介護施設の非常災害時対応マニュアル|作成手順から職員の役割まで紹介
2026/02/18
介護施設において、非常災害時対応マニュアルの整備は利用者と職員の命を守るための最重要課題です。
高齢者や要介護状態の方が多く利用する介護施設では、災害発生時に迅速かつ適切な対応ができなければ、取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。
本記事では、介護施設における非常災害時対応マニュアルの必要性から具体的な作成手順、職員に求められる役割、平常時の備えまでを解説します。
BCP(事業継続計画)との関連性やよくある疑問にもお答えしますので、防災担当者や施設管理者の方はぜひ参考にしてください。
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役立つ情報満載
介護施設に
非常災害時対応マニュアルが
必要な理由
介護施設における非常災害時対応マニュアルは、利用者と職員の安全を守るための基盤となる重要な文書です。
一般的な事業所とは異なり、介護施設には災害対応において特有の課題が存在します。
ここでは、マニュアル整備が重要である理由を、利用者特性・マニュアルの機能・法的義務の3つの観点から解説します。
利用者の特性がもたらす避難リスク
介護施設の利用者の多くは高齢者や要介護状態にあり、自力での避難が困難なケースが大半を占めます。
身体機能の低下により歩行が遅くなったり、車いすやストレッチャーでの移動が必要であったりと、避難には通常以上の時間と人手がかかります。
また、認知症を患っている利用者は状況判断が難しく、避難指示を理解できない場合もあります。
さらに、人工呼吸器や酸素吸入器などの医療機器を使用している利用者がいる場合、機器の移動や電源確保といった追加の対応が求められます。
こうした利用者特有のリスクを事前に把握し、対応策をマニュアル化しておくことで、いざという時の混乱を最小限に抑えることができます。
マニュアルが果たす判断統一と教育機能
非常災害時対応マニュアルは、災害発生時の判断基準を統一し、職員全員が同じ行動を取れるようにするためのツールです。
災害時は時間との勝負であり、個々の職員が独自の判断で動いていては効率的な避難や救護が実現できません。
マニュアルがあれば「誰が」「何を」「どの順番で」行うべきかが明確になり、職員間の連携がスムーズになります。
特に経験の浅い職員や非常勤職員にとっては、行動指針となるマニュアルの存在が大きな安心材料となります。
さらに、マニュアルは平常時の教育・訓練資料としても活用できます。
定期的な防災訓練でマニュアルに沿った動きを繰り返すことで、実際の災害時にも迷いなく行動できる体制が構築されます。
BCPとの関連性と法的義務
介護施設においては、2024年4月から業務継続計画(BCP)の策定が完全義務化されました。
非常災害時対応マニュアルは、このBCPの中核を担う文書として位置づけられています。
BCPとは、災害や感染症などの緊急事態が発生した際にも、利用者へのサービス提供を継続または早期に復旧させるための計画です。
介護施設の場合、「利用者のケアを止めない」ことがBCPの最大の目的であり、そのためには災害時の初動対応を定めたマニュアルが重要です。
厚生労働省のガイドラインでも、自然災害発生時の対応マニュアルをBCPに含めることが推奨されています。
法的義務を満たすためだけでなく、利用者の命を預かる施設としての責任を果たすためにも、マニュアル整備は避けて通れない課題といえるでしょう。
非常災害時に介護職員が担う役割
災害発生時、介護職員には利用者の命を守るためのさまざまな役割が求められます。
避難誘導から応急処置、家族への連絡まで、多岐にわたる業務を限られた人員で遂行しなければなりません。
以下では、介護職員が担うべき具体的な役割を4つの観点から詳しく解説します。
利用者の避難誘導と安全確保
災害発生時の最優先事項は、利用者を安全な場所へ避難させることです。
介護職員は事前に把握している避難経路に沿って、利用者を迅速かつ安全に誘導する必要があります。
避難誘導においては、利用者一人ひとりのADL(日常生活動作)や認知機能に応じた対応が求められます。
自力歩行が可能な方には簡潔な声掛けで誘導し、車いすや寝たきりの方には複数の職員で搬送するなど、個別の対応が必要です。
また、避難完了後には取り残された利用者がいないかの確認を行います。
この際、職員自身の安全確保も忘れてはなりません。
二次災害を防ぐためにも、建物の損傷状況を確認しながら行動することが重要です。
応急処置と精神的ケアの実施
災害時には、負傷した利用者への応急処置と、不安を抱える利用者への精神的ケアが同時に求められます。
介護職員は医療従事者の指示に基づきながら、止血や骨折の固定といった基本的な応急処置を行う場合があります。
高齢者は痛みや不調を自ら訴えにくい傾向があるため、職員側から積極的に観察することが大切です。
顔色の変化、呼吸の乱れ、意識レベルの低下など、普段と異なる様子がないか注意深く確認しましょう。
精神的ケアについては、災害による恐怖や混乱で不安定になる利用者への声掛けや寄り添いが重要です。
「大丈夫ですよ」「一緒にいますからね」といった安心感を与える言葉が、利用者の心理的安定につながります。
医療機器の動作確認と投薬管理
医療機器を使用している利用者がいる場合、災害時には機器の動作確認と電源確保が生命に直結する課題となります。
人工呼吸器、酸素濃縮器、吸引器などは停電時に使用できなくなる恐れがあるため、非常用電源の確保が不可欠です。
平常時から利用者ごとに使用している医療機器のリストを作成し、災害時に優先して対応すべき方を把握しておくことが重要です。
また、投薬管理についても、必要な薬剤の在庫確認と持ち出しリストの整備が求められます。
災害時に薬剤が不足すると、持病の悪化や命に関わる事態を招きかねません。
常用薬のリストと予備の薬剤を避難用バッグに準備しておくことで、緊急時にも適切な投薬管理が可能になります。
利用者家族への安否連絡と情報共有
災害発生後は、利用者の安否情報を速やかに家族へ伝えることが施設の重要な責務です。
家族は災害時に施設の状況を把握できず、大きな不安を抱えています。
迅速な連絡が信頼関係の維持にもつながります。
連絡手段としては、電話だけでなくメールやSNS、FAXなど複数の方法を準備しておくことが推奨されます。
大規模災害時は電話回線が混線し、つながりにくくなることが想定されるためです。
また、家族が施設へ迎えに来る場合の対応フローも事前に整備しておきましょう。
引き渡しの際の本人確認方法や、引き渡し完了の記録手順を明確にしておくことで、混乱を防ぐことができます。
災害時の安否確認や情報共有を効率化するためには、専用のシステム導入が有効です。
職員と利用者家族の双方に迅速かつ正確な情報を届けられる仕組みを構築しておくことで、災害時の対応力が大きく向上します。
介護施設が平常時に実施すべき
非常災害時対策
災害時の対応力は、平常時の備えによって大きく左右されます。
介護施設では、利用者の特性を踏まえた事前準備を日頃から徹底しておくことが不可欠です。
ここでは、平常時に実施すべき非常災害時対策を4つの項目に分けて解説します。
避難経路と避難場所の確認
平常時から複数の避難経路を設定し、全職員が把握しておくことが避難成功の鍵となります。
施設周辺のハザードマップを活用し、地震・津波・洪水・土砂災害など、地域特有のリスクに応じた避難場所を確認しましょう。
メインの避難経路が使用できない場合に備え、代替ルートも必ず用意しておきます。
エレベーターが停止した場合の階段移動、車いす利用者の搬送ルートなど、具体的なシミュレーションを行うことが重要です。
避難場所については、施設から徒歩でどのくらいの時間がかかるか、車いすやストレッチャーでのアクセスが可能かなども確認しておきましょう。
定期的に実際のルートを歩いてみることで、想定外の障害物や問題点を発見できます。
施設の耐震性・防火性の点検
施設の建物自体が安全でなければ、利用者と職員の命を守ることはできません。
特に1981年以前に建築された建物は旧耐震基準で設計されているため、耐震診断と必要に応じた補強工事を検討すべきです。
室内においては、家具や大型設備の転倒防止措置が重要です。
棚やロッカー、テレビなどが地震で倒れると、利用者が負傷するだけでなく避難経路を塞いでしまう恐れがあります。
防火対策としては、消火器や火災報知器の設置場所と動作確認、避難経路上に可燃物を置かないルールの徹底が基本です。
厨房やボイラー室など火元となりやすい場所の管理も定期的にチェックしましょう。
防災訓練の定期実施と改善
消防法により、介護施設では年2回以上の避難訓練が義務付けられています。
しかし、形式的な訓練を繰り返すだけでは実際の災害時に役立ちません。
訓練内容を実践的なものにする工夫が必要です。
訓練では、夜間を想定した少人数体制での避難シミュレーションや、車いす・ストレッチャー利用者の搬送訓練など、実際に起こりうる状況を再現することが重要です。
また、訓練後には必ず振り返りを行い、課題点を洗い出してマニュアルに反映させましょう。
机上訓練も有効です。
「地震発生から5分後、どの職員が何をしているか」といったシナリオをもとにディスカッションを行うことで、実際の行動に対する理解が深まります。
備蓄品と緊急連絡先の管理
災害時に外部からの支援が届くまでの間、施設独自で利用者と職員を守るために最低3日分の備蓄が必要です。
食料・保存水・医薬品に加え、介護施設特有のアイテムとして、おむつ、とろみ剤、流動食なども忘れずに備蓄しましょう。
備蓄品リストの例として、以下の項目が挙げられます。
- 保存水(1人1日3リットル目安)
- 保存食(アルファ米、缶詰、レトルト食品など)
- 医薬品・常備薬
- とろみ剤・流動食・経管栄養剤
- おむつ・尿取りパッド
- 簡易トイレ・衛生用品
- 毛布・保温シート
- 懐中電灯・電池・携帯ラジオ
- 非常用電源・延長コード
備蓄品は定期的に消費期限・賞味期限と数量を確認し、ローリングストック方式で入れ替えることが推奨されます。
緊急連絡先についても、利用者家族・かかりつけ医・行政機関・ライフライン事業者などを一覧にまとめておきます。
複数の連絡手段を確保し、通信障害時でも情報伝達ができる体制を整えておくことが重要です。
非常災害時対応マニュアルの
作成手順
非常災害時対応マニュアルは、施設の実情に合わせてカスタマイズすることで初めて実効性を持ちます。
汎用的なひな形をそのまま使うのではなく、自施設の利用者特性や立地条件を踏まえた内容にすることが重要です。
以下では、マニュアル作成の具体的な手順を4つのステップで解説します。
Step1:役割分担と指揮命令系統の決定
マニュアル作成の第一歩は、災害時の役割分担と指揮命令系統を明確にすることです。
「誰が指揮を執るのか」「不在時は誰が代行するのか」といった点を事前に決めておかなければ、災害時に混乱が生じます。
役割分担では、施設長・管理者・介護職員・看護職員など職種ごとの担当業務を明記します。
また、シフト勤務の施設では、日中・夜間・休日など勤務体制ごとに異なる役割表を作成しておくと実用的です。
非番の職員が災害発生を知った際の参集ルールや、応援体制についても定めておきましょう。
連絡が取れない場合の行動指針も併せて記載しておくことで、より実効性の高いマニュアルになります。
Step2:情報収集方法と共有ルールの策定
災害時に適切な判断を行うためには、正確な情報を迅速に収集・共有する仕組みが不可欠です。
収集すべき情報としては、施設の被害状況、利用者の安否、周辺地域の被災状況、行政からの避難情報などが挙げられます。
情報収集の担当者を決め、どのような手段で情報を得るかを明確にしておきます。
テレビ・ラジオ・防災無線・インターネット・行政からのメール配信など、複数の情報源を活用できる体制を整えましょう。
収集した情報は、施設内でどのように共有するかもルール化しておく必要があります。
掲示板への掲示、朝礼・夕礼での報告、グループチャットでの発信など、職員全員に情報が行き渡る方法を複数用意しておくと安心です。
Step3:緊急連絡先リストの作成
緊急連絡先リストは、災害時の迅速な対応と家族への安否報告に欠かせないツールです。
利用者の家族・親戚の連絡先、かかりつけ医・協力医療機関、行政の担当部署、ライフライン事業者など、必要な連絡先を一元管理します。
リストには、電話番号だけでなくメールアドレスやFAX番号など複数の連絡手段を記載しておきましょう。
大規模災害時は電話回線が混線しやすいため、代替手段を確保しておくことが重要です。
職員の緊急連絡先も忘れずにリスト化しておきます。
緊急連絡や安否確認に使用するため、定期的に情報を更新し、常に最新の状態を維持することが大切です。
Step4:災害種別ごとの初期対応と避難経路の設定
地震・津波・洪水・土砂災害など、災害の種類によって取るべき初期対応は異なります。
マニュアルでは災害種別ごとに初動行動を明文化し、職員が迷わず行動できるようにします。
たとえば地震の場合は、まず身の安全を確保し、揺れが収まってから火元の確認と避難誘導を行います。
津波警報が発令された場合は、速やかに高台や上層階への垂直避難が必要です。
避難経路についても、災害種別に応じて複数のルートを設定しておきます。
浸水想定区域を通るルートは洪水時には使用できないなど、状況に応じた判断ができるよう、マップと併せて整備しましょう。
初期対応と避難経路は、定期的に訓練で繰り返し確認することで職員に定着させることができます。
訓練後に課題が見つかった場合は、速やかにマニュアルを更新し、改善を続けることが重要です。
介護施設の
非常災害時対応マニュアルに
関するよくある質問
非常災害時対応マニュアルの作成や運用において、担当者からよく寄せられる質問をまとめました。
実務に役立つ回答を参考に、自施設のマニュアル整備に活かしてください。
高齢者が災害時に困ることは何ですか?
高齢者は移動の遅さ、判断力の低下、支援物資の確保困難など、災害時に複数の困難に直面します。
避難所への移動に時間がかかるだけでなく、混雑した避難所で必要な物資を受け取れないケースも少なくありません。
また、災害によるストレスや不安から体調を崩しやすい傾向があります。
頻尿、不眠、食欲低下、血圧上昇など、精神的な影響が身体症状として現れることも多いため、継続的な観察とケアが必要です。
介護施設での避難順序はどう決めるべきですか?
介護施設での避難は、原則として「早く避難できる人から」順に進めることが推奨されています。
限られた職員数で効率的に避難を完了させるためには、時間のかかる方を最後に回す判断が必要になる場合があります。
具体的な順序の目安は以下のとおりです。
- 自力歩行が可能な利用者
- 認知症があるが歩行可能な利用者
- 車いす利用者
- 寝たきりの利用者
- 職員(全利用者の避難確認後)
ただし、火災の発生場所や建物の損傷状況によっては、この順序を変更する判断も求められます。
状況に応じた柔軟な対応ができるよう、訓練を通じて判断力を養っておくことが重要です。
マニュアルはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
非常災害時対応マニュアルは、最低でも年1回は見直しを行うことが推奨されます。
防災訓練の実施後や、実際に災害が発生した後には、その都度内容を点検し必要な修正を加えましょう。
見直しのポイントとしては、以下の項目が挙げられます。
- 緊急連絡先の変更有無
- 職員の異動・退職による役割分担の変更
- 利用者の入退所に伴う対象者リストの更新
- 備蓄品の数量・消費期限・賞味期限の確認
- 地域のハザードマップや避難場所の変更
- 訓練で発見された課題への対応状況
マニュアルは作成して終わりではなく、継続的に改善を重ねることで実効性が高まります。
見直しの担当者と時期を明確にし、組織として更新作業を習慣化することが大切です。
まとめ
介護施設における非常災害時対応マニュアルは、利用者と職員の命を守るための重要な基盤です。
自力避難が困難な利用者が多い介護施設では、事前の備えと明確な行動指針が災害時の対応力を大きく左右します。
マニュアル作成においては、役割分担の明確化、情報収集・共有ルールの策定、災害種別ごとの初期対応と避難経路の設定が基本となります。
作成後も定期的な訓練と見直しを繰り返し、実効性を高め続けることが重要です。
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