建設現場で必須!作業員名簿の記入項目や記入例、注意点を解説
2025/11/11
建設現場での安全衛生管理において、作業員名簿は欠かせない重要書類です。
2020年の建設業法改正により義務化されたこの書類は、現場で働く作業員の基本情報から資格情報まで、詳細な記録が求められます。
しかし、初めて作成する方にとっては記入項目が多く、どのように記載すればよいか迷うことも多いでしょう。
本記事では、作業員名簿の記入項目や具体的な記入例、注意すべきポイントまで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。
作業員名簿の作成業務は、現場管理の効率化に大きく影響する重要な作業です。
適切な書類管理システムの導入により、作業の負担を軽減し、より安全な現場運営を実現できます。
作業員名簿とは?
作業員名簿は、建設現場で作業に従事する全ての作業員の情報を記録する労務安全書類です。
現場の安全衛生管理を適切に行うため、2020年10月から建設業法により作成・保存が義務化されました。
この書類により「誰が・どこで・いつ」作業しているかを明確に把握し、労災事故発生時の迅速な対応や、適切な安全衛生管理の実現を目指します。
作業員名簿の定義と目的
作業員名簿とは、建設現場で働く作業員の氏名、職種、資格、健康状態などの基本情報を一元的に管理するための書類です。
元請業者が現場に従事する全ての作業員の情報を把握し、安全で適切な現場運営を行うことを主な目的としています。
具体的には、労災事故が発生した際の迅速な対応、作業員の技能レベルや資格の確認、社会保険加入状況の把握などに活用されます。
作業員名簿は、作業員を直接雇用する一次以下の協力会社が作成し、一次請負会社が取りまとめて元請会社へ提出する仕組みとなっています。
これにより、複層的な下請構造を持つ建設業界においても、元請会社が全ての作業員の情報を適切に管理できるのです。
建設業法改正による義務化
2020年10月1日施行の建設業法改正により、作業員名簿の作成・保存が義務化されました。
この改正は、建設業界の働き方改革推進と人材確保を目的として実施され、作業員の適切な労働環境整備を図ることを狙いとしています。
義務化の背景には、建設業界特有の課題があります。
複層下請構造により作業員の所属や労働条件が不明確になりがちで、社会保険未加入問題や労働環境の改善が急務となっていました。
さらに、2024年4月からは建設業界にも働き方改革関連法が本格適用され、時間外労働の上限規制が開始されています。
作業員名簿は、これらの規制に対応するための重要な管理ツールとしても位置づけられています。
法改正により、建設業界全体での労働環境改善と人材確保が期待されています。
保存期間と提出ルール
作業員名簿は、工事完成引渡し後5年間の保存が義務付けられています。
この保存期間中は、行政機関からの要求に応じて提示できる状態で管理する必要があり、紛失や破損がないよう適切な保存方法を確保することが重要です。
デジタル化により電子ファイルでの保存も認められており、多くの建設会社でクラウドサービスやデジタル管理システムを活用した保存方法が採用されています。
提出に関しては、各協力会社が作成した名簿を一次請負会社が取りまとめ、元請会社へ提出するルールとなっています。
新たに作業員が現場に入場する場合は、追記または新規名簿の作成により対応し、作業員の入退場管理と連動させることが求められます。
代理作成も可能ですが、その場合は委任関係を明確にする必要があります。
作業員名簿の記入項目と記入例
作業員名簿の記入は、国土交通省が推奨する全建統一様式第5号に基づいて行います。
記入項目は多岐にわたりますが、それぞれに明確な目的があり、適切な記載により効果的な現場管理が実現できます。
ここでは、各記入項目の具体的な記載方法と記入例を詳しく解説し、実務に即座に活用できる情報を提供します。
欄外部分の記入方法
作業員名簿の欄外部分には、工事基本情報と提出関係者の情報を記載します。
これらの情報は、複数の協力会社が関わる現場において、責任の所在と提出ルートを明確にする重要な役割を果たします。
具体的には、以下の項目について正確に記入する必要があります。
| 記入項目 | 記入例と説明 |
|---|---|
| 事業所の名称 | 工事現場名または工事名称 (例:○○マンション新築工事、△△ビル建設工事など) |
| 所長名 | 元請会社の現場代理人の氏名 (例:建設太郎) |
| 作成日 | 名簿を作成した日付 (例:令和6年4月1日) |
| 一次会社名 | 一次請負会社名または代理人名 (例:○○建設株式会社) |
| 自社会社名 | 自社が何次請けか (例:二次請け・株式会社△△工務店) |
| 提出日 | 未定の場合は空欄、提出時に記入 (例:令和6年4月5日) |
欄外部分の記入において重要なポイントは、提出ルートの明確化です。
複層下請構造の現場では、どの会社がどの立場で名簿を作成・提出したかを明確にすることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
特に代理作成を行う場合は、委任関係を明確に記載することが必要です。
作業員基本情報の記入例
作業員の基本情報は、労災事故発生時の迅速な対応や、適切な作業配置を行うために必要不可欠な項目です。
身分証明書との照合を必須とし、正確性を最優先として記入することが重要です。
以下に具体的な記入例を示します。
| 氏名 | ふりがな | 職種 | 特記事項 | 生年月日 | 年齢 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設太郎 | けんせつたろう | 型枠大工 | 職 | 昭和50年3月15日 | 49歳 |
| 工事花子 | こうじはなこ | 電気工事工 | 女・作 | 平成2年7月22日 | 34歳 |
| 現場次郎 | げんばじろう | とび工 | 現 | 昭和45年12月5日 | 53歳 |
特記事項の略語については、統一的な表記を使用します。
「現」は現場代理人、「作」は作業主任者、「女」は女性作業員、「未」は18歳未満、「職」は職長を表します。
複数該当する場合は「女・作」のように併記します。
CCUS登録番号がある場合は、技能者ID欄に記載することで、技能者のキャリア管理にも活用できます。
雇入年月日と経験年数については注意が必要です。
雇入年月日は当該会社に入社した日付を記載しますが、経験年数は当該職種での業務経験年数を記載するため、所属年数とは異なる場合があります。
例えば、入社5年でも型枠大工としての経験が10年ある場合は、経験年数は10年と記載します。
健康診断・教育・資格情報の記載
健康診断情報と教育・資格情報は、作業員の安全確保と適切な作業配置を行うために重要な項目です。
特に特殊健康診断や特別教育については法的な要求事項も多く、正確な記載により現場の安全性向上と法令遵守を両立できます。
以下に各項目の記載方法を示します。
| 健康診断関連 | 定期健診日:令和6年3月10日 血圧:正常 血液型:A型 特殊健康診断:石綿(令和6年1月15日) |
|---|---|
| 教育関連 | 雇入時教育:令和6年3月20日実施 職長教育:令和5年2月受講完了 特別教育:フォークリフト運転業務(令和4年8月修了) |
| 資格・免許 | 技能講習:移動式クレーン運転士(5t未満) 免許:玉掛け技能講習修了 資格:2級建築施工管理技士 |
特殊健康診断については、作業内容に応じて必要な項目が異なります。
高気圧業務、放射線業務、有機溶剤業務、石綿業務、鉛業務などがあり、該当する場合は半年ごとの受診が必要です。
記載時は診断の種類と実施日を明記し、次回予定日も併せて記録しておくと管理がしやすくなります。
資格・免許の記載では、正式名称を使用することが重要です。
「玉掛け」ではなく「玉掛け技能講習修了証」、「フォークリフト」ではなく「フォークリフト運転技能講習修了証」というように、正確な資格名を記載します。
また、有効期限がある資格については期限も併記し、更新時期の管理に活用します。
入退場管理と社会保険加入状況
入退場管理と社会保険加入状況の記載は、現場の人員管理と法令遵守の観点から極めて重要です。
特に社会保険加入状況については、建設業法改正により未加入業者への指導が強化されており、正確な記載と確認が求められています。
以下に具体的な記載方法を示します。
| 項目 | 記載内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 入場年月日 | 現場に初回入場した日付 | 令和6年4月1日 |
| 受入教育実施日 | 現場での安全教育実施日 | 令和6年4月1日 |
| 健康保険 | 加入制度を略語で記載 |
協会(協会けんぽ) 組合(健康保険組合) 建国(建設国保) 国保(国民健康保険) |
| 年金保険 | 加入制度を記載 |
厚生(厚生年金) 国民(国民年金) 受給(受給者) |
| 雇用保険 | 通常は空白、特殊な場合のみ記載 |
空白(一般) 日雇(日雇保険) 適用除外 |
| 退職金共済手帳 | 加入制度を略語で記載 |
建(建退共) 中(中退共) 他(その他) 無(未加入) |
社会保険加入状況の確認は、保険証の写しまたは加入証明書により行います。
一人親方の場合は国民健康保険と国民年金への加入が一般的ですが、建設国保や同業組合の制度に加入している場合もあります。
記載時は略語を使用しますが、正式名称も併せて理解しておくことが重要です。
退職金共済制度については、建退共(建設業退職金共済制度)への加入が推奨されています。
手帳番号の下4桁を記載欄下部に記入し、証紙貼付の管理と連動させることで、適切な退職金管理が実現できます。
未加入の場合は「無」と記載し、加入促進に向けた取り組みを検討することも重要です。
作業員名簿記入時の注意点
作業員名簿の作成において、正確性と法令遵守は最重要事項です。
記入ミスや漏れは現場の安全管理に直結し、場合によっては法的な問題を引き起こす可能性もあります。
ここでは、実務で特に注意すべきポイントと効果的な対応方法について詳しく解説します。
証明書類の添付について
作業員名簿には、記載内容を証明する各種書類の添付が必要です。
特に資格・免許証については、有効性の確認と偽造防止の観点から、必ず原本確認と写しの添付を行うことが重要です。
添付が必要な主な書類は以下の通りです。
| 添付書類の種類 | 具体例と注意点 |
|---|---|
| 身分証明書 | 運転免許証、マイナンバーカード(表面のみ)、健康保険証など 住所・氏名の確認に使用 |
| 資格証明書 | 技能講習修了証、免許証、検定合格証明書など 有効期限の確認が重要 |
| 健康診断書 | 定期健康診断結果、特殊健康診断結果 実施日と次回予定日を確認 |
| 社会保険関連 | 健康保険証、年金手帳、雇用保険被保険者証 加入状況と事業所名を確認 |
| 年齢証明書 | 18歳未満の場合必須 戸籍謄本、住民票など公的書類 |
証明書類のデジタル化は業務効率化の観点から推奨されています。
スキャンやデジタルカメラでの撮影により電子化し、クラウド上で一元管理することで、複数現場での資料共有や更新作業の効率化が図れます。
ただし、個人情報保護の観点から、アクセス制限やデータ暗号化などのセキュリティ対策も必須です。
証明書の有効期限管理も重要なポイントです。
特に特別教育や技能講習には更新が必要なものもあり、期限切れによる作業停止を防ぐため、更新時期のリマインダー機能を活用することが効果的です。
また、資格の新規取得時は速やかに名簿への追記と証明書追加を行い、常に最新の状態を維持します。
個人情報保護の重要性
作業員名簿に記載される情報は全て個人情報であり、適切な取扱いが法的に要求されます。
個人情報保護法に基づいた管理体制の構築と、情報漏洩防止策の実施が現場管理者の重要な責務となっています。
具体的な保護措置として、以下の対策を実施する必要があります。
物理的セキュリティでは、書類の施錠保管と限定的なアクセス権限の設定が基本です。
事務所内でも権限のない者が閲覧できない場所に保管し、持ち出し時は必ず管理者の許可を得る体制を構築します。
デジタルデータの場合は、パスワード設定、暗号化、定期的なバックアップを実施し、不正アクセスやデータの消失に備えます。
情報の取扱い規程についても明文化が必要です。
誰が何の目的で情報にアクセスできるか、第三者提供の条件、保存期間経過後の廃棄方法などを明確に定めます。
作業員本人からの情報開示・訂正・削除要求にも適切に対応できる体制を整備し、個人情報保護の責任を果たすことが重要です。
一人親方への対応方法
建設現場では一人親方として働く技能者も多く、作業員名簿の作成において特別な配慮が必要です。
一人親方は雇用関係にないため、通常の作業員とは異なる記載方法と確認事項があります。
一人親方の場合の主な相違点は以下の通りです。
| 記載項目 | 一人親方の場合の記載方法 |
|---|---|
| 雇入年月日 | 契約開始日または現場開始予定日を記載 |
| 健康保険 | 国民健康保険または建設国保への加入状況 |
| 年金保険 | 国民年金(第1号被保険者)が一般的 |
| 雇用保険 | 原則として適用除外(特別加入制度の場合は記載) |
| 労災保険 | 特別加入制度への加入状況を別途確認 |
一人親方の社会保険確認では、特に労災保険の特別加入制度への加入が重要なポイントとなります。
労災事故発生時の補償確保のため、特別加入制度への加入を強く推奨し、未加入の場合は加入指導を行うことが現場の安全管理上重要です。
また、建設国保や同業組合の福利厚生制度への加入も確認し、適切な社会保障の確保を支援します。
契約関係の明確化も重要です。
請負契約書や作業内容確認書により、作業範囲、責任分担、安全管理体制を明確にし、現場での指揮命令関係が適切に整理されていることを確認します。
偽装請負の防止と、真の請負関係の確保により、適法な現場運営を実現することが必要です。
現場での書類管理業務は、適切なデジタル化により大幅な効率化が可能です。
クラウド型の現場管理システムを活用することで、作業員名簿の作成・管理がより簡単かつ確実に行えるようになります。
効率的な作業員名簿管理の方法
作業員名簿の管理業務は、適切な手法とツールを活用することで大幅に効率化できます。
特に複数現場を抱える建設会社では、統一的な管理システムの導入により、作業負荷の軽減と管理品質の向上が同時に実現可能です。
ここでは、実務に即した効率的な名簿管理方法について具体的に解説します。
書式・テンプレートの活用
作業員名簿の作成効率を向上させるためには、標準化されたテンプレートの活用が重要です。
国土交通省が提供する全建統一様式第5号をベースに、自社の業務フローに合わせて最適化したテンプレートを作成することで、記入作業の効率化と記載漏れの防止につながります。
効果的なテンプレートには以下の要素を含めることが推奨されます。
| テンプレート要素 | 効果と活用方法 |
|---|---|
| 入力支援機能 | プルダウンメニューによる職種選択、特記事項の自動入力 入力ミスの削減と作業時間短縮 |
| データ検証機能 | 必須項目チェック、日付形式の統一、年齢自動計算 記載漏れと計算ミスの防止 |
| マスタ連携 | 作業員基本情報の自動取得、資格情報の一括管理 重複入力の排除と更新作業の効率化 |
| 帳票出力機能 | 提出用書式の自動生成、電子印鑑の対応 書式統一と提出作業の自動化 |
テンプレートの継続的改善も重要なポイントです。
法令改正や現場からのフィードバックに基づいて定期的に見直しを行い、常に最新の要件に対応できる状態を維持します。
また、新入社員でも迷わず作成できるよう、記入例や注意事項を盛り込んだマニュアルも併せて整備することが効果的です。
複数の協力会社との連携においては、統一的なテンプレートの配布と使用方法の指導により、提出書類の品質向上と確認作業の効率化が図れます。
特に初回取引の協力会社に対しては、テンプレートの提供と併せて記入説明会を実施し、適切な書類作成をサポートすることが重要です。
デジタル化による業務効率化
作業員名簿管理のデジタル化は、単なる電子化を超えた業務プロセス全体の最適化をもたらします。
クラウドベースの管理システムを導入することで、リアルタイムな情報共有、自動的なデータ更新、多角的な分析機能により、現場管理の質的向上が実現できます。
デジタル化により得られる主なメリットは以下の通りです。
データの一元管理により、複数現場での作業員情報を統合的に把握できるようになります。
同一作業員が複数現場で働く場合でも、基本情報の重複入力が不要となり、資格更新や健康診断の実施状況も一括で管理可能です。
これにより、人事管理と現場管理の連携が強化され、より戦略的な人員配置が実現できます。
自動化機能により、定期的な更新作業や期限管理が効率化されます。
健康診断の実施時期、資格の更新期限、社会保険の変更手続きなど、時間的な管理が必要な項目について自動的なリマインダー機能により、管理漏れを防止できます。
また、入退場管理システムとの連携により、実際の現場出入りと名簿情報の整合性も自動的にチェックできます。
分析・レポート機能により、現場の安全管理状況を定量的に把握できるようになります。
年齢構成、経験年数分布、資格保有状況などのデータ分析により、現場のリスク評価や教育計画の策定に活用できます。
また、法令遵守状況の定期的なチェックや、改善が必要な項目の早期発見にも有効です。
まとめ
作業員名簿は、建設現場の安全衛生管理において欠かせない重要書類です。
2020年の建設業法改正により義務化されたこの制度により、現場で働く全ての作業員の情報を適切に把握し、安全で効率的な現場運営が実現できるようになりました。
記入項目は多岐にわたりますが、それぞれに明確な目的があり、正確な記載により労災事故の防止、適切な人員配置、法令遵守の確保が可能になります。
記入時には、証明書類の適切な添付と個人情報保護への配慮が重要です。
特に資格・免許証については原本確認とコピー添付を徹底し、デジタル化による業務効率化も積極的に検討することが推奨されます。
一人親方への対応では、雇用関係とは異なる契約関係を理解し、労災保険の特別加入制度への加入確認など、特別な配慮が必要です。
現場書類の管理は、作業員名簿に限らず、施工体制台帳や注文書・契約書など多岐にわたります。
これらを紙で管理するのは煩雑で、ミスや漏れの原因にもなりかねません。
現場書類管理の効率化を通じて、より安全で生産性の高い建設現場の実現を目指すことができます。
KENTEM(株式会社建設システム)では、建設現場のデジタル化を支援する各種ソリューションを提供しており、現場管理業務の効率化に貢献しています。
クラウドを活用した現場書類管理の改善をお考えの場合は、ぜひ「施工体制クラウド」の導入をご検討ください。




