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介護業界のBCP対策とは?作り方やメリットを解説

介護事業所のBCP策定が義務化|作り方や策定のメリット、おすすめの運用ツールまで詳しく紹介

2023/08/23

2025/07/31

防災

介護事業所のBCPとは、災害やテロなどの事件が起こった場合でも事業を継続させるための対策を記したマニュアルのことです。
2021年から介護事業所にBCPの策定や運用が義務化されました。
義務化に伴い、多くの介護事業者がBCPの策定に頭を悩ませているかもしれません。

今回は、義務化された介護事業所のBCPに関して、作り方や運用するメリット、効率的にBCPを運用するツールについて紹介します。
BCPの策定や運用がまだできていない介護事業所や、BCPの運用に不安のある人はぜひ参考にしてください。

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介護事業所のBCP(事業継続計画)とは

BCPとは、「Business Continuity Plan」の略で、事業継続計画のことです。
内閣府の「事業継続計画ガイドライン」によると事業継続計画とは、下記のように定義されています。

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のこと

引用:内閣府 事業継続計画ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-

つまり、事業継続計画とは、災害やテロなどの事件が起こった場合でも事業を継続させるための対策や行動指針が示されたマニュアルということです。
会社を運営する人は、会社を守るため、従業員の安全を確保するために事業継続計画の作成が必須といえるでしょう。

厚生労働省による介護BCP義務化の詳細

厚生労働省は、2021年4月の介護報酬改定で介護事業所のBCP策定を義務化しました。
義務化は全ての介護事業者が対象です。
BCPの策定期限は2024年4月1日までで、それまでの3年間が経過措置期間となっています。

厚生労働省による義務化の主な内容は、以下のとおりです。

経過措置期間 2021年4月〜2024年3月31日
策定支援 入所系・通所系・訪問系別のひな型公開
未策定リスク 安全配慮義務違反の可能性

義務化に伴い、各事業所は自然災害や感染症などの緊急事態に備えた計画策定が求められます。
ひな形などは、厚生労働省の「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等について」で確認してください。

介護事業所のBCPが必要な理由

介護事業所にBCPが必要な理由は、利用者の生活と健康を守るためです。
介護サービスは、日常生活支援から生命維持に関わる重要な役割を担っています。災害時にも事業継続が求められる介護業界では、BCPの策定が不可欠です。

BCPが必要とされる具体的な理由は、以下のとおりです。

利用者への責任 生活維持、健康管理、生命維持
事業継続の必要性 サービス中断による重大な影響
法的要求 介護保険法に基づく義務化

BCPを策定すれば、災害時でもサービスの質が保たれ、利用者の安全を確保できます。
また、職員の安全確保や事業の早期復旧にもつながります。介護事業所の責任として、BCPの策定と実践は避けて通れません。

義務化された背景

介護事業所のBCP義務化の背景には、自然災害の増加と感染症の流行があります。
近年、日本では大規模災害が頻発し、多くの介護施設がサービス中断や運営困難に直面しました。

介護施設利用者の多くを占める高齢者や要支援者は、緊急時に特にリスクが高まります。
BCPの義務化は、利用者の生命と健康を守り、サービスの継続性を確保する目的があります。

BCPと防災対策の違い

BCPと防災対策は、災害への備えという点で共通していますが、その目的と範囲に違いがあります。

防災対策は主に人命と財産の保護に焦点を当てています。
一方、BCPは防災対策を含みつつ、事業の継続と早期復旧を重視します。

BCPと防災対策の主な違いをまとめると以下のとおりです。

BCP 防災対策
主な目的 事業継続・早期復旧 被害軽減・拡大防止
対象範囲 代替施設・通信確保 避難計画・救命措置
時間軸 発生前から復旧後まで 災害発生直後

BCPでは、災害時のサービス提供継続や事業所機能の回復など、より広範な計画が必要です。
防災対策を基盤としながら、事業継続の視点で包括的な準備を行うのがBCPの特徴です。

介護事業所のBCP(事業継続計画)に
記載すべき項目は2種類

介護事業所のBCP(事業継続計画)に記載すべき項目は、以下の2種類です。

それぞれ詳しく説明します。

自然災害への対策

自然災害が発生した場合、一時的に事業を停止させる必要が出てきます。

業務量の時間的経過に伴う変化
引用:厚生労働省 介護事業者における業務継続計画(BCP)について 業務量の時間的経過に伴う変化(自然災害)

ただ、事業を継続させるには、緊急対応後は徐々に優先度の高い業務を復活させていく必要があるため、業務内容の把握や優先順位の決定が必要です。

さらに、災害の場合は施設自体が倒壊して復旧が必要になる場合もあるため、自然災害に対するBCPには、インフラ対策も導入する必要があるでしょう。

感染症への対策

感染症への対策は、正しい情報の判断や素早い行動が鍵を握ります。

入所施設(自施設で感染者が発生した場合)
引用:厚生労働省 介護事業者における業務継続計画(BCP)について 業務量の時間的経過に伴う変化(感染症:入所系)

なぜなら、感染症が発生した場合でも介護事業は適切な判断のもと、事業を継続させる必要があるためです。
イレギュラーな対応により業務が増える可能性があるため、どの業務をどう進めるかをBCPに組み込む必要があるでしょう。

介護事業所の
BCP策定実態調査結果

2024年までにBCPの策定や運用を実施する必要があるとされていますが、実際にはすべての事業所でBCP策定ができていない現状があります。

ここでは、BCP策定の現状について以下の内容を紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

BCP策定の現状|義務化にも関わらず2割以上が未対応

株式会社建設システムが実施した調査によると、介護事業所のBCP策定の現状は、予想以上に厳しい状況にあります。
調査結果によると、完全にBCP策定ができている事業所はわずか15.5%に留まっています。

介護事業所のBCP策定の状況
完全にできている 15.5%
部分的にできている 56.1%
あまりできていない 21.7%
まったくできていない 6.7%

この結果から、8割以上の事業所が完全なBCP策定に至っていないことが分かります。

特に注目すべきは、「あまりできていない」「まったくできていない」と回答した事業所が合わせて28.4%に達している点です。
義務化が進められているにも関わらず、多くの事業所がBCP策定に苦慮している現状が浮き彫りになりました。

改善するためには、BCP策定のサポート体制の強化や、より実践的なガイドラインの提供が必要かもしれません。

BCP策定ができない主な理由

株式会社建設システムが実施した調査によると、介護事業所がBCP策定を進められない背景には、複数の要因が存在します。

BCP策定ができない主な理由には、以下のようなものが挙げられます。

  • 専門知識の不足
  • コストの問題
  • 時間の制約

最も大きな理由は専門知識の不足です。
BCP策定には、災害対策や事業継続に関する専門的な知識が必要となります。日々の業務に追われる中で、これらの知識を習得する機会が限られているのが現状です。

また、経営資源の限られた事業所にとって、外部コンサルタントの雇用や必要な設備投資などの財政的負担は大きな課題となっています。
介護サービスの提供に専念する中で、BCP策定に十分な時間を割くことが難しい状況も浮き彫りになりました。

これらの課題を克服するためには、具体的なサポート体制の構築が不可欠です。
例えば、専門知識を分かりやすく提供する研修プログラムの実施や、コスト効率の良いBCP策定ツールの導入などが考えられます。

BCP策定に必要な支援

介護事業所のBCP策定を推進するには、さまざまな支援が求められています。
株式会社建設システムが実施した調査から、事業所が以下のような支援を必要としていることが明らかになりました。

  • 専門家によるアドバイス
  • 効果的なツールやシステムの導入
  • 資金面でのサポート

特に注目すべきは、連絡網整備の重要性に対する高い認識です。
8割以上の回答者が、連絡手段や情報共有の仕組みづくりを重要課題と捉えています。

さらに、日常的に使用可能な連絡ツールへの需要も高く、8割以上が導入に前向きな姿勢を示しています。
ツールは、緊急時の安否確認やBCP資料の共有だけでなく、日常業務の効率化にも役立つ可能性があります。

BCP策定は必要だと感じている事業所が多い一方、知識不足やコストなどが原因で、導入には至っていない現状が浮き彫りになりました。

今後は、低コストで比較的簡単にBCP策定を実施できる体制作りがより一層求められるようになるでしょう。

介護事業所にBCP(事業継続計画)を導入する
3つのメリット

介護事業所にBCP(事業継続計画)を導入すると、以下の3つのメリットが得られます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

補助金や助成金を受けられる

BCPを策定すると、自治体や関連機関からの補助金や助成金を受けられます。
安全対策の実施や備蓄品の購入費用を賄えるかもしれないため、自分の地域にどのような補助金があるかを確認しましょう。

福祉施設向けBCP策定に活用できる具体的な補助金制度

福祉施設がBCPを策定・運用する際、自治体や国の補助金・助成金を活用すれば、負担を抑えながら必要な対策を進められます。特に以下の制度は、施設の防災・事業継続対策に役立つ可能性があります。

補助金 概要 支援内容
中小企業庁「事業継続力強化計画」 自然災害や感染症などのリスクに対応するための対策を策定・実行を目的とした補助金
  • 税制措置の適用
  • 金融支援
  • 災害時の行政支援
東京都「BCP実践促進助成金」 福祉施設を含む中小企業のBCP策定・運用を支援するための補助金
  • BCPを実践ための購入費用を助成
  • 導入費用を補助
自治体独自の支援制度 各自治体が用意している、BCP策定にかかる費用の助成や補助金
  • BCP策定費用の補助
  • 防災設備の導入支援

補助金申請の主な流れは、以下のとおりです。

  1. 自施設に合った補助金を調べる(自治体・中小企業庁のサイトを確認)
  2. 必要書類を準備する(BCP計画書、施設の事業概要、見積書など)
  3. 申請を行う(自治体や補助金提供機関にオンラインまたは郵送で提出)
  4. 審査・承認を待つ(承認されれば補助金の給付を受けられる)

補助金を活用すれば、施設の負担を軽減しつつ、より実効性の高いBCPを策定・実践できます。BCP策定がまだの施設は、まずは自治体や関係機関の支援を確認してみましょう。

税制優遇や金融支援が受けられる

BCPの策定によって、税制優遇や金融支援が受けられるかもしれません。

税制優遇の例 内容 対象者
中小企業防災・減災投資促進税制 事前対策を強化するために必要な防災・減災設備に対する特別償却が適用される(20%) 事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業・小規模事業者

BCPを取り入れることで、事業の促進につながるのであれば、積極的に導入・運用を進めた方が良いでしょう。

感染症まん延時にワクチンの優先接種が受けられる

BCPを取り入れている介護事業所では、感染症まん延時にワクチンの優先接種が受けられます。
優遇措置が行われることで従業員や利用者の健康を守れるため、感染症まん延の拡大リスクを軽減できます。
優先的にワクチン接種ができる点から、施設の利用を求める人が増えるかもしれません。

事業拡大という点からも、BCPの導入は効果的です。

2021年に介護事業所のBCP・BCMが義務化

厚生労働省は、令和3年度の介護報酬改定において、BCPの策定を義務付けました。

改定によって義務付けられた項目は以下のとおりです。

対象者 項目
介護サービス事業者
  • 現行の委員会の開催
  • 指針の整備
  • 研修の実施
  • 訓練(シミュレーション)の実施

引用:厚生労働省 令和3年度の介護報酬改定

なお、この省令改定では、3年間の経過措置期間が設けられています。
つまり、2024年までにBCPの策定や運用を実施する必要があるということです。
BCPは策定後も運用する中で常に改善を進めていく必要があり、従業員全体へ訓練したり、知識を共有するのにも時間がかかります。
介護事業所は、経過措置期間が終了する2024年までにできるだけ早くBCPの策定、運用が求められるでしょう。

BCPとBCMの違いとは?

BCPとBCMはどちらも「緊急時の事業継続」に関わる言葉ですが、BCPが計画書そのものなのに対して、BCMはその計画を活かす仕組み(体制)を指します。

BCPは「避難時に誰が何をするかを書いたマニュアル」です。
一方でBCMは「そのマニュアルが現場でちゃんと使われるように周知・訓練・見直しを行う継続的な取り組み」です。

このように、似て非なる概念であるBCPとBCMですが、以下の表でその違いを整理しておきましょう。


意味 主な目的 主な違い
BCP(Business Continuity Plan) 事業継続計画 緊急時に事業を継続・早期復旧するための具体的な計画書 単体の文書やマニュアルとして存在する
BCM(Business Continuity Management) 事業継続マネジメント BCPを策定・運用・改善するためのマネジメント体制 BCPを「活かす仕組み」そのもの

BCPを「作るだけ」で終わらせず、現場で機能させていくのがBCMの考え方です。

例えば、BCMを取り入れると、避難訓練が実際のリスクに基づいて見直されたり、感染症マニュアルが定期的に更新されたりと、現場の行動が具体的に変わっていきます。

単なる書類の提出ではなく、職員が迷わず動ける計画に育てていくことこそがBCMの本質です。

介護事業所のBCP義務化に従わないことで発生するリスク

介護事業所のBCP義務化に従わないと、以下のリスクが発生するかもしれません。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

介護報酬が減算されるかもしれない

介護事業所のBCP義務化に従わないと、介護報酬が減算されるかもしれません。
なぜなら、令和3年度の介護報酬改定では、介護報酬が0.70%上がる改定がされているためです。
介護報酬の内訳のうち、0.05%が感染症対策への評価です。

つまり、介護事業所のBCP義務化ができていなければ、最大3%の加算の割合が減ってしまうかもしれません。

安全配慮義務違反に対して損害賠償責任を問われるかもしれない

介護事業所のBCP義務化に従わないことで、罰金が発生することはありません。
しかし、BCPがないことで介護施設の入所者や職員の人命、健康に被害が出た場合、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われるかもしれません。

損害賠償責任を問われれば、会社としての信用もなくなります。
会社を守るためにも、介護事業所のBCPの導入を急ぎましょう。

2024年まで経過措置が設けられた理由

介護事業所のBCP義務化に3年間の経過措置が設けられた理由は、事業者の準備期間確保と段階的な導入を考慮したためです。
BCPの策定には時間と労力がかかるため、急な義務化は現場に混乱をもたらす可能性があります。

現在、全ての介護事業所でBCPの策定と運用が求められています。
経過措置期間中に多くの事業所がBCPを整備し、災害や感染症への対応力を高めました。

未だBCP未策定の事業所は、早急な対応が必要です。
一方で、既に策定済みの事業所も、定期的な見直しと改善を行い、より実効性の高いBCPへと進化させていくことが必要です。

BCPのマニュアルの周知不足によって起こった事件とは

ここからはBCPのマニュアルの周知不足によって起こった事件を紹介します。
今回は介護事業所が関わった内容ではありませんが、一歩間違えば介護事業所でも発生の可能性がある事例です。
事例が発生した原因や対策を参考に、事業所のBCPのマニュアルの作成、周知に役立ててください。

事件の概要は以下のとおりです。

事件名 日和幼稚園バス津波被災事件
概要 災害対策マニュアルに従った避難を行わず園児5名が死亡。
幼稚園に対して法的責任が争われた。
判決結果 園児1人につき4000万円以上の損害賠償が認められた。
(最終的に、高裁にて和解)

引用:最高裁判所 日和幼稚園バス津波被災事件

上記の事例は、BCPが作成されているにも関わらず、従業員に周知できていなかったことで発生しました。
BCPは作成するだけではなく、避難訓練や研修などを通して、従業員全体に共有しておく大切さが分かる事例のひとつです。

BCPマニュアルは作成しただけで終わらず、その後の周知や見直しが重要です。BCPを現場で機能する仕組みとして運用し、定期的に見直すことで重大な事故やリスクを避けることができます。

「クロスゼロ」なら、BCPの共有だけでなく、安否確認やハザードマップの確認など、さまざまな機能をひとつのツールで実現します。
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災害時に福祉施設が直面する課題と解決策

福祉施設は、高齢者や障害を持つ方々が安全・安心に生活できる場として機能しています。しかし、地震や台風などの自然災害、感染症のまん延といった緊急事態が発生した際には、多くの課題に直面します。

具体的には、以下のような課題が挙げられます。

それぞれの課題を確認しながら、今からでも対策を講じるきっかけにしてください。

高齢者・障害者の避難支援が困難

災害発生時は、福祉施設の利用者である高齢者や障害を持つ方々の避難は、一般的な避難と比べて大きな課題を伴います。

特に、以下のような問題が発生しやすいです。

  • 移動に時間がかかる(車椅子や歩行補助が必要な利用者が多い)
  • 職員の数が足りない(避難支援には十分なマンパワーが必要)
  • 避難経路や避難所のバリアフリー対応が不十分(階段や段差、狭い通路などが障害に)
  • 利用者のパニックや混乱(災害時の不安が大きく、冷静な避難が難しい)

こうした課題に対応するためには、事前準備と訓練が必要です。以下の対策を講じることで、スムーズな避難を実現できます。

個別避難計画の作成
  • 利用者ごとに、必要な支援や避難ルートを明確にした計画を事前に作成
地域との連携強化
  • 自治体や近隣の施設・病院、ボランティア団体と協力し、災害時の支援体制を構築
定期的な避難訓練の実施
  • 実際の災害を想定した訓練を定期的に実施し、職員・利用者が適切な行動を取れるようにする
避難先のバリアフリー確認
  • 指定避難所の設備を事前に確認し、バリアフリー対応が不十分な場合は代替避難場所を確保

災害はいつ発生するかわかりません。いざという時に備えて利用者一人ひとりの状況を考慮した避難計画を策定し、スムーズな支援体制を整えることが福祉施設の責務と言えるでしょう。

災害時のライフライン確保が難しい

災害が発生すると、停電や断水、通信障害などが発生し、福祉施設の運営が極めて困難になる可能性があります。

特に医療機器の使用が必要な利用者がいる場合や、食料・水の供給が止まると、利用者の命に関わる深刻な状況に陥ることもあります。

主な課題は、以下のとおりです。

  • 停電による影響(酸素吸入器や人工呼吸器など、電力が必要な医療機器が使用不能になる)
  • 断水による影響(トイレや入浴ができなくなる、飲料水の確保が困難)
  • 通信障害による影響(職員・利用者の家族との連絡が取れず、情報共有が難しくなる)
  • 食料・生活必需品の不足(物流の混乱により、必要な物資の供給が止まる)

ライフラインの確保には、事前の備えと緊急時の対応計画が必要です。以下の対策を講じることで、災害時の影響を最小限に抑えることができます。

非常用電源・発電機の導入
  • 医療機器の継続使用や照明・通信機器の確保のため、非常用発電機や蓄電池を準備し、定期的に動作確認を実施
備蓄品の定期点検・更新
  • 飲料水・食料:最低3日分、できれば1週間分の備蓄を確保
  • 医薬品・衛生用品:持病のある利用者向けの薬や、消毒液、オムツなどの備蓄
  • 燃料・充電機器:発電機用の燃料やモバイルバッテリーの準備
緊急時の物資供給ルートの確保
  • 優先的に物資を供給できるルートを確保しておく
複数の通信手段を用意
  • 無線機・IP無線・衛星電話など、異なる通信手段を確保
断水対策として簡易トイレを備蓄
  • 長時間の断水に備えて、ポータブルトイレや災害用トイレの設置を検討

福祉施設では、利用者の安全を守るためにライフラインの確保は必要です。停電・断水が発生しても対応できるよう、設備の整備や物資の備蓄を徹底し、緊急時の対応フローを明確にしておくことが大切です。

感染症が発生した際に職員が不足する

感染症のまん延時には、職員の出勤が困難になり、施設の運営に影響を及ぼします。
特にクラスターが発生すると、職員が感染・濃厚接触者となり、自宅待機が必要になり、人手不足が深刻化します。

利用者の健康管理やゾーニング(感染区域の分離)も求められ、通常業務以上の対応が必要です。

主な課題は、以下のとおりです。

  • 職員の感染・濃厚接触による出勤停止(人員不足で通常業務が回らなくなる)
  • 感染対策のための業務負担増(ゾーニングや消毒作業の追加で、職員の負担が増加)
  • 訪問介護の継続が困難(利用者宅に訪問できず、サービスの提供が制限される)
  • 利用者の健康管理が困難(発熱者の隔離対応や医療機関への連携が必要)

感染症発生時の業務継続をスムーズにするためには、事前の準備と迅速な対応が必要です。

代替要員の確保と応援体制の構築
  • 緊急時の応援職員の確保を進める
  • 少ない人員でも対応できる業務体制を整備
感染症BCPの策定
  • 感染拡大を防ぐためのルールを作成し、事前に訓練を実施
  • 利用者・職員の感染対策マニュアルを用意し、全員が正しく理解・実践できる体制を整える
オンライン・リモート対応の準備
  • オンライン相談やリモート対応の導入を検討
  • オンラインでの情報共有を円滑にする
感染対策物資の確保
  • マスク・消毒液・防護服などを十分に備蓄
  • 感染リスクの高い業務(排泄介助・食事介助など)の対策を明確にし、職員の負担を軽減

福祉施設では、職員不足が発生すると、利用者の生活や健康に直接影響を及ぼします。

感染症発生時でも業務を継続できるよう、職員の配置計画や応援体制の確保、感染防止策の強化が必要です。

介護事業所のBCPの作り方を5ステップで紹介

ここからは、介護事業所のBCPの作り方を5ステップで紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 基本方針を固める

まずは基本方針を固めましょう。
決めるべき項目は下記のとおりです。

  • 各事業所の責任者
  • 連絡フローや連絡方法
  • 事例ごとの行動フロー

誰が、どこで、何をするかが決まっていれば、初動で遅れることはなくなるでしょう。
まずは基本的にやるべきことをまとめ、そこから細かな作業を決めていくのがおすすめです。

2. 平常時・緊急時の対応内容を決める

平常時と緊急時の対応内容を決めておくのも有効的です。
平常時と緊急時の業務内容をそれぞれ把握しておけば、緊急時に平常時のどの業務を無くして優先度をあげるかを決められます。
業務ごとの担当者まで把握できていれば、必要な人員を素早く把握できますし、引き継ぎもしやすくなるメリットもあるため、定期的に対応内容は見直しましょう。

3. 連絡先を共有する

従業員や施設利用者の連絡先を会社全体で共有しておきましょう。
災害時に特に大切になるのが、素早い情報共有です。

誰に何を伝えたか、情報が重複していないかなど確認できるように、情報をひとつの場所にまとめておくのがおすすめです。

4. 必要物資を揃えて定期的に確認する

災害時に備えて、非常食や防災グッズを備蓄しておきましょう。
非常食は消費期限や使用期限があるため、定期的に見直し、過不足があれば補充しておくことが重要です。
複数の事業所がある場合は、どの事業所にどの程度の備蓄があるかを把握できれば、災害時にも役立つでしょう。

5. 災害時に対応できるように訓練を実施する

災害時は、誰もがパニックになり、いつも通りの行動ができません。
しかし、定期的に訓練をしておくだけで、会社全体のBCPに対する理解も深まり、緊急時の行動に差が出ます。
災害時にできるだけスムーズな対応をするためにも、従業員全体で訓練を定期的に行いましょう。

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厚生労働省が公開する
BCPひな形とテンプレート資料

介護事業所のBCP策定には、厚生労働省が提供する「ひな形」や「研修資料」の活用が効果的です。
国が公式に示すひな形や動画資料は、BCPの基本構造や実務運用のポイントが抑えられており、入所系・通所系・訪問系といった事業形態別に具体的な内容が整理されています。

そのため、自施設の状況に合わせてカスタマイズしやすく、策定作業の負担軽減につながります。

厚生労働省のサイトで確認・ダウンロードできるのは、以下のような資料やひな形です。

感染症対応
  • BCPガイドライン
  • 入所・通所・訪問別のひな形(例示入り含む)
自然災害対応
  • 共通の自然災害用ひな形とサービス固有型のテンプレート
動画教材
  • BCP策定~机上訓練までを解説した研修動画(各事業類型別)

上記はExelやPDF形式で提供されており、策定・見直し・職員研修にもそのまま活用できます。

BCP策定をゼロから始めるのは大きな負担ですが、厚生労働省のテンプレートと動画を使えば、策定のハードルを下げながら、実効性の高いBCP作成が可能になります。

まずは厚生労働省の資料を確認し、事業所に合った形での活用を検討してみましょう。

参照:厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

介護事業所の
BCP作成ポイントと注意点

介護BCPの作成は、一見複雑で困難に感じるかもしれません。
しかし、適切なポイントを押さえ、注意点を理解すれば、効果的なBCPを作成できます。

ここでは、介護事業所がBCPを作成するために必要な以下のポイントを説明します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

介護事業所のBCP運用と定期的な見直し

介護事業所のBCPは作成して終わりではありません。効果的な運用と定期的な見直しが必要です。

運用のポイントや見直しの際のチェックポイントは、以下のとおりです。

BCPの運用ポイント 見直しの際のチェックポイント
全職員へのBCP内容の周知
定期的な訓練の実施
実際の災害時の対応記録
利用者情報の更新
職員の異動反映
新たな災害リスクの追加

策定したBCPは、年に1回以上見直しを行いましょう。
実際の災害対応や訓練から得られた課題を反映させ、常に最新の状況に合わせたBCPに更新してください。また、新しい職員が入った際にはBCPの内容を必ず説明し、全員が理解している状態を維持しましょう。
定期的な見直しにより、BCPの実効性が高まり、緊急時により適切な対応が可能になります。

利用者の特性を考慮したリスク評価と対策立案

介護事業所のBCPでは、利用者の特性を十分に考慮したリスク評価と対策立案が重要です。

考慮すべき利用者の特性には、以下のようなものが挙げられます。

  • 身体的な制限(移動困難など)
  • 認知症の有無
  • 医療依存度の高さ

例えば、移動に介助が必要な利用者が多い場合、避難に時間がかかることを前提とした計画が必要です。
医療機器に依存している利用者がいる場合は、停電対策も必要です。

利用者の特性とリスクを踏まえ、具体的な対策を立案しましょう。
個別の避難計画や、必要な医療機器のバックアップ電源の確保など必要に応じて対策を立てておいてください。

職員の役割分担と緊急時の連絡体制の明確化

緊急時に迅速かつ適切な対応をするためには、職員の役割分担と連絡体制を明確にする必要があります。

役割分担の例には、以下のようなものが挙げられます。

総括責任者 全体指揮をとる
避難誘導担当 利用者の避難支援をする
情報収集担当 災害情報の収集と共有をする
医療ケア担当 必要な医療ケアの提供

災害時の連絡体制を構築しておくことも大切です。
連絡先には、携帯電話やメールなどの手段が考えられますが、以下の点に注意して連絡体制を整えておきましょう。

  • 複数の連絡手段の確保(電話、メール、SNSなど)
  • 連絡網の作成と定期的な更新
  • 緊急時の情報伝達訓練の実施

役割分担と連絡体制は文書化し、全職員に周知徹底しておきましょう。
定期的な訓練を通じて、各自の役割を確認し、連絡体制の実効性も検証しておいてください。

地域との連携と協力体制の構築

介護事業所のBCPでは、地域との連携と協力体制の構築が大切です。
災害時には、事業所単独での対応に限界があるため、地域全体で助け合う体制を整えておきましょう。

特に以下のような団体とは、連携体制を築いておくと良いでしょう。

連携すべき団体 連携・協力の具体例
  • 地元自治体
  • 消防署・警察署
  • 近隣の医療機関
  • 地域の自治会や町内会
  • 合同防災訓練の実施
  • 災害時の避難所としての施設提供
  • 物資の相互融通に関する協定締結

地域との連携を深めるためには、日頃からのコミュニケーションが大切です。
地域の防災会議への参加や、施設の行事に地域住民を招くなど、積極的な交流を心がけましょう。

また、災害時の具体的な協力内容について、事前に協議し、文書化しておくことも大切です。

【自然災害】BCPの策定方法

介護事業所では、自然災害に備えたBCPを策定する際、サービスの種類(通所系・訪問系)と災害フェーズ(平常時・災害予測時・災害発生時)に応じた対策を立てることが必要です。厚生労働省の資料でも、状況に応じた具体的な対応を整理するように推奨されています。

特に通所系では、送迎中止や避難先との連携体制が、訪問系では移動中の対応や職員の安全確保が求められます。以下の表は、厚生労働省のガイドラインをもとにした対応例です。


通所系介護サービス 訪問系介護サービス
平常時
  • 緊急連絡網やハザードマップの整備
  • 地域や他事業所との連携体制づくり
  • 備蓄品・物資の管理や避難訓練の実施
  • 移動ルートの安全確認・緊急避難場所の把握
  • 車両・通信手段の点検、災害時シミュレーションの実施
災害予測時
  • サービスの一時停止の判断と利用者・家族への事前連絡
  • 通所前のキャンセル判断や送迎中止ルールの確認
  • サービスの前倒し実施・一時停止基準の明確化
  • 訪問見送りの連絡ルールと家族・ケアマネジャーとの連携体制整備
災害発生時
  • 利用者・職員の安否確認
  • 必要に応じた避難対応(施設内または外部避難)
  • 家族への連絡と連携記録の確保
  • 訪問職員の安否確認と居場所把握
  • 他施設・事業所との連携による代替サービス提供の検討

上記のようにサービス種別とフェーズごとに対応を明文化すれば、職員全体での共通認識が得やすくなり、緊急時にも冷静に行動できます。BCP策定時は、具体的な事例やチェックリストもあわせて活用すると、より実践的な対策につながるでしょう。

参照:厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン

【感染症対策】BCPの策定方法

感染症への備えとして、介護事業所ではBCP(業務継続計画)を「感染疑い者発生時」「感染拡大時」などの段階に応じて準備・実行していくことが求められます。

特に重要なのは、発生時の初動対応と、拡大防止のための連携体制です。下記のように、サービス種別ごとに具体的な対応を整理しておくことで、現場での混乱を防ぎ、事業継続につながります。


入所系介護サービス 通所系介護サービス 訪問系介護サービス
平常時
  • 防護具や消毒液等の備蓄
  • 体制整備と研修
  • BCP内容の訓練と見直し
  • 感染対策の徹底(消毒・換気・体調管理)
  • 出入り管理や備蓄品の確保
  • BCPの研修・訓練
  • 個人防護具や消毒液の備蓄
  • 感染対応マニュアルの周知
  • 訪問先との連携体制整備
感染疑い発生時
  • 個室対応またはゾーニング
  • 職員の担当分けによる感染防止
  • 保健所や医療機関との連携
  • 送迎前の検温と利用判断
  • 早期報告と情報共有(家族・ケアマネ等)
  • 必要に応じて利用停止
  • 訪問中止または短縮の判断
  • 情報共有と連絡ルートの整理
  • 医療機関への速やかな相談
拡大防止体制
  • 接触者の隔離対応(個室・動線分離)
  • 職員体制の再編と応援依頼
  • 業務の優先順位を整理して継続対応
  • 施設内ゾーニング・清掃消毒の徹底
  • 休業検討と訪問代替の調整
  • 利用者・家族・関係機関への情報発信
  • 利用者宅でのゾーニング徹底
  • 訪問ルートの見直し
  • 職員の健康確認と労務管理

上記のような対応をBCPとして文書化し、職員と共有・訓練しておくことで、いざというときの混乱や対応の遅れを防ぐことができます。特に感染症は長期化するリスクがあるため、「初動対応→拡大防止→体制の再構築」まで一連の流れを事前に設計しておきましょう。

参照:厚生労働省「介護施設・事業所における感染症発生時の業務継続ガイドライン

BCP運用における課題

介護事業所がBCP運用をする際には、さまざまな課題に直面します。
事業所の規模や地域によっても課題内容は異なりますが、多くの事業所が直面する課題には、以下のようなものが挙げられます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

職員の意識向上と継続的な教育の実施

BCPの効果的な運用には、職員全員の高い意識と適切な知識が不可欠です。
しかし、日々の業務に追われ、BCPへの意識が低下しがちです。

職員の意識向上と継続的な教育の実施には、以下のような点を意識しましょう。

職員の意識向上策 継続的な教育のポイント
  • 定期的なBCP研修の実施
  • 災害時のシミュレーション訓練
  • BCPの重要性を伝える掲示物の活用
  • 新人研修にBCPの説明を組み込む
  • 年1回以上の全体研修を実施
  • 外部専門家による講習会の開催

それぞれの取り組みを通じて、職員全員がBCPの重要性を理解し、緊急時に適切な行動がとれるよう日常的に取り組めるようにする必要があります。

BCPの定期的な更新と実効性の検証

BCPは作成して終わりではありません。定期的な更新と実効性の検証が必要です。
環境の変化や新たな課題に対応できるよう、BCPを常に最新の状態を維持する必要があります。

更新のタイミングや実効性の検証は、以下のような点に注意してください。

更新のタイミング 実効性検証の方法
  • 年1回の定期見直し
  • 大規模災害発生後
  • 事業所の体制変更時
  • 実地訓練による検証
  • 外部評価の活用

更新と検証を通じて、より実践的で効果的なBCPへと進化させられます。課題が見つかった場合は、速やかに修正し、改善を図りましょう。

変化する介護ニーズへの対応とBCPの柔軟な修正

介護現場のニーズは常に変化しています。
新たな感染症の発生や、介護技術の進歩など、BCP内容も変化に対応して修正する必要があります。

具体的な変化には、以下のようなものが挙げられます。

  • 新型感染症への対策
  • ICT技術の導入
  • 地域連携の強化

変化に柔軟に対応すれば、より実効性の高いBCPを維持できます。現場の声に耳を傾け、新たな課題にも迅速に対応できる体制を整えられるよう意識していきましょう。

BCP見直しのタイミングはいつ?

BCP(業務継続計画)は、一度作って終わりではなく、定期的に見直しを行うことが欠かせません。
環境の変化や人員の入れ替え、新たな災害や感染症の発生など、状況に応じて柔軟に内容を更新する必要があります。

厚生労働省のガイドラインでも、年次レビューに加え、緊急事態の発生時や体制変更時など複数のタイミングでの見直しが推奨されています。

ここでは、具体的な見直しのタイミングを確認していきましょう。

年次レビュー

BCPを策定した際には、BCP全体を点検・更新するために年次レビューを実施する必要があります。

厚生労働省も年次での見直しを義務として明記しており、年度末や新年度初めに実施されるケースが多いです。年度ごとに人員体制や設備状況、関連制度が変化する場合が多く、それにあわせて計画内容の見直しが必要になるからです。
新しい施設の開設や職員配置の変更があった場合、既存のBCPをそのまま使い続けると、緊急時に対応が不十分なものになってしまう可能性もあります。

年に1回の頻度でもBCPの整合性を確認・更新すれば、計画の実効性と信頼性を保つことができるでしょう。

災害・感染症などの緊急事態発生後

災害や感染症などの緊急事態が発生した直後も、BCP見直しの重要なタイミングです。
なぜなら、実際に起きた出来事への対応を振り返り、何がうまくいき、何が想定外だったのかを洗い出すことで、より実効性のある計画にアップデートできるからです。

例えば「連絡が一部の職員に届いていなかった」「避難の判断に時間がかかった」といった現場の混乱や課題は、平常時の想定だけでは見えにくい部分です。
緊急時の実践から得た気づきや反省点は、次のBCP改善に直結する材料になるでしょう。

災害後に速やかに対応記録を残し、関係者で共有・検証する体制をつくることが、より実効性のあるBCP運用につながります。

職員の大幅な入れ替え時

職職員の大幅な入れ替えがあったときは、BCPの見直しが必要となるタイミングです。
非常時に求められる対応や役割分担、連絡体制が変化し、現行の計画が現場の実態とずれてしまうリスクがあるからです。

新任職員が多い状態では、BCPそのものの存在が十分に浸透していない可能性もあります。
退職や異動でキーパーソンが不在になった場合、緊急時の指揮系統や実働部隊が機能しないリスクも考えられます。

そのため、入れ替え時には連絡網や役割表の見直し、BCPに関する研修・周知を徹底する必要があります。

あわせて、非常時の人員不足リスクについても再評価し、現体制での対応力を再確認しておきましょう。

新しい施設やサービスの追加時

新しい施設やサービスを導入する際も、BCPを見直すタイミングとして適しています。
サービスの形態や提供拠点が変わることで、災害・感染症時の対応方針や優先すべき業務内容が大きく変わるからです。

サービスや施設の追加によってBCP見直しが必要となる具体例を確認してみましょう。

通所サービス→訪問サービスへ拡大 移動中の災害リスクに備えた「避難先の事前把握」や「移動ルートの安全確認」が必要に
訪問サービス→入所施設を開設 夜間対応や複数フロアの避難導線、職員配置の見直しが必要
新しい地域に施設を新設 地域特有の災害(例:河川の氾濫リスクなど)を想定した地域別BCPの整備が必要
短期入所やリハビリ特化型など
機能追加
利用者の状態に応じた避難支援計画のカスタマイズが必要

上記のように、業態や拠点が変わるたびにBCPを見直すことで、実態に即した安全管理体制が整い、緊急時の混乱を防ぎやすくなります。

設備・ICTシステム導入時

設備やICTシステムを導入するタイミングも、BCP見直しの好機となります。
新たなツールや設備が加わることで、安否確認・連絡体制・情報共有の手順が変わり、従来のBCPでは対応しきれないケースが出てくるからです。

例えば、以下のようなポイントで見直しを実施しましょう。

安否確認システムを導入 安否確認フローや通知のタイミング・担当を明確化が必要
クラウド型の連絡ツール
(チャット・掲示板)を導入
紙や電話中心のBCPから、デジタルツールを活用した情報共有体制に移行
新しい介護記録ソフトや
勤怠管理システムを導入
緊急時にも利用できるかの検証・代替手段の整備が必要

ICTの導入は業務効率を高める一方で、BCPにおいては「ツールに依存しすぎず使いこなす前提」での再設計が求められます。

新システムに合わせた運用ルールの見直しと、職員への周知・訓練もあわせて実施しましょう。

厚生労働省や自治体のガイドライン改定時

厚生労働省や自治体からガイドラインが改定されたときも、BCPの見直しのタイミングの一つです。
なぜなら、制度やルールの変更に対応しないままでは、義務違反や加算の未取得といったリスクにつながるからです。

例えば、以下のような改定が該当します。

  • 感染症対策ガイドラインの見直し
  • BCP加算の新設・算定ルールの変更
  • 都道府県ごとの災害対応指針のアップデート

改定に即応できるよう、日頃から「厚生労働省」や「都道府県」の通知・情報発信をチェックし、最新の制度変更を見逃さない体制を整えることが必要です。
BCPは、制度の変化に合わせて柔軟に見直していきましょう。

介護施設のBCP策定で押さえるべきポイント

介護施設のBCP策定は、利用者の命と施設の存続を左右する取り組みです。
しかし、どこから手をつければよいか迷う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、BCP策定のために必要な以下の3つのポイントを詳しく解説します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

非常時の体制構築と職員不足への対策

介護施設のBCPでは、非常時の体制構築と職員不足への対策が欠かせません。
通常時の30%の職員が欠勤する可能性を想定し、以下の対策を準備しておきましょう。

代替スタッフの確保策
  • 他部署からの応援体制の構築
  • 提携施設との相互支援協定
  • 元職員の臨時雇用システムの整備
非常時の業務調整
  • 必須ケアの明確化とマニュアル化
  • 一時中断可能なサービスのリスト作成
  • 緊急時用の簡易ケアプランの準備

上記の対策を実行に移すためには、平常時からの準備が重要です。
代替スタッフリストを定期的に更新し、応援体制の訓練を実施しておきましょう。また、業務の優先順位付けを行い、スタッフ全員で共有しておけば、非常時にもスムーズに対応できます。

地域のボランティア団体や近隣施設とのネットワークを構築し、相互支援の仕組みを整えておくことも効果的です。
定期的な合同訓練や情報交換会を通じて、地域全体の防災力向上にも貢献できるでしょう。

計画的な準備を通じて、非常時でも質の高いケアを提供し続ける体制を整えられます。
定期的な見直しと改善を重ね、より強固な事業継続体制を築いていきましょう。

災害に備えた物資管理と効果的な連絡体制の整備

非常時の物資備蓄と連絡体制の整備は、入所サービスを提供する介護施設のBCPに不可欠な要素です。
災害発生時に迅速な対応を可能にする具体的な準備事項は以下のとおりです。

物資の備蓄
  • 3日分の非常食と水
  • 医薬品と衛生用品
  • 非常用電源装置
連絡体制の整備
  • 職員間の情報共有システム
  • 利用者家族との緊急連絡手段

備蓄品は定期的に点検し、消費期限を確認しましょう。
連絡体制では、オンラインプラットフォームを活用し、緊急連絡先やシフト変更を迅速に共有できるようにしておくと効果的です。
利用者家族の緊急連絡先を常に最新の状態に保ち、SMSやメールなど複数の連絡手段を確保しておいてください。

継続的な改善と訓練

介護施設のBCPは、定期的な見直しと継続的な訓練が大切です。
年1回以上の計画再評価と、半年に1度の全職員参加型訓練が理想的です。

具体的な見直しポイントや効果的な訓練内容には、以下のようなものが挙げられます。

見直しのポイント
  • 最新のリスク評価
  • 利用者や職員のニーズ変化
  • 新技術や資源の導入状況
効果的な訓練内容
  • 避難訓練
  • 緊急連絡網テスト
  • 災害時の役割分担確認

職員研修には、災害対応や感染症対策、心理的サポート、応急処置などを含めましょう。
地域特有のリスクに対応した訓練も効果的です。

環境変化に応じた柔軟な更新を心がけ、常に最適な状態のBCPを維持しましょう。

介護施設のBCP策定・運用をサポートする「クロスゼロ」は、緊急時の情報共有や備蓄管理、安否確認など、災害対策に必要な機能を備えています。クラウド上で簡単に管理できるため、事業所全体の防災対策の効率化に役立てられるでしょう。

クロスゼロは、無料オンラインデモをご利用いただけます。実際の画面を見ながら、どのように活用できるかを体験してみてください。

介護BCPの実践に役立つ
防災アプリ活用のポイント

介護BCPに役立つアプリに、防災アプリがあります。
ここでは、BCPの実践に役立つ防災アプリを活用する以下のポイントを解説します。

それぞれ詳しく確認していきましょう。

クラウド型防災アプリで実現する介護BCP管理の効率化

クラウド型防災アプリは、介護施設のBCP(事業継続計画)を強化するためのツールです。
アプリを導入すると、災害時に情報を瞬時に共有できるため、スタッフ全員が同じ指示に従いやすくなります。
例えば、地震が発生した際に、避難場所や必要な物資のリストをすぐに確認できるでしょう。

アプリには以下のような機能が搭載されています。

  • リアルタイム情報共有
  • 訓練スケジュールの確認
  • 緊急マニュアル

クラウド型防災アプリは、介護施設のBCP管理をスムーズにし、スタッフが迅速に動くための支援をしてくれます。
導入によって、災害時の対応がより効果的になり、サービスの継続性が確保できるはずです。
今後、こうしたツールの活用はますます重要になっていくでしょう。

データ活用による介護BCPの改善

防災アプリを利用すると、さまざまなデータが蓄積されます。
蓄積されたデータは、BCPの質を向上させるために役立ちます。実際の運用状況を反映したデータをもとに、計画の見直しや改善点の特定が可能になるからです。

具体的なデータ活用には、以下のような方法が挙げられます。

  • 過去の災害時の対応履歴を分析し、効果的だった手順を明確化
  • 利用者やスタッフの意見を反映したプランの修正
  • 訓練の結果を基にした訓練内容の見直し

データを活用すれば、実践的かつ効果的なBCPが構築できるでしょう。
定期的な見直しと改善が進めば、緊急時の対応力も高まっていくはずです。
BCPを持続的に更新すれば、介護事業者は利用者やスタッフの安全を確保し、信頼されるサービスを確立していけるでしょう。

介護BCP強化に役立つ防災アプリの主な機能

介護BCPを強化するための防災アプリには、さまざまな機能があります。
リアルタイムの情報共有や災害時の迅速な対応をする手助けをしてくれます。防災アプリにより、スタッフ間での迅速な対応が実現できるでしょう。

防災アプリには、以下のような機能が搭載されています。

安否確認機能 迅速な安全確認が可能
備蓄品リスト 物資の在庫管理をサポート
避難誘導機能 安全な避難経路を案内
通知機能 災害情報をリアルタイムで受信

防災アプリの活用により、BCPの実効性を高め、介護事業者としての安心感を向上させてくれるでしょう。

ただし、防災アプリにはさまざまなものが存在するため、特定のアプリを選ぶ際は、必要な機能が搭載されているか確認する必要があります。

おすすめの防災アプリは、「クロスゼロ」です。
クロスゼロであれば、上記機能以外にも便利な機能がたくさん搭載されています。
クロスゼロの機能を詳しく知りたい方は、クロスゼロの公式サイトを確認してください。

介護事業所のBCPの作成はツールを活用するのがおすすめ

介護事業所のBCP対策における支援や自然災害への対応は、 備災支援サービスツール「クロスゼロ」を活用するのがおすすめです。
「クロスゼロ」は、株式会社建設システム(KENTEM)が運営するサービスで、会社の防災・備災支援サービスとして活用できます。

「クロスゼロ」では、下記の項目がひとつのツールで完結します。

  • BCP策定後の資料・ファイルの共有と管理
  • 気象情報・避難所情報など災害リスクの情報共有
  • 従業員の連絡先の共有
  • チャット機能
  • 必要物資の確保・在庫確認

「クロスゼロ」は、介護事業所のBCP対策における支援や自然災害への対応をサポートします。
BCPは策定後、従業員全体への共有と、いざという時にすぐ利用できるかが重要です。

「クロスゼロ」を利用して、もしもの時に備えましょう。

災害発生時は“最初の1分”で差がつきます。
総合防災アプリ「クロスゼロ」なら、気象庁情報に連動した通知と安否確認を自動で配信。初動の遅れを最小にします。避難指示や連絡を即座に届け、防災対策をもっと効率的に。 クロスゼロの機能や導入事例をまとめた資料を無料でご用意しました。

BCPや災害対応の改善に
役立つ情報満載

まとめ

今回は介護事業所のBCPについて、2021年に義務化された内容やBCPのメリット、作り方や義務違反によるリスクについて紹介しました。
介護事業所のBCPは、施設を利用する入居者や従業員、その家族を守るために重要な指針です。
効率的に運用するには、ツールを活用するのがおすすめです。
クロスゼロ」は介護事業所のBCP策定後の運用をサポートします。

2024年までの経過措置期間が終わるまであと少し。
できるだけ早くBCPを導入したい介護事業所のご検討中の方は、是非特設サイトをご確認ください。

クロスゼロに関する
無料相談(最大60分)

総合防災アプリ「クロスゼロ」にご興味をお持ちいただいた方は、お気軽にお申し込みください。
企業防災の仕組みづくりや防災DXに関するご相談はもちろん、ご希望がございましたら「クロスゼロ」の機能をご覧いただくこともできます。

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災害から大切な社員を守り、事業を継続する総合防災サービスです。各種機能やプランはこちらでご確認ください。 特設サイトを見る