防災と減災の違いは?|意味の違いや取り組むべき対策を紹介
2025/12/24
自然災害が頻発する日本において、「防災」と「減災」という言葉を耳にする機会が増えています。
しかし、この2つの概念にどのような違いがあるのか、どのように使い分けるべきかを正確に理解している人は多くありません。
防災は災害そのものを防ぐことに重点を置く一方で、減災は災害発生を前提として被害を最小限に抑えることを目指します。
両者を適切に組み合わせることで、より効果的な災害対策が実現できるのです。
本記事では、防災と減災の違いを明確にし、個人から企業まで幅広い主体が取り組むべき具体的な対策方法をご紹介します。
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防災と減災の違い
防災と減災は、どちらも災害から身を守るための重要な概念ですが、そのアプローチには明確な違いがあります。
防災は災害そのものの発生を防ぐことに重点を置いた対策であり、減災は災害の発生を前提として被害を最小限に抑えることを目指すものです。
この2つの概念を正しく理解することで、より効果的な災害対策を立案し、実行することが可能になります。
防災の定義と目的
防災(Disaster Prevention)とは、自然現象が災害として人間社会に被害を与えることを未然に防ぐための取り組みを指します。
理想的には被害をゼロにすることを目標とし、災害の発生そのものを阻止しようとする予防中心の考え方です。
具体的には、堤防や護岸工事による洪水防止、建築基準の厳格化による建物倒壊の防止、火災予防のための設備点検や消防体制の整備などが防災の代表例となります。
防災対策は主にハード面(物理的なインフラ整備)に重点を置くことが多く、長期的な視点で社会基盤を強化していく特徴があります。
国土交通省や自治体が主導する大規模なインフラ整備事業の多くは、この防災の考え方に基づいて実施されています。
ただし、自然の力は人間の想定を超えることがあるため、完璧な防災は現実的に困難とされています。
減災の定義と目的
減災(Disaster Mitigation)とは、災害の完全な防止は困難であることを前提とし、発生した際の被害を可能な限り軽減することを目的とした取り組みです。
「災害は必ず起こる」という現実的な認識の下で、被害の最小化を図る実践的なアプローチを採用します。
減災対策には、避難訓練の実施、非常用品の備蓄、早期警報システムの整備、地域住民の防災意識向上などのソフト面の対策が含まれます。
減災の特徴は、災害発生時とその直後の対応に重点を置いている点です。
迅速な避難誘導、効果的な救援活動、情報伝達システムの構築など、人的被害を最小限に抑えるための仕組みづくりが中心となります。
また、復旧・復興の速度を向上させることも減災の重要な要素であり、事前の準備によって災害後の社会復帰を早期に実現することを目指します。
発生前後で変わる時間軸の考え方
防災と減災の大きな違いは、災害発生に対する時間軸の捉え方にあります。
防災は災害発生前の段階での完全な阻止を目指すのに対し、減災は発生前の準備から発生時の対応、さらには発生後の復旧まで一連の流れとして捉えます。
防災は「起こさない」ことに焦点を当て、減災は「起こった時の備え」に焦点を当てているのです。
現代の災害対策では、防災と減災を組み合わせた総合的なアプローチが重要です。
防災基本法においても「防災・減災」と併記されることが多く、どちらか一方ではなく両輪として機能させることが求められています。
例えば、地震対策では建物の耐震補強(防災)と同時に、避難経路の確保や非常用品の準備(減災)を並行して進めることで、より効果的な災害対策が実現できます。
防災と減災で必要な対策
防災と減災では、それぞれ異なる視点から対策を講じる必要があります。
防災対策は災害の発生自体を防ぐために事前の準備に重点を置き、減災対策は災害発生時とその後の被害軽減に焦点を当てます。
効果的な災害対策を実現するには、これらの対策の特性を理解し、優先順位を明確にして取り組むことが重要です。
予防優先の防災対策の具体例
防災対策の中核となるのは、災害の発生そのものを防ぐための物理的・構造的な対策です。
建築分野では、新耐震基準(1981年6月以降)に基づく建物の設計・施工、既存建築物の耐震診断と補強工事が重要な防災対策となります。
また、火災に対しては消防設備の設置義務化、スプリンクラーシステムの導入、防火壁の設置などが効果的な防災対策として挙げられます。
インフラ整備においては、河川の護岸工事や堤防の強化、下水道システムの拡充による浸水防止、土砂災害防止のための擁壁設置などが代表的な防災対策です。
これらの対策は初期投資が大きいものの、災害の発生を根本的に防ぐ効果が期待されます。
さらに、定期的な設備点検と予防保全により、設備の故障や劣化による災害リスクを事前に排除することも重要な防災対策の一環です。
被害軽減に特化した減災対策の具体例
減災対策は、災害発生を前提として人的・物的被害を最小限に抑えるための準備と対応に重点を置きます。
個人レベルでは、非常用品の備蓄、避難経路の確認、家族との連絡方法の事前決定などが基本的な減災対策となります。
組織レベルでは、避難訓練の定期実施、緊急時連絡網の整備、災害時の役割分担の明確化が重要です。
情報伝達システムの整備も減災対策の重要な要素です。
気象警報の迅速な配信、避難指示の効果的な伝達、安否確認システムの構築により、災害発生時の混乱を最小限に抑えることができます。
また、地域コミュニティにおける共助体制の構築、要配慮者(高齢者、障害者、外国人など)への支援体制整備も、被害軽減に直結する重要な減災対策です。
対策の優先順位とコスト感
防災と減災対策の実施にあたっては、限られた予算と時間の中で効果を得るための優先順位付けが必要です。
防災対策は初期投資が大きく長期的な効果を狙うのに対し、減災対策は比較的短期間で効果を実感できるという特徴があります。
コストパフォーマンスの観点から、まず減災対策を充実させ、並行して重要度の高い防災対策を段階的に実施することが現実的なアプローチとなります。
個人や小規模組織では、高額な防災設備投資よりも、避難訓練の実施、備蓄品の準備、情報収集体制の整備などの減災対策を優先することが効果的です。
一方、大企業や自治体などの大規模組織では、長期的視点での防災投資と短期的効果を狙った減災対策をバランス良く組み合わせることが求められます。
重要なのは、どちらか一方に偏るのではなく、組織の規模と特性に応じて防災と減災の適切な組み合わせを見つけることです。
家庭で実践する防災と減災
家庭における防災と減災対策は、日常生活の中で無理なく継続できる現実的な取り組みが中心となります。
完璧を求めすぎずに、段階的に対策を充実させていくことが重要です。
家族構成や住環境に応じて、優先すべき対策を明確にし、全家族が理解できる形で実施することが成功の鍵となります。
家庭での防災準備の基本
家庭での防災対策の基本は、住宅の安全性確保と火災予防対策です。
住宅の耐震診断を実施し、必要に応じて耐震補強工事を行うことで、地震による建物倒壊のリスクを大幅に軽減できます。
また、家具の転倒防止対策として、タンスや本棚などの大型家具を壁に固定し、食器棚には扉ストッパーを設置することが重要です。
火災予防については、住宅用火災警報器の設置と定期的な作動確認、消火器の配置、電気設備の定期点検が基本的な対策となります。
特にキッチン周辺の安全対策、コンセント周りの清掃、古い電気製品の交換などは、日常的に実践できる効果的な防災対策です。
さらに、ガス機器の安全装置確認、避雷設備の点検なども住宅の安全性向上に寄与します。
家庭でできる減災の工夫
家庭での減災対策は、災害発生時の生存と避難を支援する準備が中心となります。
非常用品の備蓄では、飲料水を1人あたり1日3リットル、3日分以上を確保し、非常食も同様に3日分を準備することが基本です。
これらの備蓄品は定期的に消費期限・賞味期限を確認し、ローリングストック方式で管理することで、常に新鮮な状態を保てます。
情報収集と連絡手段の確保も重要な減災対策です。
携帯ラジオ、懐中電灯、大容量モバイルバッテリーの準備に加え、家族間の安否確認方法を事前に決めておくことが必要です。
災害時には電話が混線しやすいため、SNSの安否通知機能や災害用伝言板の使用方法を家族全員が理解しておくことが大切です。
また、近隣住民との日頃からの関係づくりも、災害時の共助につながる重要な減災対策となります。
家族で共有する避難計画と訓練
効果的な避難計画の策定には、家族全員が理解し実行できる具体的で実践的な内容が求められます。
自治体のハザードマップを活用して、自宅周辺の災害リスクを把握し、洪水・土砂災害・地震それぞれに応じた避難場所と避難経路を複数設定します。
避難経路は実際に家族で歩いて確認し、道路の状況、危険箇所、避難場所の設備などを事前にチェックすることが重要です。
避難訓練は年2回以上の定期実施を目標とし、季節や時間帯を変えて実施することで、様々な状況への対応力を向上させます。
訓練では非常用品の持ち出し、家族の集合、避難経路の確認を実際に行い、問題点があれば計画を見直します。
特に小さな子どもや高齢者がいる家庭では、それぞれの身体的特性を考慮した避難方法を検討し、必要に応じて地域の支援制度への登録も行うことが大切です。
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地域と行政で果たす防災と減災
地域コミュニティと行政機関による防災・減災対策は、個人や家庭だけでは対応困難な大規模災害に対応するための重要な仕組みです。
公助と共助の連携により、地域全体の災害対応力を向上させ、被害の拡大を防ぐことが可能になります。
自治体の計画的な取り組みと住民の主体的な参加が組み合わさることで、より実効性の高い災害対策が実現できます。
自治体の防災計画と役割
自治体の防災計画は、地域防災計画として法律で策定が義務付けられた包括的な災害対策の指針となります。
この計画では、予防・応急・復旧復興の各段階における行政の役割と住民との連携方法が具体的に定められています。
防災対策としては、公共施設の耐震化、避難所の指定と整備、防災行政無線の設置、消防・救急体制の強化などのハード面の整備が中心となります。
減災対策では、災害時の情報伝達システム、避難指示の発令基準、要配慮者への支援体制などのソフト面の充実が重要です。
近年では、SNSを活用した情報発信、多言語対応の避難案内、視覚・聴覚障害者への配慮など、多様な住民のニーズに対応した取り組みが進んでいます。
また、自治体は住民の防災意識向上を支援するため、防災講演会の開催、防災マップの配布、地域防災リーダーの育成なども積極的に実施しています。
地域コミュニティの減災活動
地域コミュニティによる減災活動は、住民同士の助け合いと地域の特性を活かした実践的な災害対応が特徴です。
自治会や町内会が中心となって実施する定期的な避難訓練は、住民の災害対応力向上と地域のつながり強化に大きく貢献します。
また、一人暮らしの高齢者や身体に障害のある方の安否確認体制、避難支援体制の構築は、地域コミュニティならではの重要な減災活動となります。
防災用品の共同購入や備蓄倉庫の管理、災害時の炊き出し訓練なども効果的な地域減災活動です。
これらの活動を通じて住民間のコミュニケーションが活発になり、災害時の連携がスムーズに行えるようになります。
さらに、地域の危険箇所点検、防災マップの作成、子どもたちへの防災教育なども、地域主導で実施される価値の高い減災活動として位置づけられています。
ハード対策とソフト対策の住民連携
効果的な地域防災を実現するには、行政主導のハード対策と住民参加型のソフト対策を有機的に連携させることが重要です。
ハード対策である避難所の整備や防災設備の設置も、住民が適切に活用できなければその効果は限定的となります。
住民参加による避難所運営訓練、防災設備の使用方法講習会などにより、ハード面の整備効果を最大化することができます。
また、住民による地域の危険箇所の情報提供は、行政のハード対策の優先順位決定に重要な役割を果たします。
地域住民が日常的に把握している細かな情報と行政の専門的な技術・予算を組み合わせることで、より効果的な防災・減災対策が実現できます。
この連携を促進するため、多くの自治体では住民との定期的な意見交換会、防災協議会の設置、地域防災計画策定への住民参加などの取り組みを積極的に進めています。
企業や学校での防災と減災
企業や学校における防災・減災対策は、従業員や児童・生徒の安全確保に加えて、事業継続や教育活動の維持という特有の課題に対応する必要があります。
組織としての社会的責任を果たしながら、効率的で実践的な対策を実施することが求められます。
特に企業では、BCP(事業継続計画)の策定と実行が重要な経営課題として認識されており、防災と減災の両面からの総合的な取り組みが必要です。
事業継続を意識した防災対策
企業の防災対策は、事業の中断を防ぎ、万が一中断した場合でも迅速な復旧を可能にする体制構築が中心となります。
ITシステムのバックアップ体制、重要データの複製保管、代替拠点の確保などは、現代のビジネス環境において不可欠な防災対策です。
また、サプライチェーンの多重化、重要設備の冗長化、定期的な事業継続訓練の実施により、災害による事業影響を最小限に抑える体制を構築します。
従業員の安全確保については、オフィスや工場の耐震性強化、防火設備の充実、化学物質等の適切な管理が基本的な防災対策となります。
特に製造業では、設備の安全停止システム、危険物の漏洩防止対策、作業場所の安全性向上などが重要です。
さらに、在宅勤務やテレワーク環境の整備により、災害時でも事業活動を継続できる柔軟な働き方を導入することも、現代的な防災対策として注目されています。
施設耐震化や減災投資のポイント
施設の耐震化投資では、建物の重要度と使用頻度に応じた優先順位付けが重要となります。
本社機能や重要な生産設備を有する建物から順次耐震診断を実施し、必要に応じて補強工事を行います。
学校施設では、児童・生徒の安全確保が優先となるため、校舎や体育館の耐震化に加えて、非構造部材(天井材、照明器具など)の落下防止対策も重要な投資対象となります。
減災投資では、災害発生時の被害軽減と早期復旧に焦点を当てた対策が中心となります。
自家発電設備、非常用通信設備、防災用品の備蓄などは、比較的短期間で効果を実感できる投資です。
また、従業員の防災訓練、災害対応マニュアルの策定、緊急時連絡網の整備などのソフト面への投資も、投資対効果の高い減災対策として重要視されています。
これらの投資は一度の大きな支出ではなく、継続的な予算確保により着実に実施することが効果的です。
訓練や情報伝達の違いと実践
防災訓練と減災訓練では、訓練の目的と内容に明確な違いがあります。
防災訓練は災害の発生を防ぐための設備操作や予防措置の習得が中心となり、例えば消火器の使用方法、ガスの緊急遮断、電気設備の安全確認などが主要な訓練内容です。
一方、減災訓練は災害発生時の適切な対応と被害軽減を目的とし、避難訓練、安否確認、初期対応の役割分担などが中心となります。
情報伝達システムでは、平時の情報共有と緊急時の情報発信で異なるアプローチが必要です。
平時は防災に関する知識の普及、訓練の案内、設備点検の結果共有などが中心となります。
緊急時は迅速で正確な情報伝達が重要となり、安否確認、避難指示、復旧状況の共有などが重要な情報となります。
効果的な情報伝達を実現するため、多くの組織では複数の連絡手段(メール、電話、SNS、専用アプリなど)を組み合わせたシステムを構築し、定期的な通信訓練により実効性を確認しています。
まとめ
防災と減災は、どちらも災害から身を守るための重要な概念ですが、そのアプローチには明確な違いがあります。
防災は災害の発生そのものを防ぐことを目的とし、減災は災害の発生を前提として被害を最小限に抑えることを目指します。
効果的な災害対策を実現するには、防災と減災の両方の視点から総合的に取り組むことが重要です。
家庭レベルでは、住宅の耐震化や火災予防などの防災対策と、備蓄品の準備や避難計画の策定などの減災対策を並行して進めることが重要です。
地域や行政レベルでは、ハード面のインフラ整備と住民参加型のソフト対策を有機的に連携させることで、地域全体の災害対応力を向上させることができます。
企業や学校では、事業継続や教育活動の維持を意識した防災・減災対策により、社会的責任を果たしながら組織の持続可能性を確保することが求められます。
災害対策において重要なのは、日頃からの意識と継続的な取り組みです。
完璧な対策を一度に実現することは困難ですが、段階的に対策を充実させることで、災害時の被害を大幅に軽減することが可能になります。
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