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避難はしごの設置基準は?|はしごの種類から設置場所まで徹底解説

避難はしごの設置基準は?|はしごの種類から設置場所まで徹底解説

2025/12/18

防災

火災や災害時における避難経路の確保は、建物管理者の重要な責務です。
特に中小規模のオフィスビルや集合住宅では、直通階段を2系統設置することが困難なケースが多く、避難はしごなどの避難器具に依存することが一般的となっています。
避難はしごの設置には建築基準法や消防法による詳細な基準が設けられており、建物の用途や規模、収容人員数に応じて設置義務が発生します。
本記事では、避難はしごの設置基準について、法令の根拠から具体的な設置要件、安全確保の方法まで解説し、企業の防災担当者や施設管理者が適切な対応を取れるよう支援します。

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避難はしご設置基準の概要

避難はしごの設置基準は、建築基準法と消防法の二つの法体系によって規定されています。
これらの法令は、建物の安全性を確保し、災害時における人命保護を目的として制定されており、建物の用途や規模に応じて詳細な設置要件を定めています。
設置基準を理解するためには、まず適用される法的根拠と対象建物の分類、そして具体的な設置義務の判断基準について把握する必要があります。

適用される法律と基準

避難はしごの設置基準は、建築基準法施行令第121条と消防法施行令第25条を主要な根拠としています。
建築基準法施行令第121条では、建物規模に応じた2方向避難の確保を義務付けており、直通階段または「避難上有効なバルコニー」と避難器具の組み合わせによる避難経路の設置を求めています。
消防法施行令第25条では、防火対象物に該当する建物に対して、建物用途・収容人員・階数の3つの要素に基づいて避難器具の設置義務を詳細に規定しています。

さらに、消防法第17条第2項により、各自治体は条例によって独自の設置基準や要件を設けることが可能とされています。
このため、法定基準を満たしていても、地域の条例によって追加の設置義務が発生する場合があり、建物管理者は管轄消防署への確認が不可欠です。

設置義務のある建物の区分

避難はしごの設置義務は、消防法別表第一に定める防火対象物の分類に基づいて判定されます。
主要な対象建物として、劇場・集会場(第1号)、キャバレー・遊技場(第2号)、飲食店(第3号)、商業施設(第4号)、旅館・共同住宅(第5号)、病院・保育所等(第6号)、学校(第7号)、事務所(第15号)など全18項目が規定されています。
特に事務所については第15号として「各項に該当しない事業場」に分類され、多くの企業が設置義務の対象となる可能性があります。

設置個数については、収容人員数に応じた算定基準が設けられています。
第1・2・5号建物では収容100名以下で1個、100名を超える場合は超過分100名ごとに1個追加となります。
第3号建物では200名基準、第4号建物では300名基準で同様の計算方式が適用されます。

設置義務の判断ポイント

避難はしごの設置可能階数は、地階・2階では全防火対象物で設置可能ですが、3階から10階については建物用途による制限があります。
病院・介護施設・保育所等(別表第一第6号)以外の建物では10階まで設置可能である一方、これらの施設では2階までに制限されています。
11階以上の建物では、すべての用途において避難はしごの設置が認められていないため、特別避難階段等の他の避難設備による対応が必要となります。

設置義務の緩和・免除については、消防法施行規則第26条に詳細な規定があります。
耐火構造の主要部分と階段2系統以上の設置により収容人員を2倍換算できるほか、避難階段・特別避難階段の設置、屋外渡り廊下・避難橋の設置、屋上広場の条件整備などにより、設置数の減免や全免除が可能となる場合があります。

避難はしごの設置基準に基づく
技術要件

避難はしごの技術要件は、災害時における確実な避難を確保するため、はしごの種類・設置位置・材質・耐荷重など多岐にわたる詳細な基準が設けられています。
これらの基準は、使用者の安全確保と避難の実効性を両立させることを目的としており、建物の構造や用途に応じた適切な選択が求められます。
技術要件の理解は、設置後の保守管理や緊急時の安全確保にも直結するため、設計段階から運用段階まで一貫した管理体制の構築が重要です。

はしごの種類別の設置要件

避難はしごには、固定はしご(伸縮式壁付け)、立てかけはしご(収納→展開タイプ)、吊り下げはしご(非金属、上階から吊り下げ)、ハッチ用はしご(ベランダ床内収納型)の4つの主要タイプがあります。
各タイプは設置環境と使用条件に応じて選択され、それぞれ異なる技術要件が適用されます。
ハッチ用はしごは特に集合住宅のベランダに多く採用されており、チャイルドロック機能と蓋ヒンジ固定機構を備えることで、安全性と確実性を両立させています。

固定はしごと立てかけはしごについては、建物の外壁に確実に固定できる構造体との接続が必要で、取り付け部の耐荷重性能が重要な要件となります。
吊り下げはしごは軽量性と収納性に優れる一方、展開時の安定性確保のための適切な固定点設置が求められます。

設置位置と地面や電線との距離

避難はしごの設置位置については、「避難時に近接可能な安全場所」と「速やかに使用可能な状態」の2つの基本要件が消防法施行令第25条第2項で規定されています。
具体的には、地上までの避難経路が確保され、着地点において安全な移動が可能な場所への設置が必要です。
電線や隣接建物との離隔距離については、展開時のはしご全長を考慮し、接触や干渉を避けるための十分なクリアランスを確保することが不可欠です。

また、はしご周辺には物干し竿や室外機など、展開時に障害となる可能性のある物品を設置しないよう配慮が必要です。
特にベランダタイプのハッチ用はしごでは、上部・下部双方の展開空間を常時確保し、緊急時の迅速な使用を可能とする管理体制が求められます。

材質と耐荷重の基準

避難はしごの材質については、耐久性・耐候性・軽量性を兼ね備えた素材の使用が基本要件となります。
金属製の場合は防錆処理が必須であり、非金属製の場合は紫外線や温度変化に対する長期安定性が要求されます。
耐荷重性能については、想定される使用者数と体重を考慮し、安全率を含めた設計荷重に基づく構造計算による検証が必要です。

特に集合住宅や事務所建物では、複数人の同時使用を想定した耐荷重設定が重要となります。
また、経年劣化による性能低下を考慮し、定期的な荷重試験や材質検査による性能確認が保守管理の重要な要素となります。
製造者による品質保証と適合証明書の確認も、設置時の重要な手続きとして実施する必要があります。

災害時における避難設備の管理と従業員の安全確保は、総合的な防災体制の中で一体的に運用することで効果を発揮します。
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避難はしご設置における安全確保

避難はしごの安全確保は、設置後の継続的な管理と適切な運用によって実現されます。
定期点検による性能維持、従業員への避難訓練、老朽化対応による交換時期の適切な判断が三つの柱となり、これらを実施することで緊急時の確実な避難が可能となります。
特に企業における避難はしごの管理では、法的義務の履行に加えて、従業員の安全確保と事業継続性の観点からも、包括的な安全管理体制の構築が重要です。

定期点検と保守の必須項目

避難はしごの定期点検は、消防法に基づく消防用設備等の点検に準じて実施され、機器点検(6か月に1回)と総合点検(1年に1回)の二段階で行われます。
機器点検では外観検査、作動確認、設置状況の確認を中心に実施し、総合点検では実際の展開動作と荷重試験を含む性能確認を行います。
点検項目には、はしごの変形・腐食・損傷の有無、固定部分の緩み、展開機構の円滑性、チャイルドロック等の安全機構の作動確認が含まれます。

点検結果は記録簿に記載し、3年間の保存が義務付けられています。
不具合が発見された場合は直ちに修理または交換を実施し、修理完了まで代替的な避難経路の確保または使用禁止措置を講じる必要があります。
また、点検業務については消防設備士または消防設備点検資格者による実施が推奨されています。

避難時の安全対策と訓練

避難はしごを使用した避難訓練は、従業員の安全意識向上と緊急時の確実な避難実現のために不可欠です。
訓練では、ハッチ蓋の開錠方法、蓋ヒンジの固定手順、はしごストッパーの外し方、安全な降下姿勢など、一連の操作手順を実際に体験させることが重要です。
特に高齢者や身体的制約のある従業員については、個別の避難支援計画を策定し、介助者の指定と具体的な支援方法の訓練を実施する必要があります。

避難時の安全対策としては、非常時以外の使用禁止の徹底、展開時の落下物確認、地上での安全確保員配置などが重要です。
また、悪天候時や夜間の避難を想定した照明設備の確保と、避難後の集合場所の明確化も訓練項目に含める必要があります。

老朽化対応と交換基準

避難はしごの耐用年数は材質と設置環境により異なりますが、一般的に金属製で15~20年、非金属製で10〜15年が目安とされています。
ただし、海岸地域や工業地域など腐食促進環境では、より短い周期での交換検討が必要となります。
交換判断の具体的基準として、構造部材の変形・亀裂、防錆処理の劣化範囲が30%超過、展開機構の不具合頻発、荷重試験での基準値未達などがあります。

老朽化の兆候が確認された場合は、速やかに専門業者による詳細診断を実施し、補修可能性と費用対効果を総合的に判断します。
交換時期の判断では、製造年月日、過去の修理履歴、類似製品の事故事例なども参考として、安全性を最優先とした決定を行うことが重要です。
また、交換工事中の代替避難経路の確保も事前に計画しておく必要があります。

避難はしご設置の届出手続き

避難はしごの設置には、建築確認申請から消防署への届出まで、複数の行政手続きが必要となります。
これらの手続きは建物の新築・増改築時期や設置タイミングによって異なる様式や期限が設けられており、適切な時期での申請・届出が法令遵守の前提となります。
手続きの漏れや遅延は、最悪の場合、建物使用開始の遅延や法的処分の対象となる可能性があるため、設計段階からの計画的な対応が不可欠です。

設計時に確認すべき項目

設計段階では、建築基準法と消防法の両方の要件を満たす避難はしごの選定と設置計画の策定が必要です。
まず、建物用途と規模から設置義務の有無を判定し、収容人員数に基づく必要設置数を算定します。
次に、設置可能階数の制限と「避難上有効なバルコニー」の条件を確認し、具体的な設置位置を決定します。
設計図書には避難はしごの設置位置、種類、仕様、周辺の安全確保措置を明記し、建築確認申請時の審査に適合する詳細な情報を記載することが求められます。

また、緩和・免除規定の適用可能性についても設計段階で検討し、建物全体の避難安全性能との整合性を確認します。
自治体条例による追加要件の有無についても、管轄建築主事または指定確認検査機関への事前相談により確認しておくことが重要です。

届出や報告の手順

避難はしごの設置に関する届出手続きは、建築確認申請における消防同意と、消防法に基づく各種届出の二つの系統で実施されます。
建築確認申請時には、避難器具設置計画を含む防火・避難計画書を建築主事または指定確認検査機関に提出し、消防署からの同意を得る必要があります。
消防法に基づく届出では、防火対象物使用開始届(使用開始の7日前まで)と消防計画届出書(管理権原取得から15日以内)の提出が必要となります。

設置工事完了後は、消防署による現場検査を受検し、設置状況と性能の確認を受けます。
検査不合格の場合は修正工事と再検査が必要となるため、施工業者との十分な事前打合せと品質管理体制の確立が重要です。
また、定期報告制度の対象建物では、避難設備の状況についても定期的な報告義務があります。

基準違反時の対応方法

避難はしごの設置基準違反が判明した場合は、建築基準法または消防法に基づく改善命令や使用停止命令の対象となる可能性があります。
違反内容の軽重に応じて、口頭指導から行政処分まで段階的な措置が講じられるため、早期の自主的改善が重要です。
基準違反の発見時は、直ちに管轄行政庁への相談を行い、改善計画書の提出と具体的な是正スケジュールの協議を実施する必要があります。

改善工事中における代替安全措置の実施も違反対応の重要な要素です。
避難はしごの機能停止期間中は、自衛消防隊の増員配置、避難誘導体制の強化、仮設避難設備の設置などにより、安全性の代替確保を図る必要があります。
また、改善完了後は管轄行政庁による完了検査を受検し、基準適合の確認を得ることで法的手続きが完了します。

まとめ

避難はしごの設置基準は、建築基準法施行令第121条と消防法施行令第25条を根拠として、建物用途・収容人員・階数に基づく詳細な要件が設けられています。
企業の防災担当者は、自社建物の分類と収容人員数を正確に把握し、法定基準に適合した避難器具の設置と適切な維持管理を実施することが重要です。

技術要件については、はしごの種類別設置要件、設置位置と離隔距離、材質と耐荷重基準を総合的に検討し、建物の構造と用途に最適な製品選択を行う必要があります。
また、定期点検の実施、従業員訓練の充実、老朽化対応による適切な交換時期の判断により、継続的な安全性確保が実現されます。

設置手続きでは、設計段階からの計画的な対応により、建築確認申請と消防署届出の適切な実施が求められます。
基準違反が発見された場合は、速やかな行政庁相談と改善計画の策定により、法令遵守と安全確保の両立を図ることが重要です。
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