地震によって起こる災害は?|種類と対策のポイントを解説
2025/12/18
地震は日本にとって避けられない自然災害であり、その被害は建物の倒壊や火災といった一次被害にとどまらず、津波や液状化、ライフラインの途絶など多岐にわたる二次被害を引き起こします。
企業の防災・BCP担当者や自治体職員の皆様にとって、地震によって起こる災害の全体像を把握し、それぞれの被害特性と対策を理解することは、迅速な初動対応と事業継続のために重要です。
本記事では、日本が地震大国である地質学的背景から、地震発生時に生じる一次被害・二次被害の種類、さらに社会インフラに及ぼす影響までを体系的に整理し、実効性の高い備えのポイントを解説します。
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地震によっておこる災害の全体像
地震によって起こる災害を理解するには、まず地震そのものがどのように発生し、どのような条件下で被害が拡大するのかを把握する必要があります。
日本列島は4つのプレート境界に位置し、活断層も2,000箇所以上存在するため、世界有数の地震多発地帯として知られています。
地震によって起こる災害は、揺れそのものが引き起こす一次被害と、その後に連鎖的に発生する二次被害に大きく分けられます。
本章では、地震と災害発生のメカニズム、被害規模を決定づける要因、そして過去の大地震の教訓を整理します。
地震と災害発生のしくみ
地震は、地下の岩盤が蓄積したひずみを一気に解放する現象であり、プレート境界型地震と活断層型地震の2種類に大きく分けられます。
日本列島の周辺には、北米プレート・ユーラシアプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレートの4つが複雑に交わり、年間数センチメートル単位で動き続けています。
プレート境界では、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に境界面が固着し、ひずみが限界に達すると一気に跳ね上がって巨大地震を発生させます。
南海トラフ地震や首都直下地震は、こうしたプレート運動の結果として繰り返し発生する典型例です。
一方、活断層型地震は陸域の断層が直接ずれ動くことで起こり、震源が浅く局所的に強い揺れをもたらします。
阪神・淡路大震災や熊本地震(2016年)は活断層型の代表例であり、都市直下で発生すると建物倒壊や火災など甚大な一次被害を引き起こす特徴があります。
被害規模を左右する主な要因
地震によって起こる災害の規模は、マグニチュード・震源深さ・地盤条件・建物の耐震性・発生時刻といった複数の要因が複合的に影響します。
マグニチュードはエネルギーの大きさを示し、震源深さが浅いほど地表での揺れが強くなる傾向があります。
地盤条件は被害の深刻度を大きく左右し、軟弱な沖積平野や埋立地では揺れが増幅されやすく、液状化現象のリスクも高まります。
加えて、建物の旧耐震基準・新耐震基準の違いや、木造・鉄筋コンクリート造といった構造種別も倒壊リスクに直結します。
発生時刻も重要であり、夜間・早朝は在宅率が高く人的被害が拡大しやすく、日中のオフィス街では帰宅困難者が大量発生します。
冬季の火気使用時には火災リスクが高まるなど、季節や気象条件も二次災害の発生に影響を与えます。
過去の大地震と代表的な被害事例
日本では、関東大震災(1923年)、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)など、歴史的に甚大な被害をもたらした大地震が繰り返し発生しています。
関東大震災では火災が被害を拡大し、約10万人の犠牲者を出しました。
阪神・淡路大震災は早朝の直下型地震であり、木造住宅の倒壊と火災延焼により6,400名以上が犠牲となり、高速道路の崩落など都市インフラの脆弱性が明らかになりました。
東日本大震災はマグニチュード9.0の海溝型巨大地震で、津波が沿岸部を襲い約1万8,000名の死者・行方不明者を出し、福島第一原子力発電所事故という複合災害にも発展しました。
これらの事例から、地震によって起こる災害は単独の揺れにとどまらず、火災・津波・ライフライン途絶といった二次被害が連鎖的に発生し、社会全体に長期的な影響を及ぼすことが教訓として蓄積されています。
今後も南海トラフ地震や首都直下地震の発生確率は高く、過去の被害事例を踏まえた総合的な備えが求められます。
地震によって起こる災害の一次被害
地震によって起こる災害のうち、揺れそのものが直接的に引き起こす被害を一次被害と呼びます。
建物や構造物の倒壊、地盤のずれや地割れ、そして人的被害が代表的であり、発災直後の救助・救命活動の成否を左右する重要な要素です。
一次被害の規模は、建物の耐震性や地盤条件、震源からの距離などによって大きく変動します。
本章では、建物倒壊・地盤被害・人的被害のそれぞれについて、発生メカニズムと対策の要点を解説します。
建物や構造物の倒壊と崩壊リスク
地震によって起こる災害の中で、建物や橋梁・高架道路といった構造物の倒壊は直接的かつ深刻な被害をもたらします。
旧耐震基準(1981年以前)で建てられた木造住宅や老朽化した建築物は、大きな揺れに耐えられず全壊・半壊するリスクが高く、阪神・淡路大震災では倒壊による圧死が犠牲者の大半を占めました。
新耐震基準(1981年施行)以降の建物は倒壊リスクが大幅に低減されましたが、柱や壁の配置バランス、基礎の強度、接合部の施工品質などによって実際の耐震性能には差があります。
また、非構造部材(天井材・外壁・設備配管)の落下や、家具・什器の転倒も人的被害を拡大させる要因です。
企業や自治体は、耐震診断の実施と必要に応じた耐震補強、家具固定の徹底、重量物の配置見直しなどを事前に行い、建物倒壊リスクを最小化する必要があります。
新築・改修時には最新の耐震基準を満たすことはもちろん、定期的な点検と老朽化対策も重要です。
地すべりや地割れなどの地盤被害
地震の揺れは地盤そのものを変形させ、斜面の崩壊や地割れ、地すべりといった地盤災害を引き起こします。
山地や丘陵地では、地震動により斜面の土砂や岩盤が一気に滑り落ち、住宅や道路を巻き込む大規模な土砂災害に発展することがあります。
地割れは地表に亀裂が生じる現象であり、断層のずれや地盤の不均一な沈下によって発生します。
道路や建物の基礎に亀裂が入ると、安全性が著しく低下し、二次災害のリスクも高まります。
地盤被害のリスクが高い地域は、地形図やハザードマップで事前に把握することが可能です。
企業の事業所や倉庫、従業員の居住地などが急傾斜地や軟弱地盤に位置する場合は、代替拠点の確保や避難経路の複数化、地盤改良工事の検討など、事前の対策が不可欠です。
直接的な人的被害と救助の課題
地震によって起こる災害の一次被害で重大なのが、建物倒壊や落下物による圧死・窒息死、負傷といった人的被害です。
阪神・淡路大震災では、死者の約8割が建物倒壊による圧死であり、発災直後の救助活動の遅れが多くの犠牲を生みました。
地震発生後、救助可能な時間帯は「72時間の壁」と呼ばれ、この時間内に救出されるかどうかが生存率を大きく左右します。
しかし、道路の寸断や救助隊の不足、情報不足などにより、迅速な救助活動が困難になるケースが多く、地域住民や企業による自助・共助が極めて重要です。
企業は従業員の安全確保のため、緊急地震速報の活用、避難訓練の定期実施、救助資機材の配備、安否確認体制の整備などを進める必要があります。
また、総合防災アプリ「クロスゼロ」のような安否確認システムを導入することで、発災直後の従業員の状況を迅速に把握し、救助や支援の優先順位を判断しやすくなります。
地震によって起こる災害の二次被害
地震によって起こる災害は、揺れによる直接的な被害にとどまらず、津波・火災・液状化・余震といった二次被害が連鎖的に発生し、被害を拡大させます。
二次被害は時間差をもって広範囲に及ぶため、初動対応だけでなく中長期的な備えと対策が不可欠です。
本章では、津波・地震火災・液状化現象・余震のそれぞれについて、発生メカニズムと具体的な対策の要点を解説します。
企業のBCP策定においても、これらの二次被害を想定したシナリオ設計が求められます。
津波による沿岸被害と避難の要点
海溝型巨大地震では、海底の地盤が急激に隆起・沈降することで津波が発生し、沿岸部に壊滅的な被害をもたらします。
東日本大震災では、津波が最大40メートル以上の高さに達し、沿岸の市街地や港湾施設、工場、住宅を飲み込み、多くの人命が失われました。
津波の特徴は、第一波だけでなく第二波・第三波と繰り返し襲来し、引き波によって建物や物資が沖合に流出する点です。
また、津波到達時間は震源の位置や水深によって異なり、近地地震では数分以内、遠地地震では数時間後に到達する場合もあります。
津波対策の基本は「迅速な高台避難」であり、地震発生直後に津波警報が発令された場合は、ためらわずに高台や津波避難ビルへ避難することが生死を分けます。
企業は沿岸部に事業所や倉庫を持つ場合、ハザードマップで浸水想定区域を確認し、避難経路の複数化、避難訓練の実施、津波到達時間の情報共有を徹底する必要があります。
地震火災の発生と延焼対策
地震によって起こる災害の中で、津波に次いで被害を拡大させるのが地震火災であり、出火から延焼に至る過程で広範囲の建物や人命を奪います。
関東大震災では火災旋風が発生し、避難者を巻き込んで約10万人が犠牲となりました。
地震火災の主な出火原因は、ガス漏れによる火災、停電復旧時の通電火災、工場や化学施設での電気・化学火災などです。
阪神・淡路大震災では、通電火災が多発し、停電復旧後に断線したコードや倒れた暖房器具から出火するケースが相次ぎました。
地震火災を防ぐには、感震ブレーカーの設置が有効であり、地震を感知すると自動的に電気を遮断して通電火災を防ぎます。
また、ガスの元栓を閉める、火気使用時の初期消火訓練、消火器や消火用保存水の配備など、多層的な対策が必要です。
企業は、工場や倉庫での危険物管理の徹底、火災報知器・スプリンクラーの定期点検、従業員への初期消火訓練の実施などを通じて、地震火災のリスクを最小化する必要があります。
液状化現象と地盤沈下の影響
液状化現象は、地下水を多く含む砂質地盤が地震の揺れによって液体のようにふるまい、建物の傾斜や地盤沈下を引き起こす現象です。
東日本大震災では、東京湾岸や千葉県浦安市などの埋立地で大規模な液状化が発生し、住宅の傾斜や道路の陥没、ライフラインの破損が相次ぎました。
液状化が発生すると、建物は基礎ごと傾き、地中の下水道管やガス管が浮き上がったり折れたりして、長期間の復旧作業が必要になります。
また、液状化によって噴出した泥水や砂が道路を覆い、緊急車両の通行を妨げることもあります。
液状化リスクは、各自治体が公開するハザードマップの「液状化発生傾向図」で確認できます。
企業は事業所や倉庫の立地を選定する際に液状化リスクを考慮し、高リスク地域では地盤改良工事や杭基礎の採用、重要設備の配置見直しなどの対策を講じる必要があります。
余震と継続的被害のリスク
大地震の後には余震が繰り返し発生し、すでに損傷を受けた建物をさらに倒壊させたり、救助・復旧活動を妨げたりする継続的なリスクをもたらします。
熊本地震では、最初の大きな揺れ(前震)の後、28時間後に本震が発生し、前震で損傷した建物が本震で倒壊するケースが相次ぎました。
余震は本震と同等規模に達することもあり、本震後に「安全」と判断して建物内に戻った人が、余震による倒壊に巻き込まれる危険があります。
また、余震は数日から数週間、場合によっては数か月続くことがあるため、長期的な警戒と二次避難の準備が必要です。
企業は、本震直後の建物被害状況の確認と応急危険度判定の実施、余震を想定した避難計画の策定、従業員への余震リスクの周知を徹底する必要があります。
地震によって起こる災害に備えるには、平時からの情報管理と訓練の実施が欠かせません。
総合防災アプリ「クロスゼロ」は、安否確認・緊急連絡・ハザード情報配信・備蓄品管理など、企業に必要な防災機能を統合的に提供し、迅速な初動対応を支援します。
地震によって起こる災害が
社会インフラに与える影響
地震によって起こる災害は、個々の建物や人的被害にとどまらず、電気・水道・ガスといったライフライン、道路・鉄道などの交通網、電話・インターネットなどの通信インフラに深刻な影響を及ぼします。
これらのインフラ途絶は、企業活動や市民生活の継続を困難にし、復旧に長期間を要する場合もあります。
本章では、ライフライン・交通・通信のそれぞれについて、地震によって起こる災害の影響と復旧の課題、企業が備えるべき対策を解説します。
BCP策定においては、これらのインフラ途絶を前提としたシナリオを組み込むことが不可欠です。
ライフラインの停止と復旧の課題
地震によって起こる災害では、電気・水道・ガスの供給が広範囲かつ長期間にわたって停止し、企業活動と市民生活に深刻な影響を与えます。
首都直下地震の被害想定では、電気の復旧に約6日、水道に約30日、ガスに約55日を要するとされています。
電気の停止は、照明・空調・通信機器・サーバーなどの稼働を不可能にし、企業の事業継続を直撃します。
水道の停止は、飲料水の確保だけでなく、トイレや衛生管理、工場の生産ラインにも影響し、保存水の備蓄や給水袋の準備が不可欠です。
ガスの停止は、暖房・給湯・調理に影響し、特に冬季には寒さと食事の確保が課題となります。
企業は、非常用発電機・蓄電池の配備、保存水と非常食の備蓄、カセットガスボンベの確保など、ライフライン途絶を前提とした備えを行う必要があります。
首都直下地震のライフライン復旧目標日数
電気 約6日 水道 約30日 ガス 約55日
交通と物流への長期的影響
地震によって起こる災害は、道路・橋梁の崩落や鉄道の運休を引き起こし、人の移動と物資の輸送を長期間にわたって停止させます。
阪神・淡路大震災では高速道路が崩落し、東日本大震災では太平洋沿岸の道路や鉄道が津波で流失し、復旧に数年を要しました。
道路の寸断は、緊急車両の通行を妨げるだけでなく、企業の原材料調達や製品配送を不可能にし、サプライチェーン全体を停止させます。
また、鉄道の安全点検や復旧工事には時間がかかり、通勤・通学の足が失われることで、従業員の出社困難や帰宅困難者の大量発生といった事態を招きます。
企業は、代替輸送ルートの確保、在庫の分散配置、サプライヤーの複数化などの対策を講じる必要があります。
また、従業員の帰宅困難を想定し、職場での備蓄品(保存水・非常食・毛布など)の配備や、宿泊可能なスペースの確保、在宅勤務体制の整備を進めることが重要です。
通信と情報伝達の障害対策
地震によって起こる災害では、停電・通信設備の破損・回線の混線などにより、電話やインターネットが不通となり、情報伝達と意思決定が困難になります。
東日本大震災では、携帯電話の基地局が停電や津波で損壊し、固定電話も混線により長時間つながらない状況が続きました。
通信障害は、企業の安否確認・指示伝達・顧客対応を麻痺させ、初動対応の遅れや二次被害の拡大を招きます。
また、SNSやメールも回線混線の影響を受けるため、複数の通信手段を確保しておくことが不可欠です。
企業は、公衆Wi-Fi・衛星電話・災害用伝言板・IP無線などの代替通信手段を事前に準備し、定期的な動作確認と訓練を行う必要があります。
さらに、総合防災アプリ「クロスゼロ」を導入することで、通信途絶時でも安否確認や緊急連絡を迅速に行い、従業員の状況を一元管理できます。
まとめ
地震によって起こる災害は、建物倒壊や地盤被害といった一次被害にとどまらず、津波・火災・液状化・余震といった二次被害が連鎖的に発生し、ライフライン・交通・通信といった社会インフラを長期間停止させる深刻な影響をもたらします。
日本は4つのプレートと活断層を抱える地震大国であり、南海トラフ地震や首都直下地震の発生確率は30年以内に70〜80%とされています。
企業の防災・BCP担当者や自治体職員の皆様には、ハザードマップの確認、備蓄品の確保、避難訓練の実施、代替通信手段の整備など、多角的な事前対策を講じることが求められます。
過去の大地震の教訓を踏まえ、一次被害・二次被害・インフラ途絶のすべてを想定したBCPを策定し、定期的に見直すことで、実効性の高い防災体制を構築してください。
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