リスクアセスメントの評価基準は?|見積り方法や設定手順を紹介
2026/02/18
リスクアセスメントを効果的に実施するためには、適切な評価基準の設定が欠かせません。
評価基準が曖昧なままでは、リスクの優先順位付けが困難となり、対策の実効性が低下してしまいます。
本記事では、リスクアセスメントにおける評価基準の考え方から、具体的な見積り方法、そして実務で活用できる設定手順までを解説します。
ISO31000や厚生労働省の指針に基づいた客観的なリスク評価の方法を理解することで、職場の安全性向上や事業継続計画(BCP)の強化につなげることができます。
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リスクアセスメントの
評価基準とは?
リスクアセスメントを適切に実施するためには、まず評価基準の概念と位置づけを正しく理解する必要があります。
評価基準は、リスクの大きさを客観的に測定し、対策の優先順位を決定するための重要な判断軸となります。
ここでは、国際標準であるISO31000の枠組みに基づいて、リスク基準の定義と役割について詳しく解説します。
ISO31000が定めるリスクマネジメントの枠組み
ISO31000は、国際標準化機構(ISO)が定めたリスクマネジメントの国際規格であり、あらゆる組織がリスクを管理するための指針を提供しています。
この規格は、特定の業種や規模に限定されず、製造業からサービス業、公的機関まで幅広く適用できる汎用的な枠組みとなっています。
ISO31000では、リスクマネジメントを「リスクに関して組織を指揮し、管理するための調整された活動」と定義しています。
この枠組みの中で、リスクアセスメントはリスクの特定、分析、評価という3つのプロセスから構成されています。
組織がリスクマネジメントを効果的に実践するためには、まず自社の状況を理解し、リスクに対する基本的な方針を定めることが求められます。
その上で、具体的なリスクを特定し、評価基準に基づいて優先順位を決定していきます。
リスク基準の定義と役割
リスク基準とは、組織が「取ってもよいリスク」と「取ってはならないリスク」の境界線を定めるための判断基準です。
ISO31000では、リスク基準を「リスクの重大性を評価するために用いられる条件」と定義しています。
リスク基準の主な役割は、客観的なリスク評価と経営判断をつなぐ橋渡しをすることにあります。
数値化されたリスク評価結果を、実際の対策実施に結びつけるためには、明確な判断基準が不可欠です。
例えば、「リスクレベルが一定以上であれば即座に対策を講じる」「許容範囲内であれば経過観察とする」といった判断を可能にするのがリスク基準の役割です。
この基準があることで、組織全体で一貫したリスク対応が可能となります。
評価基準を設定する際に考慮すべき要素
リスク基準を設定する際には、組織の目的・価値観、経営資源、法令遵守、ステークホルダーの見解など、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。
これらの要素を無視した基準設定は、実務との乖離を生み、形骸化の原因となります。
まず、組織の事業目的や経営理念との整合性が重要です。
安全を最優先とする企業と、リスクテイクを許容する企業では、当然ながらリスク基準も異なってきます。
また、利用可能な経営資源(人員、予算、設備など)も考慮が必要です。
理想的な基準を設定しても、対策を実施するリソースがなければ意味がありません。
さらに、業界規制や労働安全衛生法などの法令要件は必ず遵守しなければなりません。
法令で定められた安全基準は、組織のリスク基準の最低ラインとなります。
リスクアセスメントの
評価基準で用いる3つの指標
リスクを客観的に評価するためには、共通の指標に基づいて数値化することが重要です。
感覚的な判断ではなく、定量的な基準を用いることで、異なるリスク間の比較や優先順位付けが可能となります。
厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」でも、リスクの見積りにおいて以下の3つの要素を考慮することが推奨されています。
負傷や疾病の重篤度を評価する基準
重篤度とは、リスクが顕在化した場合に発生する被害の大きさを表す指標です。
同じ確率で発生するリスクでも、結果として生じる被害の程度によって、対策の優先度は大きく異なります。
一般的な重篤度の区分と点数化の例は以下の通りです。
| 区分 | 点数 | 内容の目安 |
|---|---|---|
| 致命的 | 30 | 死亡・失明・手足切断など |
| 重大 | 20 | 骨折・後遺障害が残る災害 |
| 中程度 | 7 | 医師の処置が必要な休業災害 |
| 軽度 | 2 | 軽い切り傷・打撲など |
この点数は一例であり、組織の業種や作業内容に応じて調整することが望ましいです。
重要なのは、組織内で統一された基準を用いることで、評価者による判断のばらつきを防ぐことです。
リスク発生の可能性を評価する基準
発生可能性とは、特定の危険性・有害性によって労働災害が発生する確率を表す指標です。
いくら重篤度が高くても、発生確率が極めて低ければ、対策の優先度は相対的に下がります。
発生可能性の区分と点数化の例は以下の通りです。
| 区分 | 点数 | 内容の目安 |
|---|---|---|
| 確実 | 20 | 注意していても災害になる |
| 高い | 15 | 通常の注意では災害につながる |
| ある | 7 | 不注意の場合に災害につながる |
| ほぼない | 2 | 通常状態では発生しない |
発生可能性を評価する際には、過去の災害事例や他社での類似事故、設備の老朽化状況なども参考にします。
また、ヒヤリハット事例の蓄積は、潜在的なリスクの発生可能性を見積もる上で貴重な情報源となります。
危険性・有害性に近づく頻度を評価する基準
頻度とは、作業者が危険源や有害物質に接触し、リスクが発生する頻度を判断する指標です。
同じ危険性でも、毎日接触する場合と年に1回しか接触しない場合では、累積的なリスクは大きく異なります。
頻度の区分と点数化の例は以下の通りです。
| 区分 | 点数 | 内容の目安 |
|---|---|---|
| 頻繁 | 4 | 毎日・常時接近する |
| 時々 | 2 | 週1回〜月1回程度接近する |
| ほとんどない | 1 | 年1回程度しか接近しない |
頻度を作業回数ではなくリスク発生頻度と正しく定義することで、安全対策を実施した際に点数が下がり、リスク低減措置の効果を適切に評価に反映させることができます。
単発の作業よりも、繰り返し行われる作業の方がリスク低減の効果が高いため、対策の費用対効果を検討する際にも活用できます。
リスクアセスメントの
評価基準に基づく3つの見積り方法
リスクの評価基準を設定したら、次に具体的な見積り方法を選択する必要があります。
見積り方法によって、評価の精度や現場での使いやすさが異なるため、組織の状況に適した方法を選ぶことが重要です。
ここでは、実務で広く活用されている3つの代表的な見積り方法について解説します。
マトリクス法による見積り
マトリクス法は、重篤度と発生可能性を2軸とした表(マトリクス)を用いて、リスクレベルを視覚的に判定する方法です。
シンプルで直感的に理解しやすいため、現場での活用に適しています。
マトリクス法では、縦軸に重篤度、横軸に発生可能性を配置し、それぞれの組合せに対して評価ランク(Ⅰ〜Ⅲ)を定義します。
| 重篤度\発生可能性 | 可能性が高いか 比較的高い |
可能性がある | 可能性がほとんどない |
|---|---|---|---|
| 致命的・重大 | Ⅲ | Ⅲ | Ⅱ |
| 中程度 | Ⅱ | Ⅱ | Ⅰ |
| 軽度 | Ⅱ | Ⅰ | Ⅰ |
表に基づき、評価ランクに応じてリスク対応の優先度を決めます。ランクが高いほど、優先的に対応策を検討・実施することになります
- ランクⅠ:比較的低いリスク、必要に応じてリスク低減措置を実施
- ランクⅡ:中程度のリスク、速やかにリスク低減措置を検討
- ランクⅢ:高いリスク、優先的に対応策を実施(場合によっては作業停止も検討)
マトリクス法を用いると、重篤度と発生可能性の組合せからリスクの程度を体系的に評価でき、リスク低減措置の優先順位付けに役立ちます。
数値加算法による見積り
数値化法は、重篤度・発生可能性・接近の3つの指標に数値を割り当て、その演算結果でリスクを見積もる方法です。
マトリクス法よりも細かな差異を表現できるため、より精密なリスク評価が必要な場合に適しています。
計算式は一般的に以下のようになります。
リスクポイント=重篤度の点数+発生可能性の点数+頻度の点数
例えば、先述の点数表を用いた場合、最大点は10+6+4=20点となります。
この合計点に基づいて、以下のような判断基準を設定します。
- 5点以下:優先度低(経過観察)
- 6〜8点:早期に対策を検討
- 9〜11点:速やかに対策を実施
- 12~20点:即時対策または作業停止
数値加算法は、リスクの定量的な比較が容易であり、対策効果の測定にも活用できます。
対策実施後に再評価を行い、ポイントの減少を確認することで、改善効果を可視化できます。
枝分かれ図(決定木)による見積り
枝分かれ図(決定木)は、重篤度・発生可能性・回避可否などの質問に順番に回答していくことで、リスクレベルを判定する方法です。
思考プロセスを可視化できるため、教育用途や評価根拠の説明に適しています。
枝分かれ図では、例えば以下のような質問フローを設定します。
- 質問1:災害が発生した場合、致命傷になる可能性があるか?
- 質問2:災害の発生可能性は高いか?
- 質問3:危険を回避することは可能か?
各質問への回答(はい/いいえ)によって分岐し、最終的にリスクレベルが決定されます。
この方法は、なぜそのリスクレベルになったのかを論理的に説明しやすいという利点があります。
評価点の目安は以下の通りです。
- リスクレベルⅠ:優先度低
- リスクレベルⅡ:速やかに対策を検討
- リスクレベルⅢ:直ちに対策を実施
枝分かれ図は、新入社員への安全教育や、リスクアセスメントの概念を説明する際にも効果的に活用できます。
リスクアセスメントの見積り方法を適切に選択し運用することで、職場の安全性は着実に向上します。
しかし、自然災害のような予測困難なリスクに対しては、平時からの備えが特に重要です。
リスクアセスメントの
評価基準を活用した実施手順
リスクアセスメントは、単にリスクを評価するだけでなく、その結果を対策に結びつけて初めて意味を持ちます。
ここでは、評価基準を活用した具体的な実施手順を4つのステップに分けて解説します。
この手順は、厚生労働省の指針やISO31000の枠組みに基づいており、多くの企業で採用されている標準的なプロセスです。
ステップ1:危険性・有害性の特定
リスクアセスメントの第一歩は、職場に存在する危険性・有害性を漏れなく特定することです。
特定が不十分では、いくら精密な評価基準を設定しても、対策すべきリスクを見逃してしまいます。
危険性・有害性の特定には、以下のような方法が有効です。
- 作業手順書やマニュアルの確認
- 現場の巡視・観察
- 作業者へのヒアリング
- 過去の災害事例・ヒヤリハット報告の分析
- 機械設備の仕様書・安全データシート(SDS)の確認
特定作業は、現場を熟知した作業者と安全管理担当者が協力して行うことが望ましいです。
また、定期的に見直しを行い、新たな作業や設備の導入に伴う危険性も把握するようにします。
ステップ2:リスクの見積りと優先順位付け
特定した危険性・有害性に対して、先述の評価基準と見積り方法を用いてリスクレベルを算出します。
すべてのリスクに同時に対応することは現実的ではないため、優先順位付けが重要です。
リスクの見積りにおいては、以下の点に注意が必要です。
- 複数の評価者で見積りを行い、認識の違いを擦り合わせる
- 最悪のケースを想定して重篤度を評価する
- 過去の実績だけでなく、潜在的なリスクも考慮する
- 評価結果は文書化し、記録として保管する
優先順位は、リスクレベルの高いものから順に設定します。
ただし、法令で対策が義務付けられているリスクは、レベルに関わらず最優先で対応する必要があります。
ステップ3:リスク低減対策の検討と実施
リスク低減対策は、効果の高い順に検討・実施することが基本原則です。
対策には階層があり、より根本的な対策ほど効果が高く、持続性もあります。
リスク低減対策の優先順位は以下の通りです。
- 法令で定められた対策(必須対応)
- 設計・計画段階での危険性の除去・低減(本質的対策)
- 工学的対策(安全装置の設置、設備の改善など)
- 管理的対策(作業手順の見直し、教育訓練など)
- 個人用保護具の使用(最後の手段)
例えば、高所作業のリスクを低減する場合、まず高所作業を不要にする設計変更を検討します。
それが困難な場合は、手すりや安全ネットなどの工学的対策を講じます。
管理的対策や保護具の使用は、人的要因に依存するため、効果の持続性が低い点に注意が必要です。
可能な限り、設備や仕組みで安全を確保する方向で検討することが推奨されます。
ステップ4:見直しと継続的改善
リスクアセスメントは一度実施して終わりではなく、PDCAサイクルによる継続的な改善が求められます。
対策の効果を検証し、必要に応じて見直しを行うことで、安全性は着実に向上していきます。
見直しのタイミングとしては、以下のような場面が挙げられます。
- 対策実施後の効果確認時
- 新規設備・作業の導入時
- 災害やヒヤリハットの発生時
- 法令・規制の改正時
- 定期的な見直し(年1回など)
また、効果的だった対策は他の作業や部署にも横展開し、組織全体の安全レベル向上につなげます。
対策が不十分だった場合は、原因を分析し、追加対策を検討します。
見直しの結果は記録に残し、次回のリスクアセスメントに活かすことが重要です。
このサイクルを継続することで、リスクアセスメントの精度と実効性は高まっていきます。
リスクアセスメントの
評価基準の応用方法
これまで解説してきたリスクアセスメントの評価基準は、労働災害だけでなく、自然災害リスクや事業継続計画(BCP)にも応用できます。
特に地震や台風などの自然災害は、発生頻度は低くても被害が甚大になる可能性があるため、適切な評価と対策が欠かせません。
ここでは、自然災害リスクへの評価基準の応用方法と、具体的な対策について解説します。
自然災害リスクの特徴と評価の考え方
自然災害リスクは、労働災害リスクと比較して「発生頻度は低いが、発生時の影響が極めて大きい」という特徴があります。
このため、通常のリスクアセスメントとは異なるアプローチが必要になることがあります。
自然災害リスクの評価では、以下の点を考慮します。
- 地域特性(地震リスク、水害リスク、土砂災害リスクなど)
- 事業所の立地条件(ハザードマップの確認)
- 建物・設備の耐震性
- 従業員の安全確保体制
- 事業への影響度(操業停止期間、売上損失など)
発生確率が低いからといってリスクを過小評価することは危険です。
むしろ、影響の大きさを重視した評価を行い、事前の対策を講じることが重要です。
事業継続計画(BCP)におけるリスク基準の活用
BCPでは、リスク基準を活用して「どの災害シナリオを優先的に対策するか」を決定します。
限られたリソースで効果的なBCPを策定するためには、リスクの優先順位付けが不可欠です。
BCPにおけるリスク評価では、以下の2軸で分析することが一般的です。
- 発生可能性:災害が発生する確率
- 事業への影響度:事業停止期間、復旧コスト、顧客・取引先への影響など
この2軸でマトリクスを作成し、優先的に対策すべき災害シナリオを特定します。
例えば、発生可能性は中程度でも事業への影響が甚大な地震は、高い優先度で対策を検討します。
BCPの実効性を高めるためには、定期的な訓練の実施も重要です。
机上訓練や実働訓練を通じて、計画の不備を洗い出し、継続的に改善していきます。
安否確認システムによるリスク低減
自然災害発生時の初動対応として、従業員の安否確認は最も重要な業務の一つです。
安否確認が迅速に完了すれば、対応可能な人員を把握でき、事業復旧の初動が大幅に高速化されます。
従来の電話連絡による安否確認では、以下のような課題がありました。
- 電話回線の混線により連絡が取れない
- 担当者が一人ひとりに連絡するため時間がかかる
- 回答の集計に手間がかかる
- 夜間・休日は担当者不在で対応が遅れる
安否確認システムを導入することで、これらの課題を解決できます。
災害発生時に自動で全従業員へ連絡が送信され、回答も自動集計されるため、担当者の負担を大幅に軽減できます。
また、スマートフォンアプリやメール、複数の連絡手段を組み合わせることで、電話回線の混線時でも確実に連絡を届けることが可能です。
このように、安否確認システムは自然災害リスクに対する具体的なリスク低減対策として有効です。
KENTEM(株式会社建設システム)が提供する総合防災アプリ「クロスゼロ」は、安否確認機能に加えて、ハザード情報の確認や備蓄品管理など、企業の防災対策に必要な機能を一つのアプリで提供しています。
災害時の迅速な情報収集と従業員保護を実現し、BCPの実効性を高めることができます。
まとめ
リスクアセスメントの評価基準は、職場の安全性向上と事業継続に欠かせない重要な要素です。
ISO31000に基づくリスク基準の設定、重篤度・発生可能性・頻度の3つの指標による客観的な評価、そしてマトリクス法などの見積り方法を活用することで、効果的なリスク管理が実現できます。
リスクアセスメントは一度実施して終わりではなく、PDCAサイクルによる継続的な改善が重要です。
また、労働災害だけでなく、自然災害リスクへの対策やBCPにも評価基準を応用することで、組織全体のリスク耐性を高めることができます。
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