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BIMとは?|CADとの違いと活用のメリットを解説

2025/12/05

建築

建設業界において、BIM(ビム)という言葉を耳にする機会が増えています。
従来のCAD(キャド)とは何が違うのか、導入するとどのようなメリットがあるのか、疑問に思われている方も多いでしょう。
BIMは単なる3Dモデリングツールではなく、建築物の情報を統合的に管理する仕組みであり、設計から施工、維持管理まで一貫したデータ活用を可能にします。
一方、CADは設計図面の作成を効率化するツールとして長年活用されてきました。
本記事では、BIMとCADの基本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、主要ソフトの比較、実務における使い分けのポイントまで体系的に解説します。
建設DXの推進で重要な役割を果たすBIMについて、正しく理解し、自社の業務改善に活かすための知識を身につけましょう。

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BIMとCADの基本概要

建設業界におけるデジタル化の中核を担うBIMとCADは、それぞれ異なる目的と特性を持つツールです。
まずは、BIMとCADの基本的な定義と、それぞれが登場した歴史的背景について理解しましょう。
両者の違いを正しく把握するためには、各ツールが生まれた時代背景と、これらを活用して解決しようとした課題を知ることが重要です。

BIM(Building Information Modeling)とは

BIMとは「Building Information Modeling」の略称で、建築物の形状情報に加えて、素材・コスト・工程などの属性情報を統合的に管理する仕組みです。
単なる3Dモデリングツールではなく、建築物を「情報データベース」として扱う点が特徴です。
例えば、BIMで作成した窓のオブジェクトには寸法や形状だけでなく、ガラスやサッシの素材、メーカー名、単価などの詳細な属性情報が紐づけられています。

BIMは3次元の形状情報(3D)に加え、時間情報を組み込んだ4D(工程管理)、コスト情報を含む5D(コスト管理)へと拡張できる点も特徴です。
建物全体を1つのデータモデルとして構築し、必要な情報を用途に応じて抽出・活用できるため、設計から施工、維持管理まで一貫したデータ連携が可能になります。
この情報の一元管理が、BIMが建設DXの核として注目される理由です。

CAD(Computer Aided Design)とは

CADとは「Computer Aided Design」の略称で、コンピュータを用いて設計図面を作成するツールです。
手作業で行っていた製図業務をデジタル化し、設計作業の効率化と精度向上を目的として開発されました。
CADには2D CADと3D CADがあり、2D CADは平面図や立面図などの二次元図面を作成するツールで、従来の手書き図面をデジタル化したような使い方が可能です。
一方、3D CADは立体的な形状をモデリングでき、複雑な構造物の設計や干渉チェックに活用されています。

BIMとCADの登場と普及の背景

CADは1960年代に2D CADとして誕生し、1970年代には3D CADへと進化しました。
当初は航空宇宙産業など高度な精度が求められる分野で採用され、徐々に建設業界にも普及しました。
日本では、2000年代以降のパソコンの性能向上と価格低下が、中小企業への導入を後押ししました。

一方、BIMの概念自体は1970年代から存在していましたが、実用化が本格化したのは2000年代に入ってからです。
高性能なコンピュータとネットワーク環境の整備、そして建築プロジェクトの大規模化・複雑化が、BIM普及の背景にあります。
特に2010年代以降は、クラウド技術の発展により、複数の関係者が同一のBIMモデルを共有・編集できる環境が整いました。
現在、国土交通省が公共工事でのBIMの適用を推進しており、今後さらに普及が加速すると見られています。

BIMとCADの主な違い

BIMとCADは、どちらも建築設計に用いられるデジタルツールですが、データの性質や設計プロセス、情報の扱い方において大きく異なります。
ここでは、実務における両者の違いを具体的に比較し、どのような場面でどちらのツールが適しているかを理解するための情報を提供します。

データ構造の違い:オブジェクト型と図形型

BIMとCADの根本的な違いは、データ構造にあります。
BIMはオブジェクト型のデータ構造を採用しており、壁や柱、窓などの建築要素が「オブジェクト」として扱われます。
各オブジェクトには形状情報だけでなく、素材・メーカー・価格・施工方法などの属性情報が付与されています。
一方、CADは図形型のデータ構造であり、線・円・面などの図形要素の組み合わせで図面を構成します。
CADで描かれた壁は「壁」というオブジェクトではなく、複数の線分の集合体として認識されるため、属性データを持たせることは基本的にできません。

設計プロセスの違い:3D優先か2D優先か

BIMは最初から3Dモデルを構築し、そこから2D図面を自動生成するアプローチを取ります。
設計者は立体的な建物モデルを作成し、必要に応じて平面図・立面図・断面図などの2D図面をモデルから切り出します。
この方式により、3Dモデルと2D図面の整合性が常に保たれ、設計初期段階での空間把握や施主へのプレゼンテーションにも効果的です。
対照的に、CADでは従来の製図手順に沿って、まず2D図面を作成し、後から3Dモデルを構築するプロセスが一般的です。

情報管理の違い:属性データの有無

BIMでは、形状情報に加えて豊富な属性データを一元管理できます。
各建築要素には、材質・性能・コスト・工程・メンテナンス情報など、建物のライフサイクル全体で必要となる情報を紐づけることが可能です。
これにより、意匠・構造・設備の各担当者が同一モデルを参照しながら作業できるため、情報共有の効率が向上します。
CADは基本的に図形情報のみを扱うため、属性データの管理には別途Excelなどの外部ツールを併用する必要があり、情報の整合性を保つ管理負担が大きくなります。

修正作業の効率の違い

BIMでは、モデルの一部を修正すると、関連する全ての図面や情報にリアルタイムで反映されます。
例えば、壁の位置を変更すると、平面図・立面図・断面図・面積表・仕様書などが自動的に更新されます。
この自動反映機能により、修正作業の手間が削減され、修正漏れによる設計ミスを防げます。
一方、CADでは各図面が独立しているため、設計変更があった場合は関連する全ての図面を手動で修正する必要があり、時間がかかるだけでなく、転記ミスなどのリスクも高まります。

比較項目 BIM CAD
データの性質 情報(寸法・素材・コストなど)を持つオブジェクト型データ 図形情報のみ(2D/3D)
3次元化の順序 最初から3D設計、2D図面は自動生成 2D図面から始めて後で3D化
情報の扱い 建築・維持管理・積算などに活用可能 設計支援が主目的
修正反映 モデル全体にリアルタイム反映 各図面を個別修正
導入難易度 高(学習・コスト・環境整備が必要) 低(無料ソフトも多く導入しやすい)

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BIM導入のメリットとデメリット

BIMは建設プロジェクトの効率化と品質向上に大きく貢献しますが、導入には一定のハードルが存在します。
ここでは、BIMを実際に業務に取り入れる際のメリットとデメリットを、実務的な視点から詳しく解説します。

BIMのメリット:情報共有と整合性の向上

BIMの大きなメリットは、関係者全員が共通の3Dモデルを参照しながら情報共有できる点です。
設計者・施工者・発注者などが同一のモデルを見ながら協議できるため、認識のずれを最小化し、円滑なコミュニケーションが実現します。
また、BIMでは3Dモデルから2D図面が自動生成されるため、平面図と立面図で寸法が異なるといった図面間の不整合が起こりません。
設計変更時も関連情報が自動で更新されるため、修正作業の効率が向上します。

BIMのデメリット:導入コストとデータ容量

BIM導入の大きなハードルは、初期コストの高さです。
BIMソフトウェアは高額で、快適な操作には高性能なパソコンも必要です。
さらに、従業員への教育研修や社内のワークフロー整備にも時間とコストがかかります。
もう一つの課題は、BIMデータの容量の大きさです。
大規模プロジェクトでは数GBに達することもあり、高速なネットワーク環境と大容量のストレージが必要になります。
また、協力会社がBIMに対応していない場合、データ連携が困難になるという課題もあります。

CADのメリットとデメリット

CADは長年にわたり建設業界の設計業務を支えてきた実績のあるツールです。
BIMと比較すると機能面では劣る部分もありますが、導入のしやすさや運用コストの低さなど、独自のメリットも持っています。

CADのメリット:導入の容易さと軽快な動作

CADの大きなメリットは、導入コストの低さと習得の容易さです。
無料のCADソフトも多数存在し、有償ソフトでもBIMと比較すれば価格は抑えられています。
また、必要なパソコンのスペックもBIMほど高くないため、初期投資を抑えて導入できます。
操作面でも、従来の製図作業の延長線上にあるため、手書き図面の経験がある設計者にとっては習得しやすいツールです。

CADのデメリット:修正作業の手間

CADの大きなデメリットは、設計変更時の修正作業に手間がかかる点です。
各図面が独立しているため、平面図を修正したら立面図・断面図・詳細図も個別に修正しなければなりません。
この手動修正による人為的ミスのリスクもあり、図面間の不整合や修正漏れが発生しやすく、品質管理に注意が必要です。
また、積算や工程管理には別途専用ソフトが必要で、データの一元管理ができない点も弱点です。

主要BIMソフトとCADソフトの比較

BIMソフトには様々な製品があり、それぞれ得意分野や特徴が異なります。
また、従来のCADソフトも依然として多くの現場で活用されています。
ここでは、代表的なBIMソフトとCADソフトの特徴を比較します。

Revit:AutoCADとの互換性に優れたBIMソフト

Revitは、Autodesk社が開発するBIMソフトで、AutoCADとの高い互換性が特徴です。
特に構造設計や設備設計の分野で強みを持ち、構造解析ソフトや設備CADとの連携機能が充実しています。
世界的にシェアが高く、大規模プロジェクトでの採用実績も多くあります。

ArchiCAD:意匠設計に強いBIMソフト

ArchiCADは、Graphisoft社が開発するBIMソフトで、意匠設計に強みを持ちます。
直感的な操作性と美しいビジュアル表現が特徴で、WindowsとMacの両方に対応しているため、Mac環境の設計事務所でも導入しやすい点が魅力です。

GLOOBE:国産BIMソフトの特徴

GLOOBEは、福井コンピュータ社が開発する国産BIMソフトで、日本の建築基準法に完全対応している点が特徴です。
確認申請図書の作成機能が標準で組み込まれており、日本の建築実務に最適化されているため、国内の中堅ゼネコンや設計事務所での採用実績が増えています。

主要CADソフトの概要

CADソフトでは、AutoCADとJw_cadが日本で高いシェアを占めています。
AutoCADは、Autodesk社が開発する汎用CADソフトで、世界的にも広く普及しており、データ互換性の高さが強みです。
一方、Jw_cadは日本で開発された無料の2D CADソフトで、建築図面の作成に特化しており、中小規模の設計事務所や工務店で広く使われています。

ソフト名 特徴・用途 対応OS 代表的な連携機能
Revit AutoCADとの高い互換性
構造・設備系に強い
Windows Rhinoとの連携可
ArchiCAD 意匠設計に強く操作性が高い Windows
Mac
Grasshopperとの連携可
GLOOBE 国産BIM。
建築基準法対応
施工支援システム内蔵
Windows 設計〜施工の一貫管理が可能

BIMとCADの使い分けと導入戦略

BIMとCADのどちらを選択するかは、プロジェクトの規模や特性、自社の体制によって異なります。
完全にBIMに移行するのではなく、CADと併用しながら段階的に導入を進める戦略も有効です。

プロジェクト規模による使い分けの基準

大規模プロジェクトや長期的な維持管理が必要な建物では、BIMの活用が効果的です。
関係者が多く、情報共有の効率化が重要な案件では、BIMの一元的なデータ管理がメリットをもたらします。
一方、小規模な住宅やシンプルな構造の建物では、CADのシンプルな運用で十分に対応可能です。
ただし、公共工事ではBIM対応が求められるケースが増えており、受注機会の観点からもBIMへの対応検討は重要です。

BIM導入のステップと注意点

BIM導入を成功させるためには、段階的なアプローチが重要です。
いきなり全案件をBIM化するのではなく、まずは試験的に1〜2件のプロジェクトで導入し、課題を洗い出しながら運用ルールを整備していくことが推奨されます。
また、BIMの効果を高めるためには、オブジェクトの命名規則やレイヤーの使い方など、社内の標準化ルールを策定することが重要です。

BIMとCADの併用戦略

実務では、BIMとCADを併用する戦略が現実的です。
全ての案件をBIM化するのではなく、プロジェクトの特性に応じて使い分けることで、導入コストを抑えながらBIMの効果を活用できます。
例えば、設計の初期段階はCADでスケッチを作成し、基本設計が固まった段階でBIMモデルに移行するという段階的アプローチも有効です。
また、取引先がBIM未対応の場合は、CADデータで連携するなど柔軟な運用が求められます。

まとめ

BIMとCADは、どちらも建設業界のデジタル化を支える重要なツールですが、その役割と特性は異なります。
BIMは建築物を情報データベースとして扱い、設計から施工、維持管理まで一貫したデータ活用を可能にする仕組みです。
一方、CADは手書きの設計図面をコンピュータで効率化するツールとして発展し、図形情報を正確に表現することに特化しています。

BIMの大きなメリットは、関係者全員が共通の3Dモデルで情報共有できる点と、図面間の不整合を根本的に防げる点にあります。
しかし、導入には高額なコストと専門的な知識が必要です。
一方、CADは導入コストが低く、操作も習得しやすい反面、設計変更時の修正作業に手間がかかり、情報の一元管理には限界があります。

実務では、プロジェクトの規模や特性に応じてBIMとCADを使い分ける、あるいは併用する戦略が有効です。
小規模案件はCADで運用し、大規模・長期案件ではBIMを活用して情報共有と工程管理を効率化するという段階的なアプローチが現実的です。
KENTEM(株式会社建設システム)は、建設業向けの各種システムを提供し、現場のデジタル化を総合的にサポートしています。
特に、「PRODOUGU」はCAD図面の読み込みが可能な施工管理ソフトであり、CADのデメリットを補う使い方が可能です。
CAD図面を施工管理ソフトに直接取り込むことで、図面の拡大縮小、寸法計測、メモ書きや共有がスムーズに行え、PDFでは発生しやすい計測誤差も抑えられるため、現場での確認作業を大幅に効率化できます。

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