建設業の働き方改革で対策すべきこととは?ガイドラインの概要と対策事例、おすすめツールを紹介
2023/09/25
建設業界は「2024年問題」といわれる、2024年までに進めなければいけないさまざまな課題を抱えています。
なぜなら2024年4月から「働き方改革関連法」が適用開始されるからです。
建設業界の働き方改革にともない、何から始めれば良いか分からない人もいるのではないでしょうか。
今回は建設業界の働き方改革の概要の説明から、対策すべき項目内容やおすすめのツールなどを詳しく解説します。
他社の働き方改革の取り組みを知りたい・取り組むべき対策を知りたい人はぜひ参考にしてください。
2024年から本格的に始まる建設業界の働き方改革とは
建設業界の働き方改革は大きく分けて以下の2つに分かれます。
ここではそれぞれの制度の概要を解説します。
罰則付きの時間外労働時間の上限設定
労働基準法の改正により、2024年4月1日から罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されます。
今までの建設業界では、36協定といわれる労使協定を結べば、上限なく時間外労働が可能でした。
しかし今回の改正によって、36協定を結んだとしても、時間外労働に下記の上限が追加されました。
原則 時間外労働の上限は月45時間以内かつ年360時間以内 特別条項
(臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合)①時間外労働が年720時間(月平均60時間)以内 ②時間外労働が年720時間の範囲内で
a.時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月の平均がすべて1か月あたり80時間以内
b.時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満
c.時間外労働が月45時間を上回る月は、年6回が上限
上限を超過して働かせた場合、企業に対して罰則があります。
そのため、すべての企業が残業時間を減らす取り組みに追われているのです。
時間外労働の割増賃金の値上げ
労働基準法の改正によって、2023年4月からは中小企業においても60時間を超える法定時間外労働の割増賃金率が引き上げられました。
これにより中小企業は、以前であれば25%の割増賃金の支給でしたが、大企業と同じ50%の割増賃金を支給するように変更されました。
中小企業としては、支払う賃金が増えたことで経理的な手間や経済的な打撃があるといえるでしょう。 しかしながら、中小企業で働く従業員の視点からは長時間労働の解消や労働環境が改善された、とも考えられます。
建設業の働き方改革が求められる背景
働き方改革関連法が成立した背景には、建設業界の2つの課題があるといわれています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
建設業界の高齢化
建設業界では、労働力の高齢化が深刻な課題です。
国土交通省のデータでは、建設業界の55歳以上の高齢者の割合が全産業と比べて2%以上も高く、29歳以下の若者の割合が5%近く低いことが発表されています。
高齢化の課題が解消されなければ、数年後に60歳以上に達した技能者が大量退職してしまい、建設業全体の人材不足が深刻化します。
働き方改革によって労働環境を改善し、若者の就職率を上げる取り組みが必須といえるでしょう。
長時間残業の深刻化
建設業界では、長時間労働や過度な残業が慢性的な問題となっています。
厚生労働省の調査によると、建設業界の月間所定内外労働時間の実態は以下のとおりです。
【令和3年の産業別月間労働時間数】
所定内 所定外 全産業 142.4 11.6 建設業 169.3 19.7 卸売業 134.7 7.9 製造業 159 15.3
データを見て分かるように、建設業界は他業界と比べて所定内労働時間が多いという課題があります。
また、所定外労働の平均時間も他産業に比べて多いため、全体的な労働時間が長くなっています。
そのため、適正な労働時間を確保するために週休2日制の導入や残業時間削減に向けた取り組みが必要です。
建設会社が取り組むべき
国土交通省のガイドラインの内容を解説
働き方改革関連法の成立にともない、建設業界全体でも働き方改革の動きが活発になっています。
国土交通省では下記の5つのガイドラインが策定されました。
それぞれ詳しく解説します。
適正な工期設定・施工時期等の平準化
建設業の長時間残業の主な原因には、厳しい工期設定が挙げられます。
ガイドラインでは長時間労働や休日出勤などの課題を解決するために、工期設定や施工時期の平準化が発注者と受注者に求められています。
準備期間や現場の後片付け期間、降雨日や降雪日・猛暑日、出水期などの作業不能日数を踏まえて工期が設定されることで、工事従事者の負担を削減できるでしょう。
社会保険の法定福利費などの必要経費の確保
建設会社が契約をする際、社会保険や法定福利費などの必要な経費を確保したうえで契約金額を設定しなければなりません。
なぜなら必要経費を省いて契約金額が設定されれば、利益確保を目的に従業員に対する必要経費が削られてしまうリスクがあるからです。
ガイドラインでは社会保険や安全衛生経費、法定福利費などの必要経費は、見積書や請負代金内訳書に明示することが求められ、必要経費へのしわ寄せ防止対策が徹底されています。
ICTの活用による生産性の向上
国土交通省は、ICT技術の活用による建設業界の生産性向上を支援しています。
ICT化の事例を挙げると、ドローンを使った3次元測量の実施やBIM・CIMの積極的な活用による設計作業の手間の削減などがあります。
ICTの活用によって業務効率化が実現すれば、長時間残業や休日出勤などの課題も解決できるでしょう。
下請契約における適正な工期・請負代金の徹底
ガイドラインでは、下請け業者の工期や請負代金に関する対策も行われています。
なぜなら、建設工事において下請けになればなるほど工期が厳しくなり、請負金額が少なくなるという課題があるからです。
週休2日の確保や、日給制の技能労働者の処遇水準を把握すること、適切な賃金水準を確保することで、下請け業者や一人親方の働き方の改善にも貢献しています。
これらの対策により下請契約の公平性と透明性が向上すれば、業界全体の健全な競争環境が促進されるでしょう。
適正な工期設定等に向けた発注者支援の活用
適正な工期設定に関して、適切な判断を行うには専門家の支援が必要です。
ガイドラインでは建設会社に対し、建設コンサルタントと発注者が協力して適正な工期を設定する方法を提案しています。
発注者と建設コンサルタントとの連携により適切な工期設定が行われることで、工事の品質が向上し、業務効率化につながるでしょう。
すぐにできる働き方改革の事例とは
ここではガイドラインの項目を踏まえて、できるだけ早く取り組みやすい項目を3つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
AIロボットを活用した建設現場のIoT化
働き方改革の事例として、AIロボットを活用した建設現場のIoT化が挙げられます。
実際にスーパーゼネコンのひとつである清水建設では、水平搬送ロボットの「Robo-Carrier(ロボ・キャリア)」を導入し、建設現場の資材搬入をサポートしています。
AIロボットは建設現場での監視や重い資材の搬入作業に活用できるため、作業員の安全対策や作業効率向上に役立つでしょう。
自社にあったAIロボットを検討してみてください。
社員の社会保険加入
社員の社会保険加入や適正な給与の支給はできるだけ早く進めましょう。
なぜなら今後は、社会保険に未加入の建設企業に対して建設業の許可・更新を認めない仕組みが構築される可能性があるからです。
社員の労働環境を守ることは、会社の存続にも役立ちます。
アプリやソフトウェアを活用した業務のDX化
建設業界ではアプリやソフトウェアを活用したDX化も進められています。
DX化事例は以下のとおりです。
- 図面をデータで管理することで、資材発注や図面確認の手間が削減され、業務効率が向上
- 施工管理アプリを活用することで工事現場でのコミュニケーションが円滑になり作業スピードが向上
業務で扱う資料がデータになるのをきっかけに施工管理アプリを導入するのがおすすめです。
会社全体でアプリを活用した業務に取り組めるようになれば、作業効率が上がり残業時間の削減にも役立つでしょう。
建設現場のDX化には「PRODOUGU」がおすすめ
施工管理アプリの導入を検討している人は、「PRODOUGU」がおすすめです。
「PRODOUGU」では、図面のデータ管理や手書き入力、CADデータの取り込みなど建設業界の各工程で役立つ機能が1つのツールで扱えます。
施工管理者であれば、iPadを使って電子小黒板を利用できる点や撮影データの自動割り振り・出力機能があれば、業務効率化につながるのでないでしょうか。
ツールを導入すれば人数無制限で利用できるため、会社にひとつ導入するだけでDX化が実現します。
詳しい機能や利用方法が気になる人は、「PRODOUGU」の特設サイト にてご確認ください。
「PRODOUGU」特設サイト:https://www.kentem.jp/product-service/prodougu/special-site/
まとめ
今回は建設業界の働き方改革の概要や、対策すべき項目、今から取り組める内容やおすすめのツールを解説しました。
働き方改革により建設業界の労働環境が改善すれば、若者の入職率が上がり、課題である人材不足を解消できるかもしれません。
自社の社員の労働環境を改善することは、会社の未来への投資としても役立ちます。
社員の社会保険加入や施工管理アプリの導入など、今できることから始めてみてください。
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