建設業で外国人を受け入れるには?在留資格・手続き・必要書類をわかりやすく解説
2025/07/28
建設業で外国人を受け入れる動きが広がる一方で、在留資格や申請手続き、必要書類の多さに戸惑う企業も少なくありません。
特に初めて外国人を雇用する場合は、制度の全体像がつかめず「何から始めればいいのか分からない」と不安を感じやすいものです。
本記事では、建設業で外国人を受け入れるために必要な在留資格の種類や取得要件、企業側の義務や準備すべき書類、採用の流れまでを初心者にもわかりやすく解説します。
制度を正しく理解し、自社に合った受け入れ方法を見つけたい方は、ぜひ参考にしてください。
建設業で外国人を
受け入れるために必要な在留資格
外国人を建設現場で雇いたいと考えたとき、最初に立ちはだかるのが「どの在留資格が必要なのか分からない」方も多いのではないでしょうか。
建設業で外国人を受け入れるには、いくつかの在留資格のうち、条件に合ったものを選ぶ必要があります。
どの資格を選ぶかによって、働ける業務の範囲や滞在可能な年数、雇用までの手続きが大きく変わってくるため、正しい理解が必要です。
ここでは、建設業でよく使われる在留資格の種類と違いをわかりやすく整理して解説します。
まずは混同しやすい「技能実習」と「特定技能」の違いから、順を追って確認していきましょう。
技能実習と特定技能の違い
建設業で外国人を受け入れる際によく使われる制度に、「技能実習」と「特定技能」があります。
どちらも外国人が就労できる在留資格ですが、制度の目的や対象者、雇用条件などが大きく異なります。
まず、技能実習は「日本の技術を学んでもらい、母国の発展に役立ててもらう」ことを目的とした制度です。受け入れ対象は未経験者が中心で、あくまで「実習」の位置づけです。
一方、特定技能は「人手不足を補うための即戦力」を確保する制度で、一定の技能や日本語能力を持つ人材が対象となります。
違いを分かりやすく整理すると、以下のとおりです。
| 比較項目 | 技能実習 | 特定技能 |
|---|---|---|
| 目的 |
|
|
| 対象者 | 未経験者でも可 | 技能・日本語能力が一定レベル以上 |
| 在留期間 | 原則3年(最長5年) |
|
| 家族の帯同 | 不可 | 2号なら配偶者・子どもが可能 |
| 転職の可否 | 原則不可(やむを得ない理由があり、監理団体のあっせん等がある場合に転籍可) | 同一分野なら転職可能 |
| 労働内容 | 指定の技能実習に関する作業 | 指定された業務区分内の作業。技能実習と比較して従事できる業務の範囲が広い |
例えば、未経験の若手人材を育てながら受け入れたい場合は技能実習、即戦力として多様な作業を任せたい場合は特定技能が向いています
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の人材ニーズや受け入れ体制に応じて選ぶことが大切です。
特定技能1号・2号の概要と要件
特定技能1号・2号は、スキルレベルに応じた2段階の在留資格です。
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、求められるスキルや経験、働ける業務の範囲に違いがあります。
まず、特定技能1号は「一定の知識や経験がある外国人材」を対象とし、試験に合格すれば最大5年間、日本で建設業に従事できます。
一方、特定技能2号は「班長や職長レベルの熟練者」が対象で、在留期間に制限がなく、家族も帯同できます。
それぞれの概要と要件をまとめると、以下のとおりです。
| 比較項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 対象業務 | 一定の知識・経験が必要な業務 | 熟練した技能を要する業務(班長・職長) |
| 取得要件 | 技能試験(3級相当)と日本語試験に合格 | 実務経験(半年~3年)+技能試験1級合格 |
| 在留期間 | 最長5年 | 無制限(更新可能) |
| 家族の帯同 | 不可 | 配偶者・子供の帯同が可能 |
| 日本語試験 | 必要 | 不要 |
| 業務の幅 | 基本的な作業が中心 | 工程管理や指導業務も含む |
例えば、型枠施工やコンクリート圧送などの基本的な作業は1号でも可能ですが、現場の進行管理や指導を伴う業務には2号が必要です。
ただし、2号の取得には高い技能と実務経験、さらに難関試験の合格が求められます。
特定技能制度は、企業のニーズに応じてスキルレベルの異なる人材を柔軟に受け入れられる仕組みです。
自社でどのような業務を任せたいのかを考えながら、適した資格を検討しましょう。
その他の在留資格(技術・人文知識・国際業務など)
建設業で外国人を雇用する場合、現場作業だけではなく、設計や施工管理、事務職などの専門的な業務に従事できる在留資格もあります。それが「技術・人文知識・国際業務」と呼ばれる就労ビザです。
この在留資格は、専門的な知識やスキルを活かす職種が対象となっており、建築設計や施工管理、CADオペレーター、法人営業などの仕事に就くことができます。
ただし、取得には学歴や職歴の要件があり、誰でも取得できるわけではありません。
| 主なポイント | 内容 |
|---|---|
| 対象職種 | 建築設計/施工管理/CADオペ/積算/広報/営業 など |
| 必要な学歴 | 大学・専門学校で関連科目を修了 |
| 必要な職歴 | 学歴がない場合は、関連業務での実務経験10年以上 |
| 現場作業 | 原則不可(研修目的の短期従事は例外) |
| 審査の要点 | 業務内容が専門的かどうか、学歴・職歴との整合性 |
例えば、外国人技術者を施工管理者として雇用したい場合、施工管理に関する学歴や経験がしっかりあるかが審査で重視されます。
逆に、現場作業中心の業務にはこの在留資格は適していません。あくまで「専門職」であることが条件です。
建設業の中でも「設計・管理・広報」などの分野で外国人を受け入れたい場合に、有効な選択肢と言えるでしょう。
建設業で外国人を
受け入れるための条件
外国人を建設現場で受け入れるには、在留資格を取得していることが前提ですが、それだけでは不十分です。企業側にも一定の要件や手続きが課せられており、それをクリアしないと、外国人材を正式に雇用はできません。
特に「建設特定技能受入計画」の作成や、JAC(建設技能人材機構)・CCUS(建設キャリアアップシステム)への登録、建設業許可の取得など、制度に沿った受け入れ体制の整備が求められます。
ここでは、外国人を建設業で受け入れるために企業側が行うべき準備や条件を分かりやすく解説していきます。
建設特定技能受入計画とは
建設業で特定技能の在留資格を持つ外国人を受け入れるためには、企業側が「建設特定技能受入計画」の申請を国土交通省に提出し、認定を受ける必要があります。
これは、外国人材が適正な環境で働けるよう、企業の体制や雇用条件を国が確認・管理するための制度です。
この計画には、以下のような目的と背景があります。
- 技能実習制度で問題視されてきた労働環境を改善するため
- 特定技能の外国人が安定した雇用環境で働けるようにするため
- 人手不足を抱える建設業で、優秀な外国人材を長く受け入れるため
計画書の作成にあたっては、建設業許可やキャリアアップシステムへの登録、JAC(建設技能人材機構)への加入など、複数の要件を満たす必要があります。
主な申請の流れは、以下のとおりです。
- 特定技能外国人との雇用契約を締結
- 国土交通省へ「建設特定技能受入計画」を申請
- 認定後、在留資格の申請へ進む
- 就労開始後1ヶ月以内に「受入報告」も必要
注意すべき点として、在留資格の申請は「受入計画の申請が完了してから」でないと行えません。
また、多くの書類が必要で、事前に整備しておくべき項目も多いため、早めの準備が必要です。
計画の認定には1〜2ヶ月かかるため、受け入れを検討している企業は、余裕を持ったスケジュールで動き出しましょう。
JAC・CCUSへの登録義務と手続き
建設業で外国人を受け入れる企業は、「JAC(建設技能人材機構)」と「CCUS(建設キャリアアップシステム)」の2つに登録する必要があります。
どちらも法律上の義務ではありませんが、特定技能の外国人を雇用するうえで、事実上必須の手続きです。
JACは、外国人雇用の適正化を目的に国土交通省のもとで設置された団体で、受け入れ企業の行動規範や管理体制の整備、各種支援を行います。
一方、CCUSは技能者の資格や就業履歴を見える化するためのデータベースで、外国人本人と企業の両方が登録しなければなりません。
それぞれの違いをまとめると、以下のとおりです。
| 項目 | JAC(建設技能人材機構) | CCUS(建設キャリアアップシステム) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 雇用体制の整備支援、行動規範の管理 | 技能者の資格・就業履歴の可視化 |
| 登録対象 | 受け入れ企業(または加盟団体経由) | 企業(事業者)と外国人労働者(技能者) |
| 登録の義務 | 特定技能外国人を雇う場合に必要 | 外国人受け入れ時は必須 |
| 登録方法 | 加盟団体経由または個別加入 | オンライン申請(書類添付あり) |
| 登録料 | 原則無料(団体により年会費あり) |
|
例えば、CCUSに登録していない技能者は、将来的に現場に入れなくなる可能性もあるため、特定技能の受け入れを考える企業は必ず事前に登録しておく必要があります。
登録時には、社会保険加入証明書や事業者証明書、技能者の経歴書など、複数の書類が求められます。JACに関しては、すでに加盟している建設業団体に所属していれば改めての登録は不要ですが、未加入の場合は個別で加入手続きを行わなければなりません。また、どちらの登録にも時間がかかることがあるため、スケジュールに余裕をもって準備しなければなりません。
制度を正しく理解し、必要な手続きを着実に進めることで、安心して外国人材を迎え入れることができます。
外国人採用の主な流れと必要書類
外国人を建設業で採用するには、在留資格の確認だけではなく、雇用契約や行政への届出、建設現場への入場手続きなど、さまざまなステップが必要です。
はじめて外国人採用に取り組む企業にとっては「何から始めればいいのか」「どこに申請すればいいのか」が分かりづらく、不安に感じることもあるでしょう。
しかし、採用から就業開始までの流れを正しく理解し、必要書類を段階的に準備すれば、スムーズに手続きを進めることが可能です。
ここでは、外国人建設労働者を受け入れる際の主な流れと、企業・外国人双方で必要となる書類に関してわかりやすく整理して解説します。
採用から就労開始までの主な流れ
外国人を建設業に採用する際は、求人募集を出して雇うだけではなく、在留資格の確認や雇用契約の締結、行政手続きなど複数のステップが必要です。流れを理解しておけば、必要な準備や対応がしやすくなります。
採用から現場での就業開始までの主な流れは、以下のとおりです。
| 募集と選考 |
|
|---|---|
| 在留資格の確認と申請 |
|
| 入国と就業準備 |
|
上記のような手続きを順番に進めることで、法令に則った形で外国人労働者を安全かつ円滑に受け入れることができます。
準備や審査に時間がかかる場合もあるため、スケジュールには余裕を持つことが大切です。
必要書類一覧と注意点
建設業で外国人を雇用する際は、本人が用意する書類と、企業が準備すべき書類が明確に分かれており、在留資格によっては追加の提出物も必要です。
必要な書類がそろっていないと、在留資格の申請や雇用開始が遅れることがあるため、あらかじめ整理して準備しておくことが大切です。
主な書類をまとめると、以下のとおりです。
| 募外国人本人が用意する書類 |
|
|---|---|
| 企業が準備する書類 |
|
| 在留資格によって必要になる追加書類 |
|
書類を準備する際には、以下の点に注意しましょう。
- 在留カードやビザは必ず原本を確認し、有効期限をチェック
- 「雇用契約書」と「労働条件通知書」は別の書類なので、それぞれ準備
- 書類によっては、外国語併記や本人の署名が必要な場合もあるため、記載方法にも注意が必要
書類の内容や提出先は在留資格や業務内容によって変わるため、厚生労働省「外国人を雇用する事業主の皆さまへ」などを参考に、最新の情報を確認しながら対応する必要があります。
行政書士・登録支援機関など専門家の活用法
建設業で外国人を雇用するには、在留資格の確認、各種書類の作成、行政への届出など、専門的かつ煩雑な手続きが数多く発生します。
手順を間違えると申請が通らなかったり、入国や就業が遅れたりするケースもあるため、不安がある場合は専門家のサポートを受けることが有効です。
以下のような専門家や支援機関が、手続きの代行やアドバイスを行っています。
- 行政書士
- 登録支援機関
- 社労士や中小企業診断士
専門家に依頼すれば、煩雑な書類作成や法的リスクを軽減でき、安心して外国人を受け入れられる環境が整います。
特に初めて外国人雇用に取り組む企業は、信頼できる専門家の力を借りることで、負担を減らすことができるでしょう。
まとめ
建設業で外国人を受け入れるには
必要な手順を踏もう
建設業で外国人を受け入れるには、在留資格の確認だけではなく、企業側にも「受入計画の申請」「JAC・CCUSへの登録」「各種書類の整備」など、制度に沿った準備が求められます。採用から就業までの流れを把握し、必要な手続きを一つずつ丁寧に進めることが、スムーズな受け入れのためには必要です。
もし「何から始めたらよいか不安…」などの場合は、行政書士や登録支援機関など、専門家の力を借りるのも一つの選択肢です。
そして、忘れてはならないのが、受け入れた後の「教育体制」の整備です。
煩雑な手続きを乗り越えて迎え入れた大切な人材が、現場で活躍し、長く定着するためには、継続的な教育体制が必要だからです。
建設現場の専門用語や安全教育に特化した「KENTEM Global Academy」のようなオンライン教育サービスは、受け入れ企業の教育負担を軽減し、外国人材のスキルアップをサポートします。
まずは受け入れの準備と並行して、定着を見据えた教育体制づくりについても、情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
制度を正しく理解し、自社に合った受け入れ方法を見つけたい方、「KENTEM Global Academy」に興味をお持ちの方は、ぜひ特設サイトをご確認ください。




