟練技能者の技術やノウハウを若手に伝承することも期待できます。
システムに蓄積された情報を活用し、計画的な人材育成が可能になるでしょう。
技能者の能力評価の標準化と可視化
建設キャリアアップシステムの重要な目的の一つに、技能者の能力評価の標準化と可視化があります。
システムにより、技能者の皆さんのスキルや経験が公平に評価され、誰にでも分かりやすく示されるようになります。
システムによる評価の特徴は、以下のとおりです。
- 統一された基準での記録
- 4段階のレベル分け
- 資格、就業履歴、技能講習の反映
具体的には、保有資格や就業履歴、技能講習の受講歴などが統一された基準で記録されます。
これらの情報を基に、技能者の方々は4段階のレベルに分けられます。
レベル1は初級技能者、レベル2は中堅技能者、レベル3は職長として現場管理のできる技能者、レベル4は高度なマネジメント能力を持つ登録基幹技能者を示します。
標準化された評価により、技能者の皆さんは自身の現在の位置づけを明確に把握しやすくなるでしょう。
雇用する側にとっても、技能者の能力が一目で分かるため、適切な人材配置や育成計画の立案がしやすくなるでしょう。
建設キャリアアップシステムの
申請方法を解説
建設キャリアアップシステムは技能者と事業者のそれぞれ登録方法が異なります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
技能者の申請方法
技能者が建設キャリアアップシステムに登録するには、以下の3種類の方法があります。
登録方法 申請料金 インターネット申請 2,500円 郵送申請 3,500円 窓口申請 3,500円
※早期割引あり
※60歳以上の方の特例措置あり
カードの有効期間は10年間(本人確認書類未提出の場合は3年)で、登録時には以下の情報が必要です。
必須情報 本人情報
(住所、氏名、生年月日、性別、国籍 等)
所属事業者名、職種
社会保険加入状況、建退共加入状況 等推奨情報 保有資格、研修受講履歴、表彰
健康診断受診歴
インターネット申請であれば料金も抑えられ、いつでも申請できるメリットがあります。
割引制度も用意されているため、自分が利用できる内容がないか確認してみてください。
事業者の申請方法
事業者の申請方法は以下の3種類です。
- インターネット申請
- 郵送申請
- 窓口申請
どの申請方法を使っても以下の料金が発生します。
内容 申請料金 支払いサイクル 注意点 事業者登録料 資本金に応じて
3,000円~120万円5年毎 個人事業主は一律3,000円
一人親方は無料
早期割引あり管理者ID利用料 2,400円/1ID 毎年 1ヶ月あたり200円
申請時には以下の情報を登録しましょう。
- 商号、所在地
- 建設業許可情報
- 資本金、業種等
- 社会保険加入状況
申請料金が事業者によって異なるため、まずは登録機関で自社の登録料を確認するとよいでしょう。
建設キャリアアップシステムの課題
建設キャリアアップシステムは、建設業界に革新をもたらす一方で、いくつかの課題に直面しています。
システムの導入には多くのメリットがありますが、現場での運用には以下のような課題も挙げられます。
それぞれの課題の内容を詳しく見ていきましょう。
システム導入コストと事務負担の軽減
建設キャリアアップシステムの導入にあたり、多くの事業者が直面する課題の一つが、システム導入コストと事務負担の問題です。
システムの導入には、専用のカードリーダーの購入や、ソフトウェアのインストールなどの初期投資が必要です。
さらに、技能者情報の登録や更新、日々の就業履歴の記録など、新たな事務作業も発生します。
この課題に対して、国や業界団体はさまざまな支援策を検討しています。
例えば、導入コストの補助金制度や、事務作業を効率化するためのソフトウェアの開発などが進められています。
事業者も、システムの導入を段階的に進めるなど、負担を分散させる工夫をしているようです。
長期的な視点で見れば、システムの導入によって業務効率が向上し、コストと労力の削減につながる可能性もあります。
中小企業や地方での普及促進
建設キャリアアップシステムの普及では、中小企業や地方での導入促進が大きな課題となっています。
大手企業に比べて、中小企業や地方の事業者は経営資源が限られているため、システム導入のハードルが高くなりがちです。
地方では建設現場が点在しているため、カードリーダーの設置や管理が難しい場合もあります。
これらの課題に対して、国や業界団体はさまざまな支援策を講じています。
例えば、導入補助金の拡充や、専門アドバイザーの派遣なども選択肢の一つです。
中小企業や地方の事業者向けに、簡易版のシステムやクラウドサービスの開発も進められています。
これらのサービスを利用すれば、初期投資を抑えつつ、システムの恩恵を受けることができるようになるでしょう。
皆さんの地域でも、建設キャリアアップシステムの導入が進むことで、建設業界全体の底上げにつながるかもしれません。
地域の特性に合わせた導入方法を考えてみるのはいかがでしょうか。
データの正確性と更新頻度の維持
建設キャリアアップシステムの重要な課題の一つに、データの正確性と更新頻度の維持があります。
システムが効果を発揮するためには、登録されている情報が常に最新で正確である必要があります。
データの正確性と更新に関する主な課題には、以下のようなものが挙げられます。
- 技能者の資格や経験の変更反映
- 日々の就業履歴の確実な記録
- 事業者側の情報更新の負担
技能者の皆さんが新しい資格を取得したり、異なる現場で経験を積んだりした場合、その情報をタイムリーにシステムに反映する必要があります。
日々の就業履歴も、確実に記録されなければなりません。
一方で、事業者の方々にとっては、こうした情報の更新作業が新たな負担となる可能性があります。
特に小規模な現場や、短期の工事では、毎日の記録が煩雑に感じられるかもしれません。
これらの課題に対しては、更新作業の自動化や、モバイル端末を活用した簡易入力システムの開発などが進められています。
建設キャリアアップシステムの
取り組み事例
建設キャリアアップシステムの導入が進む中、多くの企業や団体が独自の取り組みを行っています。
それぞれの取り組み事例を見ていくと、建設キャリアアップシステムの可能性や、実際の運用方法がより具体的にイメージできるでしょう。
ここでは3社の建設キャリアアップシステムの取り組み事例を紹介します。
大林組
大手ゼネコンの大林組は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入に積極的に取り組んでいる企業です。
大林組の推進体制は、本社、支店、現場に至るまで、きめ細かく構築されています。
大林組の主な取り組みには、以下のようなものが挙げられます。
- 社内外への周知活動の徹底
- 協力会社や技能者への支援
- 最新技術の活用
社内では、説明会やEラーニングを通じて、CCUSの重要性を伝えています。
社外向けには、協力会社への説明会や技能者登録会を開催し、普及を促進しています。
特筆すべきは、顔認証システムの導入です。
顔認証システムにより、確実な本人認証が可能になり、カード忘れの問題も解消されました。
現場の入退場動線に専用ゲートを設置するなど、運用面でも工夫を重ねています。
さらに、職長手当のCCUS登録の義務化や、注文書・請書の書式改定など、制度面での取り組みも進めています。
鹿島建設
鹿島建設は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及に向けて、多角的な取り組みを展開している企業です。
鹿島建設の取り組みは、社内体制の整備から協力会社への支援まで、幅広い範囲をカバーしています。
鹿島建設の主な取り組みには、以下のようなものが挙げられます。
- 社内推進体制の強化
- 独自の普及促進策の実施
- 協力会社への積極的な情報提供
2017年から社内ワーキンググループを設置し、CCUSの運用スキームや普及促進策を検討しています。
特筆すべきは、自社の優良職長制度の認定要件にCCUS技能者登録を追加したことです。
協力会社への周知も徹底しており、機関誌やHPでの情報提供、専門家を招いた講演会の開催など、さまざまな形で情報発信を行っています。
さらに、労務管理システムを全社展開し、CCUSとの連携を強化しています。
鹿島建設の取り組みは、生産性向上と技能者の処遇改善につなげる好例といえるでしょう。
西松建設
西松建設は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及に向けて、幅広い取り組みを展開しています。
西松建設の取り組みは、協力会社への支援から現場での実践まで、多岐にわたっています。
西松建設の主な取り組みは、以下のとおりです。
- 協力会社への加入推進活動
- 事業者・技能者登録の支援
- 現場でのCCUS運用サポート
2018年から協力会会員会社への説明会や職員向け研修会を継続的に開催しています。独自のポスターやチラシを作成し、全現場で掲示するなど、積極的な情報発信を行っています。
特筆すべきは、優良技能者制度の改訂です。
2021年4月からは、制度認定者のCCUS登録を義務化しました。この取り組みにより、技能者のCCUS登録を推進しています。
現場支援にも力を入れており、CCUS窓口担当者が中心となって、現場登録や施工体制登録をサポートしています。
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まとめ
今回は建設キャリアアップシステムについて、制度の概要や仕組み、技能者や事業者にとってのメリット、具体的な登録方法を解説しました。
建設キャリアアップシステムは建設業の技能者にとって、スキルや実績に基づいた適切な評価を受けるための効果的な手段です。
レベルごとのカードが作成されることから、更なるレベルアップを目指して仕事に従事できるため、技能者のレベルアップによる建設業全体のスキル向上にも役立つでしょう。
建設キャリアアップシステムはカードを使ったデータ管理であることから、出退勤にもタブレットなどの電子ツールが求められます。
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