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災害対応フローとは?作成手順・要素・注意点をわかりやすく解説

災害対応フローとは?作成手順・要素・注意点をわかりやすく解説

2025/07/22

防災

災害発生時、従業員の安全を守り、事業への影響を最小限に抑えるためには、組織としてどう動くかを定めた「災害対応フロー」が必要です。

しかし、いざ作成するとなると「何を含めれば良いのか」「どんな手順で作ればいいのか」と、担当者は多くの課題に直面するでしょう。

本記事では、実用的な災害対応フローの作り方を解説します。

フローに盛り込むべき基本要素から、地震・風水害といった災害タイプ別の具体的なフローチャート例、作成の流れまでわかりやすく記述しています。

災害対応フローを初めて作成する方や、既存のフローをより効率的かつ実用的なものへと改善したい方は、ぜひ参考にしてください。

災害対応フローに
含むべき主な要素

災害対応フローを実際に作成するにあたり、まず押さえておくべきなのが、その骨格となる構成要素です。

時系列に沿って「いつ」「誰が」「何をするか」を整理すれば、非常時にも迷わず行動できる実用的なフローが完成します。

ここでは、災害対応フローを作成するための5つの基本的な要素を解説します。

上記要素を順番に理解し、自社のフローに盛り込むべき内容を具体的にイメージしていきましょう。

初動対応

災害対応フローにおける初動対応とは、災害発生直後の重要な最初の行動を指します。

その迅速さと的確さが、被害の大きさや事業復旧までの時間に影響するため、フローの中でも最優先で検討すべき項目です。

なぜなら、発災後の数時間は「人命救助のタイムリミット」とも言われており、この時間帯の行動が従業員の安全に直結するからです。

初動対応で具体的に行うべき行動には、主に以下の2つの側面があります。

人命の安全確保
  • 従業員や来訪者の安否確認と安全な場所への避難誘導
  • 負傷者に対する応急手当の実施
  • 二次災害を防ぐための危険箇所からの退避
事業継続のための基盤確保
  • 自社や取引先の被災状況の一次把握
  • 電気、ガス、通信などインフラ状況の確認
  • 災害対策本部の設置と情報共有体制の確立

上記のように、初動対応は人命と事業の両方を守るための基礎となります。

平時のうちに具体的な手順を定め、訓練を重ねておくことが大切です。

安否確認

災害対応フローでは、従業員の安否確認は人命安全と事業継続の基盤となる大切な工程です。

誰が安全で、誰が支援を必要としているかを把握できなければ、適切な救護活動も事業の復旧に向けた人員計画も立てることができません。

企業が安否確認を確実に行うためには、複数の連絡手段を組み合わせることが求められます。

主な安否確認の手段
  • 安否確認システムの導入(自動送信・自動集計)
  • ビジネスチャットや社内SNSグループの活用
  • 電話やメールによる緊急連絡網の整備
  • 災害用伝言ダイヤル(171)や伝言板の活用ルール策定
平時に行っておくべき準備
  • 従業員の緊急連絡先を定期的に更新する
  • 安否報告のルール(回答期限、報告内容など)を明確化する
  • 安否確認システムを含めた定期的な訓練を実施する

安否確認は単なる連絡作業とは異なります。

多様な手段を準備し、全従業員が迷わず使えるように準備しておきましょう。

災害対策本部の設置

災害発生時、組織的な対応を統括する司令塔として、災害対策本部の設置が必要です。

災害対策本部は、混乱した状況下で迅速かつ的確な意思決定を行い、全社的な対応を指揮する中心的な役割を担います。

その設置と運営が、災害対応全体の成否を分けると言っても過言ではありません。

災害対策本部の主な役割と、設置にあたり事前に定めておくべき事項は以下のとおりです。

災害対策本部の主な役割
  • 被害状況や従業員の安否など、あらゆる情報の集約と分析
  • 収集した情報に基づく、対応方針の決定と各部署への指示
  • 社内外への情報発信(プレスリリース、顧客への連絡など)
  • 関係機関(自治体、取引先など)との連携
事前に定めておくべき事項
  • 設置基準(例:震度5強以上の地震発生時など)
  • 設置場所(代替場所も含む)
  • 本部長や各班の責任者、メンバー構成
  • 本部長不在時の代理権限者

災害対策本部の設置は、災害対策基本法が定める自治体の取り組みと同様に、組織の事業継続につながるものです。

平時のうちに具体的な設置・運営ルールを定め、訓練を通じて円滑に機能するかを確認しておきましょう。

参考:内閣府「災害対策基本法

応急対応

災害対応フローの応急対応とは、人命救助や被害の拡大防止を目的とした、緊急性の高い一連の活動を指します。

初動対応で確保した安全を維持し、より深刻な事態へ発展させないための対策が必要です。

災害対策本部の指揮のもと、組織的かつ迅速に行動することが求められます。
企業がフローに盛り込むべき応急対応の主な内容は、以下のとおりです。

人命に関する対応
  • 負傷者の救護と必要に応じた救急搬送の手配
  • 避難場所の安全性確保と環境整備
  • 従業員への食料、飲料水、毛布などの配布
被害拡大防止に関する対応
  • 火災発生時の初期消火活動
  • 危険物や破損設備の周辺への立ち入り禁止措置
  • 余震や浸水など、二次災害への警戒と対策
情報に関する対応
  • 被害状況の継続的な情報収集と対策本部への報告
  • 従業員やその家族への状況説明と情報提供

応急対応を円滑に進めるためには役割分担を明確にし、誰が何を行うかを事前に定めておく必要があります。

平時の訓練を通じて、各担当が迷わず動けるように準備できれば、被害を最小限に抑えられるでしょう。

復旧対応

災害対応フローの最終段階が、事業の継続と再建を目指す復旧対応です。

応急対応によって安全が確保された後、事業活動を一日でも早く正常な状態に戻すための計画的な活動を指します。

この段階を円滑に進められるかは、事前に策定したBCP(事業継続計画)の質にかかっています。

企業の復旧対応は、主に以下の2つのステップで進められます。

復旧(事業の再開)
  • 被災したオフィスや設備の清掃・修理
  • ITシステムのデータ復旧とネットワークの再構築
  • サプライチェーンの状況確認と代替調達先の確保
  • 優先順位の高い中核事業から段階的に業務を再開
復興(事業の強化)
  • 今回の災害対応で得られた教訓や課題の洗い出し
  • BCPや災害対応フローの見直しと改善
  • 将来の災害に備えた設備投資や体制強化の検討

災害からの復旧は、単に元に戻すことだけが目的ではありません。被災経験を元に、災害に強い組織へと生まれ変わるための貴重な機会と捉える必要があります。
そのためにも、災害対応の全工程を記録し、次に活かす姿勢が求められます。

災害タイプ別フローチャート

災害対応の基本的な流れは共通していますが、災害の種類によって特有のリスクや取るべき行動は異なります。

実用的なフローを作成するためには、災害ごとの特徴を理解し、対応を変えていく必要があります。

ここでは、企業が遭遇する可能性の高い代表的な3つの災害フローを確認していきましょう。

それぞれのフローチャートの例を参考に、自社の立地環境や事業特性に合わせた、より具体的な対応計画を検討していきましょう。

地震対応フロー

地震対応フローでは、突発的な強い揺れとその後の余震を前提に、時系列で行動を整理する必要があります。

パニックに陥りやすい状況だからこそ、誰もが迷わずに行動できるシンプルな手順が求められます。

地震発生時の対応は、大きく3つの段階に分けられます。

発生直後
(揺れが収まるまで)
  • まずは身を守る(机の下に隠れる、落下物から頭を保護する)
  • 「姿勢を低く!頭を守れ!」といった具体的な指示を出す
  • 慌てて屋外に飛び出さない
揺れが収まった直後
  • 自身の安全を確認後、周囲の従業員の安否確認と初期消火を行う
  • 避難経路を確保し、負傷者がいれば応急手当を実施する
  • 火の元を確認し、ブレーカーを落とす
避難・情報収集
  • 災害対策本部を設置し、被害状況やインフラ情報を収集する
  • 収集した情報に基づき、屋外への避難や待機を指示する
  • デマに惑わされず、公的機関や自社の対策本部からの情報を基に行動する

地震対応では、特に発生直後の数分間の行動が生死を分けます。
日頃の訓練を通じて「まず身を守る」などの基本動作を全従業員に徹底させる必要があります。

風水害対応フロー

風水害対応フローは、台風の接近や豪雨が予測できる特性を活かし、事前の準備から段階的に行動を計画しなければなりません。

地震と違い、情報収集と早めの判断が被害軽減につながります。

風水害への対応は、主に3つの段階で構成されます。

事前準備フェーズ
(予報・注意報発令時)
  • ハザードマップで自社の浸水リスクや避難場所を確認する
  • 窓や扉の補強、飛ばされやすい屋外物品の固定や屋内への移動を行う
  • 気象情報や自治体からの情報を注視し、情報収集体制を確立する
避難準備・実行フェーズ
(警報・避難情報発令時)
  • 重要書類やデータを安全な場所へ移動させ、ITシステムをシャットダウンする
  • 従業員の帰宅指示やテレワークへの切り替えを判断・実行する
  • 交通機関の計画運休などの情報を収集し、従業員へ迅速に伝達する
災害発生後フェーズ
  • 安全が確保された後、出社した従業員による被害状況の確認を行う
  • 浸水があった場合は、衛生管理や漏電に注意しつつ排水・清掃作業を開始する
  • 取引先と連携して復旧計画を立てる

風水害は、情報に基づいた「先を見越した行動」が何よりも大切です。
どのタイミングで誰が何を判断するのかをフローで明確に定めておく必要があります。

火災対応フロー

オフィスや工場での火災対応フローは、発見から避難までの一連の行動を、誰が実行するかを明確にする必要があります。

火災は一刻を争う事態であり、初期の数分間の対応が被害の規模を大きく左右します。

火災発生時の対応は、以下の3つの基本行動で構成されます。

発見・通報・周知
  • 火災を発見したら、周囲に危険を知らせる
  • 速やかに119番通報し、火災報知器のボタンを押す
初期消火
  • 自身の安全を確保しつつ、消火器や屋内消火栓で初期消火を試みる
  • 危険を感じたら直ちに消火を中断し、避難を開始する
避難誘導
  • 煙を吸わないよう姿勢を低くし、タオルなどで口と鼻を覆いながら避難する
  • 避難誘導係の指示に従い、指定された避難場所へ速やかに移動する

火災対応では、特に「初期消火」と「避難開始」の判断が大切です。

消火活動に固執して逃げ遅れることがないよう、「火が天井に届いたら即避難」といった明確な基準を定め、訓練で徹底する必要があります。

災害対応フローの作成の流れ

実用的な災害対応フローは、思いつきで作成できるものではありません。

論理的な手順に沿って、段階的に作り上げていくことが、抜け漏れのない計画を策定する上で大切です。

ここでは、自社オリジナルの災害対応フローを作成するための、4つのステップを紹介します。

上記流れに沿って作業を進めることで、誰が見ても分かりやすく、実用的なフローを作成できるでしょう。

想定リスクを洗い出す

災害対応フローを作成する上で、すべての起点となるのが、自社がどのような災害に見舞われる可能性があるのか、想定されるリスクを具体的に洗い出す作業です。

リスクを特定しなければ、それに対する適切な対応策を立てることはできないからです。

リスクを洗い出す際には、以下の2つの視点から検討すると良いでしょう。

自然災害のリスク 地震:所在地の活断層や地盤の状況、建物の耐震性などを確認
風水害:ハザードマップで浸水・土砂災害のリスクを把握
火災:周辺地域の火災リスクや、自社内の火の気がある場所を特定
事業活動への影響 ライフライン:停電や断水、通信障害が事業に与える影響を想定
サプライチェーン:主要な取引先や物流網が被災する可能性を考慮
従業員:従業員の帰宅困難や、家族の被災による出勤困難などを想定

上記のようなリスクは、一つだけ発生するとは限りません。

地震の後に火災や津波が発生するなどのように、複数のリスクが連鎖する場合も想定し、多角的な視点で洗い出す必要があります。

対応行動をリストアップする

想定リスクの洗い出しが完了したら、次に行うべきは、それぞれの災害対応に対して「誰が」「いつ」「何をするか」という具体的な対応行動のリストアップです。

行動が曖昧なままでは、非常時に誰も動けず、せっかくの計画も「絵に描いた餅」になってしまうからです。
具体的で実践的な行動計画こそが、フローの実用性を担保します。

対応行動をリストアップする際は、以下の点を意識して整理しましょう。

時系列で整理する 災害の発生直後、数時間後、1日後、数日後…と時間軸で行動を分ける
担当部署・担当者を明確にする 行動ごとに主担当と副担当を決める
(例:安否確認は人事部、情報収集は総務部など)
判断基準を設ける 「避難指示を出すのは震度6弱以上」など、行動のトリガーとなる具体的な基準を定める
必要なモノ・情報を明記する 行動に必要な備品(メガホン、担架など)や、連絡先リストなどを併記する

この段階では、完璧さを求めすぎず、まずは思いつく限りの行動を書き出すことが大切です。

フローチャートに落とし込む

対応行動のリストアップが完了したら、それらの情報をフローチャート形式に整理していきます。

文章で羅列された行動計画よりも、図形で視覚的に表現されたフローチャートの方が、全体の流れや判断の分岐点を直感的に理解しやすいからです。

フローチャートを作成する際は、以下のルールを意識すると良いでしょう。

記号のルールを統一する 使う記号の意味を統一する
流れを明確にする 上から下へ、左から右へと時間の流れが一方向に進むように矢印で繋ぐ
情報を詰め込みすぎない 詳細な手順や補足情報は、別紙のチェックリストなどを参照するように記載する

市販のソフトウェアを使わなくても、手書きやオフィスソフトの図形描画機能で十分に作成可能です。

まずはリストアップした行動を基に、簡単な流れを図にしてみることから始めてみましょう。

社内で共有する

作成した災害対応フローは、全従業員に共有して初めてその効力を発揮します。

一部の担当者しかその存在や内容を知らない状態では、災害時に組織として連携した行動を取ることはできません。

フローは、全従業員がいつでも確認でき内容を理解している状態にしておく必要があります。

効果的に社内共有を行うためには、以下のような方法が考えられます。

  • オフィスや工場の目立つ場所にフローチャートを掲示する
  • 各部署やチームごとに担当部分を抜粋して掲示する
  • 社内サーバーやクラウドストレージにデータを保管し、いつでもアクセスできるようにする
  • 社内ポータルサイトやビジネスチャットで定期的に周知する
  • 新入社員研修などで、フローの内容を説明する時間を設ける
  • 防災訓練の際に、フローに基づいた行動ができているかを確認する

災害対応フローは、一度共有して終わりではありません。

訓練などを通じてその実用性を試し、従業員からの意見を吸い上げながら改善を重ねていかなければなりません。

災害対応フローの
導入・改善なら
「クロスゼロ」も活用しよう

作成した災害対応フローを、いかにして「絵に描いた餅」にせず、実効性のある計画にできるかが大切です。

その課題を解決する手段として、専用ツールの活用が挙げられます。
手動での安否確認や情報伝達は、災害時の混乱下では限界があるからです。

そこでおすすめなのが、総合防災アプリの「クロスゼロ」です。

「クロスゼロ」は、災害対応フローの各プロセスをシステムで支援する以下のような機能を備えています。

  • 安否確認の自動化
  • 情報共有の一元化
  • 備蓄品の管理
  • 訓練・周知の効率化

自社の災害対応フローをより実践的なものにするために、専門ツールがどのような解決策を提供してくれるのか、一度確認してみるのも良いでしょう。

まとめ

災害対応フローの作成は、要素の理解から具体的な災害の想定、そして社内への共有まで、やるべきことが多く複雑に感じるかもしれません。

どこから手をつけるべきか、何から始めていいのか迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では災害対応フロー表の作成に含むべき要素や、災害タイプ別のフローチャートの作成するためのポイントを紹介しました。
具体的な作成の流れも参考に、まずは自社の業種や希望に合ったフローを作成してみましょう。

また、作成が初めてで難しい場合は、「クロスゼロ」のような総合防災アプリなども検討してみてください。災害対応フローだけではなく、災害対策に必要な機能も備えているため、企業の災害対策をサポートします。

クロスゼロ」なら、BCP資料・緊急連絡網・拠点シフトをアプリで常時共有。訓練から本番まで同じ導線で運用でき、“形骸化しないBCP”を実現します。
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