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BCPマニュアルはなぜ必要?基本構成や作成手順まで詳しく解説

BCPマニュアルはなぜ必要?基本構成や作成手順まで詳しく解説

2023/04/23

防災

BCPマニュアルを作成したものの、実際に機能するのか不安を感じていませんか?
いざ緊急時になったとき「何から対応すべきかわからない」「想定外の事態に対応できない」 という状態では、事業の継続が難しくなる可能性があります。

BCPマニュアルは作るだけではなく、実効性のあるものにする必要があります。そのためには、適切なリスクの洗い出しや優先業務の特定、緊急時の対応フローの明確化が欠かせません。

本記事では、BCPマニュアルの基本構成や作成手順を詳しく解説します。
これからBCPマニュアルの作成をする方や作成したもののこれでいいのか不安な方は、ぜひ参考にしてください。

BCPマニュアルはなぜ必要なのか?

企業は、自然災害やパンデミック、サイバー攻撃など、さまざまなリスクにさらされています。特に中小企業の場合、一度の危機が事業存続に大きな影響を与えることも少なくありません。

こうした緊急事態に対応し、損害を最小限に抑えながら事業を継続・復旧させるためには、BCPマニュアルの作成が不可欠です。
BCPマニュアルがあれば、限られた資源の中で最適な判断ができるようになり、混乱を防ぐことができます。

BCPマニュアルを導入すれば、次のようなメリットが得られます。

緊急時も事業を継続できる BCPマニュアルに沿った対応で業務停止を防げる
顧客からの信頼を失わない サービス・製品の供給を維持し、信用を確保できる
従業員の雇用を継続できる 企業の安定経営につながり、雇用を守れる
地域の経済を支えられる 取引先や関連企業にも好影響を与えられる
商品供給が途絶えない 供給停止による市場混乱を防げる

反対に、BCPマニュアルを用意していないと、次のようなリスクが高まります。

  • 業務が長期間停止し、復旧に時間がかかる
  • 従業員が適切な判断をできず、混乱が生じる
  • 顧客や取引先の信頼を失い、売上が低下する
  • 事業の継続が困難になり、最悪の場合は倒産する

上記のように、BCPマニュアルは企業の存続に関わる要素です。事前に策定しておくことで、万が一の事態でも迅速に対応し、リスクを最小限に抑えることができます。

そもそもBCPとは?

企業は、自然災害やサイバー攻撃、感染症の流行など、さまざまなリスクに直面しています。業務が停止すると、売上の減少や顧客離れ、取引先との関係悪化といった問題が発生する可能性があります。そこで重要なのが「BCP」です。

BCP(Business Continuity Plan・事業継続計画) とは、企業が緊急事態に直面した際、損害を最小限に抑えつつ事業を継続・早期復旧させるための計画を指します。

限られたリソースの中で、どのようにして重要な業務を継続するかを事前に定めることで、混乱を最小限に抑えることができます。

近年、地震や台風などの自然災害が増加しており、企業がこうしたリスクに備える必要性はますます高まっています。BCPは、単なる防災対策ではなく企業の成長と信頼維持に欠かせない取り組みの一つです。

事業継続のためのリスク対策

企業が安定して事業を続けるためには、さまざまなリスクに備えた対策が不可欠です。災害やシステム障害が発生してから対応するのではなく、事前に対策を講じることで被害を最小限に抑えスムーズに復旧できる体制を整える必要があります。

事業継続のための主なリスク対策には、以下のような取り組みがあります。

  • リスクの特定と分析
  • 緊急時の対応計画の策定
  • 代替手段の準備
  • 従業員への教育と訓練
  • データのバックアップとセキュリティ対策

リスク対策を事前に整えておくことで、緊急時にも冷静に対応し業務を迅速に復旧できます。BCPマニュアルを作成し、従業員全員が適切に活用できる状態にしておきましょう。

BCPマニュアルと防災マニュアルの違い

企業のリスク対策には「防災マニュアル」と「BCPマニュアル」の2種類があります。どちらも非常時の対応を定めたものですが、目的や対応範囲に違いがあるため適切に使い分ける必要があります。

防災マニュアルは、自然災害による被害を最小限に抑えるための対策を目的とし、主に自社の経営資産を守るための取り組みです。

一方BCPマニュアルは、自然災害だけではなく情報セキュリティ事故や感染症の流行など、幅広いリスクに対応し事業の継続を目指すものです。

BCPマニュアルと防災マニュアルの違いを表で確認してみましょう。

防災マニュアル BCPマニュアル
目的 地震・台風・火災・洪水などの自然災害 自然災害+サイバー攻撃・感染症・停電などの非常事態
対象リスク 地震・台風・火災・洪水などの自然災害 自然災害+サイバー攻撃・感染症・停電などの非常事態
対応範囲 自社の建物・設備・従業員の安全確保 事業の継続、取引先・顧客・サプライチェーンの維持
主な内容 避難経路・初期対応・消防計画など 業務継続計画・緊急時の役割分担・復旧手順など
発動のタイミング 災害発生時 災害やシステム障害が発生し業務が停止する可能性があるとき
スクロールできます
スクロールできます

上記のように、防災マニュアルは「企業の資産を守ること」を目的とし、BCPマニュアルは「事業の継続」を目的としている点が大きな違いです。

防災マニュアルのみでは、緊急時の業務継続に必要な対応が不十分になる可能性があるため、防災マニュアルとBCPマニュアルの両方を策定し適切に運用する必要があります。

BCPマニュアルの主な種類

企業のリスク対策を強化するために、以下の3種類のBCPマニュアルを整備しておくと良いでしょう。

自然災害マニュアル
(地震・台風・津波・洪水・噴火など)
  • 緊急連絡体制の確立(連絡先・通報ルールの明記)
  • 従業員の安否確認方法(連絡手段・確認フロー)
  • 避難方法と経路の指定(防災訓練の実施)
  • 救命装置の使用方法(AED・非常用備品の管理)
  • 被害状況の確認手順と担当者の明確化
  • 操業停止時の具体的な対応策(事業継続の代替手段)
外的要因マニュアル
(サイバー攻撃・通信障害・感染症・停電・取引先の経営悪化など)
  • 停電・通信障害時の対応(非常電源・代替通信手段の準備)
  • データバックアップと復旧手順(クラウド活用・リカバリー体制)
  • サイバー攻撃発生時の対応策(情報漏洩防止・セキュリティ強化)
  • 感染症流行時の勤務体制(リモートワーク・出勤制限のルール)
  • 取引停止時の代替企業選定(サプライチェーンの維持)
内的要因マニュアル
(設備故障・人的ミス・オフィス移転・システム刷新など)
  • 設備・機械の故障時の対応(修理手配・予備機材の準備)
  • 人的ミス発生時の対策(再発防止策・内部研修)
  • システム刷新による業務停止への対応(影響範囲の周知・事前準備)
  • 社外向け謝罪文の作成と発信手順(クライシス対応)
  • 取引先への連絡リストと緊急時の対応フロー
  • 記者会見の開催手順(企業の信頼維持対策)

3種類のマニュアルを事前に整備し、従業員が緊急時に適切な対応をとれるよう準備しておけば、事業の混乱を防ぎスムーズな復旧につながります。

BCPマニュアルに記載すべき内容は?

BCPマニュアルは、緊急時に企業が適切な判断を行い、事業を継続・早期復旧できるようにするための指針です。事前に具体的な対応を定めておくことで、従業員が迷うことなく行動でき被害の拡大を防ぐことができます。

しかし、BCPマニュアルの内容が不十分だと実際の緊急時に活用できない可能性があります。どのような状況にも対応できるよう、基本的な構成を押さえた上で作成しましょう。

ここでは、BCPマニュアルに記載すべき主な内容を詳しく解説します。

BCPマニュアルの基本構成

BCPマニュアルは、緊急時に迅速な対応を行い事業の継続や早期復旧を実現するための指針です。
内容が整理されていないと、従業員が混乱し適切な判断ができなくなる可能性があります。そのため、誰でも理解しやすい構成にしなければなりません。

BCPマニュアルの主な構成は、以下のとおりです。

基本方針
  • 企業がBCPを策定する目的や考え方
  • 事業継続の優先順位
リスク分析と影響評価
  • 想定されるリスクの特定(自然災害・サイバー攻撃・感染症など)
  • 各リスクが事業に与える影響の評価
緊急時の対応フロー
  • 発生直後の初動対応(通報・連絡体制の確立)
  • 被害状況の確認手順
  • 事業継続に必要なリソースの確保
役割分担と指揮命令系統
  • 緊急時の指揮命令系統の明確化
  • 各部署・担当者の役割と責任範囲
事業復旧計画
  • 業務再開の目安と段階的な復旧手順
  • 代替業務拠点やシステムの活用方法
定期的な訓練・更新ルール
  • BCPの有効性を確認するための訓練計画
  • 定期的な見直しと改善のルール

上記のようにBCPマニュアルは、緊急時の対応を標準化し従業員が混乱なく行動できるようにするためのツールです。
企業の実態に即した内容を整理し必要な情報を明確にすれば、意思決定のスピードを上げ損害を最小限に抑えることが可能です。
事前にしっかりと準備し、必要に応じて定期的に見直すことで、実効性のあるマニュアルに仕上げることが大切です。

中小企業庁などのテンプレを参考にする

BCPマニュアルを一から作成するのは手間がかかるため、中小企業庁が提供しているテンプレートなどを活用すると効率的に作成できます。テンプレートを活用すれば、必要な項目が網羅されており抜け漏れなくマニュアルを作成できるため、特に初めてBCPを策定する企業にとっておすすめです。

中小企業庁の公式サイトでは、業種や企業規模に応じたBCPの作成ガイドやテンプレートが無料でダウンロード可能です。具体的な記入例も掲載されているため、自社の状況に合わせて調整しながら活用できます。

参考:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針

業界団体や自治体などでも、BCP策定を支援する資料や研修を提供していることがあるため、自社の業界に特化した情報も併せて活用するとより実効性の高いマニュアルを作成できます。
テンプレートを活用すれば、時間をかけずに要点を押さえたBCPマニュアルを作成できるため、まずは中小企業庁の資料を参考にしながら自社に適したマニュアルを作成してみましょう。

BCPマニュアルの作成手順

BCPマニュアルは、緊急時に企業が迅速かつ適切な判断を行い、事業を継続・復旧するための指針です。しかし、マニュアルの内容が不十分だったり現場の実態と合っていなかったりすると、実際の危機発生時にうまく機能しない可能性があります。

そのため、BCPマニュアルは体系的な手順に沿って作成する必要があります。リスクの洗い出しから対応フローの策定、運用の見直しまで、一つひとつのステップを丁寧に進めることで、実効性の高いマニュアルを作成できるでしょう。

ここでは、BCPマニュアルを作成する際の作成手順を解説します。

リスクの洗い出し

企業を取り巻くリスクは多岐にわたり、どのような事態が発生する可能性があるのかを把握する必要があります。想定されるリスクには、以下のようなものがあります。

  • 自然災害(地震・台風・大雨・洪水・火災など)
  • システム障害(サーバーダウン・データ消失・ハッキングなど)
  • 人的リスク(経営者・従業員の不測の事態・人的ミスなど)
  • サプライチェーンリスク(取引先の倒産・物流の停止など)
  • 社会的リスク(感染症の流行・法律の改正・風評被害など)

リスクを正確に把握しそれぞれの影響範囲を分析すれば、より実効性の高いBCPマニュアルを策定できます。

優先業務の特定

緊急時にはすべての業務を継続するのが難しくなるため、最優先で維持すべき業務を明確にしなければなりません。優先業務を選定する際は、以下のポイントを基準に検討します。

  • 売上や利益に直結する業務(受発注処理・製造・販売など)
  • 顧客対応に必要な業務(カスタマーサポート・アフターサービスなど)
  • 法的・社会的責任を果たす業務(税務処理・契約管理など)
  • サプライチェーン維持に必要な業務(仕入れ・物流管理など)

優先業務を事前に決めておくことで、緊急時にも適切なリソース配分ができ、混乱を防ぐことができるでしょう。

緊急時の対応フロー

企業のBCPマニュアルでは、緊急時の行動手順を統一し、誰が・いつ・何をすべきかを明確にしておくことが不可欠です。一般的な対応フローは以下のとおりです。

  • 異常の検知(災害・システム障害・事故の発生)
  • 初動対応(被害状況の確認・安全確保・緊急連絡)
  • 緊急対策本部の設置(意思決定者の集約・指示の一元化)
  • 事業継続のための対応(代替手段の検討・復旧計画の実施)
  • 事後対応(被害の報告・関係者への連絡・マニュアルの見直し)

対応フローは、従業員全員が理解し、すぐに実行できる形でまとめておくことが大切です。図やフローチャートを活用すると、より分かりやすくなります。

役割分担

緊急時の混乱を防ぐためには、誰がどの業務を担当するのかを事前に決めておくことが大切です。以下のように、役割ごとに責任範囲を整理しておくと、スムーズな対応が可能になるでしょう。

意思決定者(経営層・管理職) 事業継続に関する判断、復旧計画の指示
現場責任者 従業員の安全確保、対応状況の報告
総務・人事担当 安否確認、従業員サポート、社内外の連絡調整
IT部門 システム復旧、データ保護対策の実施
広報担当 顧客・取引先・メディア対応、情報発信

役割を明確にすれば、誰が何をすべきかが明確になり、指示の遅れや対応ミスを防ぐことができます。

緊急時に適切な判断を行うためには、日頃から訓練を実施し実際の対応を想定したシミュレーションを行うことも大切です。

事業復旧計画の策定

緊急時に明確な復旧手順がないと、どの業務を優先すべきか判断できず、復旧作業が混乱してしまうことがあります。

被害の影響が長期化すると、売上の低下や取引先との関係悪化を招き、事業の継続が難しくなる可能性もあります。

事業復旧計画では、どの業務をどの順番で再開するかを明確にし、実行可能な対策を準備しておくことが大切です。具体的には、以下のポイントを押さえて策定しましょう。

復旧までの目標期間を設定する
  • 事業が完全に復旧するまでの期間を決定し、段階的な復旧計画を策定する
  • 例:「発生後3日以内に○○業務を再開」「1週間以内に通常稼働」
優先業務の復旧手順を明確にする
  • どの業務を最優先で復旧するかを決定する(受発注、製造、カスタマーサポートなど)
  • 必要なリソース(人材・設備・システム)を確保する
代替手段を用意する
  • 主要業務が停止した際のバックアップ体制を整備する(リモートワーク、代替拠点の確保)
  • 主要サプライヤーに依存しない調達ルートを確保する
データの復旧とシステムの復元手順を策定する
  • 重要データのバックアップ手順を定める(クラウド活用、オフサイトバックアップ)
  • システム障害発生時の対応フローを設定する
関係者との情報共有を強化する
  • 復旧の進捗状況を社内外の関係者に適切に伝える
  • 顧客や取引先への影響を最小限に抑えるためのコミュニケーション体制を構築する

事業復旧計画を策定すれば、企業は迅速な復旧対応が可能になり経営の安定を保つことができます。定期的に見直しや訓練を実施し、実効性を高めることも忘れないようにしましょう。

BCP運用を効率化したいなら
クロスゼロの導入がおすすめ

BCPを策定した後、実際の運用や定期的な見直しや効率化をする必要があります。しかし、手作業での管理は負担が大きく、情報の更新や従業員への共有が遅れると緊急時に適切な対応が難しくなる可能性があります。

そこで、BCP運用を効率化するツールとして「クロスゼロ」の導入が有効です。

クロスゼロは、企業のBCP管理をサポートする総合防災アプリです。リスク情報の一元管理や緊急時の対応フローの可視化、従業員との迅速な情報共有が可能になります。

クロスゼロを導入すれば、BCPの運用がスムーズになり、以下のような緊急時の対応力が向上します。

  • BCPマニュアルの一元管理
  • リスク情報のリアルタイム共有
  • 緊急時の対応フローを自動化
  • 定期的な訓練・シミュレーションの管理

BCPの運用は、策定するだけでは意味がなく、日々の更新や従業員への周知を徹底し実効性を高めることが大切です。クロスゼロを活用すれば、負担を減らしながら効果的にBCPを運用できます。BCPマニュアルを作成したい方は、まずはサイトを確認し無料体験などを活用してみることをおすすめします。

クロスゼロの詳細はクロスゼロの公式サイトを確認してください。

まとめ

BCPマニュアルは、企業が緊急時に迅速な対応を行い、事業の継続や早期復旧を実現するために欠かせないものです。自然災害やサイバー攻撃、感染症の流行など、企業を取り巻くリスクは多岐にわたります。
そのため、想定されるリスクを洗い出し、優先業務を明確にしたうえで、実効性のあるBCPマニュアルを作成・運用する必要があります。

BCPマニュアルの作成には、基本構成を押さえながら業界や企業規模に応じたカスタマイズが必要です。中小企業庁のテンプレートを活用すれば、効率的に作成できるでしょう。

BCP運用を効率化するためには、総合防災アプリ「クロスゼロ」などのツールを活用するのも有効です。情報の一元管理や対応フローの自動化により、緊急時の対応力を高められるでしょう。

BCPマニュアルは、企業の信頼や安定した経営を支える重要な要素です。これを機に、リスクに備えた対策を見直し、実践できるBCPの整備を進めていきましょう。

クロスゼロは、30日間無料で利用体験できます。BCP運用の効率化をお考えの方は、ぜひお試しください。

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