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福祉施設における事業継続計画(BCP)とは?策定手順から義務化まで徹底解説

福祉施設における事業継続計画(BCP)とは?策定手順から義務化まで徹底解説

2024/09/11

2025/07/25

防災

自然災害や感染症の脅威は、いつ発生するかわかりません。
そんな時に施設や利用者を守り、事業を継続するために必要なのがBCP(事業継続計画)の策定です。

令和6年4月からは、介護サービス事業者にとってBCP策定が義務化されます。

しかし、BCP策定は義務だけではありません。
適切なBCPは、福祉施設の利用者の安全確保やサービス継続、さらには補助金の受給など、多くのメリットをもたらします。

本記事では、福祉施設でのBCP策定手順から義務化まで徹底解説します。
BCP策定に悩んでいる事業者の方は、ぜひ参考にしてください。

令和6年4月から義務化されたBCPは、対応しなければ報酬が減算される一方で、正しく取り組めば補助金や加算の対象にもなります。

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福祉施設のBCPとは?

福祉施設の事業継続計画(BCP)とは、利用者の安全確保と事業継続の両立を目的とした計画です。

具体的には、自然災害や感染症などの緊急事態が発生した場合でも、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための指針、体制、手順などを定めたものです。

頻発する自然災害や感染症流行の影響を受け、福祉サービスの継続が困難になる事態が顕在化しています。

特に、利用者の生活や健康、さらには生命維持に直結する介護や福祉サービスでは、事業中断による影響は大きくなります。

このような状況を踏まえ、厚生労働省は令和6年4月より、指定障害福祉サービス事業者に対してBCP策定を義務化しました。
利用者の安全確保と事業継続の責任を明確にするためです。
参照:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」

BCPは、単なる義務履行ではなく、利用者を守る、事業を守る、そして経営を盤石なものにするための重要な取り組みです。

令和6年4月から策定義務化

2021年の介護報酬改定で努力義務となっていた福祉施設でのBCP策定が、令和6年4月からは完全義務化されます。

これは、頻発する自然災害や感染症などの緊急事態に、利用者の安全確保とサービスの継続性を維持するためです。

具体的には、大規模地震や台風などの自然災害発生時には、施設の損壊や停電、交通機関の麻痺などが起こり、介護サービスの提供が困難になる可能性があります。
また、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症流行時には、利用者や職員の感染リスクが高まり、施設運営の継続が困難になってしまう恐れがあります。

このような緊急事態でも、BCPに基づいた迅速かつ適切な対応を行うことで、利用者の生命・身体を守り、質の高いサービスの提供が可能です。

令和6年4月から義務化されるBCP策定は、利用者を守るための責任を果たすだけではなく、施設の経営基盤を強化し、持続的な発展を目指すための重要な取り組みです。

未策定の場合基本報酬が減算される

令和6年4月より義務化されたBCP(事業継続計画)を策定していない場合、基本報酬が減算される措置が設けられました。

災害や感染症などの緊急事態発生時に、利用者へのサービス継続や職員の安全確保が十分に図られない可能性を踏まえ、事業継続体制の強化を促す目的からです。

減算額は、サービスの種類や規模によって異なり、最大で所定単位数の3%に達します。
具体的には、施設系・居住系サービスでは3%、訪問系・通所系サービスでは1%が減算されます。

さらに、遡及適用措置も講じられており、過去にさかのぼって減算される場合があります。

例えば、2024年10月の運営指導でBCP未策定が判明した場合、2024年4月1日から減算が適用されます。

これは、BCPの策定が怠られていた期間、事業継続体制が整備されていなかったことを意味し、重大な問題とみなされるためです。

なお、経過措置として、一部のサービスでは減算が猶予されています。
しかし、猶予期間満了後もBCP未策定が続けば、減算措置の対象となるため、早急な策定が求められます。

BCPがもたらす
福祉施設への具体的なメリット

利用者・職員の安全確保できる

BCP策定のメリットの一つは、利用者と職員の安全確保です。

災害や感染症などの緊急事態発生時に、迅速かつ適切な対応を取れる体制を構築すれば、被害を最小限に抑えられます。

具体的には、以下のことが可能になります。

利用者の安全確保
  • 避難誘導や介助、緊急時の医療体制の確立
  • ライフラインの確保や食料・物資の備蓄
  • 感染症対策や衛生管理の徹底
職員の安全確保
  • 職員の安否確認や避難誘導
  • 必要な訓練や研修の実施
  • 心身のケアやサポート体制の整備

また、BCPを策定しておけば、緊急時の情報共有や相互支援を円滑化し、より効果的な対応が可能です。
さらに、BCPは事業継続計画であると同時に、リスクマネジメントツールとしても活用できます。

施設が抱えるさまざまなリスクを洗い出し、具体的な対策を講じることで、日々の安全管理の強化につながります。

サービスを継続できる

BCPの利点は、災害や緊急事態発生時であっても、利用者へのサービス提供を継続できることです。
サービスを継続すれば、以下のような効果が期待できます。

利用者の生活を守り、安心感を与える

災害や緊急事態発生時は、利用者の生活環境が大きく変化し、不安やストレスを感じやすくなります。
しかし、BCPに基づいてサービスを継続すれば、利用者は日々の生活に一定のリズムと安心感を取り戻せます。
特に、介護や障害支援を必要とする方々にとって、継続的なサービス提供は、生活の質の維持に不可欠です。

家族の負担を軽減

サービスの継続は、利用者の家族にとってもメリットにつながります。
もしも、サービスの継続が困難になってしまうと、家族だけで利用者を見なければいけなくなり、負担が増加するからです。
特に、遠方に住んでいて仕事や家事で忙しい家族にとっては、大きな負担軽減となります。

事業継続による損失の最小化

サービスの継続は、事業収益の減少や顧客離れを防ぎ、損失を最小限に抑えることにつながります。
サービスが継続できなければ、介護報酬などの収益が途絶えてしまうからです。

補助金や助成金が受給できる可能性がある

BCP策定には、自治体や国から提供される補助金や助成金を活用できる可能性があります。

具体的には、以下のような制度があります。

中小企業庁「事業継続力強化計画」
  • 税制措置の適用
  • 金融支援の措置
  • 災害時の行政機関からの支援
東京都「BCP実践促進助成金」
  • 策定されたBCPを実践するために必要な設備・物品の購入及び設置に係る経費
自治体独自の支援制度
  • BCP策定にかかる費用の助成
  • BCP策定に関する知識やノウハウの習得

上記以外にも、BCP策定支援制度は多数存在します。施設がある自治体窓口などで相談してみましょう。

BCPには、利用者・職員の安全確保やサービス継続、収益面でのリスク回避など、多くのメリットがあります。

しかし「何から始めればいいのか分からない」「自施設に合った方法が知りたい」と感じる方も少なくありません。

そんなときは、BCP策定・運用を支援する総合防災アプリ「クロスゼロ」の製品デモで、具体的な活用方法を確認するのがおすすめです。

現場で役立つ機能を、リモートまたは訪問形式でご紹介します。

福祉施設のBCP策定手順

リスク分析と優先すべき業務の特定

福祉施設でのBCP策定で、重要なステップの一つが、リスク分析と優先すべき業務の特定です。

施設の特性や地域性などを踏まえ、地震、火災、台風、感染症、停電、情報漏洩など、想定されるあらゆるリスクを洗い出します。
洗い出したリスクは、影響度と発生確率に基づいて評価し、重要度を順位付けします。

重要度の高いリスクに対しては、具体的な対策を検討する必要があるか検討しましょう。
また、利用者の安全確保を最優先に、継続すべき業務を特定する必要があります。

具体的には、医療・介護サービス、食事の提供、排泄介助、入浴介助などの業務が該当します。

業務を継続できる体制を整備するよう、洗い出したリスクを項目別に分けておくのも良いでしょう。

必要な資源の確保と代替策の検討

BCP策定では、リスク発生時に必要な資源の確保は、非常に重要です。

具体的には以下のような項目を確認しておきましょう。

必要な資源を洗い出す
  • 人材
  • 設備
  • 物資
調達先を検討する
  • 自社で調達する
  • 外部から調達する
代替策を検討する
  • 代替品として使えるものを確認
  • 代替業務の配置を検討
情報共有の仕組みを整備する
  • 情報共有ツールを導入する

上記以外にも、リスク発生時の状況や施設の規模・状況などを踏まえ、具体的な計画を策定しておくことが大切です。

単に調達先を確保するだけではなく、実際に必要な量を確保できるかどうか、調達に時間がかからないかどうか、代替品で代用できるかどうかなどを総合的に判断する必要があります。

連絡体制の整備

リスク発生時に迅速かつ適切な対応を行うためには、事前に連絡体制を整備しておく必要があります。

連絡体制を整備する際には、以下の3つのポイントに注意してください。

連絡方法を明確にする
  • 携帯電話
  • メール
  • FAX
連絡先をリストアップする
  • 利用者
  • 職員
  • 関係機関
連絡体制を周知する
  • 緊急時に連絡できるよう関係者に周知
  • 連絡先に変更があった際はすぐに修正

また、停電や通信障害などのリスクを考慮し、複数の連絡方法を確保しておくことも大切です。

さらに、災害用伝言板やSNSなどの新しいツールの活用も検討しましょう。

具体的な行動計画の作成

BCPは、実際に実行できる計画でなければ意味がありません。そのため、具体的な行動計画の作成が重要です。

具体的な行動計画には、以下の要素を含めるようにしましょう。

誰が何をいつまでに
行動するのか明確にする
  • 担当者
    (誰がどのような役割を担うのか)
  • 行動内容
    (具体的にどのような行動をとるのか)
  • 期限
    (行動をいつまでに完了するのか)
必要なリソースを明確にする
  • 人材
    (必要な人材とそのスキル)
  • 設備
    (必要な設備と場所)
  • 物資
    (必要な物資とその量)
進捗管理方法
  • 行動計画の進捗状況をどのように把握するのか
問題発生時の対応方法
  • 問題が発生した場合にどのように対応するのか

行動計画は、わかりやすく簡潔な文章で記述し、図表などを活用して視覚的にわかりやすくしておきましょう。

また、職員への周知徹底や訓練を通じて、行動計画が実行できる体制を整備する必要があります。

定期的な見直し

BCPは、策定したら終わりではなく、定期的に見直しを行う必要があります。
主な理由は、以下の3つです。

環境変化への対応
  • 法令や制度の改正
  • 社会情勢の変化
  • 施設の老朽化
リスク評価の見直し
  • 新たなリスクの発生
  • 既存リスクの状況変化
行動計画の有効性の検証
  • 行動計画の内容が適切か
  • 行動計画が実行可能か
  • 行動計画の効果が十分か

具体的には、以下の頻度で定期的な見直しを行うことをおすすめします。

  • 年1回:法令改正や社会情勢の変化などを踏まえ、全体的な見直し
  • 半年に1回:リスク評価や行動計画の内容を見直し
  • 随時:施設の状況やリスク状況の変化に応じて、個別項目の見直し

定期的な見直しを行うことで、BCPを常に最新の状態に保ち、リスク発生時に迅速かつ適切な対応が可能となります。

見直しを行う際には、関係者を集めて意見交換を行うようにしましょう。

地域で進むBCPの取り組み事例

BCP(事業継続計画)は、施設単体で取り組むだけでは、実際の災害時に十分に機能しない可能性があります。

近年では、地域全体で連携しながら進める「連携型BCP」「地域BCP」といった取り組みが注目されており、多職種の協力や、行政・住民を巻き込んだ体制づくりが進められています。

今回は、以下の3つの自治体の事例を紹介します。

それぞれの事例を詳しく見ていきましょう。

奈良県生駒市|BCP策定格差の解消と顔の見える連携強化

生駒市では、医療機関や介護事業所、訪問看護ステーションなどで、BCPの策定状況に差があることが課題とされていました。

介護事業所向けの研修は実施されていたものの、医療機関への対応は進んでおらず、事業者間でのスキル格差が生じています。

新型コロナ対応時には、協議体の機能が一時停止し、行政内部でもBCPの活用が十分とは言えない状況が浮き彫りになりました。

こうした現状を踏まえ、生駒市では「情報共有の強化」と「顔の見える関係づくり」を目的に、多職種が参加する研修とグループワークを実施しています。

取組名 概要 特徴・参加者
①連携型BCPに関する全体講義 医療・福祉・行政を対象に、BCPの共通理解を深めるための講義を開催 多職種にまたがる参加で、基礎知識の共有を実現
②職種別グループワークの実施 災害対応に関する課題を整理し、具体的な対応策を検討 医療・介護・防災・行政が部門を越えて協力

多職種による相互理解の場を設けることで、「自分の事業所だけ」ではない地域全体で備える意識を育て、連携による災害対策を、地域全体で実践する体制づくりが始まっています。

埼玉県幸手市|防災計画と地域包括ケアの統合を目指して

埼玉県幸手市は、江戸川や古利根川に囲まれ、地盤が軟弱な低地に位置しています。
これまでに何度も風水害を経験しており、地震の影響も大きい地域です。

こうした背景から、防災対策の必要性は高い一方で「防災計画」と「地域包括ケアシステム」が十分に連動していない課題がありました。

幸手市では、行政・住民・医療福祉事業者が共に取り組む新たなアプローチが始まっています。

取組名 概要 関係者・特徴
①担当者間の話し合い 行政・ケア・防災の各部門が集まり、地域BCPに向けた方向性を協議 分野横断で初めての合同会議を実現
②地域住民主催の救助訓練の実施 地区防災計画の策定に向け、現場での行政参加と講座を展開 行政と住民の距離を縮める試み
④協働型災害訓練+フィールドワークの実施 継続10年の訓練に住民・福祉事業者・大学生も参加。地域課題を現場で把握 地域の実情を可視化し、BCPへの意識を醸成

幸手市の取り組みは、防災計画と地域包括ケアの連携の乏しさに着目し、現場の訓練や出張講座を通じて、両者を実際に結びつけていくことを目的としています。

形式的な枠組みにとどまらず、住民と行政、福祉事業者が一緒に考え、動き、学ぶという姿勢が今後の地域BCPのあり方に一石を投じる好事例と言えるでしょう。

千葉県柏市|多職種連携による地域BCPのモデル化

柏市では、訪問看護ステーションや介護事業所を中心にBCP策定が進む一方で、在宅療養支援診療所などの医療機関では、BCPに対する意識が高くありませんでした。

また、災害時対応に関する医師会マニュアルも、多職種での共有が十分に進んでおらず、連携体制の整備が求められていました。

そこで実施されたのが、以下のような取り組みです。

取組名 概要 関係機関・参加職種
①研修会の実施
  • アドバイザー講演
  • BCP事例
  • シミュレーション訓練を実施
柏市医師会、柏市、歯科医師会、薬剤師会、介護支援専門員協議会など
②圏域別の意見交換会(顔の見える関係会議)
  • 災害時の課題抽出
  • 安否確認・情報共有についての意見交換
医師、歯科医師、看護師、理学療法士、ケアマネ、介護職、防災担当など
③コアメンバー会議の設置 地域BCP策定に向けた継続的な協議体制を構築 柏市医師会、地域包括支援センターを中心に構成

柏市の取り組みは、「各施設が個別に対応するBCP」から、「地域全体で機能するBCP」への転換をめざすものです。

職種や団体の垣根を越え、地域に根ざした連携を進める姿勢は、今後のモデルとして他地域にも応用が期待されます。

今回ご紹介した3つの地域事例からも分かるように、BCPは施設単体で完結する計画ではなく、地域全体の連携や、関係機関とのつながりを意識した取り組みが欠かせません。

とはいえ、「何から始めればいいのか分からない」「うちの施設に合った対策が立てられるのか不安」という声も少なくないはずです。

そんな時に役立つのが、BCP対策を支援する総合防災アプリ「クロスゼロ」などのツールです。
災害時の対応はもちろん、日常業務でも使える機能がそろっており、BCPの実践運用をしっかりサポートします。

まずは、資料をダウンロードして、実際にどのように活用できるか確認してみてください。

まとめ

今回は、福祉施設でのBCP策定手順から義務化まで、またBCPがもたらすメリットについて解説しました。

近年、自然災害や感染症の流行など、さまざまなリスクが顕在化しています。
こうした状況下で、福祉施設が事業を継続し、利用者・職員の安全を守るために重要となるのが、事業継続計画(BCP)です。

BCPは、福祉施設にとって事業継続と利用者・職員の安全を守るために不可欠なものです。
策定していない施設は、早急に検討するようにしましょう。

総合防災アプリ「クロスゼロ」では、BCPの具体的な策定計画も支援します。
BCPの策定以外にも、以下のような場面で共有できます。

  • 安否確認・連絡ツール
  • BCPの社内資料
  • 送迎中の災害にも対応

災害対策だけではなく、日常業務の連絡ツールとしても活用可能です。
自然災害や感染症など、さまざまなリスクから大切な社員、利用者を守り、業務を継続するために、BCP対策に取り組みましょう。

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