地震に備えるBCPとは?|企業が取り組むべき対策と策定のポイント
2026/04/20
地震は予測が困難ですが、日本では「発生が避けられない災害」として経営に深刻な影響を及ぼします。
2024年の能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報の発表により、多くの企業が事業継続計画(BCP)の重要性を再認識しています。
しかし、BCP策定率は依然として約2割にとどまり、8割以上の企業が未策定のままです。
この状況はサプライチェーン全体の弱点となり、自社だけでなく取引先や顧客にも影響を及ぼしかねません。
本記事では、地震BCPの基本的な考え方から策定プロセス、実効性を高める訓練設計、そして先進企業の具体的な取り組み事例まで、実務担当者がすぐに活用できる情報を体系的に解説します。
チェックリストを活用しながら、自社のBCP対策を着実に進めていきましょう。
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役立つ情報満載
地震が企業に与える
BCP未策定のリスク
地震は企業活動に甚大な被害をもたらし、事業継続を根本から脅かす災害です。
近年の地震災害を踏まえ、BCPを持たない企業が直面するリスクを理解することが対策の第一歩となります。
2024年の地震関連災害と企業への影響
2024年1月の能登半島地震は最大震度7を記録し、企業活動に広範な影響を及ぼしました。
直接的な建物被害に加え、交通インフラや生活インフラの寸断により、被災地域の企業は長期にわたる事業停止を余儀なくされています。
さらに2024年8月には、気象庁が南海トラフ地震への注意を呼びかける「臨時情報」を発表しました。
この発表を受け、小売業では店舗の安全確認や避難経路の再確認が行われ、通信事業者は移動基地局の配備準備を進めるなど、各業界で対応が求められました。
BCP未策定企業が抱えるサプライチェーンリスク
帝国データバンクの2024年調査によると、BCP策定率は伸びているものの約2割にとどまり、8割以上の企業が未策定のままです。
この状況は、個々の企業だけでなくサプライチェーン全体の弱点となります。
取引先の1社がBCPを策定していないだけで供給が途絶し、自社の事業継続に影響する可能性があります。
特に製造業では、調達先・納品先を含めたサプライチェーン全体でのBCP整備が重要視されています。
南海トラフ巨大地震の被害想定と企業の備え
南海トラフ巨大地震は、最大震度7、最大津波高10m以上、経済被害約220兆円と想定されています。
この規模の災害が発生した場合、広域にわたる企業活動の停止は避けられません。
このような大規模災害を想定すると、BCP未策定の多さはサプライチェーン全体の致命的な弱点になり得ます。
今すぐ対策を始めることが、企業の存続と社会的責任の両面から求められています。
地震BCPと防災計画の違い
BCPと防災計画は混同されがちですが、その目的と範囲には明確な違いがあります。
地震対策を進めるうえで、まずこの違いを正しく理解することが重要です。
BCPの定義と防災計画との本質的な違い
BCP(事業継続計画)とは、地震・パンデミック・大規模事故などの緊急事態において、事業の継続または早期復旧を図るための計画です。
単なる災害対応マニュアルではなく、企業活動を維持するための戦略的な文書として位置づけられます。
防災計画が「従業員の安全確保」や「施設の保全」を主な目的とするのに対し、BCPはそれらに加えて「事業継続の視点」を含みます。
つまり、BCPは人命を守りながら、いかに早く事業を復旧させるかという観点で策定されるものです。
地震BCPで最優先すべき人命の安全確保
BCPにおいて優先されるのは人命の安全確保です。
企業価値の保護や供給責任の遂行も重要ですが、これらは従業員の安全が確保されていることが前提となります。
地震対策としては、建物の耐震化、避難経路の確保、定期的な避難訓練が基本となります。
さらに、連絡体制の整備、安否確認システムの導入、従業員への安全教育も重要な施策として位置づけられます。
安全配慮義務と企業の法的責任
労働契約法第5条では、使用者は労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務が定められています。
この安全配慮義務は、地震などの自然災害時にも適用されます。
企業は平時から災害に備えた対策を講じ、従業員が安全に行動できる環境を整える責任があります。
東日本大震災後の七十七銀行事件では、海岸から100mの支店における従業員の安全確保が争点となりました。
この判例から、管理者には正確な情報収集と適切な判断、避難場所・避難経路の事前確認、従業員への教育・訓練という3つの基本的な対応が求められることが整理されています。
地震BCPの策定が難しい理由
地震BCPの策定が他の災害と比べて難しいのは、地震特有の性質があるからです。
これらの特性を理解したうえで対策を立てることが、実効性のあるBCP策定につながります。
事前準備時間がゼロという地震特有の課題
台風や水害と異なり、地震は事前準備の時間がほとんどありません。
発生直後にすぐ被災状況に直面するため、被害軽減のための猶予が極めて少ないのが特徴です。
そのため、地震BCPでは平時の備えが重要です。
発災後の対応だけでなく、事前の準備状況が事業継続の可否に影響します。
同一地域内でもまだらに発生する被害
地震による被害は、同一地域内でも建物の耐震性や地盤の状況によって大きく異なります。
自社施設が無事であっても、周辺地域が被災すれば交通やインフラが機能不全に陥り、結果として事業継続が困難になる場合があります。
BCPを策定する際は、自社施設の被害だけでなく、周辺環境の被災による影響も想定に含める必要があります。
取引先や物流拠点の被災状況も考慮した計画が求められます。
時間経過で変化する被害の顔とサプライチェーン影響
地震被害は発生直後の倒壊や設備損壊にとどまらず、時間の経過とともにその「顔」が変化します。
ライフラインの途絶、物流の停滞、従業員の出勤困難など、二次的な影響が広範囲に及びます。
特に製造業では、原材料の調達先や製品の納品先が被災した場合、自社が無事でも事業継続が困難になります。
サプライチェーン全体を見据えた被害想定と対策が不可欠です。
こうした地震特有の課題に対応するため、安否確認や緊急連絡を迅速に行える体制の整備が重要です。
総合防災アプリ「クロスゼロ」は、災害発生時の安否確認やハザード情報の共有を効率化し、初動対応を支援します。
地震BCPの策定プロセス
地震BCPの策定は「想定→計画→対策」という流れで進めます。
机上の理想ではなく、現場と資源の制約を織り込んだ実行可能な計画を作成することが重要です。
ステップ1〜3:現状把握から被害想定の作成まで
BCP策定の第一歩は、組織の理念や地理的条件を確認し、現状を正確に把握することです。
自社がどのような災害リスクにさらされているかを客観的に分析します。
次に、建物や設備の現地確認とヒアリングを実施します。
図面上の情報だけでなく、実際の状況を把握することで、より現実的な被害想定が可能になります。
これらの情報をもとに、具体的な被害想定を作成します。
自社施設の被害だけでなく、周辺インフラや取引先の被災も含めた想定が必要です。
ステップ4〜6:優先業務の特定と資源ギャップの分析
被害想定ができたら、地域被害想定から自社への対応需要を分析します。
どの程度の被害が発生し、どのような対応が求められるかを具体化します。
続いて、非常時に優先すべき業務とその優先順位を決定し、対応計画を策定します。
すべての業務を同時に復旧させることは困難なため、事業継続に必要な業務を見極めることが重要です。
最後に、必要な資源(人員・設備・物資など)を特定し、現状とのギャップを分析します。
このギャップを埋める対策を講じることで、BCPの実効性が向上します。
部門横断で進める策定の実務ポイント
BCP策定を効率的に進めるには、部門横断での取り組みが効果的です。
総務部門が先行して施設・設備調査を進めることで、他部門が事業継続の課題を検討しやすくなります。
各部門が段階的に情報を出し合い、全社的な視点で完成度を高めていくアプローチが推奨されます。
一度に完璧なBCPを作ろうとせず、継続的に改善していく姿勢が重要です。
地震BCPを絵に描いた餅にしない
訓練設計
BCPは策定しただけでは機能しません。
「作って終わり」という状態が最悪のパターンであり、訓練を通じて実効性を担保することが不可欠です。
正常性バイアスがBCPの実効性を阻む理由
正常性バイアスとは、予想外のリスクを過小評価し「大丈夫だろう」と判断してしまう心理傾向です。
非常ベルが鳴っても避難しない、避難指示が出ても留まるといった行動につながります。
内閣府「令和2年版防災白書」では、平時の災害リスク理解の有無によって、実際の避難行動に大きな差が生じることが示されています。
たとえば、ハザードマップを見たことがあり、自宅が危険区域にあると認識している人のうち 43.5% が何らかの避難行動を取ったのに対し、ハザードマップを見たことがない人では 16.4% にとどまっています。
さらに、ハザードマップについて「とるべき行動が分からない」「縮尺や色遣いが分かりにくい」など、何らかの課題を感じている人が約7割に上るとされています。
このように、災害リスクや避難行動を正しく理解していないことに加えて、正常性バイアスの影響も相まって、災害時に適切な避難行動を取れないケースが生じます。
この心理的バイアスを克服するためには、訓練を通じて危険を“疑似体験”し、実際の行動イメージを持っておくことが効果的です。
段階的に高度化するBCP訓練の設計方法
防災訓練(避難誘導・初期消火・救出救護)だけでは、BCPの実効性を担保するには不十分です。
以下のような段階的な訓練設計が推奨されます。
| 訓練の種類 | 内容 |
|---|---|
| 机上訓練 | 災害発生から復旧までの流れを確認 |
| 参集訓練 | 夜間・休日を想定した参集経路の確認 |
| 対策本部設営訓練 | 指揮命令系統の確認 |
| 安否確認訓練 | 連絡体制の実効性検証 |
| 実地訓練 | 機器操作を含む実践的な訓練 |
| 総合訓練 | 地域連携まで拡張した訓練 |
これらの訓練を段階的に実施することで、従業員が災害時に適切な判断と行動を取れるようになります。
訓練の目的は成功ではなく課題発見
BCP訓練の目的は「成功すること」ではなく「課題を発見すること」です。
訓練で発見された課題を改善につなげることで、BCPの実効性が継続的に向上します。
訓練後には必ず振り返りを行い、うまくいかなかった点や想定外の事態を記録します。
これらの情報をもとにBCPを見直し、次回の訓練に反映させるというサイクルを回すことが重要です。
地震BCPチェックリスト
地震BCPの策定や見直しには、体系的なチェックリストの活用が効果的です。
7つの観点からポイントを確認することで、重要事項の漏れを防ぐことができます。
方針表明から復旧対策組織までの確認項目
BCPの実効性を高めるには、まず経営トップによる方針表明が不可欠です。
トップのコミットメントがあることで、全社的な取り組みとして推進できます。
次に、災害後の復旧対策組織について確認します。
対策本部の設置基準、体制、各メンバーの役割が明確に定められているかをチェックします。
また、教育・訓練の体制も重要な確認項目です。
行動基準の策定、防災訓練の実施、BCP訓練の実施、従業員の家庭への啓発活動などが含まれます。
情報連絡・避難対策・帰宅困難者対策の確認項目
情報連絡体制については、安否確認システム、緊急連絡網、代替通信手段、関係機関の連絡先リストなどを確認します。
災害時は通常の連絡手段が使えなくなる可能性があるため、複数の手段を確保しておくことが重要です。
避難対策では、避難経路・避難場所の確認、安全確保の手順、持ち出し品リスト、広域避難の想定などを確認します。
津波や火災など二次災害への対応も含めた計画が必要です。
帰宅困難者対策については、帰宅方針、備蓄品の確保、対象者リストの作成などを確認します。
大規模地震では公共交通機関が長時間停止する可能性があるため、事前の準備が欠かせません。
建物設備と重要業務の継続性確認
建物・設備については、耐震性の確認、転倒・飛散防止対策、重要設備の保護状況などを確認します。
特に、事業継続に必要な設備が被災した場合の代替手段も検討しておく必要があります。
重要業務・システムについては、優先業務の特定、目標復旧時間(RTO)の設定、データバックアップの状況、手順の文書化、定期的な見直し体制などを確認します。
これらの項目をチェックリストとして整理し、定期的に確認・更新することが推奨されます。
チェックリストの運用では、既にBCPがある企業は充足評価として活用し、これから作る企業は必要情報の収集リストとして使うことができます。
複数拠点を持つ企業では、地域ごとのリスクを反映した拠点別チェックリストの作成も効果的です。
先進企業の地震BCP事例に学ぶ成功要因
実際に地震BCPを効果的に運用している企業の事例から、成功要因を学ぶことができます。
ここでは冷蔵・冷凍物流のヨコレイ(横浜冷凍株式会社)と建設業の清水建設株式会社の取り組みを紹介します。
ヨコレイ:指揮命令系統の多重化と現場主導の計画策定
ヨコレイは、冷蔵・冷凍物流事業を展開する企業として、指揮命令系統の維持と現場実装、個人行動支援に重点を置いたBCPを構築しています。
同社の特徴的な取り組みの一つが、事業継続本部の多重化(冗長化)です。
本社被災に備えて大阪に第2本部を設置し、さらに南海トラフ地震で本社と第2本部が同時被災する事態を想定して福岡に第3本部を設けています。
また、各事業所が担当者を選任し、地域特性・事業特性に応じた初動・継続計画を策定する現場主導のアプローチを採用しています。
統一フォーマットを使用することで、比較・連携を容易にしながら、各拠点の実情に合った計画を実現しています。
さらに、全従業員へ「サバイバルノート」を配布し、安否確認方法、避難手順、連絡先、備蓄場所などを明文化しています。
災害時の動転を前提に「迷わない」設計とし、安否確認にはキャリアに限定されないweb171の活用を推奨するなどの工夫が見られます。
清水建設:システムと訓練の融合による実効性向上
清水建設株式会社は、ITを活用した包括的なBCPソリューションを導入し、先進的なBCP体制を構築しています。
同社のシミュレーションシステム「BCP-Map」は、地震発生直後に震度分布データから建物の被災可能性を地図上に可視化し、迅速な状況把握を可能にします。
また「安震モニタリングシステム」は、センサーで揺れを検知・自動解析し、建物の健全性を即時判定します。
これにより、専門家が不在でも施設管理者自身で建物の安全性を確認し、災害拠点として使用可能かどうかの意思決定を行えます。
さらに、就業時間外など要員が出社困難な状況を想定した全社一斉のBCP実践訓練も実施しています。
訓練では安否確認から各施設の被災情報収集までの初動対応を行い、「BCP-Web」等を通じてリアルタイムに情報を共有しています。
両社に共通する成功要因の抽出
両社の事例から、地震BCPの成功要因として以下の4点が抽出できます。
これらは業種を問わず参考にできる普遍的なポイントです。
| 成功要因 | 内容 |
|---|---|
| 指揮系統の冗長化 | 本部機能の多重化により、どの状況でも指揮命令を維持 |
| 現場実装 | 各拠点の特性に応じた計画策定と責任者の明確化 |
| 個人の行動支援 | 災害時に個人が迷わず行動できるツールや仕組みの整備 |
| システムと訓練の融合 | 技術的な仕組みと人的な訓練を組み合わせた実効性の担保 |
両社とも計画の策定にとどまらず、定期的な訓練・評価・見直しのサイクルを継続している点が共通しています。
BCPを企業活動の一部として位置づけ、継続的に改善していく姿勢が重要です。
まとめ
地震BCPは「人命の安全確保」と「事業継続」を柱とする重要な経営課題の一つです。
2024年の能登半島地震や南海トラフ臨時情報を受け、企業の危機対応はもはや机上の議論ではなく、現実の課題となっています。
BCP策定率が約2割にとどまる現状は、サプライチェーン全体の弱点となり得ます。
製造業をはじめとする各業種は、自社だけでなく取引先を含めた対策が求められています。
先進企業の事例から学ぶべきは、指揮系統の冗長化、現場主導の計画策定、個人への行動支援、そしてシステムと訓練の融合です。
「作って終わり」ではなく、訓練と改善を継続することがBCPの実効性を高めます。
近年は想定を超える災害が増加しており、従来型のBCPだけでは不十分になる可能性があります。
今すぐチェックリストで現状を棚卸し、訓練と改善のサイクルを回すことが、企業の持続可能性を高める第一歩となります。
KENTEM(株式会社建設システム)が提供する総合防災アプリ「クロスゼロ」は、安否確認や緊急連絡、ハザード情報の共有、備蓄品管理など、地震BCPに必要な機能を一元化しています。
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