必見!BCP危機管理入門|リスク管理との違いと対策ポイント
2025/08/08
企業経営において、予測不可能な災害や事故への備えは重要な課題です。
特に近年は自然災害の激甚化、サイバー攻撃の巧妙化、パンデミックなど、企業を取り巻くリスクが多様化しています。
こうした状況において、BCP(事業継続計画)や危機管理の重要性が高まっている一方で、リスク管理との違いを正しく理解している企業は意外と少ないのが現状です。
本記事では、BCPや危機管理の基本から実践的な対策ポイントまで、企業の防災担当者や経営者が知っておくべき知識を体系的に解説します。
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BCP・危機管理・リスク管理の
基本概念と違い
企業の安全管理において、BCP(事業継続計画)、危機管理(クライシスマネジメント)、リスク管理(リスクマネジメント)は、それぞれ異なる役割と目的を持っています。
これらの概念を正しく理解することで、効果的な企業防災体制を構築できます。
BCP(事業継続計画)の基本概念
BCP(Business Continuity Plan)は、企業が緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限に抑えつつ、中核事業の継続や早期復旧を実現するための計画です。
主に想定内の危機に対して事前に準備を行い、発生時の対応手順を明確化しています。
BCPの特徴は、自然災害、人為災害、サイバーテロなど、ある程度予測可能なリスクに対して、事前準備を通じて事業継続を図ることです。
具体的には、代替拠点の確保、重要なデータのバックアップ、従業員の安否確認体制、復旧資材の備蓄などが含まれます。
危機管理(クライシスマネジメント)の基本概念
危機管理は、想定外や想定以上の重大な危機が発生した際に、被害を最小化し、迅速な事業再建を図るための緊急対応活動です。
BCPでは対応しきれない規模や性質の危機に対して、リアルタイムで意思決定を行い、対処していきます。
危機管理の重要なポイントは、情報の一元管理と迅速な意思決定にあります。
緊急事態では、正確な情報収集と効果的な情報共有が、適切な判断と行動の基盤となります。
リスク管理(リスクマネジメント)の基本概念
リスク管理は、企業活動に影響を及ぼすあらゆるリスクを特定・評価し、回避・低減・移転・容認の手法を用いて体系的に制御する活動です。
BCPや危機管理よりも包括的で、事前準備を通じて企業全体のリスク体制を構築します。
リスク管理では、財務リスク、オペレーショナルリスク、戦略リスク、レピュテーションリスクなど、多様なリスクを網羅的に扱います。
定期的なリスク評価とモニタリングを通じて、企業の長期的な持続可能性を確保していきます。
三つの概念の相互関係
これらの概念は相互に補完し合う関係にあります。
リスク管理が企業全体のリスク体制の基盤を築き、BCPが想定内の危機への事前準備を行い、危機管理が想定外の事態への緊急対応を担います。
| 概念 | 主な対象 | 発動 タイミング |
目的 |
|---|---|---|---|
| BCP | 想定内の危機 | 事前準備 | 中核事業の継続と早期復旧 |
| 危機管理 | 想定外・想定以上の重大危機 | 事後対応 | 被害最小化と迅速な事業再建 |
| リスク管理 | 企業活動に影響するあらゆるリスク | 事前準備 | 損失回避・低減・移転・容認 |
BCPの実践ポイントと成功事例
BCPの効果的な実践には、具体的な対策の実施と継続的な改善が不可欠です。
ここでは、実際の企業事例を通じて、BCP実践のポイントを詳しく解説します。
BCP策定の重要対策例
効果的なBCPには、複数の重要な対策要素が含まれます。
安否確認サービスの導入、代替拠点の確保、BCP資材の備蓄、クラウドサービスの活用などが主要な対策となります。
安否確認サービスは、災害発生時に従業員の安全状況を迅速に把握するための重要なツールです。
代替拠点の確保では、本社機能が停止した場合でも事業継続できる体制を整備します。
また、復旧に必要な資材の事前備蓄と、データのクラウド化による情報保護も欠かせません。
株式会社ヤスナガの風水害BCP事例
株式会社ヤスナガは、取引先からの要求を受けて風水害に特化したBCPを策定しました。
高所への復旧用清掃道具の配置、保険の拡充、従業員への緊急連絡体制の整備を主要な対策として実施しました。
2012年九州北部豪雨では、これらの事前準備が功を奏し、保険適用による迅速な復旧資金の確保と、効果的な従業員への連絡により早期の事業再開を実現しました。
この事例は、中小企業でも実践可能なBCPの具体例として参考になります。
BCPがもたらす具体的なメリット
BCP策定により得られるメリットは多岐にわたります。
まず、従業員の安全確保により、復旧作業に集中できる環境を整備できます。
また、取引先からの評価向上により、新規受注機会の拡大も期待できます。
さらに、BCPの策定過程で企業の脆弱性を発見し、平時からの改善につなげることも可能です。
これにより、レジリエンス経営の実現と企業価値の向上を図ることができます。
BCP策定における注意点
BCP策定では、現実的で実行可能な計画を作成することが重要です。
理想的すぎる計画は、実際の緊急事態で機能しない可能性があります。
定期的な訓練と見直しを通じて、実効性のある計画に育てていく必要があります。
また、BCP策定は一度作成すれば終わりではありません。
事業環境の変化や新たなリスクの出現に応じて、継続的に更新していくことが求められます。
危機管理の実践手法と企業事例
危機管理は、予期せぬ重大な事態が発生した際の対応力を決定づける重要な活動です。
効果的な危機管理体制の構築により、企業は想定外の危機からも迅速に立ち直ることができます。
危機管理における情報統制と意思決定
危機管理の成功の鍵は、情報の一元管理と迅速な意思決定プロセスの確立にあります。
緊急事態では、正確な情報の収集と効果的な共有が、適切な判断と行動の基盤となります。
情報統制では、ホワイトボードやデジタルツールを活用して、関係者間でリアルタイムの情報共有を図ります。
意思決定プロセスでは、権限と責任を明確にし、迅速な判断を可能にする体制を整備します。
ナブテスコ株式会社の危機管理事例
ナブテスコ株式会社は、大規模災害などによる事業停止や供給サービスの長期中断といった被害を最小化するため、主要事業拠点と調達先のBCP(事業継続力)強化に取り組んでいるのが特徴です。
CEOを最高責任者とし、本社にBCP統括事務局、各事業拠点にBCP事務局を設置することで、全社的なBCP推進体制を構築しています。
また、年1回のリスクアセスメント、リスク対策のモニタリング、対策案の審議などを継続的に実施しています。
これらの取り組みによって、内閣官房が主管するレジリエンス認証(国が事業継続の実効性を評価する制度)において、日本でトップクラスの取得状況を誇っており、危機管理の高いレベルを示しています。
危機管理体制の構築要素
効果的な危機管理体制には、複数の重要な要素が含まれます。
緊急時対策本部の設置、役割分担の明確化、外部機関との連携体制、メディア対応の準備などが主要な構成要素となります。
また、ステークホルダーとのコミュニケーション計画も重要な要素です。
顧客、取引先、従業員、地域社会など、さまざまなステークホルダーに対して、適切なタイミングで正確な情報を提供する体制を整備する必要があります。
危機管理における成果測定
危機管理の効果を測定するには、復旧時間、被害規模、ステークホルダーからの評価などの指標を活用します。
これらの指標を定期的に評価し、改善点を特定することで、危機管理能力の向上を図ることができます。
また、危機対応後の振り返りを通じて、対応プロセスの改善点を特定し、次回の危機に備えることも重要です。
経験を蓄積し、組織の危機対応能力を継続的に向上させていくことが求められます。
リスク管理の体系的アプローチ
リスク管理は、企業活動に影響を与えるあらゆるリスクを体系的に制御する活動です。
包括的なリスク管理体制の構築により、企業は持続可能な成長を実現できます。
リスク管理のプロセスと手法
リスク管理は、リスクの特定、評価、対策の実施、モニタリングという4つの段階を循環的に実施するプロセスです。
各段階では、専門的な手法とツールを活用して、効果的なリスク制御を行います。
リスク対策のアプローチには、回避、低減、移転、容認の4つの基本戦略があります。
各リスクの性質と企業の状況に応じて、最適な戦略を選択し、実行していきます。
富士通株式会社のリスク管理体制事例
富士通株式会社株式会社は、『リスク・コンプライアンス委員会』を設置し、グループ横断でのリスク評価と再発防止策を実施しています。
取締役会への定期報告により、経営レベルでのリスク監視体制を確立しているのが特徴です。
この体制により、企業価値の向上と長期持続的成長の基盤を構築しています。
リスク管理が経営戦略と密接に連携している好例として参考になります。
リスク管理の対象領域
現代企業のリスク管理は、多様な領域を対象としています。
財務リスク、オペレーショナルリスク、戦略リスク、レピュテーションリスク、サイバーリスクなど、幅広いリスクを包括的に管理する必要があります。
特に近年は、環境・社会・ガバナンス(ESG)リスクや気候変動リスクなど、新しいタイプのリスクへの対応も重要になっています。
これらのリスクは、企業の長期的な持続可能性に大きな影響を与える可能性があります。
リスク管理の効果測定と改善
リスク管理の効果を測定するには、KRI(Key Risk Indicators)やKPI(Key Performance Indicators)を活用します。
これらの指標により、リスク管理活動の有効性を定量的に評価できます。
また、定期的なリスクアセスメントを通じて、新しいリスクの発見と既存リスクの変化を把握し、リスク管理体制の継続的な改善を図ることが重要です。
BCP策定の実践的な6ステップ
効果的なBCPの策定には、体系的なアプローチが必要です。
ここでは、実践的な6ステップを通じて、企業が取り組むべき具体的な作業を詳しく解説します。
ステップ1:基本方針の策定
BCP策定の第一歩は、基本方針の明確化と対象範囲の設定です。
経営陣のコミットメントを得て、BCPの目的、対象事業、想定リスクを明確に定義します。
基本方針では、企業の事業継続に対する考え方と優先順位を明確にします。
また、BCP策定・運用に必要な予算と人的リソースの確保についても、この段階で決定します。
ステップ2:運用体制の決定
BCP運用体制では、経営層のコミットメントと担当部署の役割分担を明確にします。
BCP推進責任者の任命、関連部署の連携体制、外部専門家の活用について具体的に決定します。
運用体制の構築では、平時の準備活動と緊急時の対応活動の両方を考慮した組織設計が重要です。
また、定期的な訓練と見直しを実施する体制も整備します。
ステップ3:中核事業と復旧目標の設定
中核事業の特定では、企業の存続に不可欠な事業を優先順位付けします。
RTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)とRPO(Recovery Point Objective:目標復旧地点)を設定し、具体的な復旧目標を明確にします。
復旧目標の設定では、顧客への影響、売上への影響、法的要求事項などを総合的に考慮します。
現実的で達成可能な目標を設定することが、実効性のあるBCPの基盤となります。
ステップ4:財務診断と事前対策
BCP実行には、十分な財務基盤が必要です。
緊急時の資金調達手段の確保、保険の活用、復旧資金の確保などの財務対策を事前に準備します。
事前対策では、代替拠点の確保、重要データのバックアップ、復旧資材の備蓄、代替サプライヤーの確保などを実施します。
これらの対策により、緊急時の迅速な対応が可能になります。
ステップ5:緊急対応フローの整備
緊急時の対応手順を具体的に整備します。
連絡網の構築、役割分担の明確化、意思決定プロセスの確立、外部機関との連携手順などを詳細に規定します。
緊急対応フローでは、初動対応から復旧完了までの一連の流れを時系列で整理し、各段階での実施事項と責任者を明確にします。
また、状況に応じた柔軟な対応も可能にする仕組みを構築します。
ステップ6:訓練と継続的改善
BCP策定後は、定期的な訓練により実効性を検証します。
机上訓練から実地訓練まで、段階的に訓練レベルを向上させ、BCPの実用性を高めていきます。
訓練結果をもとに、PDCAサイクルを回してBCPの継続的改善を図ります。
事業環境の変化や新たなリスクの出現に応じて、定期的にBCPを見直し、更新することが重要です。
企業における優先順位と
統合的アプローチ
BCP、危機管理、リスク管理の効果的な活用には、企業の状況に応じた優先順位の設定と統合的なアプローチが必要です。
限られたリソースを最大限に活用するための戦略的な取り組みが求められます。
企業規模別の優先順位
中小企業では、まずBCPの基本的な要素から着手し、段階的に危機管理とリスク管理を拡充していくアプローチが効果的です。
大企業では、リスク管理を基盤として、BCPと危機管理を統合的に運用する体制の構築が重要です。
グループ全体でのリスク管理体制と、各事業部門でのBCP策定を連携させることで、全社的なレジリエンス向上を図ります。
業種別のリスクと対策
業種により想定されるリスクは大きく異なります。
製造業では供給網の途絶リスク、IT企業ではサイバーリスク、小売業では店舗運営リスクなど、業種特有のリスクに対応したBCPと危機管理の体制構築が必要です。
各業種の特性を理解し、業界のベストプラクティスを参考にしながら、自社の状況に適した対策を選択することが重要です。
また、業界団体との連携により、情報共有と相互支援の体制を構築することも有効です。
統合的なリスク管理体制の構築
BCP、危機管理、リスク管理を統合的に運用するには、全社的な調整機能が必要です。
リスク管理委員会やBCP推進委員会などの組織を設置し、各取り組みの連携と調整を図ります。
統合的アプローチでは、平時のリスク管理により潜在的なリスクを発見・軽減し、BCPにより想定内のリスクに対する事前準備を行い、危機管理により想定外のリスクに対する緊急対応を実施します。
継続的な改善とレビュー
統合的なリスク管理体制は、継続的な改善とレビューにより効果を高めていきます。
定期的な評価により、各取り組みの効果を測定し、改善点を特定します。
また、外部環境の変化や新たなリスクの出現に応じて、体制の見直しと更新を継続的に実施することが重要です。
これにより、企業の持続可能性と競争力の維持・向上を図ることができます。
まとめ
BCP、危機管理、リスク管理は、それぞれ異なる役割と目的を持ちながら、企業の持続可能性を支える重要な取り組みです。
BCPは想定内のリスクに対する事前準備、危機管理は想定外のリスクに対する緊急対応、リスク管理は包括的なリスクの体系的制御を担います。
効果的な企業防災体制の構築には、これら三つの概念を統合的に運用し、企業の規模や業種に応じた優先順位で取り組むことが重要です。
基本方針の策定から始まる6ステップのBCP策定プロセスを通じて、実効性のある事業継続体制を構築できます。
継続的な訓練と改善により、企業は『止まらない』『止まっても早く戻る』体制を実現し、競争優位性を確保できます。
今こそ、BCP危機管理の重要性を認識し、実践的な取り組みを開始することで企業の持続的発展につながるでしょう。
記録・体制・マニュアルといった項目は一度整備して終わりではなく、日常的に見直し、運用し続ける仕組みづくりが再指導や監査の回避につながります。
BCPの策定・実行が義務化された今、非常時だけではなく、日頃の業務にも無理なく組み込める体制が必要です。
そうした継続的な取り組みを支える手段のひとつとして、ファイル管理やBCP共有をサポートする「クロスゼロ」のようなツールを活用してみるのも選択肢の一つです。
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