施工体系図の正しい書き方は?作成する意味と掲示場所もまとめて解説!
2024/06/14
2025/06/18
施工体系図は工事担当を明らかにする図で、一定の条件を満たすと作成の義務が生じます。
発注者・元請業者・下請業者に関する内容がまとまっており、工事体制や役割の把握に効果的です。
紙一面に複数の記入欄がありますが、一体何を書くと良いのでしょうか。
この記事では施工体系図の作成理由や記入方法を解説しています。
初めて担当する人は、書き方を参考にして、施工体系図を作成してみてください。
施工体系図とは
施工体系図は、作業員の工事担当を把握しやすくする図です。
以下では、施工体系図の作成理由や掲示場所を解説しています。
施工体系図を作成する意味
施工体系図は、工事担当者や責任者を細かく記入していますが、なぜこのような手間をかけるのでしょうか。
それは下記の3つのような役割があるからです。
- 工事体制を把握する役割
- 各担当を分かりやすくする役割
- 技術者の配置確認をする役割
施工体系図があると、作業員が自分の担当を把握しやすく、おおまかな流れも掴みやすいです。
さらに、施工体系図は、一定の条件を満たした場合や、建築一式工事を除く下請金額が4,500万円を超えると作成の義務が生じます。
そのため該当する工事は、施工体系図の作成が必要です。
工事別|施工体系図の決まりと掲示場所
施工体系図は、公共工事と民間工事のそれぞれで作成基準や掲示先が異なります。
下記では、公共と民間ごとに条件や掲示場所を解説しているため、確認していきましょう。
公共工事
公共工事は、工事の依頼を引き受けた元請業者が作成します。
下請金額を問わず、施工契約を結んだときに作成が必要です。
施工体系図を作成したあとは、工事関係者が見やすい場所や市民の目につきやすい場所に掲示します。
サイズに決まりはありませんが、見やすい大きさで掲示することが重要です。
民間工事
民間工事は、公共工事と同様に工事の依頼を引き受けた元請業者が作成します。
下請金額が4,500万円以上または、7,000万円を超える建築一式工事の場合に作成が必要です。
一定の金額を超えた場合のみ義務が生じるため、契約を結んだ時点では作成する必要がありません。
掲示する際は、工事関係者が見やすい位置に貼ります。
公共工事と同様にサイズに決まりがないため、見やすい大きさにしましょう。
作成義務について
施工体系図は、建設工事の組織構造を明確に示す書類です。
作成義務は公共工事と民間工事の種類や規模によって異なり、適切に管理する必要があります。
具体的な作成タイミングや掲示場所をまとめると以下のとおりです。
| 項目 | 公共工事 | 民間工事 |
|---|---|---|
| 作成タイミング | 発注者から直接請け負った公共工事を施工するために下請契約を締結したとき | 発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の総額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)となったとき |
| 掲示場所 | 工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所 | 工事関係者が見やすい場所 |
| 法的根拠 | 公共工事入札契約適正化法第15条第1項 | 建設業法第24条の7第4項 |
またいずれの場合でも、保管期間や更新義務もあるため、注意する必要があります。
保管期間や更新のタイミングは、以下のように定められています。
| 更新のタイミング | 施工体制に変更があった場合(新規業者の追加や変更など)は、速やかに施工体系図の内容を更新する必要がある |
|---|---|
| 保管期間 | 施工体系図は営業に関する図書として、営業所ごとに工事の引き渡しから10年間の保存が義務付けられている(建設業法施行規則第26条第5項) |
適切な作成と管理を行うことで、法令遵守はもちろん、現場の透明性向上と円滑な工事進行につながります。
施工体系図の記入方法
施工体系図の左側は主に工事全体の詳細を、右側には主に下請業者の情報を記入します。
以下では左側と右側ごとに書く内容をまとめているため、参考にしてみてください。
左側の項目
はじめに、左側の記入項目から解説していきます。
左側の項目は、以下の11つです。
- 発注者名
- 工事名称
- 元請名・事業者ID
- 監督員名
- 監理技術者・主任技術者名
- 監理技術者補佐名
- 専門技術者名・担当工事内容
- 統括安全衛生責任者
- 副会長
- 元方安全衛生責任者
- 書記
それぞれ確認しましょう。
発注者名
施工体系図の上部にある発注者名には、工事の依頼元となる発注者名を記入します。
会社から工事を請け負った場合は、会社名を書きましょう。
都道府県・市区町村・地方公共団体のように公共工事を請け負った場合は、県や市の名前を記入します。
工事名称
工事名称には、発注者から請け負った工事名を記入しましょう。
工事名を書く際は、「〇〇(建物名)建設工事」のように建物の名前と工事内容を書きます。
長文で細かく記載するのではなく、単語で簡潔にまとめるのがポイントです。
元請名・事業者ID
元請名の部分には、発注者から依頼を受けた会社の名前を記入しましょう。
事業者IDには、建設キャリアアップシステムの登録番号を書きます。
登録済みの場合は番号を記入しますが、登録なしの場合は必要ありません。
監督員名
監督員名には、元請業者が配置した監督員の名前を記入します。
監督員は、一次下請を取り締まる役目があり、設計図通りに工事が進行しているかを確認する人です。
そのほか、工事の立ち合いや現場確認なども行います。
監理技術者・主任技術者名
監理技術者と主任技術者がいる場合は、枠内に名前を記入しましょう。
主任技術者は、一部の条件を除いた全ての現場に、配置が義務付けられています。
監理技術者は下請金額が4,500万円以上、または7,000万円以上の建築一式工事に必須です。
条件に当てはまる場合は、主任技術者の代わりに監理技術者の名前を記入しましょう。
監理技術者補佐名
元請業者が、現場に監理技術者補佐を配置した場合は、担当者の名前を書きましょう。
監理技術者補佐は、監督技術者をサポートする役割があり、監理技術者が複数の工事を掛け持つ場合に配置されます。
専門技術者名・担当工事内容
専門技術者名の枠内に、担当者の名前を書きましょう。
専門技術者とは、主任技術者の資格や経験を所持している人のことをいいます。
自社で、500万円以上の専門工事を行う場合に配置が必要です。
担当工事内容には、専門技術者が受ける工事内容を書きます。
統括安全衛生責任者
統括安全衛生責任者がいる場合は、枠内に名前を記入しましょう。
総括安全衛生責任者は、作業員が50人以上いる場合に配置する必要がある責任者です。
ずい道橋梁建設や圧気工法を行う場合は、30人以上から配置が要されます。
副会長
副会長は、元請業者が下請業者の中から選んだ人の名前を書きます。
この際、下請業者の中から選ぶため、元請業者の名前は記入しません。
共同企業体の場合は、企業体をまとめる事業者の名前を記入しましょう。
元方安全衛生責任者
元方安全衛生責任者が配置されている場合は、該当者の名前を記入しましょう。
統括安全衛生責任者がいる現場では、元方安全衛生管理者の配置が必須です。
元方安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者の指揮下で、組織の運営・現場の確認・サポートを行う役目があります。
書記
書記は、災害防止協議会の議論を目録に収める役割があります。
書記の欄に、担当者の名前を記入しましょう。
右側の項目
次に右側の項目を解説していきます。
右側の項目は、以下の10つです。
- 工期
- 会社名・事業者ID
- 代表者名
- 許可番号
- 工事内容
- 特定専門工事該当の有無
- 安全衛生責任者
- 主任技術者
- 専門技術者・担当工事内容
- 工期
それぞれ見ていきましょう。
工期
工期には、契約書にある工事期間を書きましょう。
「自」には工事開始日、「至」は工事終了日を記入します。
この際、「令和〇年〇月〇日」のように元号を使用して書きましょう。
会社名・事業者ID
元請業者が下請業者と契約を結んだ場合は、会社名に下請業者の名前を記しましょう。
元請業者から工事を請けた下請業者の名前は、縦に書きます。
下請業者がさらに別の業者と契約を結んだ場合は、横に記入します。
建設キャリアアップシステム登録者の場合は、IDの記入も忘れないように気を付けてください。
代表者名
代表者名の枠には、代表者の名前を記入しましょう。代表者は工事の請負先の中心にあたる人物です。
許可番号
許可番号は、下請業者が建設業許可を受けている場合に記入します。
「国土交通大臣許可」か「知事許可 」のどちらかを書きましょう。
そして、番号記入の下にある一般建設業の「一般」・特定建設業の「特定」の当てはまる方を選択します。
建設業許可は、建設業の経営に必要ですが、小さな規模での工事を行う場合には許可は必要ありません。
工事内容
工事内容には、下請業者が担当する工事の詳細を記入します。
おおまかな表記ではなく、鉄筋組立工事やコンクリート工事のように、詳しく簡潔に書くのがポイントです。
複数の内容がある場合も、同じ枠内にまとめて書きましょう。
特定専門工事該当の有無
特定専門工事に当てはまる場合は「有」へ、当てはまらない場合は「無」を選択します。
監理技術者補佐
特定専門工事とは、2020年に改正された現場の効率化と人材を上手く使うことを目的にした制度です。
この改正により、条件を満たす工事であれば、主任技術者を配置しなくても良くなりました。
型枠工事・鉄筋工事や下請金額が4,000万円未満などの条件を満たす場合は、「有」を選びましょう。
安全衛生責任者
安全衛生責任者には、下請業者が手配した安全衛生責任者の名前を記入しましょう。
安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者とのやり取りや労働災害の危険性の有無の確認をする役目があります。
安全衛生責任者には、職長が任命される場合が多いです。
主任技術者
主任技術者には、下請業者が配置した主任技術者の名前を記入しましょう。
主任技術者とは、現場の管理を行う人のことをいい、一定の条件を満たす工事以外に配置が義務付けられています。
専門技術者・担当工事内容
専門技術者の枠には、下請業者が配置した専門技術者の名前を書きます。
専門技術者は500万円以上の専門工事がある場合に必須です。
しかし条件を満たさない場合は専門技術者の配置が不要になるため、名前の記入は必要ありません。
その下の担当工事内容には、引き受けた作業の詳細を記入します。
工期
工事契約書に記載された、各工事にかかる日にちを記入します。
ここでは工事全体の期間ではなく、下請業者が引き受けた工期を記入しましょう。
上部に記入した工期と同様、「令和〇年〇月〇日~令和〇年〇月〇日」のように元号を使用して表記します。
施工体系図の記載例
施工体系図の作成には、正確性と明瞭性が求められます。
具体的な記載例は、国土交通省のサイトを確認すると良いでしょう。
記載例を確認する際は、以下の点を注意してください。
- 自社の工事に合わせてカスタマイズする
- 記載項目や階層構造の表現方法を確認し、適切に反映させる
- 定期的に公式サイトを確認し、最新の基準に合わせる
国土交通省の公式サイトで提供される記載例を参考にすれば、法令に準拠した正確な施工体系図を作成できます。
作成方法がわからない場合は、サイトからダウンロードして作成すると良いでしょう。
施工体系図の
チェックポイント
施工体系図は建設現場の組織構造を示す書類です。
正確で信頼性の高い施工体系図を作成・維持するためには、以下のチェックポイントを確認する必要があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
工事名称・発注者・元請情報の一致を確認
施工体系図の基本情報は、常に正確でなければいけません。
特に、以下のポイントは慎重に確認しましょう。
| 工事名称 |
契約書に記載された正式な工事名称と完全に一致しているか 「○○ビル新築工事」ではなく「○○ビル新築(建築・設備)工事」のように、詳細まで正確に記載されているか |
|---|---|
| 発注者情報 |
発注者の正式名称(株式会社等の法人格も含む)が正確に記載されているか 所在地は最新のものか(特に発注者が移転した場合など) 公共工事の場合、発注部署名まで正確に記載されているか |
| 元請情報 |
会社名は略称ではなく正式名称が使用されているか 代表者名は現在の代表者と一致しているか(特に最近変更があった場合) 建設業許可番号が正確で最新のものか(更新後の番号になっているか) |
情報が一致していないと、法的問題や現場での混乱を招く可能性があります。
特に、公共工事の場合は公衆の目に触れる場所にも掲示されるため、より慎重な確認が必要です。
情報の一致確認は、単なる形式的なチェックではありません。
これにより、工事に関わる全ての関係者が同じ認識を持つことができ、スムーズな工事進行や適切な責任分担につながります。
定期的に、特に工事内容や契約に変更があった際には、必ずこれらの基本情報を見直すことをおすすめします。
監理技術者と主任技術者の適切な配置
監理技術者と主任技術者の配置は、建設業法で厳しく規定されています。
法律が改正している場合もあるため、最新の規定に基づいてチェックするよう意識してください。
具体的には、以下のポイントを中心に確認してください。
| 主任技術者の配置 |
すべての工事現場に配置が義務付けられている 資格要件:
|
|---|---|
| 監理技術者の配置 |
発注者から直接工事を請け負い、下請契約の総額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の工事で必要 資格要件:
|
| 専任配置の条件 |
すべての工事現場に配置が義務付けられている 資格要件:
|
ポイントをチェックし、適切な技術者を配置すれば、法令遵守と適切な技術管理体制の構築が可能となります。
工事の進行に伴い契約内容が変更される場合もあるため、定期的な確認と必要に応じた是正が重要です。
詳細は、国土交通省の地方整備局建政部のサイトを確認しましょう。
参考:中部地方整備局 建政部「工事現場に配置する技術者とは」
施工体系図の
効率的な更新方法
施工体系図に変更が生じた場合は、速やかに更新する必要があります。
ここでは、具体的な修正手順や更新の際に必要なこと、効率的な更新方法を詳しく説明します。
変更が生じた際の迅速な修正手順
迅速かつ正確に修正を行うためには、以下のような手順で進めていきましょう。
| 1.変更情報の確認 | 現場責任者や下請業者から変更情報を収集 |
|---|---|
| 2.修正箇所の特定 | 情報を基に、施工体系図のどの部分を修正するか特定 |
| 3.施工体系図の更新 | 特定した箇所を正確に修正 |
| 4.変更内容の確認 | 修正後の内容を複数の担当者でチェック |
| 5.更新版の配布 | 承認された更新版を速やかに関係者に配布 |
| 6.記録の保管 | 変更内容、日時、担当者を記録 |
修正手順を明確に定めることで、情報の漏れを防止し、誤情報の掲示を回避できます。
上記の例は、修正手順の一例です。修正の仕方は、規模や社内規定によっても異なるでしょう。自社の体制にあった修正手順を、あらかじめ定めておきましょう。
関係者への円滑な情報共有
施工体系図の更新情報を関係者と共有することは、スムーズな工事進行に欠かせません。
しかし、多くの現場では情報共有が円滑に行われず、混乱を招くケースが少なくありません。
効果的な情報共有を実現するためには、以下のような方法が有効です。
- デジタルツールの活用
- 定期的なミーティングの実施
- 情報アクセス権限の適切な設定
円滑な情報共有により、施工体系図の変更が速やかに全関係者に伝わり、現場の混乱を防ぎ、工事の遅延リスクを軽減できます。
効果的な情報共有の仕組みを構築し、定期的に見直すことで、現場のコミュニケーションがより円滑になるでしょう。
施工体系図
作成・更新ツールの活用法
施工体系図の作成や更新は、手作業で行うと時間がかかり、ミスも発生しやすくなります。適切なツールを活用すれば、効率的かつ正確な作業が可能になるでしょう。
施工体系図の作成・更新に役立つツールには、以下のようなものが挙げられます。
| 専用のCADソフトウェア |
建設業向けの図面作成ソフト 正確な図面作成、テンプレート機能 |
|---|---|
| クラウドベースの管理システム |
オンラインで共有可能な図面管理ツール リアルタイム更新、複数人での同時編集 |
| データ連携ツール |
異なるソフトウェア間でデータを共有するツール 他ソフトとの情報連携、一貫性のある管理 |
ツールの活用により、施工体系図の作成・更新作業が効率化できます。
人為的ミスの減少や作業時間の短縮、リアルタイムの情報共有などのメリットが得られるでしょう。
ただし、ツールの導入には初期費用やトレーニングが必要な場合もあります。自社の規模や現場の特性に合わせて、適切なツールを選択してください。
また、定期的にツールの使用状況を評価し、必要に応じてシステムの見直しも検討しましょう。
施工体系図作成にも役立つ
施工体制クラウド
建設現場の効率化を目指す多くの企業にとって、施工体系図の作成・管理は課題の一つでしょう。
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まとめ
施工体系図は工事の期日・内容や責任者など、複数の記入項目があり、難しいイメージが定着しているでしょう。
しかし、各項目は工事内容や代表者を把握しておけば書ける内容ばかりです。工事で何を行うのかや、誰が担当するのかを確認していれば問題ありません。
初めての作成を担当するのであれば、作成の流れと完成図を見ながら書くのもおすすめです。
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また、複数人で利用することができ、作成した書類をクラウド上に保存すれば、いつでも誰でも閲覧することが可能です。
ぜひ作成方法を参考にして、施工体系図を仕上げてみましょう。
施工体系図を作成できる社員を増やし、業務の効率化を図りたいと思っている方は、ぜひ施工体制クラウドの導入をご検討ください。




