福祉施設の運営指導後の指摘対応と監査・BCP整備のポイント
2025/06/30
福祉施設で「運営指導の結果、改善報告を求められた」「次は監査かもしれない」と感じている方は少なくないのではないでしょうか。
2024年からは、BCP(業務継続計画)の策定と運用も義務化され、対応しきれないまま不安を抱えている施設も多く見られます。
結論から言えば、再指導・再監査の回避のためには、日常業務の中で指摘対応やBCP体制の仕組み化が必要です。帳票や体制だけ整っていても、それが運用されていなければ「改善されていない」と判断される可能性があるからです。
本記事では、福祉施設が運営指導をきっかけに見直すべき記録・体制整備のポイントと、BCPの運用強化に向けた具体策を解説します。情報管理やBCP運用を一元化できるツールも紹介し、日々の業務に無理なく取り入れる方法も提案しています。
再指導や報酬減算を避けたい方は、ぜひ参考にしてください。
福祉施設が運営指導で
指摘を受けた場合は?
運営指導で、行政から指摘を受けた場合「まず何を確認すればよいのか」「どこまで対応すればいいのか」と不安を感じる担当者も多いのではないでしょうか。
特に、福祉施設では日々の業務が多忙な中、指摘内容の整理や改善対応までを短期間で進める必要があるため、現場には大きな負担がかかります。
ここでは、運営指導で実際にどのような指摘が行われるのか、口頭か文書かによって何が変わるのか、そしてその後に取るべき具体的な対応について整理していきます。
口頭指摘か文書指摘かで対応が違う
運営指導での対応は、口頭での指摘か文書での指摘かによって異なります。
口頭指摘は比較的軽微な内容であることが多く、報告書の提出義務はありません。一方、文書での指摘は改善命令に近い重みがあり、対応期限までに是正内容を報告する必要があります。
それぞれの違いを整理すると、以下のとおりです。
| 指摘の種類 | 特徴 | 対応の必要性 |
|---|---|---|
| 口頭指摘 | 軽微な指摘。記録に残らないことも多い | 場内対応+再発防止の検討が望ましい |
| 文書指摘 | 具体的な指摘内容が文書で通知される | 改善計画の提出や証拠書類の添付が求められる |
文書指摘を受けた場合には、改善報告書の作成・提出に加えて、再指導や監査に備えて記録や手順の見直しも求められます。
「何を、どのように、いつまでに対応するか」を正確に把握するためにも、まずは指摘の形式を冷静に確認する必要があります。
文書指摘を受けた場合の対応フロー
文書で指摘を受けた場合は、改善内容を文書で報告し、根本的な是正に取り組む必要があります。
文書指摘は「施設として公式に改善を求められている状態」であり、放置すれば再指導・監査につながる可能性があるからです。形式的な対応ではなく、実質的な改善と証拠提出が求められます。
対応の基本フローは次のとおりです。
| 指摘内容の精査 | 文書内の記載をもとに、具体的に何が問題とされたかを確認 |
|---|---|
| 原因の洗い出し | 業務プロセスや記録体制など、背景にある問題を特定 |
| 改善策の検討・実施 | マニュアル改定、研修実施、記録様式の見直しなど |
| 改善報告書の提出 | 期限内に指定様式で提出、必要に応じて証拠書類を添付 |
| 再発防止の継続策 | チェックリストや定期点検の仕組みづくり |
報告書は、単なる形式的な書類ではなく「今後どう改善していくか」という施設の姿勢を示すものでもあります。
担当者が的確にフローを把握しておくことで、混乱を防ぎ、信頼を損なわない対応につながります。
改善されない場合は?
運営指導での指摘に適切な対応を行わなかった場合、施設は監査や行政処分の対象になる可能性があります。
特に、重大な違反や不正が疑われる場合は、日常的な改善では済まされず監査や指定取り消しなど、経営に直結する重い措置に発展する場合もあります。
実際に、以下のようなケースは「監査の実施」「行政処分の検討」につながる可能性があるため注意が必要です。
- 利用者への虐待や重大な権利侵害
- 故意または重大な報酬請求の不正
- 虚偽の報告や正当な理由のない指導拒否
- 指定基準に著しく違反している運営状況
監査の結果、状況によっては以下の措置が取られることもあります。
- 勧告・命令の発出
- 指定の効力の停止(一定期間の事業停止)
- 指定そのものの取り消し(事業終了)
- 不正請求分の返還+加算金(最大40%)
上記のような結果は、利用者への影響だけではなく、職員の雇用や施設の継続にも重大な影響を及ぼします。
運営指導で指摘を受けた場合は、落ち着いてから対応しようでは遅いかもしれません。
改善が不十分だったり対応が遅れたりすると、状況によっては監査や処分に発展する場合もあるからです。
その場限りではなく、指摘された内容に対して具体的な改善を速やかに進めることが、施設の信頼を守るために求められます。
指摘されやすい項目と是正ポイント
「日々の業務をこなしているつもりでも、いざ運営指導を受けたら意外な点を指摘された…」そんな経験を持つ福祉施設は少なくありません。
実際、運営指導では記録や体制、マニュアルの整備状況など、日常の積み重ねが問われる項目が重点的にチェックされます。
BCPの形骸化も、昨今は特に指摘されやすい傾向にあるため、注意が必要です。
ここでは、よくある指摘ポイントをテーマ別に整理し、それぞれで意識すべき是正の視点をわかりやすく紹介します。
記録・契約書類などの不備
福祉施設への運営指導では、記録や契約書類に関する不備が最も多く指摘される項目です。
記録類や契約書類は、サービス提供の正当性や利用者との合意を示す証拠となる重要な書類だからです。内容の不備や記載漏れ、保存期間の管理不備などがあると、事業運営全体の信頼性が疑われることにもつながります。
例えば、以下のようなケースは指摘対象となりやすい項目です。
- 利用契約書の交付日が不明、または未交付の状態
- モニタリング記録が定期的に実施されていない
- サービス提供記録の内容が曖昧・形式的で具体性に欠ける
- 利用者の署名・押印漏れ、保管期間の規定違反
是正に向けては、記録ルールの明文化、職員間での認識統一、定期的な内部点検の実施が効果的です。書類は作ることが目的ではなく、必要なときに誰が見ても正しく状況が把握できる状態に保つことが求められます。
職員体制・研修・マニュアル関連の不備
運営指導では、人員配置や研修、業務マニュアルといった人に関わる体制面の不備も頻繁に指摘されます。
記録や体制が整っていなければ、施設としての責任ある運営を行っているとは見なされないからです。現場で問題なく回っていても、書類が未整備だったり記録が残っていなければ、形式不備として扱われてしまいます。
例えば、以下のようなケースが指摘されることがあります。
- 人員配置表が古く、実際の配置状況と一致していない
- 職員研修が未実施、または記録が残っていない
- マニュアルが更新されておらず、実態と乖離している
- 虐待防止・感染症対応などが「形式上はあるが実際に使われていない」
是正するには、シフト表・資格状況の定期確認、研修記録の一元管理、マニュアル更新サイクルの設定が効果的です。
「現場が回っていれば大丈夫」ではなく「整っていることを示せる状態」であることが、運営指導では重視されます。
BCPが策定されていない・形だけで運用されていない
BCPが未策定、または策定済みでも実態に即して運用されていない場合、運営指導での指摘対象となることが増えています。
BCPが単なる書類上の準備ではなく、施設の危機対応力そのものを問われる重要項目だからです。
特にコロナ禍以降、感染症対応の強化や非常時の支援体制整備の必要性が強調されており、形骸化している計画は「整備されていない」と判断される可能性もあります。
よくある指摘の例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- ひな形のままのBCPを提出しており、施設ごとの実態が反映されていない
- 非常時の役割分担や連絡体制が曖昧なまま
- BCPの内容が職員に共有されておらず、実地訓練も行われていない
- 感染症・自然災害など複数のリスクへの対応が整理されていない
是正に向けては、BCPの定期的な見直し、職員との共有体制、シミュレーション訓練の実施が欠かせません。
BCPは作成すればOKではなく、非常時に実際に機能できる計画でなければなりません。施設の運営責任として、形骸化を防ぎながら運用体制を整えていきましょう。
再指導・再監査を避けるために
整備しておくべきポイント
運営指導で指摘を受けたあと、とりあえず提出だけ終えた状態のままにしていませんか?
一度の是正対応で終わったつもりでも、改善が不十分だったり記録が残っていなかったりすれば、再度の指導や監査につながることもあります。
福祉施設の運営は、準備していた証拠があるかどうかが重視されるため、日頃から体制や記録の整備を続けておくことが、長期的な安心につながります。
ここでは、再指導や再監査を防ぐために整えておくべき具体的なポイントを確認していきましょう。
情報管理の一元化
運営指導で「必要な書類がすぐに出せない」「記録が更新されていない」といった理由で指摘を受ける施設は少なくありません。
原因は、情報が複数の場所に分散していたり、属人的な運用に依存していたりするせいです。
情報管理を一元化すれば、書類の提出漏れや記録の抜けを防ぎ、日常業務と監査対応をスムーズに連携させることが可能になります。
実際に、一元化の対象と管理方法を明確にすると、以下のように整理できます。
| 情報の種類 | 含まれる書類例 | 管理のポイント |
|---|---|---|
| 利用者関連 |
|
|
| 職員関連 |
|
|
| 組織・体制 |
|
|
| 是正対応 |
|
|
情報は「フォルダ整理+ルールの明文化」によって日常的に管理できるようにしなければなりません。
クラウドサービスや福祉専用の文書管理ツールを導入すれば、属人化を防ぎながら全体の整備も効率化できるでしょう。情報がすぐに出せる・内容が一貫している状態を維持すれば、再指導や再監査の回避につながります。
一元管理は、備えではなく「日常業務の基盤」として整える意識が必要です。
定期的な自主点検
運営指導で指摘を受けて是正したあとも、その状態を維持できていなければ、再度同じ指摘を受けるリスクがあります。
だからこそ、定期的に点検を行い、書類や体制が形骸化していないかを見直す仕組みが必要です。「一度直したら終わり」ではなく、業務の中で改善内容が継続的に機能しているかを確認するためです。
実際、改善報告は出したものの、記録更新が途絶えていたり、新しい職員に内容が共有されていなかったりといった理由で、同様の指摘を受けるケースも珍しくありません。
例えば、以下のような点検方法が効果的です。
- 月に一度、チェックリスト形式で「記録の最新化」「研修実施状況」「マニュアルの運用状況」などを確認
- 担当者をローテーションで設定し、属人化を防ぎつつ多角的にチェック
- 点検内容は記録として残し、次回の運営指導時に提出できるように保管
点検の実施そのものが、改善に本気で取り組んでいる施設としての評価にもつながります。
定期的な自主点検を習慣化すれば、再指導リスクの低減はもちろん、日々の業務改善にもつながっていきます。
BCP・感染症・虐待防止体制の強化
福祉施設では、日常業務だけではなく万が一の事態にも備えた体制づくりが求められます。
そのため、BCPや感染症対策、虐待防止などの体制が不十分だと、運営指導での指摘だけではなく、利用者や家族からの信頼にも関わってきます。
これは、これらの体制が単なる「書類上の整備」ではなく、実際の緊急時・非常時に機能する準備がなされているかどうかを問われるからです。
例えば以下のような状態は、形骸化として見なされることが多くなっています。
- BCPが作成されているものの、内容が数年更新されておらず現状と合っていない
- 感染症マニュアルがあるが、訓練や職員周知が一度も行われていない
- 虐待防止委員会は設置しているものの、実質的な会議や記録が存在しない
不備を防ぐには、体制の見直しとともに、運用の実態を証拠として残すことがポイントです。
具体的には、BCPやマニュアルの更新記録、研修実施状況の記録、定例会議の議事録などを整理し、担当者間で共有しておくことが有効です。
見える体制だけではなく動いている体制にしておくことが、施設運営の信頼性を支え、再指導リスクの軽減にも直結します。
実地指導・監査・BCP対応には
ツール活用も検討
記録の整備や体制の強化、点検の習慣化など、運営指導で指摘されやすい項目に対応するには、日々の積み重ねが必要です。
しかし、すべてを紙やExcelだけで管理しようとすると、情報の抜け漏れや属人化のリスクが高まり、対応のたびに慌ただしく資料をかき集めるような事態にもなりかねません。
運営上の課題を軽減する手段として、記録や体制管理を一元化できる専用ツールの導入が注目されています。
ツールを活用すれば、業務効率が上がるだけではなく「いつ・誰が・何を行ったか」を記録として可視化できるため、実地指導や監査時の裏付けにもつながります。
ここでは、紙やExcelによる管理の課題と、ツールを導入する際に意識すべきポイントを整理していきます。
紙やExcel管理の限界とリスク
多くの福祉施設では、記録や管理を紙やExcelで行っているケースが一般的です。
しかし、こうした方法は一見管理しやすいようでいて、一定の規模や業務量を超えると限界があります。なぜなら、紙やExcelは誰でも扱える反面、データの分散・更新の手間・検索性の低さといった問題を抱えやすく、記録の正確性や継続性を維持するには不向きだからです。
実際、以下のようなトラブルは現場でもよく見られます。
- 担当者が変わると記録の引き継ぎができず、記録内容が途絶える
- Excelファイルが複数存在し、どれが最新かわからなくなる
- 紙記録がバインダーに積まれており、必要な情報を探すのに時間がかかる
- 保存場所が不明・ファイル破損などで、指導時に提出できない
上記はすべて、運営指導・監査の現場で「記録不備」として扱われる要因となりえます。
紙やExcelでの管理には限界があることを前提に、「継続して使える仕組み」の検討が、日常業務と監査対応の両面において重要です。
ツール選定のポイント
業務負担の軽減や運営指導への備えとしてツールを導入する場合「何を選ぶか」よりも「どう使えるか」を重視する視点が必要です。
なぜなら、どれだけ機能が豊富でも、現場で定着しなければ結局は使われないツールになってしまうからです。
特に福祉施設では、職員のITスキルや業務フローとの相性が大きく関係するため、導入前に慎重な選定が求められます。
例えば、ツールを検討する際には次のようなポイントを確認すると良いでしょう。
- 操作が直感的で、現場職員でも使いこなせるか
- 利用者情報、職員記録、研修履歴などを一元的に管理できるか
- 監査や運営指導に必要な出力・報告書の自動化に対応しているか
- クラウド型か、オンプレミス型か、導入環境に合っているか
- サポート体制やマニュアルの充実度(導入後の継続利用を意識)
上記のようなポイントで比較すれば「便利そう」ではなく「現場で本当に役立つ」ツールを選ぶことができます。
選定段階で実際に使う人の意見を取り入れておくことが、導入後の運用定着につながります。
ツールは仕組みであると同時に人の業務を支える道具でもあることを忘れずに選定しましょう。
クロスゼロなら
「運営指導対応+BCP運用」
まで一元管理
2024年4月から、福祉・介護事業所にはBCPの策定・運用が義務化されました。
これに対応できていないと基本報酬の減算対象となるため、日常的にBCPを使える状態で整えておくことが求められます。
とはいえ、マニュアルや連絡網、災害時の対応資料をバラバラに管理していては、緊急時に混乱が生じる恐れがあります。
そこでおすすめなのが、総合防災アプリ「クロスゼロ」です。
クロスゼロは、BCP運用を「策定だけではなく、現場で動かせる体制」に落とし込む支援機能が充実しています。
特に以下のような機能が、運営指導・BCPの両方に有効です。
| 安否確認ツール | 災害時の一斉連絡・自動配信に対応 |
|---|---|
| チャット機能 | 職員間の情報共有をスムーズに |
| BCP資料共有 | マニュアル・シフト表などを一元管理 |
| 位置情報連携 | 送迎中の緊急時でも避難場所を把握 |
| 災害モード搭載 | 発災時に画面が自動で切り替わる |
| 掲示板・家族機能 | 災害時の連携・共有を支援 |
上記機能を日常業務に組み込んでおくことで「有事に備えた備蓄品は?」「避難訓練の記録は?」「BCPがどこにあるのか、誰が知っているのか?」といった不安を減らすことができます。
まずはサイトを確認し、無料体験などを活用して、実際の操作性や自施設へのフィット感を確認してみるのがおすすめです。
導入前にしっかり見極められるからこそ、現場への定着にもつながります。
詳細は、クロスゼロの介護・福祉向け特設サイトをご確認ください。
まとめ
運営指導は、単なるチェックではなく、福祉施設の運営体制を見直す機会でもあります。
記録・体制・マニュアルといった項目は一度整備して終わりではなく、日常的に見直し、運用し続ける仕組みづくりが再指導や監査の回避につながります。
BCPの策定・実行が義務化された今、非常時だけではなく、日頃の業務にも無理なく組み込める体制が必要です。
そうした継続的な取り組みを支える手段のひとつとして、記録管理やBCP共有をサポートする「クロスゼロ」のようなツールを活用してみるのも選択肢の一つです。
「クロスゼロ」なら、BCP資料・緊急連絡網・拠点シフトをアプリで常時共有。訓練から本番まで同じ導線で運用でき、“形骸化しないBCP”を実現します。
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