導入事例
バックオフィスは“現場をやらない監督”
分業化で実現した新しい現場運営のかたち
土屋建設株式会社
- 所在地
- 静岡県伊豆の国市
- ウェブサイト
- https://www.izu-tuchiya.co.jp/

導入背景
- 現場監督の業務過多と働き方改革への対応
- 業務の属人化と情報共有の難しさ
- ICT活用への対応力不足
- 分業化による業務効率改善と働き方の多様性の実現
- テンプレート化・体系化による情報共有の促進
- ICT活用の底上げと現場への貢献度向上
現場を救うのは“分業化”。7年かけて育てた新しいバックオフィスチーム
働き方の多様性、生産性の向上、そして拘束時間の短縮。 これを実現するためには“分業化”しかないという思いから、7年前から分業化に基づくバックオフィス体制づくりに取り組んできました。
当初は、情報処理部として現場監督が担っていた書類業務の一部を引き受け、事務職でも対応できる業務を整理するところからスタートしました。その後、2年前に産休から復職した女性技術者のキャリアチェンジや新規採用を経て、現在は総勢5名のバックオフィスチームが現場を支援しています。
近年、バックオフィスチーム内でも専門性に応じた分業を進めています。技術的な知識を要する業務は技術系のバックオフィス職が担当し、それ以外は事務職が担うことで効率化を図っています。現場技術者とのコミュニケーションの中で互いの役割分担を明確にし、設計照査、施工計画書などの着工前業務から、図面修正、写真管理、出来形管理、品質管理、ICT対応まで幅広く対応していまして、施工管理に必要な「デキスパート」や「INNOSiTEシリーズ」も日常的に操作し、現場を支えています。
バックオフィス職の育成については、当初は座学研修を行いましたが、座学だけでは知識の定着が難しいと感じました。そこで方針を転換し、日常的にシステムを使いながら「必要な場面で」実務を通して習得する方法へ。実践的な学びにより、習得スピードは格段に向上しました。
“手探り”から“自走”へ。信頼でつながる現場連携
バックオフィス業務は、同時に複数の現場に対応するため情報共有が不可欠です。現場担当者からの依頼や指示は、ビジネスチャットを通じてテンプレートを用いる形式をとっています。このテンプレートも試行錯誤しながら自分たちで作成しました。例えば産廃契約では「契約日」や「運搬区間」など必要事項を選択リストから選べるようにし、さらに作成期日を現場担当者に記載してもらう仕組みです。現在では数種類のテンプレートがあり、依頼内容に応じてバックオフィス職が書類やデータを作成しています。
また、タスク管理もチェック表を用いて体系化しました。土木工事は工種が多岐にわたるため難しさもありますが、舗装工事ではパターン化が進んでおり、一連の業務フローとして整理できています。
取り組み初期は手探りで、現場から依頼してもらわなければ業務を進められませんでした。ところが、当時現場を持っていた笹原常務が積極的にバックオフィスへ業務を回し成功事例が生まれたことで、徐々に周囲にも浸透することができました。今の体制になって丸2年。以前はバックオフィス自ら仕事を取りに行っていましたが、今では現場側から「これをお願いしたい」と依頼されるようになり、現場との信頼関係が構築され、チームで現場を運営している実感があります。
目指すは“現場をやらない監督”。究極のバックオフィスへ
私たちが考えるバックオフィスは、究極的には現場運営全体を理解した人材、いわば「現場をやらない監督」のような存在を目指しています。協議資料の作成や材料の発注など、分業をしながらもそれぞれの得意分野を活かし、多様な業務に対応できる体制が理想です。
今後、特に注力したいのがICTです。現在は、対応可能な現場については活用の有無にかかわらず、バックオフィス「SiTECH 3D」を用いて三次元設計データを作成しています。これは自分たちのスキル向上に直結し、事前の図面照査にも役立っています。
バックオフィスでは「デキスパート」や「INNOSiTEシリーズ」も便利に活用していますが、強いて要望を挙げるなら、「SiTECH 3D」にアンドゥ(戻る)機能があると嬉しいです。入力ミスをした際に前の状態に戻れると、さらに使い勝手が良くなると感じています。
バックオフィスのやりがいは、作成した三次元設計データをICT建機や「快測ナビ」で現場に活用してもらった時です。自分たちが作ったデータを現場で活用してもらえる時が、一番達成感を感じる瞬間です。これからも現場に寄り添いながら、分業とICTの力を活かし、理想のバックオフィスに少しずつ近づけたら嬉しいです。