BCP対策にAWSは有効?|効果と実施方法を徹底解説

BCP対策にAWSは有効?|効果と実施方法を徹底解説

2025/10/06

防災

近年、日本では地震や台風、豪雨といった自然災害が頻発しており、企業におけるBCP(事業継続計画)対策の重要性がより一層高まっています。
特に、システム基盤の災害対策は事業継続性に直結する重要な要素となっており、多くの企業がクラウドサービスの活用を検討しています。
その中でも、Amazon Web Services(AWS)は複数のリージョンでサービスを提供し、高い可用性と拡張性を持つクラウドプラットフォームとして注目されています。
本記事では、BCP対策におけるAWSの効果と実施方法について、メリット・デメリットを含めて詳しく解説していきます。

BCP対策を検討する企業にとって、システム基盤の災害対策と併せて、社内の安否確認や緊急連絡体制の整備も重要な要素となります。
総合防災アプリ「クロスゼロ」では、スマートフォンやPCを活用した迅速な安否確認機能や、BCP資料の社内共有機能を提供しています。

日本企業におけるBCP対策の重要性

近年、企業を取り巻く環境は大きく変化し、自然災害やシステム障害、感染症拡大など様々なリスクが事業継続性を脅かしています。
このような状況下において、BCP(事業継続計画)対策は企業の生存戦略として不可欠な要素となっています。
まずは、BCP対策の基本的な概念と重要性について詳しく解説していきます。

BCP(事業継続計画)とは

BCP(Business Continuity Plan)とは、企業が自然災害、大規模なシステム障害、感染症拡大といった緊急事態に遭遇した際に、事業への影響を最小限に抑え、中核となる事業を継続または早期復旧させるため、平常時から準備しておく計画のことを指します。
BCPは単なる災害対策マニュアルとは異なり、事業の中核となる業務を特定し、それらを継続するためのリソース配分や代替手段を事前に準備することが重要です。

事業継続計画の策定においては、ビジネスインパクト分析(BIA)を通じて重要業務を特定し、各業務の目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)と目標復旧地点(RPO:Recovery Point Objective)を設定します。
これにより、限られたリソースの中で最も重要な業務から優先的に復旧させる戦略を立てることができます。

BCP対策が重要視される理由

日本は地震大国として知られており、東日本大震災や熊本地震、阪神・淡路大震災などの大規模災害が企業活動に甚大な影響を与えてきました。
内閣府の調査によると、事業復旧が遅れるほど企業の存続確率が急激に低下し、1ヶ月以上復旧が遅れた場合、廃業に追い込まれる企業が大幅に増加するという結果が示されています。

また、近年ではサイバー攻撃による情報システム障害や、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックなど、従来の災害対策だけでは対応できないリスクも増加しています。
これらのリスクに対して適切なBCP対策を講じることで、資産損失の抑制、顧客・取引先からの信頼獲得、そして企業価値の向上を図ることができます。

BCP策定における課題

BCP対策の重要性は理解しているものの、多くの企業が策定に踏み切れない理由として、コスト面と人的リソース面での課題が挙げられます。
従来のオンプレミス環境でのBCP対策では、災害復旧用のサーバー設備や遠隔地でのデータセンター運用など、多額の初期投資と継続的な運用コストが必要でした。

さらに、BCP策定には専門的な知識と経験が必要であり、リスク分析から復旧手順の策定、定期的な訓練の実施まで、継続的な取り組みが求められます。
特に中小企業では、BCP専任の担当者を配置することが困難な場合が多く、既存業務と並行してBCP対策を進める必要があるため、なかなか着手できないという現実があります。

BCP対策にAWSが有効な理由

Amazon Web Services(AWS)は、世界最大規模のクラウドサービスプラットフォームとして、企業のBCP対策に革新的なソリューションを提供しています。
従来のオンプレミス環境では実現困難だった高度な災害対策が、AWSの活用により比較的低コストで実現可能となります。
ここでは、AWSがBCP対策において特に有効とされる理由について詳しく解説していきます。

複数リージョンによる地理的分散

AWSの最大の特徴は、世界中に配置された複数のリージョンでサービスを提供していることです。
日本国内では東京リージョンと大阪リージョンが利用可能であり、東京で大規模災害が発生した場合でも、大阪リージョンからシステムを継続運用することが可能です。
このような地理的分散により、従来の単一データセンターでは対応困難だった広域災害に対しても有効な対策を講じることができます。

各リージョンは物理的に数百キロメートル以上離れた場所に配置されており、同時に被災するリスクを最小限に抑えています。
また、リージョン間の接続は高速で安定したネットワークで結ばれているため、データの同期やシステムの切り替えを迅速に実行できます。

自動バックアップとデータ保護機能

AWSでは、Amazon S3やAmazon EBSなど、データの自動バックアップ機能が標準で提供されています。
これらのサービスを活用することで、人的ミスを排除した確実なバックアップの実行と、障害時の迅速なデータ復旧が可能となります。
特に、クロスリージョンレプリケーション機能を使用することで、データを自動的に別のリージョンにコピーし、災害時のデータ損失リスクを大幅に軽減できます。

また、AWSのバックアップサービスは、ポイントインタイム復旧機能も提供しており、システム障害やデータ破損が発生した際に、正常だった特定の時点の状態へデータを復元できます。
これにより、RPOの短縮とビジネス影響の最小化を実現できます。

高可用性アーキテクチャの実現

AWSでは、複数のアベイラビリティゾーン(AZ)を活用した高可用性アーキテクチャの構築が可能です。
各AZは独立した電源、冷却設備、ネットワーク接続を持つため、単一の障害点を排除し、システム全体の可用性を大幅に向上させることができます。
Application Load BalancerやAuto Scalingグループなどのサービスを組み合わせることで、自動フェイルオーバー機能も実装できます。

さらに、AWSの管理サービスであるAmazon RDSやAmazon DynamoDBなどは、マルチAZ配置による自動フェイルオーバー機能を標準で提供しているため、データベース層での高可用性も容易に実現できます。

AWSを活用するメリット

BCP対策におけるAWS活用には、従来のオンプレミス環境と比較して多くのメリットがあります。
これらのメリットを理解することで、自社のBCP戦略において最適な選択肢を検討することができます。
ここでは、特に重要な3つのメリットについて詳しく解説していきます。

初期投資コストの削減

従来のオンプレミス環境でBCP対策を実施する場合、災害復旧用のサーバー機器購入、遠隔地でのデータセンター確保、専用回線の敷設など、多額の初期投資が必要でした。
AWSを活用することで、物理的なサーバー設置が不要となり、クラウド上での仮想環境構築により初期投資を大幅に削減できます。

特に中小企業においては、数千万円規模の初期投資は大きな負担となりますが、AWSであれば必要な機能から段階的に導入することができ、初期費用を数十万円程度まで抑えることも可能です。
また、従量課金制により、実際に使用した分のみの支払いとなるため、無駄なコストの発生を防ぐことができます。

運用コストの最適化

AWSの従量課金制により、平時は最小限のリソースで運用し、災害時や訓練時のみスケールアップすることで、運用コストを大幅に削減できます。
例えば、災害復旧サイトを「コールドスタンバイ」状態で維持し、必要時のみ「ホットスタンバイ」に切り替えることで、コストと復旧時間のバランスを最適化できます。

また、AWSが提供する管理サービスを活用することで、システム運用の自動化が可能となり、運用担当者の作業負荷を軽減できます。
定期メンテナンスやセキュリティパッチの適用もAWS側で実施されるため、社内の運用コストをさらに削減できます。

迅速なスケーリングと復旧

災害発生時には、通常時を超える処理負荷が発生する場合があります。
AWSのAuto Scaling機能を活用することで、負荷に応じて自動的にサーバーリソースを増減させ、システムパフォーマンスを維持できます。
これにより、災害時の業務継続性を確保しながら、必要以上のリソース確保によるコスト増加を防ぐことができます。

さらに、AWS CloudFormationやAWS Systems Managerなどの自動化ツールを活用することで、災害復旧サイトの構築を数分から数時間で完了させることが可能です。
これにより、RTOの大幅な短縮を実現し、事業影響を最小限に抑えることができます。

BCP対策を検討する企業にとって、システム基盤の災害対策と併せて、社内の安否確認や緊急連絡体制の整備も重要な要素となります。
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AWSを活用するデメリット

AWSはBCP対策において多くのメリットを提供する一方で、クラウドサービス特有のデメリットも存在します。
これらのデメリットを正しく理解し、適切な対策を講じることで、より効果的なBCP戦略を策定することができます。
ここでは、主要なデメリットとその対策について詳しく解説していきます。

ネットワーク障害への依存リスク

AWSはインターネット経由でのサービス提供が基本となるため、インターネット回線やAWS側のネットワーク障害が発生した場合、システムへのアクセスが困難となるリスクがあります。
実際に2019年には東京リージョンで大規模な障害が発生し、多くの企業のシステムに影響が生じました。

このようなリスクに対しては、複数のインターネットサービスプロバイダーとの契約や、AWS Direct Connectによる専用線接続の活用、さらには複数のクラウドプロバイダーを組み合わせたマルチクラウド戦略の検討が重要です。
また、オンプレミス環境との併用によるハイブリッドクラウド構成も有効な対策となります。

カスタマイズ性の制限

AWSの管理サービスを利用する場合、サービス仕様に合わせた運用が必要となり、既存システムの仕様や運用手順を大幅に変更しなければならない場合があります。
例えば、Amazon RDSでは利用可能なデータベースエンジンに制限があり、独自にカスタマイズしたデータベース環境を完全に再現することは困難です。

このような制限に対しては、移行前の要件定義段階でAWSサービスの仕様を詳細に調査し、必要に応じてAmazon EC2上での自社管理によるカスタマイズや、サードパーティ製品の活用を検討することが重要です。
また、段階的な移行により、システムの適応性を確認しながら進めることが推奨されます。

ベンダーロックインのリスク

AWS固有のサービスを多用することで、他のクラウドプロバイダーへの移行が困難となるベンダーロックインのリスクが発生します。
特に、AWS Lambda、Amazon DynamoDB、Amazon SQSなどのマネージドサービスは、他社サービスとの互換性が限定的であるため、将来的な選択肢を狭める可能性があります。

このリスクを軽減するためには、可能な限りオープンソース技術やマルチベンダー対応の技術を採用し、クラウドプロバイダーに依存しない設計を心がけることが重要です。
また、定期的なコスト評価と競合他社サービスとの比較検討により、最適な選択肢を継続的に評価することも必要です。

AWSでBCP対策を実施する方法

AWSを活用したBCP対策の実施には、事業要件に応じた適切なDR(災害復旧)戦略の選択が重要です。
各戦略にはコスト、復旧時間、運用の複雑さなどの特徴があり、企業の規模や業種、重要度に応じて最適な手法を選択する必要があります。
ここでは、具体的な実施方法について詳しく解説していきます。

4つのDR(災害復旧)戦略

AWSでは、事業要件に応じて4つの主要なDR戦略を提供しています。
各戦略は復旧時間とコストのトレードオフの関係にあり、企業の要求するRTOとRPOに基づいて選択することが重要です。
以下の表で各手法の特徴を比較します。

DR戦略 復旧時間 費用 特徴
バックアップ・リストア 数時間〜
数日
最安 定期バックアップから障害時に復旧、コスト最優先
パイロットライト 数十分〜
数時間
データのみ同期し、障害時に別リージョンで起動
ウォームスタンバイ 数分〜
数十分
低スペックで常時稼働、障害時に性能向上して切替
マルチサイトアクティブ/
アクティブ
即座 最高 複数リージョンで常時フル稼働、自動フェイルオーバー

バックアップ・リストア方式は最もコストを抑えられる一方、復旧に時間がかかるため、業務への影響を許容できる企業に適しています。
逆に、マルチサイトアクティブ/アクティブ方式は即座の復旧が可能ですが、運用コストが高額になるため、ミッションクリティカルなシステムに限定して適用することが一般的です。

RPOとRTOの設定

効果的なBCP対策を実施するためには、業務特性に応じたRPO(Recovery Point Objective:目標復旧地点)とRTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)の適切な設定が不可欠です。
RPOはデータ損失の許容範囲を示し、RTOはシステム停止の許容時間を示します。

例えば、ECサイトの場合、1時間のシステム停止で数千万円の売上損失が発生する可能性があるため、RTO:15分、RPO:5分といった厳しい要件が設定される場合があります。
一方、社内の情報システムであれば、RTO:4時間、RPO:1時間といった比較的緩やかな設定でも業務に大きな影響を与えない場合があります。

具体的な構築手順

AWSでのBCP対策構築は以下の手順で進めることが推奨されます。
まず、現在のシステム構成とデータフローの詳細な調査を実施し、重要度に応じた業務の分類を行います。
次に、各業務のRPOとRTOを設定し、適切なDR戦略を選択します。

実装フェーズでは、AWS CloudFormationやTerraformなどのInfrastructure as Codeツールを活用することで、復旧サイトの構成をコード化し、迅速で確実な復旧を実現できます。
また、定期的な災害復旧訓練の実施により、手順の有効性を検証し、継続的な改善を図ることが重要です。

AWS活用時の注意点と対策

AWSを活用したBCP対策を成功させるためには、クラウド特有のリスクや制約を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
ここでは、実際の運用において特に注意すべき点とその対策について詳しく解説していきます。

回線の冗長化対策

AWS自体が稼働していても、インターネット回線に障害が発生した場合、システムへのアクセスが不可能となり、業務停止のリスクが発生します。
このリスクを回避するため、複数のインターネットサービスプロバイダーとの契約や、異なる経路での回線確保が必須となります。

具体的な対策として、主回線と副回線を異なる通信事業者で契約し、自動切替機能を持つルーターを導入することが推奨されます。
また、モバイル回線やWiMAXなどの無線回線を緊急時のバックアップ回線として準備することで、さらなる冗長性を確保できます。
コスト増加は避けられませんが、業務中断による損失と比較すると十分に投資効果が期待できます。

セキュリティ対策の強化

クラウド環境では、従来のオンプレミス環境とは異なるセキュリティリスクが存在します。
AWS Identity and Access Management(IAM)による適切なアクセス制御の設定や、Multi-Factor Authentication(MFA)の導入、定期的なセキュリティ監査の実施が重要です。

また、AWS CloudTrailによるAPI操作ログの記録や、Amazon GuardDutyによる脅威検知機能の活用により、セキュリティインシデントの早期発見と対応を実現できます。
データ暗号化についても、転送時と保存時の両方で適切な暗号化を実施し、データ漏洩リスクを最小限に抑えることが必要です。

運用体制の整備

AWSを活用したBCP対策の効果を最大化するためには、適切な運用体制の整備が不可欠です。
災害発生時の対応手順書の作成、定期的な災害復旧訓練の実施、運用担当者への継続的な教育により、実際の災害時に迅速かつ確実な対応を実現できます。

特に、24時間365日の監視体制の構築や、災害時の意思決定者の明確化、外部ベンダーとの連絡体制の整備など、人的な対応体制の確立が重要です。
また、運用マニュアルの定期的な更新や、新しいAWSサービスの活用に向けた継続的なスキルアップも必要となります。

まとめ

AWSを活用したBCP対策は、従来のオンプレミス環境では実現困難だった高度な災害復旧機能を、比較的低コストで実現できる有効なソリューションです。
複数リージョンでのサービス提供、自動バックアップ機能、高可用性アーキテクチャなどの特徴により、企業の事業継続性を大幅に向上させることができます。

一方で、ネットワーク障害への依存リスクやカスタマイズ性の制限といったデメリットも存在するため、これらを適切に評価し、回線の冗長化やセキュリティ対策の強化など、周辺対策を併せて実施することが重要です。
各企業の業務特性やコスト制約に応じて、バックアップ・リストアからマルチサイトアクティブ/アクティブまでの適切なDR戦略を選択し、継続的な改善を図ることで、効果的なBCP対策を実現できます。

KENTEM(株式会社建設システム)では、BCP対策の一環として、総合防災アプリ「クロスゼロ」を通じて企業の災害対応力向上をサポートしており、システム基盤の災害対策と合わせて包括的なBCP体制の構築が可能です。
AWSを活用したシステム基盤の強化と併せて、社内の緊急時コミュニケーション体制の整備もご検討ください。

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