防災DXとは?注目の理由と企業・自治体の防災DXを導入した事例を解説
2023/08/04
2025/07/04
近年、日本で発生する自然災害の頻度が高まってきている中、企業や自治体が防災対策をより効果的かつ効率的に実施するために注目されているのが「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
防災DXとは、デジタル技術を活用して防災対策を進める取り組みのことです。
本記事では、職員の人手不足や自然災害が頻発化するために、注目されている防災DXの導入を検討している方に向けて、防災DXの概要や事例から、企業が行うべき防災DXの進め方を解説します。
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防災DXとは
そもそも防災DXとはどういうものなのでしょうか。昨今では企業や官公庁でも進められているDXの意味や役割から確認していきましょう。
DXとは|意味と役割
DXは、デジタル技術を活用して製品・サービスや企業組織を変革することを指します。
社会全体を対象とする場合、DXの目的はIT技術の普及によって経済や人々の生活を向上させることです。様々な分野にデジタル技術が浸透することで、より便利で効率的な社会を実現することを目指しています。
企業を対象とする場合、DXの目的は全体の業務プロセスを効率化することを指します。DXを活用することで特定の部門だけで使われていたデジタルシステムや仕組みを他の部門にも広げることで、新たな知見や価値を創出することが可能です。
このようなDXは、現在企業や地方自治体の防災対策に活かされており、その取り組みが注目されています。
防災DXとは
防災DXはDisaster Prevention Digital Transformationの略です。予測しにくい災害に対してデジタル技術を使って防災を強化する取り組みを指します。
防災DXにより、二次災害の危険性や避難所情報の迅速な共有を可能にします。避難所で使う備蓄品や医療が必要な方への迅速な対応・災害後の公的機関への支援・援助の申し込みを効率的に行うことが可能です。
防災DXを行うことで得られるメリットは以下です。
- 近くの避難所情報がわかることで素早く避難ができる
- 災害の元となる天候や自然状況を理解できることで二次災害を回避できる
- 事前に安否確認アプリをインストールしていることで、遠隔地であっても家族の安全を確認することが可能に
- 被災後、パソコンやスマートフォンを通じて支援要請を行い公的サービスを受けられる
実際に、デジタル技術を提供する企業や地方自治体が協力した防災DX官民共創協議会では、防災DXを推進しており、防災アプリケーションに必要な項目を検討しています。
これにより、避難状況を住民に伝達したり、災害が起きた際に警報が鳴り、災害時に避難しやすくなります。
防災DXを導入する理由|2つ
なぜここまで防災DXが注目されるようになったのでしょうか。その理由は職員の人手不足や自然災害の頻発化が理由です。
職員の人手不足
現在、地域の役所や自治体の職員が減少しています。少子化が進み地域の防災活動の人手やお金が不足している中において、その中で全体の作業量に大きな変化はないため、一人あたりの作業負担が増えていることが分かります。
実際に、地方の公共団体で働く職員の数は、平成6年から平成27年までに約17%(54万人)減少しています。
引用元:地方公共団体の総職員数の推移(PDF)
その一方で、昨今の自治体では「災害派遣福祉チーム」体制の整備をするなど、災害時の福祉支援を行う職員たちの仕事の範囲は広がっています。さらに、紙を使った文化や手作業、対面での業務もまだ多く残っており、作業負担がかかっていると言えるでしょう。
その他にも、自治体の消防制度は各市町村が責任者であることが多く、消防や防災のシステムや設備が自治体ごとに整備されています。このようなことから、自治体・官公庁の職員は、災害情報の共有に時間がかかり、災害時に迅速で正確な判断をすることが難しい現状があります。
これを改善するためには、自治体同士や行政機関同士が情報を簡単に共有できるようにし、システムを共通化する防災DXが求められています。
自然災害の頻発化
近年、地球温暖化により水害や土砂災害などの自然災害が以前よりも頻繁に発生し、とくに集中豪雨が増加している傾向にあります。
引用元:国土交通白書 2020 自然災害の頻発・激甚化
実際、集中豪雨の影響もあり、土砂災害豪雨の件数は、1990年から2019年までに約450件増加しています。
そして地球温暖化が進むにつれ、日本の平均地上気温が上がっています。1900年から2020年の間に地面の温度が上昇しているため、今後も集中豪雨などの災害は増えるでしょう。災害に巻き込まれるリスクは誰にでも存在します。
引用元:国土交通白書 2020 自然災害の頻発・激甚化
そのため、被害を最小限に抑えるため個人や家族で事前に災害に備えることが重要です。日頃から防災に関する正しい知識を学び、意識を高めることが求められていると言えるでしょう。
災害対策の現場では、人手も時間も足りない中で正確に、素早く動くことが求められています。
そんな課題を補う手段として、防災DXの導入は現実的な選択肢です。
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防災DXと
従来の防災対策の違い
これまでの防災対策は、紙のマニュアルや電話連絡、現地での目視確認など、アナログを前提とした運用が中心でした。
実際に多くの場面で効果を発揮してきた一方で、災害の激甚化や人員不足が進む中では、対応の遅れや情報の行き違いが課題になるケースも増えています。
そうした背景から、テクノロジーを活用した防災DXが注目されるようになりました。
デジタル化によって、情報共有の即時化、被害状況の可視化、支援の迅速化など、さまざまな面での改善が期待できます。
ここでは、防災DXと従来型の防災対策の違いを「情報伝達」「被害把握」「支援申込」「対応スピード」の4つの観点から整理してみましょう。
情報の伝達手段
災害時に何より大切なのが「正確な情報を、いかに早く届けられるか」です。
この点で、防災DXは従来のアナログ型と大きな差を生みます。
従来は、紙の掲示物や電話、対面での伝達が主な手段でした。
情報が届くまでに時間がかかり、伝達ミスや連絡漏れが発生することも珍しくありません。
一方、防災DXでは、アプリやSNS、チャットボットなどのツールを使って、リアルタイムかつ一斉に情報を届けることが可能になります。
例えば、防災アプリを使えば、災害警報や避難指示を一括通知で配信し、職員や利用者に即座に伝えることができます。
具体的な違いをまとめると、以下のとおりです。
| 項目 | 従来の防災対策 | 防災DXの手法 |
|---|---|---|
| 情報伝達手段 |
|
|
| 伝達速度 | 担当者ごとに手動 | 一括配信で即時通知 |
| リスク | 伝達ミス・連絡漏れ | 配信履歴で伝達状況を可視化 |
「いつ・誰に伝えたか」を記録・確認できる仕組みがあるだけで、情報の行き違いや確認漏れが減り、より安心して行動に移せる環境が整います。
迅速かつ確実な情報共有は、防災DXがもたらす一番の進化とも言えるでしょう。
被害状況の把握方法
災害発生時、まず必要なのは「現場がどうなっているか」をいち早く把握しなければなりません。
しかし従来の防災では、職員が現地に出向いて目視確認を行うのが主流で、情報収集に時間がかかるうえ、安全性の確保も難しいのが課題でした。
そこで注目されているのが、防災DXによる被害状況のリアルタイム可視化です。
ドローンやセンサーを活用すれば、上空から被害範囲を撮影・送信したり、危険区域の数値変化を遠隔で把握したりできます。
例えば、河川の水位センサーで氾濫リスクを事前に察知したり、ドローンで孤立地域を俯瞰的に確認したりと、人が立ち入れない状況でも迅速な判断が可能になります。
| 項目 | 従来の防災対策 | 防災DXの手法 |
|---|---|---|
| 状況確認手段 | 職員による現地確認 |
|
| 情報取得のスピード | 現場到着後に判断 | 遠隔で即時に把握可能 |
| 安全性・精度 | 人的リスクあり | 高精度&非接触で安全に確認 |
現場に行かなくても状況を「見える化」できることは、災害対応の初動を早めるうえで大きな強みです。
被害の全体像を早期に把握できれば、その後の判断や支援もブレずに進められるようになります。
支援の申込
災害時、被災者を支援する制度や補助は数多く用意されています。
しかし実際には「どこに相談すればいいのか分からない」「書類を出しに行けない」といった理由から、支援を受けられないままのケースも少なくありません。
従来は、役所の窓口で紙の申請書を書いて提出する必要があり、避難生活中の方や高齢者にとっては心理的・物理的なハードルが高い方法でした。
一方、防災DXでは、支援申請のオンライン化や被災者台帳のデジタル管理が進められています。
例えばマイナンバーを使った本人確認や、コンビニでの証明書発行、スマホからの支援金申請などが可能になってきています。
| 項目 | 従来の防災対策 | 防災DXの手法 |
|---|---|---|
| 申請手段 | 職紙の書類・窓口で提出 |
|
| 被災者台帳管理 | 手作業での名簿作成 |
|
| 支援へのアクセス性 | 外出・手続きが必要 | 自宅・避難所からでも申請可能 |
防災DXの活用は、行政側の業務効率化だけでなく、被災者の安心感や生活再建のスピードにも直結する重要な取り組みです。
災害後の対応スピード
災害発生直後の対応が遅れると、被害が拡大したり、支援の届くスピードが落ちたりと、影響は大きくなります。特に初動が遅れることで「どこに・誰が・何を」必要としているかが見えず、現場の混乱が長引いてしまうこともあります。
従来の対策では、紙の安否確認・手作業での情報収集・電話での応対などが中心で、どうしても時間と手間がかかってしまっていました。
防災DXでは、情報の自動取得と一元管理によって、迅速かつ的確な対応が可能になります。
たとえば、安否確認アプリで一斉に状況を把握し、チャットや掲示板で災害状況や指示をリアルタイムに共有することで、関係者全体の行動スピードが格段に上がります。
| 項目 | 従来の防災対策 | 防災DXの手法 |
|---|---|---|
| 安否確認 | 紙・電話・対面で確認 | アプリ・自動通知・アンケート形式で即時 |
| 被害情報の共有 | 担当者ごとの手動伝達 | 掲示板・チャット・ダッシュボード連携 |
| 指示・対応のスピード | 状況に応じて都度判断 | 可視化された情報で即時対応が可能 |
災害が起きたその瞬間、誰がどこにいて、何を必要としているのか、その全体像をすばやく把握できる体制があれば、初動の遅れや連携ミスを大きく減らすことができます。
防災DXは、現場にいる人たちが迷わず動ける「判断しやすい状況」をつくる仕組みとも言えるでしょう。
混乱の中でも落ち着いて動ける環境は、それ自体が大きな安心につながり、結果的に被害の拡大も防ぎやすくなります。
防災DXの導入事例4選
防災に対する課題は把握しているものの、具体的にどうやってシステムと課題を結びつけるのか分からない方が多いのではないでしょうか。そのような方に向けて、導入事例を4つ説明します。
避難情報の共有|防災チャットボット
リアルタイムに正確な災害情報を把握することが難しいケースがあります。
そこで防災時にはチャットボットなどのコミュニケーションツールを使い、災害時の情報提供や共有を効率化できます。チャットボットは、住民の避難や災害対応機関の意思決定を支援する役割を果たしています。
具体的に以下のような機能があります。
・情報投稿機能
住民がLINE上で被害状況をテキストや位置情報、写真として投稿できます。これにより、災害対応機関は住民から得た詳細な情報を元に、現在の状態をリアルタイムで把握し、的確で迅速な対応を進めることが可能です。
・避難支援機能
自分の現在地や生活場所、災害時の避難予定の場所を登録します。これにより、災害が発生した際にはチャットボットからそのユーザーに合った避難情報が提供されます。
・危機情報の一元管理
異なるソースからの危機情報を地図上で一元的に管理できます。SNSなどの災害情報と、現場で職員が共有した信頼性の高い情報を統合表示することで、常に最新の危機情報をリアルタイムで確認できます。
住民と災害対応機関が情報を共有することで、迅速に正確な情報を収集でき、災害時の対応をより効果的に行うことを支援する重要なツールです。
支援申し込みのデジタル化|クラウド型被災者支援システム
支援制度があるにも関わらず申請方法が難しかったり、気軽に相談することが難しい場合、支援を断念するケースがあるのではないでしょうか。
支援の申し込みをデジタル化するツールを導入することで、被災者が気軽に支援を受けることができます。災害の影響で生活に困難が生じた人や家を失った人、親を失った子どもたちがいます。そこで誰でも気軽に支援を受けられるよう、支援の申し込みをデジタル化するツールができました。
たとえば内閣府で地域の被災者支援を助けるシステムを導入しています。このシステムは、住所などの情報を基に被災者の台帳を簡単に作成できます。
また、マイナンバーカードを使って、災害の際に必要な証明書や支援金の申請をオンラインで行えるため、自宅や遠くからでも申請できます。さらに、証明書を全国のコンビニでも受け取ることができます。
このように支援をオンライン化することで、被災者が必要な支援を利用しやすくなります。デジタル化によって、情報共有がスムーズになり、手続きも簡単になるので、被災者が早く助けを受けられるようになります。
ドローンで被災地の状態把握
ヘリコプターで被災地まで移動し、救助を行っていないでしょうか。
ドローンを使って、被災地の状態を確認し援助することができます。最近のドローンはセンサーやカメラが搭載されており、行政や企業を問わず様々な分野で活用されています。
従来はヘリコプターを使用して災害援助をしていましたが、ドローンに置き換えることで費用と時間を節約でき、リアルタイムの災害情報も得ることができます。
また、災害時の避難誘導や救助活動にも活躍しています。倒壊した建物の探索や孤立地域への物資運搬など、人が入りにくい場所や交通が寸断された場所でも役立ちます。
特に、赤外線センサーを搭載したドローンは、温度変化から人の存在を視覚化することができ、救助活動を正確に迅速に行えます。
さらに、災害後に発生しやすい便乗犯罪の防止にも役立ちます。被災地が無人になることで、不正侵入が増える可能性がありますが、ドローンの遠隔監視により安全を確保できます。
このようにドローンで被災地の状態を素早く正確に知ることができるため、ヘリコプターに乗って目視で確認する機会を減らすことができます。
積雪や水位計測の自動化
毎年、大雪や水害で交通機関が止まったり、転落事故が起きるのではないでしょうか。
積雪や水位の計測を自動で行い、そのデータを元に地域の課題解決に役立てることができます。
例えば、雪害対策のために雪の深さを測るセンサーや積雪状況を見るカメラを設置します。水害対策のために河川の水位を測るためのセンサーを設置します。
このセンサーを元に収集したデータは、IoTプラットフォームに集められて分析されます。そして分析した結果は、地図やグラフとして見やすく表示され、市内の現状がリアルタイムでわかるようになっています。
これにより、行政や住民、企業、学校などが、市内の状況を把握し、地域の課題解決や活性化に役立っています。
防災DXの課題とは?
今後も防災DXは積極的に導入されるでしょう。現時点の防災DXの課題は以下の通りです。
- システムの標準化が進んでいない
- 最先端技術の活用が遅れている
- システムの維持費が掛かる
- DX人材や知識、技術の確保が難しい
具体的には新しい情報伝達手段としてSNSやGISを活用して住民と自治体の間で情報共有を強化することが考えられます。
また、AIチャットボットを導入して人がいなくてもお客様対応ができるように体制を整え、人員不足解消に繋げます。
避難所でのQRコード読み取りなどIT技術を活用して避難状況を迅速に把握することで行方不明者や救助対象者を特定することも可能となります。
防災DXの推進には財政的な負担や人材の確保という課題がありますが、官民の連携と防災関連のデータの共有・相互利用を進めることが重要です。
防災DXを推進するには、技術だけでなく、現場での使いやすさや継続的な運用に対応できる仕組みづくりが欠かせません。
「クロスゼロ」では、安否確認や情報共有、防災マニュアルの管理など、日常と災害時の両方に対応した設計が特徴です。
もし、防災DXの導入や改善に向けて情報収集を進めているなら、機能一覧や活用例がわかるサービス紹介資料を一度チェックしてみてください。
防災DXの導入は
「クロスゼロ」
防災DXは、職員の不足や災害の増加など、ますます重要視される課題となっています。そのため、KENTEMは防災DXを促進するために新しい取り組みを行っています。
その取り組みの一つが、防災・備災支援サービス「クロスゼロ」です。
以下のような機能があります。
- ハザードマップ避難情報の共有
- 地震や津波、大雨、土砂災害などの情報のリアルタイム発信
- 発生後の情報伝達の一元化
災害が発生した後の被害状況や情報の伝達などに役立てることができます。緊急時には、連絡を「クロスゼロ」で一元化できるので、見落としを減らし、情報を共有することができます。
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