外国人労働者(建設系)の教育と関係構築とは?受け入れ前に知っておくべきポイント
2025/08/01
建設業界では、外国人労働者の受け入れが急速に進んでいます。
人手不足を補う力となる一方で、教育体制や現場での関係構築が不十分だと、トラブルや離職リスクが高まる可能性もあります。
外国人労働者(建設系)を安心して迎え入れるには、在留資格の理解、安全衛生教育、日常的なコミュニケーション支援が欠かせません。
本記事では、教育の進め方と信頼関係の築き方を具体的に解説します。
外国人労働者が定着する職場を作っていきたい方や、今後受け入れを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
なぜ今、建設業に外国人労働者が
増えているのか?
建設業界では、外国人労働者の受け入れが急速に進んでいます。
背景には、深刻な人手不足や高齢化といった業界全体の課題があり、国も政策面で受け入れを後押ししています。
実際、厚生労働省の発表によると、2024年時点で外国人労働者数は2,302,587人と、前年比253,912人増加、届出義務化以降、過去最多を更新しています。
外国人を雇用する事業所数も342,087所に達し、前年比7.3%増と増加傾向が続いています。
こうした動きにより、外国人材の活躍は建設業においてますます重要なものとなっています。ここでは、外国人労働者が増えている主な理由を整理していきましょう。
深刻な人手不足と高齢化
建設業界では、深刻な人手不足と高齢化が大きな課題となっています。こうした背景から、外国人労働者の受け入れが進められているのです。
人手不足と高齢化が深刻化している背景には、以下のような要因が挙げられます。
- 若年層の建設業離れが進んでいる
- 50代以上の技能労働者が多く、退職者が年々増加している
- 肉体的に厳しい労働環境が敬遠されがち
- 長時間労働のイメージが根強い
上記要素が重なり、建設現場では慢性的な人員不足が続いています。そのため、即戦力となる外国人労働者の活躍に期待が高まっています。
今後も国内労働力の減少は避けられないことから、外国人材の受け入れ体制を整えることは、建設業界にとって必要不可欠な取り組みと言えるでしょう。
国の政策による後押し
外国人労働者の受け入れが進んでいる背景には、国の政策による後押しが大きく関係しています。政府は、深刻な人手不足問題を解決に向けて、積極的に外国人材の活用を推進しています。
具体的に実施されている施策は、以下のとおりです。
- 2019年に「特定技能」の在留資格を新設
- 建設業を含む14業種で外国人労働者の就労を解禁
- 技能実習制度を拡充し、実務経験を積む機会を提供
- 「建設就労者受入事業」など特定活動ビザの活用促進
上記のような施策により、建設業界でも外国人労働者が働きやすい環境が整いつつあります。
国が制度面で支援を進めている今こそ、外国人材の受け入れに前向きに取り組む絶好のタイミングだと言えるでしょう。
働き方改革で労働時間の制限が強化
働き方改革の一環として、建設業界も労働時間の制限が大幅に強化されました。
これにより、建設業界でも長時間労働の見直しが求められています。
具体的な時間外労働の上限は、以下のとおりです。
原則 月45時間・年360時間以内 特別条項あり 年720時間以内、月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内(年6回まで45時間超可) 適用時期 建設業では2024年4月から適用 罰則 上限超過で6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
労働時間の制限により企業は労働時間管理を徹底し、無駄な作業を減らすなど業務効率化を進める必要が出てきました。長時間労働の抑制は、従業員の健康維持や生産性向上にもつながります。
働き方改革による労働時間の制限強化は、外国人労働者の受け入れを検討するうえでも重要なポイントです。
無理のない労働環境の整備は、外国人材の定着率向上にも直結すると言えるでしょう。
外国人労働者を建設業で
雇用するために必要な在留資格とは?
建設業で外国人労働者を雇用するには、適切な在留資格を持っていることが必要です。特に、深刻な人材不足を補うために「特定技能」が積極的に活用されており、ほかにもいくつかの在留資格が建設業での就労を可能にしています。
代表的な在留資格は、以下の3つです。
それぞれの在留資格には特徴や条件が異なるため、雇用前にしっかりと内容を理解しておく必要があります。ここでは、これらの在留資格に関して確認していきましょう。
特定技能(1号・2号)
外国人労働者を雇用するために必要な資格の一つ目は、特定技能(1号・2号)です。
特定技能(1号・2号)は、日本で外国人労働者が建設業をはじめとする特定産業分野で働くための在留資格です。それぞれ対象となる技能レベルや在留条件に違いがあり、受け入れ時には正確な理解が欠かせません。
主な違いは、次のとおりです。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 対象 |
|
|
| 在留期間 | 最大5年 | 制限なし |
| 家族帯同 | 不可 | 条件を満たせば可能 |
| 分野数 | 12分野 | 11分野(※介護分野は対象外) |
| 試験 | 技能試験+日本語試験 | より高度な技能試験(実務経験も要件) |
| 企業支援義務 | あり | 広範な義務的支援は課されていない |
特定技能1号は即戦力となる外国人材を短期間受け入れるための制度であり、特定技能2号は長期的に定着して高度な業務を担う人材の受け入れに適しています。
技能実習(教育目的の在留資格)
技能実習制度は、外国人が日本でOJT(On-the-Job Training)を通じて技術や技能を学び、母国の発展に役立てることを目的とした制度です。
建設業界でも、この制度を活用して外国人材を受け入れるケースが増えています。
技能実習制度の基本概要は、以下のとおりです。
| 目的 | 開発途上国への技術移転・人材育成 |
|---|---|
| 対象 | 18歳以上、本国での実務経験者など |
| 実習期間 | 最大5年(1号1年+2号2年+3号2年) |
| 実習方法 | 企業での就業によるOJT |
| 雇用関係 | 労働関係法令の適用あり(雇用契約必須) |
技能実習生は、正式な雇用契約のもとで賃金や労働条件が保証されており、日本国内の労働力確保を直接の目的とする制度ではありません。あくまで国際協力の一環として、外国人材の育成と母国支援を目指しています。
今後、制度の見直しによって新たな仕組みが導入される予定ですが、現時点でも技能実習制度は建設業における外国人受け入れの選択肢の一つとなっています。
技術・人文知識・国際業務(施工管理・設計・事務系)
「技術・人文知識・国際業務」は、外国人が日本で専門的な業務に就くために必要な在留資格の一つです。
通称「技人国」とも呼ばれ、建設業界では施工管理や設計、事務系の業務において活用されるケースが増えています。
具体的な対象業務と要件は、以下のとおりです。
| 対象職種 | 施工管理、設計、建設事務、翻訳・通訳、海外取引業務など |
|---|---|
| 取得要件 | 大学や専門学校で関連分野を専攻し、専門知識を持っていること |
| 在留期間 | 5年、3年、1年、または3ヶ月(更新可能) |
| 必要書類 | 卒業証明書、職務内容証明書、給与明細など |
| 注意点 | 単純作業や一般事務作業のみでは取得不可、日本語能力が求められる場合あり |
上記在留資格を活用すれば、施工管理や設計など、高度な専門性を要するポジションに優秀な外国人材を配置することが可能です。
ただし、単純労働や資格条件を満たさない業務では認められないため、雇用時には要件の確認を徹底する必要があります。
外国人労働者向け教育の進め方
外国人労働者を迎えるにあたっては、適切な教育体制を整える必要があります。
特に建設業界では、安全衛生教育や作業内容に関する指導が法律上義務付けられており、日本人労働者以上に丁寧な対応が求められます。
ここでは、外国人労働者向け教育を進めるうえで押さえておきたい基本的なポイントを確認していきましょう。
安全衛生教育の法的義務と対象(労働安全衛生法)
外国人労働者に対する安全衛生教育は、労働安全衛生法により企業側に義務付けられています。
特に建設業界では、現場作業に伴うリスクが高いため、入社時や作業内容が変更される際には必ず教育を行う必要があります。
法的義務は、労働災害を未然に防ぐとともに、すべての労働者が安全に働ける環境を守るために設けられているため、必ず実施しましょう。
外国人労働者も例外ではなく、言葉や文化の違いに配慮しながら、正確かつ十分な教育が求められます。
具体的には、以下のような場面で教育が必要とされています。
| 雇入れ時(入社時) | 基本的な安全衛生知識を教育 |
|---|---|
| 作業変更時 | 新たな作業に必要な安全対策を教育 |
| 特別教育対象作業 | 高所作業や重機操作など、特定リスクを伴う作業は特別な講習を実施 |
安全衛生教育は単なる社内ルールではなく、労働安全衛生法に基づく義務であることを忘れてはなりません。
適切な安全衛生教育の実施は、外国人労働者本人だけではなく、現場全体の安全性を高めるうえでも欠かせない取り組みです。
高所作業・重機操作・感電対策など建設業特有のリスク
建設業界には、他の業界にはない特有のリスクが多く存在します。
特に外国人労働者に対しては、これらのリスクを十分に理解させ、安全管理を徹底しなければなりません。
建設業における主なリスクには、以下のようなものがあります。
| 高所作業 | 足場や屋根上での作業による墜落・転落のリスク |
|---|---|
| 重機操作 | クレーンやショベルカーなどの操作ミスによる事故 |
| 感電事故 | 電動工具や高圧設備に触れることによる感電リスク |
| 飛来・落下 | 上空からの資材落下や飛散物による負傷リスク |
| 挟まれ・巻き込まれ | 建設機械や資材による事故リスク |
上記のようなリスクは、適切な教育と現場での注意喚起によって低減できます。特に言葉の壁がある外国人労働者には、視覚教材や実地指導を活用しながら、繰り返し伝える工夫が求められます。
建設現場の安全を守るためには、リスクを具体的に理解させ、日常的に意識づける取り組みが欠かせません。
言葉の違いも考慮した教育設計が必要
外国人労働者への教育では、言葉の違いを考慮した工夫が欠かせません。
日本語に不慣れな労働者に対して、日本語だけのマニュアルを渡すだけでは、正確な理解が難しく、作業ミスや事故のリスクを高めてしまう可能性があります。
そのため、言語の壁を越えた教育設計が必要です。具体的には、次のような取り組みが効果的です。
| 視覚で理解できる教育資料の整備 |
|
|---|---|
| 現場で使う日本語フレーズの指導 |
|
工夫を取り入れることで、外国人労働者がより安全に、かつスムーズに業務を遂行できるようになります。
厚生労働省では「建設業に従事する外国人労働者向け教材」として、各国語に対応した動画やテキスト教材が公開されています。母国語で作業内容を理解できる環境を整えるためにも、こうした公的な教材を積極的に活用すると良いでしょう。
外国人労働者を迎え入れるには
関係構築も大切
外国人労働者を受け入れるうえで、作業手順や安全ルールを教えるだけでは十分とは言えません。
現場で長く活躍してもらうためには、教育とあわせて、信頼関係を築くことが欠かせないポイントです。
ここでは具体的な関係構築の方法を紹介します。
言葉の壁を感じさせない体制を構築する
外国人労働者が安心して働ける環境をつくるためには、言葉の壁をできるだけ感じさせない体制づくりが大切です。言葉が通じないことによって生じる小さなストレスが、現場の安全や定着率に影響する可能性もあるため、早い段階から対策を講じることが求められます。
具体的な取り組みとして、以下のような方法が効果的です。
| 作業手順やルールを 視覚化する |
イラストや写真、動画を活用し、言葉に頼らず理解できる資料を整備する |
|---|---|
| 翻訳ツールや多言語 マニュアルを活用する |
スマホ翻訳アプリや、厚生労働省が提供している外国人向け教材を併用し、情報共有の精度を高める |
| サポート担当者を決める | 外国人労働者が困ったときに相談できる担当者を明確にし、サポート体制を整える |
上記のような取り組みを通じて、外国人労働者が「わからない」「伝わらない」と感じる場面を減らし、より安心して働ける職場環境をつくることができます。
コミュニケーションの積み重ねが継続雇用につながる
外国人労働者と継続的な雇用関係を築くためには、日々のコミュニケーションの積み重ねが欠かせません。指示や注意だけを伝える関係では、信頼を深めることは難しく、早期離職につながるリスクも高まります。
継続的な関係構築のためには、以下のような取り組みが効果的です。
| 日常的な声かけを 意識する |
「おはよう」「ありがとう」など、小さな声かけを積み重ね、心理的な距離を縮める |
|---|---|
| フィードバックを ポジティブに伝える |
改善点だけではなく、努力や成長を認める言葉をかけることで、モチベーション維持につながる |
| 定期的な面談や 相談機会を設ける |
不安や悩みを抱え込まないよう、月1回などのペースで話を聞く場をつくる |
上記のようなコミュニケーションを地道に積み重ねることで、外国人労働者との信頼関係が強まり、長期的な就業につなげることができます。
従業員にも理解を求める
外国人労働者を受け入れるにあたっては、現場の既存従業員にも理解と協力を求めることが大切です。受け入れ側の意識が整っていないと、外国人労働者が孤立したり、コミュニケーションがうまく取れなかったりする原因につながってしまいます。
具体的には、以下のような働きかけが効果的です。
| 多様性を尊重する意識を育てる | 国籍や文化の違いに対して、オープンに受け入れる姿勢を促す |
|---|---|
| 簡単な日本語で話す工夫を求める | 難しい表現や専門用語を避け、相手に伝わりやすい言葉を意識してもらう |
| 外国人労働者をチームの一員として 迎える意識づけ |
「サポートする対象」ではなく、「共に働く仲間」として迎え入れる |
上記のような取り組みを通じて、現場全体が外国人労働者を自然に受け入れられる雰囲気をつくり、定着率向上にもつなげることができます。
教育体制づくりには、
実務支援ツールの導入を検討する
外国人労働者の教育体制を整えると同時に、現場全体の業務効率化を図ることも大切です。教育に手間がかかりすぎると、通常業務に支障をきたす可能性があるため、負担を分散できる仕組みづくりが求められます。
KENTEMが提供する建設業に特化したオンライン日本語教育「KENTEM Global Academy」は、教育担当者の負担を軽減しつつ、外国人材を即戦力へと育成するプログラムを提供しています。
導入すると以下のようなメリットが挙げられます。
外国人技術者のメリット
- 一人前になるための時間を短縮
- 英語の字幕付きで繰り返し学習できる安心感
教育担当者のメリット
- 外国人教育のための時間を削減
- 即戦力の確保
外国人の受け入れにあたっては、法令の理解と同時に、柔軟な対応力も求められます。
企業によっては、外国人材の受け入れを検討する際に、「何を整備すべきかわからない」「何から始めればよいのかわからない」といった不安を抱える社員もいるでしょう。
そうした場合は、自社だけで完結しようとせず、外部ツールや専門サービスの活用も視野に入れることが重要です。
詳細は「KENTEM Global Academy」の公式サイトで確認してみてください。
まとめ
今回は、建設業界で急速に進んでいる外国人労働者の受け入れについて、教育の進め方や信頼関係の築き方を具体的に解説しました。
外国人労働者を安心して受け入れるためには、在留資格の理解、安全衛生教育、現場特有のリスク対策など、基本的なポイントを押さえることが欠かせません。
さらに、言語の壁を考慮した教育設計や、日々のコミュニケーションの積み重ねが、職場への定着を後押しします。
「KENTEM Global Academy」は、教育担当者の負担を軽減しながら、外国人材を即戦力として育成するプログラムを提供しています。
受け入れ企業にとっては、教育にかかる負担を軽減しつつ、外国人材のスキルアップを効率的に支援できる点が大きなメリットです。
まずは、受け入れの準備と並行して、充実した学習環境の整備に向けた情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。
外国人労働者が定着する職場を作っていきたい方や、今後受け入れを検討している方は、ぜひ特設サイトをご確認ください。




